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オランダが生んだ変態監督、ポール・バーホーベン伝説!

■映画『ロボコップ』はこうして作られた!

1987年の夏、全米で一本のSF映画が公開された。作品名はロボコップ。日本の「宇宙刑事」シリーズのパチモンみたいなロボット刑事が暴れまくるこの映画は予想外の大ヒットを記録し、全米で5000万ドル以上を稼ぎ出した。

その後パート2と3が作られ、とうとうTV版まで製作されるほどの人気シリーズに成長。まさに、アクション映画史に残る“新ヒーロー”が誕生したのである。この作品を撮った人物が、オランダ出身の映画監督ポール・バーホーベンだ。

彼は長編2作目の『危険な愛』でオランダ映画史上最大のメガヒットを記録するが、マスコミや評論家たちからは猛烈なバッシングを喰らう。主演のルトガー・ハウアーが「全裸になり、ゲロを吐き、女性の陰毛をむしり取る」というエロ・グロ・バイオレンス描写満載の内容なのだから当然と言えよう。

その後もハウアーはバーホーベンの作品に出演を続けるが、『グレート・ウォリアーズ』を最後に渡米。『ブレードランナー』でブレイクしたハウアーはインタビューで、「バーホーベンの現場には、もう愛想が尽き果てた」と決別宣言ともとれるコメントを残す(無理もない)。

しかし、その後も順調に“下品で不快な映画”を撮り続けたバーホーベンに、突然ハリウッドから声が掛かる。なんとスティーブン・スピルバーグが彼の作品を観て、そのバイオレンスの強烈さに感激したのだそうだ。

当初、スピルバーグスター・ウォーズジェダイの復讐』の監督として、ルーカスにバーホーベンを推薦しようと思っていたらしい。だが、“主人公が大量のハードゲイたちに集団レイプされる映画(『スペッターズ』)”を観て思い止まったそうだ(危ない危ないw)。

そしてついに、バーホーベンの元へ『ロボコップ』の脚本が送られてきたのである。ところがそのマヌケなタイトルを見た瞬間、「俺をバカにするな!」と読みもせずにゴミ箱に放り込んでしまった。

なんせ、プロデューサーのジョン・デイヴィソンでさえ「題名を聞いただけで誰も相手にしてくれなかった」と言っているくらいだから無理もあるまい(デイヴィソンは「せめて作品名だけでも変えろ」という周囲の忠告を無視して、最後までこのタイトルを死守したらしい)。

だが、最終的にバーホーベンは監督する事を決断。ハリウッド中から「バカバカしい」と敬遠された『ロボコップ』を引き受け、映画職人といての実力を証明しようとしたのである。

ロボコップのデザインは、特殊メイク・アーティストのロブ・ボッティンに依頼された。だが、ここで大問題が勃発。デザインをめぐってボッティンとバーホーベンの間で、壮絶な言い争いが展開されたのである。互いに、「フレンドリーな奴ではなかった」と罵り合うぐらい、二人の仲は険悪そのものだったらしい。

バーホーベンは連日のようにボッティンのアトリエを訪れ、「こんなデザインじゃダメだ!」と大暴れ。特に彼はロボコップ股間が強調されていないかどうかを非常に気にしていた。ボッティンはそんなバーホーベンに腹が立ってしかたがない。

そしてついにある日、「君は私のコンセプトが全然分かってない!股間を大きくするなと言っただろう!」と怒鳴り上げるバーホーベンに対し、とうとう堪忍袋の緒が切れた。「じゃあ、アンタが自分で削れ!」と叫んで、粘土細工用のヘラを投げつけるボッティン。大の大人がロボットの股間をめぐって殺し合う寸前の状態だったのである。

結局、ロボコップのスーツは予定より2週間も遅れて完成。大急ぎで撮影に取り掛かろうとするものの、スーツの装着でまた大変な苦労を強いられる。早朝4時から主役のピーター・ウェラーが“着付け”を開始するが、夕方の4時になってもまだ終わらない。

ようやく着付けが完了してもスーツの重量は約12キロもあるため、重くて一歩も動けないのだ。おまけに撮影が夏場だった事もあり、スーツ内部の温度は65度にも達し、激しいアクションシーンでは窒息寸前に陥る始末。毎日2キロの水分が汗となって消えていったそうだ。ピーター・ウェラー曰く、「毎晩必ず、体のどこかに汗疹が出来ていたよ」。

