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『機動警察パトレイバー2 the Movie』について色々解説してみる(「後藤のセリフ」「ヘルハウンド」「飛行船」など)

機動警察パトレイバー2 the Movie

機動警察パトレイバー2 the Movie


どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

さて先日より、押井守監督の機動警察パトレイバー2 the Movieに関する記事を書いてるんですけど、予想以上に長くなってしまってすいません(汗)。というわけで本日はその続きです(前回の記事を読んでない方はこちらをどうぞ↓)。

type-r.hatenablog.com

前回は、「柘植と南雲の密会現場に荒川と後藤が現れて柘植が去って行く」という辺りまで書いたので、今回はその後の出来事について解説してみますよ(なお、言うまでもなくネタバレしているため未見の方はご注意ください)。


●ヘル・ハウンド襲来

機動警察パトレイバー2 the Movie

機動警察パトレイバー2 the Movie

後藤たちが柘植を取り逃がしてから数時間後、20mmガトリング砲やTOW-Ⅱ対戦車ミサイル、ロケット弾などを装備した3機の攻撃ヘリ:AH-88が次々と埋立て地から飛び立ちました。その獰猛な姿はまさに「冥府の犬(ヘル・ハウンド)」との呼び名に相応しく、東京の街を恐怖のどん底へ叩き込みます。

ここからは、ついに柘植とその仲間たちが行動を開始し、ヘリコプターによる激しいアクションが描かれるわけですが、押井監督は戦車と同じくヘリコプターも大好きで、「映画にヘリを登場させることのメリット」について以下のように語っています。

飛行機は水平にしか飛ばないので、フォローショットか、あるいはインにするかアウトにするか、手前に来るか奥に行くか。飛行機のカメラアングルってこれだけしかない。あとはコックピットに寄ってみたり、コックピットから撮ってみたり。コックピットあおりでパイロットを撮るとか。これ以上のカットはないんですよ。

それに比べるとヘリにはたくさんの可能性がある。水平飛行はもちろん、垂直移動、そしてホバリング。しかも密閉された空間でドラマが発生しやすいし、コックピットを舞台にすれば向き合わずに同じ方向を見て芝居ができるなど、本当に色んなメリットがある。まさにヘリは特権的なガジェットなんですよ。

(「シネマの神は細部に宿る」より)

さすがヘリ好きの押井監督だけあって、ヘル・ハウンドが東京を蹂躙するシーンは圧巻のド迫力!アニメでここまでヘリコプターのアクションを緻密に描いた作品はなかなかないでしょう。

ちなみに押井監督は「ヘリコプター映画」の代表作としてジョン・バダム監督のブルーサンダーを挙げており、『パトレイバー』も影響を受けたことを認めています(非常に面白いので興味がある方はぜひご覧ください)。

●黄色い飛行船

機動警察パトレイバー2 the Movie

機動警察パトレイバー2 the Movie

ヘル・ハウンドが動き出すのとほぼ同時に、松井刑事が監禁されていた建物からも3機の飛行船が飛び立ちました。

その胴体には巨大な文字で「Ultima Ratio」と書かれており、「究極の理性」や「最終的な手段」という意味だそうです。

”黄色い飛行船”といえば、1989年にリリースされたOVA『御先祖様万々歳!!』にも黄色い飛行船が登場していることから、押井監督の中では何らかのこだわりがありそうですね。

●電話をかける松井

機動警察パトレイバー2 the Movie

機動警察パトレイバー2 the Movie

鉄パイプを担いだまま電話をかけている松井刑事。その側にはフロントガラスが粉々に砕けた自動車と、不貞腐れた表情を浮かべるパンチパーマの男が…。

まぁ、何が起きたのかだいたい想像は付きますけど(笑)、このシーンでは全く絵が動いてないんですよね。その理由を押井監督は以下のように説明しています。

これはギャグという意味合いよりは、むしろ小状況(松井の強引な手段)の説明によって、大状況(テロの決起)の成り行きを妨害しないための配慮で、必要十分な情報量が求められているのですから、動画による表現は最小限にとどめるべきで、構図に全てを語らせる典型例でもあります。

(「Methods パトレイバー2演出ノート」より)

●後藤は何を喋ってる?

機動警察パトレイバー2 the Movie

機動警察パトレイバー2 the Movie

警視庁へ呼び出された後藤さんと南雲さん。このシーンでは後藤さんが小声で何かブツブツとつぶやいてるんですが、声が小さすぎてセリフがよく聞こえないんですよね。一体なにを喋っているのか?

