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実写化でキャラの性別が改変されるのはなぜ?

ドクター・キリコ(石橋静河)

ドクター・キリコ石橋静河


どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

さて先日、実写ドラマ版『ブラック・ジャック(6月30日に放送)の出演者が発表された際、ドクター・キリコ役のキャストについてSNS上で大きな論争が巻き起こりました。

ドクター・キリコとは、治療しても助からない(助かる見込みのない)患者の安楽死を請け負う医者で、法外な治療費と引き換えに患者を治すブラック・ジャックのライバル的な存在です。

しかし、原作のドクター・キリコは長い銀髪に眼帯をかけて痩せ細った体という”死神のような男”として描かれているのに対し、実写ドラマ版ではなんと若い女性になっているのですよ!

演じるのは石橋静河さんで、父親は俳優の石橋凌さん、母親は女優の原田美枝子さんというまさに芸能一家のサラブレットですが、一体なぜ彼女が選ばれたのでしょう?

番組プロデューサーによると「海外で安楽死をサポートする団体を調べてみたら女性が多かったので、苦しむ人のそばには優しい”女神”のような存在が必要なのでは…」と考え、石橋静河さんをキャスティングしたそうです。

しかし、原作ファンからは「ドクター・キリコのイメージと違いすぎる!」「ちゃんと原作を読んだのか?」「親のコネだろ」「石橋静河を起用することが先に決まっていたけれど、合いそうなキャラがいなかったので無理矢理キリコを女性に改変したんじゃね?」などと批判が殺到。

公開された写真も、白髪のカツラを被って眼帯を着け、出来るだけドクター・キリコのビジュアルに寄せようとはしているものの、正直「コスプレ感が強すぎる」と言わざるを得ません。

ドクター・キリコブラック・ジャック

まぁ、ドラマの評価に関しては実際に番組を観て判断するしかないんですが、こういう「実写化の際にキャラの性別が改変される事例」っていうのは割と多いんですよねぇ。

例えば、2009年に藤原竜也さん主演で実写映画化されたカイジ 人生逆転ゲームでは、悪徳金融業者の男:遠藤を天海祐希さんが演じていました。一見ヤクザ風のいかついキャラが、なぜ女性になったのでしょう?

その理由について、監督の佐藤東弥さんは以下のように語っています。

遠藤を女性にしたら面白いんじゃないかという発想は、エピソードの順序を入れ替えることと同じぐらい大きい発明だったと思います。男ばかりの原作も面白いけど、女性にすることで、また違った面白さが出せました。カイジが遠藤をいい人と思ってしまうとか、遠藤がカイジに”男”を感じてしまうとか。

むしろ、遠藤がカイジに一瞬”男”を感じたからこそ、最終的にカイジに賭けてみようと思う説得力が生まれた気がします。男同士が互いを認め合うというのもいいですが、女性だからこそ、カイジの男の部分をより強く感じる。それを観客により分かりやすく伝えられたと思います。

(『カイジ 人生逆転ゲーム』のパンフレットより)

『カイジ』の遠藤(天海祐希)

カイジ』の遠藤(天海祐希

そして、遠藤を演じた天海祐希さんは「原作で男性だったキャラが女性に変わったこと」に関して以下のようにコメントしています。

個人的には、原作の性別を変えるってあまり好きではないんです。なぜかと言うと原作ファンはもちろん、そのキャラクターのファンの方もいらっしゃるはず。アウェーな中で演じなければならなくなるわけですから。だけど、脚本を読ませていただいて、長く続いている力のある原作を、映画用にいい感じに料理してあってすごく面白いと思ったんです。

(中略)

お手洗いでのカイジとのシーンが好きなんですよ。絶対、百戦錬磨で来ているような彼女がカイジと心を交わす。例えば男同士なら、映画でもよくあるじゃないですか。ちょっと背中を洗ったぐらいで兄弟になれる、みたいな。この映画では男と女でもあるかもよって思わせるような、色恋関係なく「人間が人間に人生賭けてみようという瞬間」がすごく粋に描かれていて。私、遠藤凛子、大好きだな(笑)。

(『カイジ 人生逆転ゲーム』のパンフレットより)

ちなみに、原作者の福本伸行先生は「遠藤が女性になったことはどう思いましたか?」という質問に対して、「それは大成功です。男ばかりではむさ苦しいし、女性を入れて良かったと思います。さらに、映画にするために短縮されたストーリーを、天海さんの遠藤が上手くジョイントしてくれた気がします。遠藤がカイジになぜ力を貸すのかも、天海さんだから納得できたんですよ」と答えていました。

僕は原作の『カイジ』を読んでいますが、実写版『カイジ』を観た時も特に違和感を感じることはなく、むしろ「面白い」と思ったんですよね。つまり、この作品では原作改変が「いい方向に働いた」ということなのでしょう。

