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リメイク版(2014年)『ロボコップ』ネタバレ映画感想


■あらすじ『2028年、ロボット技術で世界を支配する巨大企業オムニコープ社は、同社のロボットが世界各地で軍事利用される中、アメリカではその配備が法律で禁じられていた。それでもアメリカ国内での普及を目指すオムニ社は、様々な手段を講じてこの法律の廃止を画策する。そんな中、愛する妻と息子と共に犯罪都市デトロイトに暮らす勤勉な警官アレックス・マーフィは、爆発事故に巻き込まれ、瀕死の重傷を負ってしまう。そして、オムニ社のノートン博士による最先端ロボット技術を駆使した手術が実施され、最強のサイボーグ警官“ロボコップ”として復活するのだった…!』



リメイク版(リブート版?)『ロボコップ』を観てきました。ポール・バーホーベン監督のオリジナル版が大好きな僕としては「ロボコップのかっこ良さをどれぐらい再現しているんだろう?」と期待しつつ、「でもあの世界観を再現するのはたぶん無理だろうなあ」と少々微妙なテンションで鑑賞。

で、結論から言うと「え?こんなに変わっちゃってんの?」というぐらい変わってました。そのことによって良くなった部分もあれば逆に「前の方がよかった」という部分もあったり、まあ結局微妙な感じでしたね(苦笑)。というわけで、どこがどのように変わったのか具体的に検証してみましたよ。


●ユーモアがない
オリジナル版『ロボコップ』の魅力って何?と聞かれた場合(色々あるでしょうけど)、個人的には映画全体に漂う”ブラックな笑い”が良かったなと思うんですよ。例えば、劇中に出てくる架空のTV番組やコマーシャルなどが、壮絶なアクションの合間にアクセントのように挟み込まれ、それが絶妙な可笑しさを醸し出していました。特にCM映像に関しては「完全にふざけている」としか言いようがなく、僕はその不真面目な雰囲気が大好きだったんですよね。

ところが、リメイク版の『ロボコップ』にはこういったユーモアがほとんどありません。最初から最後までシリアスモード全開で、物凄く真面目なSFアクションに仕上がっているのですよ(ふざけたCMも全く無し)。ブラックな社会風刺や文明批判的な側面こそが、『ロボコップ』を他のSFアクション映画と決定的に差別化していた大事な要素だったのに…。まあ、これはこれで悪くないとは思うんですけど、「だったら別にロボコップじゃなくても良くね?」という気がしなくもないような(^_^;)

●記憶が残っている
ストーリーや設定自体もかなり改変されていました。オリジナル版は、「殉職してロボットに生まれ変わった警察官が、過去の記憶を無くしつつも徐々に人間性を取り戻していく」という物語だったのに対して、リメイク版の方はロボットになっても記憶を失っていないのです。これにより、「機械にされた主人公が最後に自分の力でアイデンティティーを取り戻す」という爽快なドラマがなくなってしまい、そこがちょっと微妙な感じでしたねえ。

●相棒が男
前作で主人公の相棒役を務めていたのは、女性警官のアン・ルイス(ナンシー・アレン)ですが、今回は黒人の男性警官:ジャック・ルイス(マイケル・K・ウイリアムズ)に変わっています。いやまあ、性別を変更するのは別にいいんですよ。ただ、変更したことによって何か面白い要素が加わったのか?といえばそんなこともないわけで。ここは変えなくても良かったんじゃないかなあ。

ちなみに、ポール・バーホーベン監督は自身の映画の中で「性別の格差が無い未来社会」という思想を常に掲げていて、『ロボコップ』では男女が同じロッカールームで着替えをしていたり、『スターシップ・トゥルーパーズ』では男女が同じ浴室でシャワーを浴びるという珍シーンが出てきます。そういうバカバカしい場面が無かったのも残念でした(笑)。

●強烈な悪役がいない
今回の映画で僕が一番ガッカリしたのは、クラレンスに匹敵するような凄い悪役が登場しない点ですね。オリジナル版では、主人公がマフィアのボスであるクラレンスとその手下達によって惨殺されるものの、最終的にはそいつら全員をやっつけることで自分自身の宿命にしっかり決着を付けていました。そして最後は事件の黒幕だったオムニ社の重役ジョーンズをぶっ殺してスッキリ終了。だから大きなカタルシスが得られたのです。