実はこの時、後藤さんはこれから取るべき行動や、そのために必要な人員の手配など、ありとあらゆる複雑な段取りを頭の中でシミュレーションしていたのです。

しかし、それらが具体的なセリフとして台本に書かれていたわけではありません。声優の大林隆介さんはアドリブで何かを喋っていたようですが、必要なのは「後藤が何かを考えながらボソボソ呟いている」という描写であってセリフの内容は(押井監督にとっては)どうでもいいのです。

そのため、このシーンはわざと聞き取れないレベルの音量に調整してあり、どんなにボリュームを上げても解読は不可能だそうです(だとしても気になりますねぇ…)。

●特車2課、壊滅

機動警察パトレイバー2 the Movie

機動警察パトレイバー2 the Movie

突如、特車2課に現れたヘル・ハウンドの凄まじい機銃掃射によって、ハンガーに格納してあった新型レイバー:ヴァリアントが次々と破壊されるシーン(せっかく出渕裕さんがデザインしたのに、活躍の場もなくあっけなく壊されてしまったw)。

ちなみに、このシーンを描いたのは『マシンロボ クロノスの大逆襲』でキャラクターデザインを務めた羽原信義さんですが、「初めて完成フィルムを見た時の落ち込みっぷりはハンパなかった」とのことで、本人的にはあまり納得していない模様(迫力あるいいシーンだと思うんですけど…)。

なお余談ですが、羽原信義さんといえば新人アニメーター時代のエピソードが有名で、超時空要塞マクロスの第1話と2話の動画を担当することになったものの、その時点ではまだバルキリーの設定が完成しておらず、渡されたのはガウォーク形態の原画とバトロイド形態の原画だけ(つまり変形の過程が分からない!)。

他のアニメーターたちは「これでどうやって動画を描けばいいんだ?」と頭を抱えていましたが、それを見た羽原さんは「じゃあ僕が中割りのアタリを描いてあげるよ」と言って設定もなしで見事にガウォークからバトロイドへと変形させてしまったのです。

すると上司から「お前、メカデザイナーになれ!」と言われて給料もアップ。以降、『特装機兵ドルバック』や『魔境外伝レディウス』などメカデザイナーとして様々な作品に参加しました(ちなみにメカデザインのギャラは8万円でしたが「当時の僕としては破格の額だった」とのこと)。

そんな羽原さんは、現在ロボットアニメ『境界戦機』の監督として活躍中。「3DCG全盛の時代にあえて手描きメカにこだわった」「手描き独特のけれんみや、格好いいポーズで今までにないアニメを目指す」とコメントしています。

●怒りの後藤

機動警察パトレイバー2 the Movie

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「だから!遅過ぎたと言ってるんだ!」

警視庁の上層部に愛想が尽き果て、怒りをぶつける後藤さん。『パト2』の中でも特に印象的な名シーンですが、このカットに対して押井監督は以下のようにコメント。

犬のように鼻にシワを寄せて怒る男の顔が見たかった…と、そういう理由で作ったカットです。それだけです。

(「Methods パトレイバー2演出ノート」より)

えええ…

●橋を壊す意味

機動警察パトレイバー2 the Movie

機動警察パトレイバー2 the Movie

東京上空に飛来した3機のヘル・ハウンドは、NHKやNTTなどの通信施設を攻撃しつつ、勝鬨橋・佃大橋・永代橋隅田川大橋などを次々と破壊していきます。

押井監督は特に「橋を破壊する行為」に強いこだわりを持っていたらしく、中でも”日本橋”の壊し方がちょっと奇妙で、上に高速道路があるにもかかわらず、それを避けてわざわざ下の橋だけをミサイルで狙い撃ちしているのですよ。一体なぜ?

