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映画『47RONIN』は本当に駄作だったのか?ネタバレ感想


■あらすじ『将軍・徳川綱吉が治める鎖国時代の日本。かつて赤穂藩藩主・浅野内匠頭に命を救われた混血の異人カイは、浅野の娘ミカと心を通わしつつも、浅野への忠義を誓い、領地の片隅で一人静かに暮らしていた。そんな中、隣国の藩主・吉良上野介は、謎の妖術使いミヅキと共に奸計を巡らせ、まんまとお家取り潰しに追い込むことに成功。浅野の忠臣・大石内蔵助はじめ家臣たちは浪人となり、四散してしまう。一年後、大石は出島で奴隷となっていたカイを助け出すと、復讐への助太刀を要請する。こうして大石率いるわずか47人の赤穂浪士は、ついに吉良への仇討ちへと立ち上がるのだった!ハリウッドが日本の古典復讐譚“忠臣蔵”をモチーフに、日米の豪華キャストの共演で描く異色のアクション・ファンタジー・エンタテインメント超大作!』



本日、WOWOWシネマ『47RONIN』が放映されます。ハリウッドの大作映画としてキアヌ・リーブス真田広之浅野忠信菊池凛子柴咲コウ赤西仁など豪華な出演者を揃えて制作された本作は、諸般の事情で公開が何度も延期され、やっと公開されたと思ったら全米で初登場9位の大コケ。

世界最速で封切られた日本でも「劇場がガラガラだ」とツイッターで話題になるぐらいヒットせず、大変な赤字を叩き出してしまいました。製作費の182億円を上回るどころか、宣伝に掛けた費用を回収するだけで精一杯という惨憺たる有様だったそうです。

当然ながら観客の評価も批判だらけで、「これのどこが忠臣蔵なんだ?」、「時代劇じゃなくてファンタジー」、「どう見ても舞台が中国だろ!」など評判は最悪。

…とまぁ、完全にトンデモ映画の烙印を押されてしまった問題作なんですが、実際に観てみたら「あれ?意外と時代劇っぽくなってるじゃん」みたいな感じで、「観るに堪えない」というほどではありませんでした。

もちろんトンデモ映画であることは疑いようがなく、「こんな日本は有り得ない!」等のツッコミどころは無数にあるんですけど、そもそも本作はそういうコンセプトで作られた映画なので、そこに突っ込んでもあまり意味がないと思われます。

全体的に「外人が主人公のファンタジー時代劇」として観れば、まあチャンバラシーンもそれなりに頑張っているし、魔物と戦うシーンもそれなりに良く出来ているし、決して”なにもかもが致命的にひどい”というわけではありません。

特に良かったのは、着物を着て日本刀を構えるキアヌ・リーブスの姿が意外とサマになっていたこと。時代劇の登場人物を演じるにおいて、これは結構重要な要素です。普通、外国人が着物を着たらチグハグな印象が目立って全くサマになりませんからね。『ラストサムライ』のトム・クルーズも良かったんですが、キアヌの侍ぶりもなかなか堂に入っていました。

ではなぜ、この二人だけ着物が似合うのかと言えば、足が短いからなんです(笑)。他のハリウッド俳優に比べて背が低いトム・クルーズと同じく、キアヌ・リーブスも『マトリックス』の頃から足の短さを指摘されていました。

もともと日本人の体型に合わせて作られた着物を着こなすには、日本人の体型に近い方が有利なわけで。つまり、トムとキアヌの”絶妙な胴長短足ぶり”が、時代劇の撮影において奇跡のマッチング効果を果たしていたというわけです(笑)。

さらに、本作を観ていてそれほど嫌な感じがしなかったのは、日本の武士道精神をきちんとリスペクトしているからだと思います。主君を失い浪人となったかつての武士たちが、死んだ主君の仇を討つべく決起する姿を”崇高なもの”として描いている。

そして見事に仇を討った後は、「潔く死を受け入れ切腹を果たす」という結末に至るまで、意図的に史実を改変することなく、丁寧に”日本人の美意識”を描写しているところが感心しました(普通のハリウッド映画なら、絶対に”主人公が助かってハッピーエンド”ですからね)。

では、『47RONIN』の本質的な問題点は何か?といえば、「普通に話が面白くない」という点でしょう。例えば、浅野内匠頭吉良上野介を斬り付けるシーンは、菊地凛子演じるミヅキが「妖術を使って浅野を操った」となっていますが、劇中ではそれを見破る場面が無いため、カイたちの”ミヅキと吉良に敵対する動機”が不鮮明なままになっています。

また、『忠臣蔵』の本来の主人公は大石内蔵助なのに、キアヌ・リーブス演じる架空の人物:カイを主役に据えたことで、ドラマを牽引するキャラクターのポジションが曖昧になってしまいました(大石を中心にドラマを構成した方が良かったのでは?)。

何よりも”娯楽映画”としてのカタルシスが圧倒的に足りません。全身を鎧で包んだ巨大な武者は、凄まじい強さで主人公たちを苦しめますが、最後は実にあっけなくやられてしまいます。ラスボスの吉良上野介も、何か特別な能力を持っているわけでもなく、大石内蔵助との直接対決で完敗。

つまり、本来なら苦労してやっつけるはずの敵陣営が、あまりにも弱すぎるのですよ。これはエンタメとして致命的でしょう(特にコイツは本当に肩透かしだったw↓)。

さらに日本人の目から見ると、あからさまに中国風の舞台背景で違和感バリバリなのはまあいいとして、アメリカ人の目から見ても「これは日本じゃないだろう」と映ってしまったのが非常にマズいのではないかと。

せめて富士山をドーンと見せるとか、あるいは忍者を活躍させるとか(もちろん『忠臣蔵』に忍者は出て来ませんがw)、海外市場向けに”分かりやすい日本観”をアレンジして入れておけば、もう少しウケが良かったんじゃないのかなあと思ったり。

そういう”アメリカ人の目を意識した作劇”って意味では、『ラストサムライ』の方がずっと良く出来ていましたね(富士山は出てくるし忍者は出てくるしw)。というわけで、『47RONIN』は日本人が観ても外国人が観ても「もう少しどうにかなっただろうに…」としか言いようの無い、まさに”誰得”な映画になっているところが非常に残念だったと思います。


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