■あらすじ『地球上にゾンビが蔓延し、アンブレラ社の人工知能レッドクイーンが人類滅亡まで残り48時間と告げた。アリスは生き残った人々と共に、感染した生物すべてを抹殺するという抗ウイルス薬を求め、地下施設ハイブを目指す。全人類を救うために繰り広げられる凄絶な戦い、レッドクイーンの秘密、散りばめられた数々の謎、さらにアリスの存在に隠された驚愕の真実までもがついに解き明かされる!果たして彼らの運命は!?そしてローラは活躍するのか!?色んなことが気になるシリーズ6作目にして堂々たる完結編!』
本日、映画『バイオハザード』シリーズの第6作目にして完結編となる『バイオハザード:ザ・ファイナル』のブルーレイ&DVDが発売されます。トータルで14年以上に及ぶ長期シリーズですが、第1作目が公開された2002年の時点では、映画を観たファンはもちろん、監督でさえここまで長く続くとは予想していなかったでしょう。
なんせ最初の『バイオハザード』は予算3300万ドルの「低予算ゾンビ映画」として作られていたので、エキストラに払うお金を節約するためにスタッフやプロデューサーがゾンビ役を演じたり、セットをダンボールで作るなど、貧乏な撮影を強いられ四苦八苦していたからです(詳しい裏話はコチラの記事をどうぞ↓)。
ところが、予想外の大ヒットを記録し、続編の製作が決定!ここで監督は喜ぶと同時にちょっと悩んだそうです。前作の『バイオハザード』は「主人公のアリスが無事にハイブから脱出 → 街へ出てみたらゾンビだらけで大変な状況に!」という場面で終わっていたのですが、実はこの時点では続編のことなど何も考えておらず、「衝撃的な結末を見せて観客にショックを与えよう」としただけだったのですよ。
しかも、ポール・W・S・アンダーソン監督は『エイリアンVSプレデター』を撮るために続編を降板。代わりに別の監督(アレクサンダー・ウィット)が『バイオハザードII アポカリプス』を撮ることになってしまったから、なおさら微妙な感じに…。「ただでさえ続編は前作よりもクオリティが落ちやすいのに、監督まで変わったら全然ダメだろうなあ」と期待値はダダ下がりでした。しかし、予想に反して2作目の『バイオハザード』も普通に面白かったのです。ゲーム版のキャラが全く出て来ない1作目に対し、続編はゲーム版『バイオハザード3 LAST ESCAPE』と設定がリンクしていて、ジル・バレンタインやカルロス・オリヴェイラなどのゲーム版キャラクターが続々登場。
これらゲームキャラの再現度が非常に高く、中でもジル・バレンタインを演じたシエンナ・ギロリーの完コピ具合たるや「まさにジル・バレンタインそのものだ!」とファンから絶賛されるほどでした。さらにアクション要素もレベルアップしているし、「追跡者(ネメシス)」との超絶バトルも堪能できるし、多くの観客から好評を博したのです。
そのせいかどうかは分かりませんが、この3作目から雰囲気がガラッと変わっているのです。今までの『バイオハザード』はホラー映画でお馴染みの「暗く不気味な夜のシーン」が多かったのに対し、『バイオハザードIII』では太陽が光り輝く真昼間にゾンビが襲いかかって来るのですよ。
しかも周囲は広大な砂漠地帯が広がり、主人公たちは武装した自動車に乗り込み、埃っぽい道路を爆走するという、まるで「『マッドマックス』の世界にゾンビが現れたらこうなる!」みたいなビジュアルになってて、とても斬新でした。内容的には色々言いたいこともありますけど、割と好きな映画ですね(なお、ゲーム版のクレア・レッドフィールドとアルバート・ウェスカーが初参戦している点もグッド)。
結果的に3作目もヒットし、当然「4作目を作ろう」という流れになりました。しかも1作目のポール・W・S・アンダーソン監督が久々に復帰するということでファンの期待値も急上昇!が、実際に観てみたら…う〜ん、何かイマイチなんですよねえ。シリーズ4作目の『バイオハザードIV アフターライフ』は舞台が東京へと移り、「渋谷の地下にアンブレラ社の巨大秘密基地があった」というとんでもない設定から物語がスタートし、アリスとウェスカーが壮絶なバトルを繰り広げ、最後は二人の乗ったヘリコプターが富士山に激突するという、冒頭から突っ込みどころ満載の支離滅裂なストーリーに成り果てていたのですよ。