あれは”橋の側の物語”の鬼門なんです。本当なら上の高速道路を落としちゃった方がいいんだけど、わざわざその下の日本橋を落としている。でも見ている間は勢いで気にならないはずですよ。後で考えると「変だな」っていう、そういうシーンはあちこちにあるはずです。

橋を落とすという行為には、戦略的な意味と同時に象徴的な意味がかぶせてある。ほとんどのシークエンスに橋を絡ませてあるんだけど、それはまた鳥と魚の物語とも絡んで、寄生し合っている。日本橋で引っ掛かった人は、たぶん”橋の物語”に気付いてくれるだろうけど…。

(「THIS IS ANIMATION 機動警察パトレイバー2 the Movie」より)

ヘル・ハウンドが壊した日本橋はもともと木造だったのですが、1911年(明治44年)に石造りの二連アーチ橋として作り変えられました。その際、東京の繁栄を願って装飾されたシンボルが「獅子像」と「麒麟像」です(劇中でも大きく描かれている)。

機動警察パトレイバー2 the Movie

機動警察パトレイバー2 the Movie

ところが、1963年(昭和38年)に首都高が建設され、橋の真上を塞いでしまったのです(東京五輪の開催のために用地買収が不要な河川の上を通した…など理由は様々)。これに対して、押井監督は「街の景観が台無しだ!」と不満を抱いているらしい。

どんなに使いづらくても、とにかく街を残そうとするヨーロッパには、ぶっ壊してビルを建てようという発想はありません。数十年単位でころころ景観が変わり、川に高速道路という蓋をかぶせて平然としている東京は、都市の景観に目を向けたことがあるのだろうか?僕は日本橋を何度も描いているけれど、あそこに行くたびに思う。よくこんなもの(高速道路)をかぶせたな、って。都市の景観を尊重する気持ちが少しでもあれば、あんな真似は絶対にできないはずです。

(「中央公論」2020年2月号より)

これを読むと「だったら高速道路をぶっ壊すべきなのでは?」と思うんですが、「橋を落とすという行為には、戦略的な意味と同時に象徴的な意味がかぶせてある」との発言から、敢えてシンボルたる「獅子像」と「麒麟像」(東京の守護)を破壊することで、東京そのものに対する監督(もしくは柘植行人)の憤りを表現しようとしたのかもしれません。

ミニパトで逃げるシーンはウソ?

機動警察パトレイバー2 the Movie

機動警察パトレイバー2 the Movie

警視庁からミニパトに乗って逃走する後藤さんと南雲さん。一見すると特に不自然には見えない構図ですが、押井監督によると「パースがウソ」なんだそうです。

実は、実写映画版(『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』)を撮った際、これと同じ構図を再現しようとしたら、どうしても上手くいかなかったらしい(以下、押井監督の証言)。

これはねぇ、合成部が悩み抜いたんだよ。絶対にパースがウソだから(笑)。そもそもこんな構図では走れないし。「このパトカー、浮いてんのか!?」って(笑)。

(『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦 ディレクターズカット特別版 Blu-ray』のオーディオコメンタリーより)

実写版パトレイバー 首都決戦

実写版パトレイバー 首都決戦

つまり、このシーンはパース的には間違ってるんですが、カッコいいアングルを優先するために敢えてこのように描いていたんですね(なので、実写版では強引にパトカーを地面から浮かせて再現したらしい)。

後藤喜一の策略

機動警察パトレイバー2 the Movie

機動警察パトレイバー2 the Movie

「だが戦力はある。戦力は、まだあるさ」

ミニパトを運転しながら南雲さんの問い掛けに力強く答える後藤さんですが、特車2課を壊滅させられて絶望的な状況の中、どうしてこんなに冷静だったのでしょうか?実は後藤さん、こうなることは予め分かっていたのです(以下、押井監督のコメントより)。

クーデターの時に、新型レイバーを保管している特車2課のハンガーが最初に襲われますが、実は特車2課が攻撃されることは後藤には分かってたんです。分かっていて、敢えてほったらかしにしていた。それを利用するからです。「自分の家を蜂の巣にされて、それでも黙ってるの?」と部下たちを追い込むために。しかも、最終決戦で使うレイバーだけはちゃっかり別の場所に避難させて。

後藤には、別に今の特車2課は必要ないんですよ。特車2課の内実というのは何かっていうと、あのハンガーや新型のレイバーじゃありません。最後の最後になっても逃げないヤツが自分の戦力であり、手持ちであり、部下なんです。後藤は「2課は壊滅したけど戦力はまだある」と言うんですが、むしろあいつらを戦力にするためには、2課を壊滅させて追い込むしかなかったんです。

もしあのハンガーが丸ごと無事だったら、「じゃあ僕らは待機してましょう」という話にしかなりません。ハンガーはなくなったし、新型のレイバーは蜂の巣、隊長はお尋ね者(エレベーター内で警察官を暴行して逃走中)だし…という状況の中で、「じゃあアンタらはどうする?」と決断を迫る。これが後藤のやり方なんです。

