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ジェット・リー主演『スピリット』映画感想

決算月の猛烈な慌ただしさを潜り抜け、ようやく映画を観て来ましたよ。ジェット・リー久々の新作『SPIRIT』です。リー・ファンは必見!

■あらすじ『病弱だった少年・霍元甲ジェット・リー)は、やがて成長し天津一の格闘家となるが、その傲慢さゆえに多くの恨みを買い、愛する家族に向けられた凶刃によって悲劇のどん底へと突き落とされてしまう。母や娘、そして友人まで…。全てを失った彼は故郷を離れ、流れ着いた辺境の村で農夫として働き始めた。そこで何年もの時を過ごすうちに、彼はやがて“本当の強さ”とは何かを悟る。そしていくつもの苦悩と数知れない戦いの果てに、彼を待受けていたのは歴史に残る大舞台、史上初の異種格闘技戦だった。全世界から集まった屈強な男たち。会場に渦巻く興奮と野望。しかし、彼の胸にある思いは、勝者の栄光を掴むこととは全く無縁の、静かにたぎる“情熱(SPIRIT)”だった・・・!実在したマーシャル・アーツの伝説的人物をモデルに、格闘技の師匠だった父の跡を歩もうとする一人の偉大な男の生きざまを描く、驚愕のアクション・エンターテイメントがついに誕生!』



ハリウッドでも活躍するカンフー・アクションの国際スター:ジェット・リーが、「武術に対する私自身の考えの全てを込めた総決算!」と言い切るのが本作だ。1900年初頭に中国武術界をまとめようと尽力した実在の人物、霍元甲(フォ・ユァンジア)を主人公とした波乱万丈の物語について、「10年間温め続けてきた企画で、ずっとこの役を演じたかった」と語るジェット・リー

だが、僕らの年代ではジェット・リーというよりも李連杰リー・リンチェイと呼ぶ方がしっくりくるだろう。リーといえば、8歳から北京の業余体育学校で中国武術を学び、11歳の時に中国全国武術大会のチャンピオンとなり、以後“5回連続で総合優勝”という前人未到の快挙を成し遂げた筋金入りの武術家である。

74年には世界巡業でホワイトハウスに招かれ、ニクソン大統領の前で対戦演技を披露。大統領本人から「私のボディガードにならないか?」と誘いを受けたという逸話まで残っている。

さらに10代半ばで早くも武術コーチとなり、多くの弟子を指導する立場になるなど、まさに“中国武術界の至宝”と呼ばれるに相応しい活躍ぶり。そしてついに82年、少林寺で映画界デビュー。日本中に大ブームを巻き起こしたのである。当時、小学生だった僕は学校で友達と“少林寺ごっこ”に明け暮れる毎日だった(笑)。それほどまでに、リーのアクションはカッコよかったのである。

だが、“映画俳優としてのリー”の活躍ぶりは、決して順風満帆とは言えなかった。全国の小中学生を熱狂させた“少林寺ブーム”が沈静化すると、リーの仕事は激減。困り果てたリーは88年に自ら監督・主演した『ファイナル・ファイター』を発表する。しかし、カンフーを使わず“スコップで相手を殴り殺す”という、バイオレンスにも程があるアクションスタイルに批判が殺到。

その後、ツイ・ハークと組んで『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』をヒットさせるものの、ギャラの金額でモメてハークと決別してしまう。おまけに、『ワンス・アポン・ア・タイム』シリーズを勝手にパクって映画を製作するなどやりたい放題。安易にワイヤーワークを使った作品が乱発される結果となってしまった、トホホ。ちなみにこの時期ジャッキー・チェンが、「あんなワイヤーだらけの映画は、本当のカンフー映画じゃない!」と激怒して『酔拳2』を撮ったのは有名な話である。

