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映画『バイオハザードⅣ アフターライフ』ネタバレ感想

本日、日曜洋画劇場にてバイオハザードⅣ アフターライフ』が放映されます。第1作目の『バイオハザード』を撮ったポール・アンダーソン監督が再びメガホンを取ったことでも注目されたシリーズ4作目ですが、ここで一つ注意事項が。実は、ハリウッドにはポール・アンダーソン監督が二人いるのですよ。

一人は本作を撮ったポール・ウィルソン・スコット・アンダーソン(ポール・W・S・アンダーソン)監督。そしてもう一人は、映画評論家たちから「天才」と称され、高い評価を受けているポール・トーマス・アンダーソン監督です。

トーマス・アンダーソン監督の方は、これまで『ブギーナイツ』や『マグノリア』や『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』や『ザ・マスター』といった芸術性の高い作品を制作し、ベルリン国際映画祭カンヌ国際映画祭などで数々の賞を受賞してきました(『ブギーナイツ』のレビューはこちら。『マグノリア』のレビューはこちらです)。

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一方のポール・W・S・アンダーソン監督は、『バイオハザード』の他に『モータル・コンバット』や『イベント・ホライゾン』や『デス・レース』など、見事なまでに芸術性皆無のB級路線をひたすら貫き、またゲーム好きであることからも完全にオタク監督と見なされています。ジャンル映画ばかりを好んで撮り続けるその姿勢に、映画ファンからは「ダメな方のポール・アンダーソン」と揶揄され、もちろん映画祭で賞をもらったことなど一度もありません。
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以前、『バイオハザード2』のオファーを断った時には「ついにダメな方のアンダーソンが芸術性に目覚めたか!?」と騒がれたものの、大好きな『エイリアンVSプレデター』を撮るためだったということが分かって「やっぱりな」と失笑。しかし、一部のマニアからは「さすが俺たちのアンダーソンや!」と全くブレない強固なスタンスが逆に賞賛されました。というわけで、本日はそんな”ダメな方のアンダーソン”が撮った映画の感想です。



■あらすじ『前作より数年後。アンブレラ社は東京に地下要塞を築き、アルバート・ウェスカー議長の指示の下で実験を繰り返していた。その地下要塞を、アリスが自身のクローンたちと共に襲撃、壊滅的なダメージを与える。ウェスカーは地下要塞をあっさり見限り飛行機で一人逃亡、予め仕掛けていた核爆弾を爆破。東京は地下要塞ごと壊滅した。ウェスカーは勝利を確信するが、オリジナルのアリスは生き延びてウェスカーと同じ飛行機の中に。アリスはウェスカーを追い詰めるが、不意打ちを受けて取り逃がしてしまう。その後、アリスはアラスカにあるという感染が及んでいない安息の地「アルカディア」を目指す。しかし、アラスカには人々の姿はなく、先にアルカディアに向かったはずのクレア・レッドフィールドに出会う。クレアの胸には蜘蛛型の奇妙なデバイスが付いており、アリスはそれを除去。意識を取り戻したクレアは記憶喪失になっており、自分の名前さえ覚えていなかった。アリスとクレアは他の生存者を求め飛行機でロサンゼルスに向う。すると、おびただしい数のアンデッドに囲まれた刑務所の屋上に生存者を発見。果たして、アリス達は無事に刑務所を脱出し、アルカディアにたどり着けるのか!?』



映画『バイオハザードⅣ アフターライフ』は3D版を当時劇場で観たんですけど、結論から言ってしまうとショボい内容でした(泣)。シリーズ物の映画の場合、続編が作られる毎にクオリティが下がってしまうのはある程度仕方のないことなんですが、それにしても本作の劣化具合はちょっと限度を超えています。

僕は元々、原作のゲームが好きだったので1作目の『バイオハザード』も劇場で鑑賞しました。「ゲームを原作とした映画にはロクなものがない」というのが業界の常識となっている中で、映画版『バイオハザード』は想定外に良く出来ており、他のホラー映画と比較しても遜色ないクオリティでファンを狂喜させたのです。

監督が変わった『2』も(色々と言いたい事はありますけど)、まあどうにか許せるレベルではないかと。『3』はさすがに、「これはちょっといかがなものか?」と思うような厳しい内容でしたが、それでもアクションホラーとして最低限の責務を果たそうとしている姿勢だけは見受けられました。

しかし『バイオハザードⅣ』には、「面白い映画を作ってやるぜ!」というポリシーのようなものが微塵も感じられません。シナリオも、「何をどうしたらこんなにつまらないストーリーを思いつけるのだろう?」と感心するぐらいに中身が無い。監督は1作目のポール・アンダーソンが再び登板しているにもかかわらず、面白さのレベルが『1』に遠く及ばないというのはどういうことなのでしょうか?

強いて良いところを挙げるなら、ゲーム版バイオのファンにとってお馴染みのキャラクターが登場して、ゲームと同じシーンをそっくりに再現してくれる点ですね。その再現度は見事です。しかし、「まるで映画のようなゲームだ!」という表現は褒め言葉として良く聞きますが、元々ゲームだったものに対して、「ゲームのような映画だ!」っていうのはどうなんでしょう?本末転倒な気がしてなりませんが。

一方、「ゲームの事を何も知らない単なるホラー映画ファン」が観た場合はどうなるのかと言うと、もはや絶望的に見所がありません。なぜなら、全然怖くないからです(そもそもゾンビがあまり出てこない)。僕は大の怖がりなのですが、そんな僕でさえ「ここまで怖くないホラー映画があっていいのか?」と驚愕したくらいですから。