(「仕事に必要なことはすべて映画で学べる」より)

えええ!?後藤さんは柘植を捕まえるためにわざと特車2課を壊滅させて、野明や遊馬たちを追い込んでいたのか!?なんという策略家…というか、後藤さんって意外とアコギな人だったんですねぇ(笑)。なお、押井監督は後藤のこういうやり方について、以下のように語っています。

後藤って、そういう意味で言えば、結構悪い奴なんだよ。でも悪い部分がないとキャラクターとして魅力が出ない。警察官だからこそ、そういう悪い部分がないと、結局は組織の人間にしかならないから。

でも悪い奴なんだけど、モラルはきちんとある奴なんだよね。むしろ悪い奴だからこそモラルを持つっていうさ。「命令も強制も嫌いだから」ってセリフだよね。それは実際その通りなんだよ。

じゃあ権威も使わず権力も振るわずに、どうやって人を動かすのか?っていったら、そこらへんがね、実は特車2課のドラマの全てと言っていい。何かというと「騙す」ってことだけどね。騙すんだけど嘘はつかないっていう。これが一番大事なところ。嘘はついちゃダメ。だけど「聞かれなかったから言わなかった」ってのは、これは嘘じゃない。

「だってお前聞かなかったじゃない」っていう。「きったねぇ~!」って話だけどさ。そうやって結果的に選択肢をなくして部下を追い込んでくる上司。「もう、やるしかないんじゃないの?嫌ならいいけど」ってやつだよね。

(「後藤喜一×ぴあ」より)

というわけで本日はここまでです。続きはまた後日書きたいと思いますので、今しばらくお待ちください。

※過去の記事はこちらからどうぞ↓

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『トップガン』はこうして生まれた

トップガン

トップガン


どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

さて本日、土曜プレミアムにて映画トップガンが放送されます。1986年に公開された本作は、全米興行成績1位の大ヒットを記録し、当時まだ24歳だったトム・クルーズがブレイクするきっかけにもなりました。

なお、監督はトニー・スコット、出演者はトム・クルーズの他にケリー・マクギリス、ヴァル・キルマーメグ・ライアントム・スケリットマイケル・アイアンサイドティム・ロビンスなど、豪華なメンバーが揃っていますが、製作が決まるまでは様々な苦労があった模様。

というわけで本日は、映画『トップガン』が誕生するまでのエピソードをご紹介しますよ。

 

トップガン』のプロデューサーを務めたジェリー・ブラッカイマーといえば、『アルマゲドン』や『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズなど数々の話題作を世に送り出してきたヒットメーカーとして知られています。

トップガン』を手掛ける前は、アイリーン・キャラが歌う主題歌「ホワット・ア・フィーリング」もメチャクチャ流行った『フラッシュダンス』(1983年)や、エディ・マーフィ主演のアクション・コメディ『ビバリーヒルズ・コップ』(1984年)などを大ヒットさせていました。

そんな頃、次回作の企画を考えていたブラッカイマーは、とある雑誌の記事に目を付けたのです。それは、アメリカ海軍航空学校で訓練を受けているパイロットたちを取材した記事で、「こんな養成所があるとは知らなかった」と興味津々。

「次回作のヒントになるかも…」と感じたブラッカイマーはその雑誌を『フラッシュダンス』や『ビバリーヒルズ・コップ』で一緒に仕事をしたドン・シンプソンに見せました。

するとシンプソンは中身を読まずに「レイバンのサングラスをかけたパイロットがF-14戦闘機の側に立つカッコいい表紙」を見ただけで「これはヒットするぞ!」と直感し、なんとその場で雑誌社に電話して映画化権を買ってしまったのです。

さて、とりあえず映画のネタは見つけたものの、どんなストーリーになるのかこの時点では全く決まっていません。そこでブラッカイマーとシンプソンは色んな脚本家に記事を見せてシナリオを書かせようとしましたが、「そんな記事だけで脚本は書けない」と断られてしまいます。

散々探した末にようやくシナリオライターに決まったのは、まだ脚本を書いたことがないジム・キャッシュジャック・エップスでした(ジャックはたまたま飛行免許を持っていたため採用されたらしい)。

ジャック・エップスは当時のことを「非常に興味深い内容だし、戦闘機に乗れる可能性もあったので是非やりたかった」と振り返り、ブラッカイマーから雑誌を見せられて「パイロットたちの楽し気な姿が映っていた。それを見た瞬間、頭の中に作品のイメージが湧き上がってきたんだ」と語っています。