 

一方、名作アニメ『宇宙戦艦ヤマト』を木村拓哉さん主演のSPACE BATTLESHIP ヤマトとして実写映画化した時も、佐渡先生が女性の船医に変更されていました(あと通信班の相原も女性になっている)。

佐渡先生(高島礼子)

佐渡先生(高島礼子

これに関して山崎貴監督は「女性キャラが増えたのは、現代の軍隊のように女性の乗組員も活躍している設定にしたかったからです」と説明。また、佐渡先生を演じた高島礼子さんは以下のように語っています。

佐渡先生役と聞いた時は、かなりのプレッシャーでした。原作の佐渡先生は一升瓶と大好きなネコを両手に抱えている”親父キャラ”ですから(笑)。それを女性の私が演じることで、ヤマトのコアなファンからは「佐渡先生が違う」と言われるかもしれないという不安もありました。

でも、今はどんどん女性も社会に貢献しつつある世の中ですから、実写化する上で現代を反映させるという、制作の方々の気持ちは伝わりましたし、とても好感を持ったんです。ですから、私はこの映画の佐渡先生を自分なりに演じられたらいいなと思っていました。

SPACE BATTLESHIP ヤマト』のパンフレットより

まぁ実写版『宇宙戦艦ヤマト』に関しては、森雪(黒木メイサ)が戦闘機の敏腕パイロットになっていたり、古代進役の木村拓哉がどう見てもキムタクだったり、他にも問題が色々ありすぎて佐渡先生のことはあまり気にならなかったんですけど(笑)、世間的には割と批判が多かったみたいですねぇ。

 

もう一つ、実写版ライアーゲームもキャラが大きく改変された事例として有名でしょう。

甲斐谷忍先生の原作漫画『LIAR GAME』にはフクナガ(福永)という、ロングヘアでスタイル抜群の”美女”が登場するんですが、実はこの人ニューハーフで、カツラを取ったら丸坊主というかなり特殊なキャラなんですよ。

なので、実写版の監督を務めた松山博昭さんも「最初からキャラを変えるつもりだった」と語っています(以下、「ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ オフィシャルムービーガイド」に掲載されたコメントより)。

実写では原作のままのフクナガを作るのはとても難しいと思ったので、初めから性別を変えるつもりだったんです。無理だと聞いていた鈴木浩介さんのスケジュールが偶然空いたので、お願いすることが出来ました。

鈴木さんとは前に一度一緒にお仕事をさせてもらい、その天才ぶりを知っていたので、『ライアーゲーム』でも何かしらの役をお願いしようと思っていたんですよ。彼の演技はアドリブが非常に多くて、僕が指示した演技はほとんど無いですね(笑)。鈴木さんがいなかったら、全く別の雰囲気の作品になっていたと思います。

原作のフクナガはニューハーフなので実写化されても性別は変わっていませんが、見た目は「マッシュルームカットに派手な衣装」と大きく変わり、性格や言動なども別人のように変化しまくり、原作の要素は全くと言っていいほど残っていません。

『ライアーゲーム』の福永(鈴木浩介)

ライアーゲーム』の福永(鈴木浩介

にもかかわらず、視聴者や観客の評判は割と良かったらしいのですよ(以下、フクナガを演じた鈴木浩介さんの証言より)。

今までやったどの役よりも評判が良かったです。電車に乗っていて、中学生の方々が「あれ、たぶんキノコだよ」「いや違うよ、ヒゲが伸びてるから」とか言ってるのが聞こえてきたり(笑)。この世代の人たちに、楽しんで見てもらってるんだなと感じました。

(『ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ』のパンフレットより)

実写版『ライアーゲーム』に関しては中途半端に原作のキャラに寄せるのではなく、思い切って全く別のキャラに改変したことが功を奏したのかもしれませんねぇ(テンション高めの役者の演技や異常に細かいカット割りや中田ヤスタカの音楽などもヒットした要因でしょう)。

 

というわけで、実写化の際にキャラの性別が変わったり、あるいは原作とは全く異なるキャラに改変された事例は他にもたくさんありますが、必ずしも全ての作品が批判されたわけではなく、ファンから受け入れられたパターンもいくつかあったようです(数で言えば批判の方が多いような気はするけどw)。

性別が改変(あるいはキャラ自体が全く別人に改変)される理由については、「時代の変化に合わせて」とか「原作を忠実に再現することが難しい」とか「芸能事務所の都合」など様々な事情あると思いますが、実写化するのであれば何とかその辺を上手くクリアーして欲しいものですね。

さて今夜放送される実写ドラマ版『ブラック・ジャック』は、果たしてどうなるでしょうか?