肝心のアクションシーンに関しては、まあ可も無く不可も無くといった感じで「普通」でした。でも「本作ならではの凄いアクション」が無いのが致命的で、10年以上前に流行った『マトリックス』のバレットタイムやスローモーションを立体で見せているだけ、という印象に止まっています。なぜ、今更マトリックスなの?どうせパクるなら、最新の映画をパクればいいのに。とにかくもう、何もかもが残念な映画ですよ、トホホ。

また、今回は3Dなので”立体映像”としての見せ場は至る所に仕掛けてあるんですけど、それで映画が面白くなっているかと言えば、そんな様子も見当たらず。本作唯一のアドバンテージが”3D”なのだから、もっとガンガン色んなものを飛び出させれば「観る価値」もそれなりに上がったのではないかなあと思うんですけどね。

例えば、フルCGアニメの『ベオウルフ』なんかは「手を伸ばせば届くんじゃないの?」と錯覚するぐらい立体感を強調していましたが、ハッタリを効かすのであれば思い切り派手にやらないと(特に、ホラーのように「驚かせてナンボ」の映画の場合は)。『アバター』や『カールじいさん』などは3Dの方向性が違うので”飛び出す効果”よりも”奥行き感”の方に注力していましたが、本作は潔く”見世物”としての面白さを追求した方が良かったんじゃないかと思いました。

ちなみに、この映画には歌手の中島美嘉さんが「日本で最初にウイルスに感染してゾンビになってしまう一般人」の役で出演しています。いったいなぜ歌手の中島さんが起用されたのか?その理由についてポール・W・S・アンダーソン監督は以下のようにコメントしていました。

「僕は今回、ゲームの生まれ故郷である東京をどうしても舞台にしたかった。そして、このシリーズのすべての始まりとなる第一感染者を、ハリウッドで役者をしている日系人ではなく、本物の日本人に演じてもらいたかったんだ。もともと、ミラがミカの存在を知っていたし、僕もYouTubeでミカを知っていたんだ。それで、ミカにしようってピンときたんだよ」


中島さんの本業は歌手ですが、映画『NANA』シリーズなどでは女優活動も行っていて、その演技力の高さはハリウッドの監督も認めるほどだったようです。撮影はカナダの映画スタジオに渋谷スクランブル交差点のセットを組んで、全身が凍える極寒の中、雨のシーンのために上から放水しながら行うという厳しいものでしたが、「長時間ずぶ濡れ状態のミカは素晴らしい集中力で役を演じ切ってくれた」とアンダーソン監督もベタ褒めだったらしい。

以下、ネタバレありでツッコミを軽く5ヶ所程(もちろんこれ以外にもツッコミどころは無数にありますが、全部挙げていくときりがないので省略します)。


●物語序盤、前作で強くなりすぎたアリスの超能力を一旦リセットしようと敵が謎の注射を打つが、なぜか直後の飛行機墜落事故にもアリスは全く無傷で生還している。この後の展開でも以前と変わらず大活躍しているため、「むしろ前よりパワーアップしてるのでは?」との疑惑が出るほどだった。

ウェントワース・ミラーが「俺はこの刑務所から脱出する方法を知っているぜ!」と言った時、「体に入れ墨を彫っているのか?」と思った観客は僕だけではないはず(『プリズン・ブレイク』繋がりでw)。

●アリスとクレアはどんなに極限状態に陥ってもメイクだけは常に完璧でサバイバル感がゼロ。ポール・アンダーソン監督は「作品のリアリティ」よりも「自分の嫁さんを綺麗に撮る事」の方を優先しているとしか思えない。

●あの船って、内部構造に比べて外観が妙に小さく見えるんだけど気のせいだろうか?

●ラストシーンを観た人の多くは、エンドロールの途中でチラっと登場してる謎の女性兵士を見て「あの女誰やねん?」と思ったに違いない。彼女は『バイオハザード2』でアリスと一緒に活躍していたジル・バレンタインなんだけど、髪型も髪の色も『2』と全然違うから気付かないよ!この変更はゲーム版の『バイオ5』に準じている思われるが、ゲームをやらない人にとっては全く意味不明なキャラに成り果てているのが残念すぎる(雰囲気変わり過ぎだろ!)。

もう一つ気になったのが銃の扱い方。1作目でアリスは、ベレッタM92FSアイノックス(シルバーステンモデル)、スプリングフィールド1911、SW M5906などを使用していました。2作目では、パラ・オーディナンスP14、H&K MP5K、モスバーグM590など、3作目はパラ・オーディナンスLDA、モスバーグ、ウージーなどを使用。

で、本作ではS&W社製の超強力大型マグナム・リボルバー(Xフレーム)モデル460Vを2挺拳銃で使っています。「なんで今更リボルバー?」という疑問はさておき、気になったのは片方ずつの手に銃を持って構えるシーン。2挺拳銃は今までにもあったんだけど、今回は銃が重いので最強の女性を演じているのに両腕がプルプルと震えているんですよ。これはアカンでしょ?

元々アリスは”銃火器の扱いに長けた特殊工作員”という設定なので、『1』〜『3』では見事なガンアクションを披露してくれました。しかし、今回は不可解な銃のチョイスも含めて、とてもエキスパートには見えません。銃を持つ手がブルブルと震えているシーンなどは、ゾンビが怖くて震えているように見えてしまい、キャラクター設定にまで支障をきたしている始末。これは完全に演出ミスですよ(なぜNGにしなかったんだろう?)

というわけで、『バイオハザードⅣ アフターライフ』はあまりオススメできません。しかも、物語はこれで終わらず、更に『バイオハザードⅤ』へ続く!的なオチになっているのだから困ったもんだ(『バイオハザードⅤ』のオープニングは本作のラストシーンからそのまま始まる)。いったいどこまで引っ張るつもりなんでしょうか?頼むから早く完結させてくれ!


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