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ケイト・ベッキンセイル主演『アンダーワールド』映画感想


■あらすじ『闇夜に身を潜めながら、数百年に渡る死闘を繰り広げてきたヴァンパイア=吸血鬼とライカン=狼男の両種族。ヴァンパイアの女戦士・セリーン(ケイト・ベッキンセイル)は、ライカン族がマイケル(スコット・スピードマン)という人間の医師を執拗に追っていることに気付く。セリーンはマイケルを助け出し、一族の屋敷に連れ帰った。人間との接触を禁じる掟に背いたセリーンは、眠れる指導者・ビクター(ビル・ナイ)の指示を仰ぐべく、その封印を解く。それは両種族の秘められた過去を辿る、壮大な物語の幕開けだった!『キル・ビル』のユマ・サーマン、『トゥームレイダー』のアンジェリーナ・ジョリーと、闘う女たちが脚光を浴びているが、本作でケイト・ベッキンセイルが演じるのは、それらとはまた一味違う可憐でノーブルなヒロインだ。黒のレザースーツに包まれた肢体は戦士と言うにはいかにも華奢で、ニ挺拳銃を手に闘う姿は少女のように儚い。そうしたミスマッチがかえって彼女の美しさを強調し、孤高のバトル・ディーバを誕生させた。監督はミュージックビデオ界で“魔術師”の異名をとるレン・ワイズマン。ビジュアル重視の作品では、スタイルに没頭する余り肝心の物語が消化不良となる例も見受けられるが、本作は黒を基調とした“ダークな世界観”と、異端の種族との長きに渡る因縁を描く“大河的ドラマ性”を見事に融合させている。クライマックスの意外な展開も見応えあり』



先日、WOWOWで『アンダーワールド』が放映されたので書いておく。本作は、2003年11月の日本公開前後にテレビの映画紹介番組で何度か取り上げられ、そこそこ話題になった作品だ。ビジュアルが印象的なので、DVDのジャケットを見て「ああ、あの映画か」と思い出す人も多いだろう。

監督のレン・ワイズマンは『インデペンデンス・デイ』や『メン・イン・ブラック』、『GODZILLA/ゴジラ』のプロダクション・デザインを担当していた人物で、MTVのミュージッククリップや、各種CF制作にも携わり、最近では『ダイ・ハード4.0』やリメイク版『トータルリコール』など、大作映画をまかされることも多くなったベテラン・クリエイターだ。“映像の魔術師”と呼ばれ、この映画が初の長編監督作品となっている。

一方、主演のケイト・ベッキンセイルは『パール・ハーバー』や『セレンディピティ』で注目を集めた実力派で、正直なところ監督よりも知名度は遥かに高い。事実、公開前は「ケイト・ベッキンセイルがヴァンパイア役に」とか、「ケイト・ベッキンセイルがアクションにチャレンジ」などという紹介のされ方が多かった。映画の内容もさることながら、アクション俳優というイメージが薄い彼女が、どんな活躍を見せてくれるのかもポイントの一つだろう。

ブラックレザーのロングコートに身を包み、大きな月をバックに立つ彼女のビジュアルは、他の作品と比べても一際カッコ良くて目を引く。ただし、ベッキンセイルはこの後『ヴァン・ヘルシング』に出演し、すっかり「ヴァンパイアと狼男の映画に良く出る女優さん」というイメージが定着してしまったのは困った問題かもしれないが(笑)。

さて、本作の白眉は何と言ってもオープニング直後。雨が降りしきる街並みを見下ろすように、ビルの屋上で静かに佇む女戦士セリーン。彼女のモノローグでこの物語は幕を開ける。と、いきなり屋上から飛び降りるセリーン。地面に着地すると何事も無かったかのように歩き出す(カッコいい!)。そして、地下鉄の構内に移動した瞬間からいきなり始まる大銃撃戦!冒頭から観る者の心を釘付けにして離さない!

ヴァンパイアを倒すには、日の光、ニンニク、聖水、十字架と相場が決まっている。また、ライカンの弱点は銀だ。だが、映画を見ると両者は普通の銃でドカドカと撃ち合っているように見える。「不老不死のヴァンパイアが拳銃なんかで死ぬのか?」という疑問が頭をよぎるが、よく見ると弾丸が違う。

ヴァンパイアは銀色、ライカンは青白く光る奇妙な弾丸を使用している。 ヴァンパイアが使っているのは銀で作られた弾丸で、ライカンにダメージを与えられる特別製という設定らしい(後半には、硫酸銀をカプセルに入れた弾丸まで登場する)。