ヘリから脱出したアリスはアラスカへ移動し、クレア・レッドフィールドと再会。その後、飛行機でロサンゼルスへ向かうものの、街中にゾンビが蔓延していて着陸できないから刑務所の屋上に降りて、さあここからどうやって脱出しようか…、みたいな非常にまとまりの無い脚本にガッカリしました(僕の感想はこちら↓)。でもこの映画がまたまた大ヒットし、5作目の『バイオハザードV リトリビューション』の製作が決定。今度はアンブレラ社の巨大実験施設が舞台で、その中にニューヨーク・東京・モスクワの街などが再現され、その限定空間でアリスたちが戦うという、スケールがでかいのか小さいのか良く分からない設定に呆然(笑)。
ゲーム版のキャラとしてエイダ・ウォン、レオン・S・ケネディ、バリー・バートンが登場しているのはゲームファン的には嬉しいんですけど、ストーリー展開までもが「一つのステージをクリアして次のステージへ移動する」という”ゲームみたいな映画”になっているのは「本末転倒」と言わざるを得ません(僕の感想はこちら↓)。
余談ですが、本作の撮影中に巨大なセットが倒れてゾンビ役のエキストラの上に落下し、12人が負傷したそうです。ところが、急いで駆け付けた救急隊員たちは”血まみれの衣装”や”骨や内臓が露出した特殊メイク”を見て「大惨事だ!」と勘違いし、現場はかなり混乱したらしい(幸い死者は出なかった模様)。
というわけで、ここからが本題です(笑)。5作目の大ヒットを受けて、当然のごとく6作目の製作が決まりました。監督はもちろんポール・W・S・アンダーソン。さらに「シリーズ完結編!」「すべての謎がついに解き明かされる!」と聞いて、「これは観なければ!」と公開初日に劇場まで足を運んだわけですよ。ただ、色々と問題が…。まず気になったのは冒頭シーン。前作『バイオハザードV リトリビューション』のラストがどんな感じだったか、ざっくり振り返ってみると、「ワシントンD.C.のホワイトハウスに立て籠ったアリスたちは、周囲を大量のアンデッド軍団に取り囲まれて大ピンチに!」という場面で終わっていました。
当然、「この後いったいどうなるんだッ!?」とハラハラドキドキしながら続編を待ちわびていたファンも多いことでしょう。だがしかし!そんな期待を打ち砕くかのように、オープニングからいきなりホワイトハウスが大破していてビックリ。しかも、周辺にはアンデッドどころか人っ子一人存在しません。
どうやら前作のラストから数時間後の状態を描いているらしく、廃墟と化したホワイトハウスからアリスが一人で現れ、他の仲間たちの生死は不明のまま話がスタートしてるんですよ。ええええ!?いったい何が起こったの?『5(リトリビューション)』と『6(ザ・ファイナル)』を連続で観たら、全然意味が分からないよ!
なぜこうなったかと言うと、上でも書いたように、元々アンダーソン監督って「先のことを考えないで映画を作る人」らしいんです。つまり、続編への伏線としてではなく、「衝撃的な結末を見せて観客にショックを与えたいから」という、極めて単純な理由で派手なラストを作りたがる人なんですね(まあ、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のラストも最初から続編を意識してたんじゃなくて、単なる”オチ”なんですが)。
しかも、普通の人なら「どうにか辻褄を合せよう」と頑張るはずなんですが、アンダーソンの場合は「辻褄を合せる」とか「伏線を回収する」という意識がそもそも無いらしく、前作のラストシーンを平気で無視するんですよね(というより、自分で張った伏線を完全に忘れてるんじゃないかなあ?)。
そんな感じで、映画を観た人は「ジル・バレンタインやエイダ・ウォンやレオン・S・ケネディは一体どうなったんだよ!」と気になってしょうがなかったと思います。実は前作『バイオハザードV リトリビューション』のラストシーンの後に「激しい戦闘が行われた」という設定を一応考えたものの、映画本編ではそれをスルーし、代わりに小説版で補足してるんですよ。
試しに小説版を買って読んでみたら、エイダとレオンは”寄せ集め(メランジ)”と呼ばれる「リッカーや多数のアンデッドが融合した巨大な複合生命体」に飲み込まれ、ジルはウェスカーに目玉を突き刺されて死んでいました。つまり全滅!なぜアリスだけが助かったのかと言えば「運が良かったから」としか答えようがない(苦笑)。
当然アリスは「はあ!?今まで私を殺そうとしてたくせに、信用できるかボケ!」とブチ切れますが、他にいい方法がないので仕方なくラクーンシティを目指して出発。途中、『3』で死んだはずのアレクサンダー・アイザックスに出会ったり、盗んだバイクで走り出したり、色々あった後、4作目で離れ離れになったクレア・レッドフィールドと再会し、いざハイブへ突入!