そんな不遇の時代を過ごしたジェット・リーだったが、ある日誰も予想だにしなかった事件が起きた。なんと『リーサル・ウェポン4』に出演が決まったのである!「アジア系犯罪組織におけるカンフー使いの殺し屋」という、いかにも“ハリウッド的発想”な役柄であるが、無敵のカンフーでメル・ギブソンを追い詰めるシーンはハリウッドを震撼させた。おまけにギャラは4億5千万円!これをきっかけに、本格的にハリウッド映画に進出する事となる。

その後『ロミオ・マスト・ダイ』、『キス・オブ・ザ・ドラゴン』、『ザ・ワン』、『ブラック・ダイヤモンド』、『ダニー・ザ・ドッグ』と主演作を連発するジェット・リー。しかし、個人的に言わせてもらえば、どの映画もあまり面白くない(良かったのは『ダニー・ザ・ドッグ』ぐらいかなあ)。

理由は、単純に“ストーリーがつまらない”事と、“リーの体術が十分に生かされていない”という点だと思う。特にアクション面における不甲斐無さは深刻で、ハリウッド映画のリーを見るたびに、「あ〜あ、昔のアクションは良かったなあ」と思わずにはいられなかった。

そんなファンの、長年のフラストレーションを吹き飛ばすような快作がこの『SPIRIT』である。さすが「今までの集大成です!」と言い切るだけあって、往年のカンフー・アクションを存分に堪能できる“正真正銘のカンフー映画”に仕上がっているのが嬉しい。しかも、一つ一つのアクションが重く、美しく、力強く、ボリューム感もたっぷり!これぞジェット・リーいやリー・リンチェイのカンフーだッ!素晴らしい!

物語は、実在の人物をモデルにしているものの、ほとんどがフィクションとの事。だが、ストーリー自体はシンプルで非常に分かり易い。リーが襲い来る敵を次々となぎ倒すという、“ドラゴンボールが出ない天下一武道会”みたいなものだ。

また、10メートル以上ありそうな高い舞台の上で戦ったりするシーンなどは、“魁!男塾”のようでもある。すなわち、“少年ジャンプ的世界観”を内包した“男の子大満足”のアクション大作なのだ。でも、話は結構シリアスで暗く、従来の“悪い敵をやっつけて終了”という単純なパターンとは異なっている点が大きな特徴。

そんな本作に対し、リーはインタビューでこう答えている。「恨みを晴らすとか、復讐をするとか、アクション映画はいつも一つの型にはまっている。それを突破したいと思ったんだ。霍元甲が若者を育てるために精武体育会を創立した精神(SPIRIT)を描くことで、“暴力では問題を解決できない、相手の心を勝ち取ることはできない”ということを伝えたかった」

『HERO』、『ダニー・ザ・ドッグ』、そして今作と一貫して「暴力の無意味さ」というテーマを追い続けてきたジェット・リー。『SPIRIT』はまさに、そんなリーの熱い想いが一杯に詰まった映画に仕上がっていると言えるだろう。だが、一つ気になるのは“最後のマーシャルアーツ作品”という宣伝コピー。もう、“カンフー映画には出ない”って事なのか?以下、リーのコメントより。

「理解と愛があってはじめて他者の心をつかみ取ることができる。これまで多くのカンフー映画に出演してきたが、“クール”、“かっこいい”だけじゃダメなんだ。私は、仏教徒として自分に何か出来ることはないか模索し続けてきた。そして、この映画で武術についての、“最大の敵は自分自身”という私個人の考えを語り切った。だから、もうこれ以上語ることは無いんだよ」

どうやらその熱い思いが、アジアで“最後の武術作品”というニュースになって伝わったようだ。しかし、「これでカンフー映画に出演しないということではない。でも、その作品は私の考えを表現したものではないだろう。俳優の仕事は楽しいし、アクションももちろん続けていくよ」という事らしい。やれやれ、一安心ですよ(笑)。

ちなみに、中村獅童との対決シーンはなかなか迫力があって良かったが、“スタントモロバレ”なのがどうにも気になった。後ろからのアングルは、ほぼ100%スタントマンだと思われる。もう少し上手く撮って下さい(苦笑)。

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