しかし、ジャック自身は実際の海軍航空学校がどういうものなのか全く知らなかったので、取材することになりました。

まず、トップガンで教官を務めていたピーター・ペティグルーに協力してもらい、訓練の内容や詳しい状況をひたすら勉強。次に現場へ行って本物の戦闘機に乗るなど、様々なことを体験したそうです(以下、ジャックのコメントより)。

戦闘機に乗ると体に凄まじい加速度がかかる。6~7Gの世界は壮絶で、4トンのゾウが膝に乗るようなものだ。そんな想像を絶する過酷な状況で、彼らはフライトをスポーツとしても楽しんでいる。その経験から僕は映画の中で「スポーツを楽しむ男たち」を描こうと思ったんだ。

まさにこれが『トップガン』の基本コンセプトになったのです。劇中では戦闘機同士の激しいドッグファイトもありますが、本作は決して「戦争映画」ではありません。若いパイロットが悩み傷付き、様々な経験を経て逞しく成長する姿を描いた「スポーツ青春映画」なのです。

ただ、そのコンセプトを映画会社に理解してもらうのには時間がかかりました(監督をオファーされたトニー・スコットも最初はよく理解できず、「『地獄の黙示録』みたいな作品かと思ったら全く違った」「一体どんな映画なんだ?」と困惑したらしい)。

また、本作の撮影にはアメリカ海軍の協力が不可欠ですが、そちらの説得にも時間がかかったようです。

技術指導を務めたピーター・ペティグルーは脚本を読んでトップガンには”優勝の盾”なんて存在しない」パイロットは重圧の中で常に死の危険と戦っている。盾など無縁の世界だ」と指摘。

しかし脚本を書いたジャック・エップスは「盾は究極のライセンスで、頂点を極めた証としてどうしても使いたかった。たとえ事実とは違っても、ストーリーを盛り上げるためには必要なんだよ」と主張。

トップガン

トップガン(優勝の盾)

こうした「間違った情報を広めたくない」という海軍側の考えと「面白いドラマを作りたい」という制作側の思いが何度も衝突し、なかなかストーリーが完成しなかったのです。中でも特に問題になったのは「事故のシーン」でした。

主人公のマーヴェリック(トム・クルーズ)が飛行訓練中に不慮の事故で相棒のグース(アンソニー・エドワーズ)を失う…というシーンは、当初の脚本では「戦闘機同士の接触事故」となっていました。

ところが、これに対して海軍から「そんな事故は起こり得ない」とクレームが入ったのです。ジャック・エップスは「この事故を乗り越えることで主人公は精神的に成長する。とても重要なシーンだ」と必死で説明するものの、「このままでは協力できない」と難色を示す海軍。

そこでピーター・ペティグルーは過去に海軍で実際に起きた事故を調べ、映画に使えそうなシチュエーションを探そうとしました。

そんな時、「ふと僕の友人の事故を思い出した。ジェット後流に巻き込まれた戦闘機がフラットスピンしたんだ。あれが使えるかも…と」。こうして「F-14が空中でスピンする」というシーンが生まれ、無事に海軍の協力を得ることに成功したのです。

※ちなみに、こういう揉め事は日本の映画でもよくあるらしく、航空自衛隊に協力を依頼した際、脚本に「戦闘機が墜落してパイロットが死亡する」というシーンがあった場合は「書き直してください」と言われるそうです(どこの国でもこういう描写はナーバスになるみたいですね)。

トップガン

トップガン


というわけで、『トップガン』の製作が決まるまでの経緯をざっくりご紹介しましたが、実は撮影が始まってからも色んなアクシデントが起こりまくり!

オープニングシーンを撮影していたら急に空母がUターンを始めたため、トニー・スコットが艦長に「船を元の位置に戻してくれ!」と要求。ところが、「針路変更するには2万5000ドルかかる」と言われ、どうしても絶好のポジションで撮りたかった監督は、なんと自腹で2万5000ドルを払って空母の針路を変えさせたとか。

また、F-14が管制塔をかすめて飛ぶシーンを撮影するために、限界高度スレスレの超低空飛行で飛んだら管制塔の窓ガラスが全部割れてしまい、後でパイロットがメチャクチャ怒られたとか、面白エピソードが満載なので機会があればまたご紹介したいと思います。

 

トップガン (字幕版)

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トップガン(吹替版)

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