だが、このような苦労の連続の末に完成した『ロボコップ』は、世界中の観客のド肝を抜きまくった。全編に炸裂するバイオレンスシーンは凄いとしか言いようが無く、『ニューヨーク・タイムズ』紙は「成人指定レベルの残酷描写だ!」と酷評。

警備ロボットが突然暴走して20mmバルカン砲を連射し、若いサラリーマンの体がボロ雑巾のようにズタズタにされるシーンからテンションは上がりっぱなし!中でも主人公のマーフィが悪党のクラレンス一味に捕まり、なぶり殺しにされてしまう場面は、映画史に残る凄まじさ!

ショットガンで手首を木っ端微塵に吹き飛ばされ、散弾銃で胸部を一撃!6人の敵から次々と弾丸のシャワーを浴びせられ、文字通り蜂の巣にされていくマーフィ!さらに容赦無く機関銃の弾を全身にブチ込むクラレンス!

延々と続く地獄絵図は、まさに人体破壊残酷ショー!トドメに脳天を撃ち抜かれ、後頭部に握りこぶし大の穴が開いたマーフィは脳味噌を派手に飛び散らせて絶命する(このシーンはあまりにも残虐過ぎたため、本編では大幅にカットされたらしい)。

だがバーホーベンは、「マーフィが殺される場面は、徹底的に残虐なものにしなければならなかった」と語っている。「なぜなら、あれはキリストの磔刑を意味しているからだ。そしてマーフィはキリストと同じように復活する。悪に裁きを下すために!」。すなわち、『ロボコップ』はバーホーベンにとって”鋼鉄のキリスト”だったのである。地獄から蘇ったマーフィは、まさに“復讐の天使”と化して悪党どもを次々と血祭りに上げていく。

人々はそんな彼の活躍に熱狂したが、それは単に“派手なアクションシーンがあったから”だけではない。記憶を失ったマーフィは徐々に過去を思い出していく。そして自分はロボットなのか人間なのかと思い悩む。しかし、最後に彼は自分の名前を聞かれ、胸を張って「マーフィ!」と答えるのだ。

つまり本作は「機械の体にされてしまった一人の男が、失われた自分のアイデンティティーを取り戻す人間ドラマ」なのである。この清々しいラストカットがあるからこそ、『ロボコップ』はただの“B級アクション・ムービー”とは一線を画した、一級の娯楽映画に成り得たのだ。紛れも無く、ポール・バーホーベンの最高傑作であると言えるだろう。

ちなみに、バーホーベンはこの後も『トータル・リコール』『氷の微笑』『ショーガール』『スターシップ・トゥルーパーズ』『インビジブル』と、相変わらず倫理観の欠落した素晴らしい映画を撮りまくり、セックス&バイオレンスにまみれた変態監督の地位を不動のものとしていった(当然、僕は全て劇場で鑑賞)。

特に『ショーガール』は“その年一番のバカ映画”として映画界全体に悪名を轟かせることになる。しかも、そのゴールデン・ラズベリー賞授賞式で前代未聞の大事件が起こってしまったのだ!

ゴールデン・ラズベリー賞とは「その年に公開された最悪ムービーの数々を、オスカーさながらの盛り上がりで紹介する」という、世にも不名誉な名物授賞式である。当然ながら、ノミネートされた者はおろか受賞者本人が式場に現れるなんて事は滅多に無い。だがなんと、過去に只一人だけラズベリー賞を自分の手で受け取りに来た豪快な映画監督が存在する。そう、それがポール・バーホーベンだッ!

“ハリウッドで最も嫌がられている汚いオヤジ”と罵られながら、彼は満面の笑顔で意気揚々と壇上に駆け上がりスピーチを行った。「オランダで映画を撮っている時、批評家のクソ連中から、“お前の作品は邪悪で、退廃的で、安っぽい”と言われました。だから私はアメリカに来たのです。あれから10年経ちますが、この国でも私の作品は、“邪悪で、退廃的で、安っぽい”と酷評され続けています!」。

この挨拶に満員の聴衆はやんやの大喝采。ジョークがわかる奴なのか、それとも単に神経が図太いだけなのか、その後もバーホーベンはへこたれる事なく、次々と下品で暴力的な映画を撮り続けたのである。最高だぜ、バーホーベン!


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