あ、ちなみにタレントのローラさんの出番はビックリするほど短いです(苦笑)。「コバルト」という役名を与えられているのが不思議なぐらい「その他大勢」感が満載で、ほとんどドラマに絡んできません。撮影中はスゲーはしゃいで、写真を何枚もアップしてたのになあ。
前作に出演した中島美嘉さんもチョイ役でしたが、中島さんの方がまだアンデッドに変身したり、アリスと戦ったり、印象に残るキャラだったと思います。それに比べてローラの扱いは「かなり残念」と言わざるを得ません、トホホ(-_-;)
あと、ウェスカーの”やられ方”にもビックリしましたね〜。4作目や5作目であんなに強敵だったのに、まさか自動ドアに挟まれただけで死ぬなんて!あまりにもあっけない最期に「え?ウェスカーこれで終わり?」と驚愕しましたよ(強いのか弱いのかどっちなんだ?)。
とまあ、内容的には相変わらず突っ込みどころ満載ですが、映画版『バイオハザード』シリーズの最大の魅力は、「タフで美しいヒロインが、カッコいいアクションを駆使して恐ろしいゾンビをバッタバッタとなぎ倒す爽快感」であり、ある種「ミラ・ジョヴォヴィッチの活躍を楽しむための映画」でもあるわけです。
そういう意味では「アリスがひたすら敵をブチ殺していく」だけの話であっても、それ自体が見どころなので、ファンにとって不満は少ないのかもしれません。とは言え、今回は完結編でもあるため、「T-ウイルスが生まれた経緯」や「アリスの正体」などを詳しく描き、一応「ドラマ的にも盛り上げよう」という意思が感じられました。
特にクライマックスの展開が良かったですねえ。第1作目の登場時からアリスは記憶を失っていて、ずっと「自分は何者なのか?」を知ろうとしていましたが、本作でついに「アリシア・マーカスという女性のクローンだった」ことが判明するのです。
過去作で何度もアリスのクローンが登場しているので”クローン”自体に驚きはないものの、「アリス自身がクローンだった」という事実は本人にとってやはり衝撃でしょう。しかし、抗ウイルス薬を散布し、アンデッドを全滅させた後、なんとアリスはアリシアの”記憶(データ)”を受け継ぐのです。
アリシアは幼い頃から「プロジェリア」という難病を患っており、一方のアリスはアリシアの遺伝子情報からプロジェリアの要因だけを取り除いて作られたクローンで記憶がない。つまり「互いに何かが欠けている状態」なのです。そして、「双方が欠けているものを組み合わせることによって、貴方は完全になれる」とレッドクイーンに促され、アリスはそれを受け入れたのですよ。
そしてアリスは最後に”記憶”を手に入れ、映画はバイクに乗ったアリスを映しつつ終了……となるんですけど、あれ?ワシントンDCで行方不明になった少女ベッキーは一体どうなったの?と気になった人もいるでしょう。実は小説版でこの続きが描かれているんです。
ホワイトハウスでの凄絶な攻防戦の際、ベッキーは”隠し部屋”へ避難していました。そして戦闘が終わった後、たった一人で廃墟と化した街を彷徨っていたのです。一方のアリスは、バイクで移動しながらレッドクイーンが操作する人工衛星を使ってベッキーを捜していたんですね。
やがて、池のそばにしゃがみ込んで水を飲もうとしていたベッキーを発見。ベッキーも自分の母親だと思っているアリスを見つけて力いっぱい抱きしめ、二人は感動の再会を果たしてめでたしめでたし…というラストになっていました(なお、人工知能のレッドクイーンはバージョンアップしたらしく、”ルース”という名前に変わっている)。
こうしてアリスの長い物語はようやく終わりを迎え、見事なハッピーエンド(?)で幕を閉じた、というわけです。まさに大団円であり、長年『バイオハザード』を観てきた僕としては「良かったなあ、アリス…」とちょっとだけ感動しそうになりましたよ。ちょっとだけね(笑)。全体的に雑なストーリーであることは否めませんが、最後はいい感じにまとまっており、「終わり良ければすべて良し」みたいな印象だったので、個人的には満足でした(^_^)
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