一方、ライカンが使う青白く光る弾丸は、なんと「紫外線弾」だそうだ。つまり太陽の代わりである。「そんなバカな!」と言いたくなるような設定だが、どこかで見覚えのある人もいるだろう。真っ先に連想するのはウェズリー・スナイプスのヒット作『ブレイド』シリーズだが、日本のアニメと漫画にも、大聖堂の銀十字架錫を溶かして鋳造した弾丸が登場する『ヘルシング』という、良く似た作品がある。

また、黒づくめの女戦士が派手なアクションで銃を撃ちまくり、時折ワイヤーアクションも挿入されると言えば『マトリックス』を連想せざるを得ない。このように「なんかどこかで見たような…」というアイデアや設定が、おもちゃ箱のように詰め込まれているのが『アンダーワールド』である。

ただし、単によくある設定を詰め込んだだけではB級映画になってしまうが、この作品はそうした要素に振り回されず、監督がきちんと表現したい“明確なヴィジュアル・イメージ”を持っているところが素晴らしい。

さすがMTV出身だけあり、BGMの使い方やテンポが良く、出来上がった映像は模倣からオリジナルへの昇華を遂げていると言っても過言ではない。「パクリだろうが何だろうが、カッコイイと思ったものはとことん活用する」というスタイルが小気味良いほど徹底している点が大いに評価できる。

ちなみに、DVDの日本語吹替えでは声優の田中敦子がセリーンを演じており、どこからどう見ても『攻殻機動隊』の草薙素子なのがツボだった(笑)。

また、最大の魅力であるガンアクションも爽快そのもの。登場する銃器はシールズやSWATが使うような最新式のガンばかりで、しかも随所に改造が施されたカスタムガンなのだ。セリーンが愛用するのは、ドイツの名門銃器メーカー、ワルサー社の最新作P99と、ヘッケラー&コッホ社のUSPである。どちらも9mmパラベラム弾を使用し、アメリカ軍特殊部隊やドイツ軍などで制式採用されている名銃だ。

その他、ベレッタM92やデザートイーグルなど、お馴染みの武器に加え、STEYR TMPサブマシンガン、MP5K、M4カービン銃、SPAS12ショットガンなど、未来的なフォルムを持つ銃が大量に選ばれている。

なお、ハンドガンは軒並みフルオート(連射仕様)に改造されており、ロボコップ同様、引き金を引いただけでおびただしい数の弾がスクリーンを飛び交う。 「いったい何発入ってるんだ?」とか、「片手でフルオートなんて手首がぶれて当たらないだろ?つーか、当たってないのに敵が倒れたぞ」とか突っ込み所も満載。

だが、2丁拳銃を下に向けて連射し、体をグルっと回転させ、床を円形に撃ち抜いて下の階に降りる(落ちる)あたりで、細かいことはもうどうでも良くなってくる(『アンダーワールド』のオリジナルかと思いきや、『ネメシス』というSFアクション映画に全く同じシーンが存在する)。まさにやりたい放題のブッ飛びガンアクションにひたすら酔いしれるのみ!音響効果も迫力満点だ。

しかし、この映画の凄い所は「単なるアクション・ホラーではなく、ストーリー的にも非常に見応えがある」という点だろう。最初はありがちだったストーリーは、中盤あたりから大きく変化する。「主人公がヴァンパイアでライカンが悪玉」という単純な図式ではなく、双方にそれぞれ善と悪の側面があり、“戦わなくてはならない理由”が存在しているのだ。

ルシアンの憎悪、ビクターの苦悩、そして何世紀にも渡る争いの元凶とは何か?このあたりをしっかり描くことで物語にグッと厚みを持たせ、悪役も含めてキャラクターへの感情移入度を高めている。

さらに、中世を連想させる大きな屋敷に住み、ゴシック調の豪華な衣装で着飾るヴァンパイア一族と、ジメジメとした地下に隠れて暮らすライカン一族という対比も面白い。ヴァンパイアは怪物でありながら、独特の美学を持った美しい存在として描かれ、彼らが永遠に生きるサイクルも緻密に紹介している。

おまけに、パソコンやケータイを操り、最新式の銃火器で完全武装した彼らは、まさに“ハイテク吸血鬼集団”と呼ぶに相応しいクールさ!こうした背景をストーリーの中に織り込むことで、知的な面白さも含んでいるのだ。

決して「ヴァンパイアが人間の男と恋に落ちて、最終的に愛ですべてが解決」というだけの映画ではない。しっかりと骨のある作品に仕上がっており、まさに掘り出し物と言って良い見事な完成度である。惜しむらくは、クライマックスの戦いが少々あっけなく終わってしまう事だろうか。でも、個人的には『ヴァン・ヘルシング』の250倍ぐらい面白かったなあ(笑)。


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