ところが、本作では主人公に重傷を負わせた犯人は同僚の警察官なので、ティーザー銃で撃って逮捕するだけ。一応、マフィアのボスみたいな奴も出てきますが、ロボコップがあっさり全滅させてしまうため、ほとんどドラマには絡んできません。クライマックスでロボコップを追い詰めるオムニ社の軍事指導者リックも、ED209やロボット兵士を推奨しているからロボコップを排除しようとしているのであって、どちらかと言えばオリジナル版のモートンに近いキャラなのです。

「じゃあ、真のラスボスは誰なのか?」というと、やはりオムニ社のCEO:レイモンドになるのでしょう。しかし、レイモンドはアメリカに自社のロボット技術を売り込もうとしていただけで、ジョーンズのように犯罪者と結託して同僚のモートンを殺したり、私利私欲のために動いていたわけではないのですよ。

なので、最後にロボコップがレイモンドをやっつけるシーンを見ても、「この人ってそんなに悪いことしたかなあ?」と感じてしまい、あまりカタルシスが得られませんでした。「正義のロボット警官が悪党を成敗する」という図式を成立させるためには、やっぱりクラレンスのような強烈な悪役が必要なんでしょうねえ。

●奥さんや息子が出てくる
逆にリメイク版の良かった点を挙げると、オリジナル版ではほとんど出番の無かった主人公の家族が、重要な役割でしっかり登場していることでしょう。なんせ、オリジナルの方は、主人公が死んだことにされた挙句、奥さんが子供を連れてどこかへ行っちゃいますからね(良く考えたら悲惨な話だなあw)。それに比べるとリメイク版は、きちんと”家族の絆”を描いているので、エンタメ的にはこちらの方が”正統派”なのかもしれません。

●デザインがオシャレ
ずんぐりむっくりで鈍重なオリジナル版に比べると、シャープで軽快なリメイク版ロボコップ。普段は素顔を晒していて、戦闘モードになるとヘルメットが「カシャン!」と顔面をカバーする新機能を搭載したり、ずいぶんかっこ良くなりましたね〜。最初はシルバーで登場し、その後ブラックにカラーチェンジするという、ロボットアニメにおけるパワーアップの概念まで取り入れているところも素晴らしい。それにしても、まさかロボコップがメイド・イン・チャイナだったとは(笑)。

ちなみに、オリジナル版のロボコップのスーツは、当初フォーム・ラテックス素材が使用されていました。ところが、ラテックス素材には”赤ん坊のゲロ”に似た独特の臭気があり、ロボのマスクを被ったピーター・ウェラーは「こりゃたまらん!」とすぐにギブアップ。スーツを作ったロブ・ボッティンは、マスクにレモンオイルを塗ってなんとかごまかそうと試みたものの、単に「レモンの香りが混じったゲロ」になっただけで全く改善できなかったらしい。しかたなく、マスク部分はファイバーグラス素材で作り直されたそうです。

●アクションが凄い
アクションシーンも迫力が大幅にアップしていました。前作のロボコップは”いかにもロボット的”なぎこちない動きが特徴的だったのに対し、今回のロボコップは走ったり飛んだり2丁拳銃をぶっ放したり、激しいアクションが満載です。専用のバイクで爆走するシーンも強烈にかっこいい!更に前作ではストップモーション・アニメで表現されていた二足歩行ロボットED209も、フルCGで完全リニューアルされ、びっくりするほどスタイリッシュに生まれ変わっていましたよ(個人的にはダサいED209も好きなんですがw)。

●魅力的なサブキャラ
オリジナル版にはいなかったキャラが多数出ている点もリメイク版の特徴でしょう。特にゲイリー・オールドマン演じるデネットノートン博士がいいですね。前作ではアン・ルイス以外はほとんど味方がいなかったロボコップですが、今回は”ロボコップの生みの親”であるノートン博士や他の技術者が味方してくれるおかげで、”ぼっち状態”から脱却しています。

また、インチキ臭いコメンテーター役のサミュエル・L・ジャクソンも良かった。ハッタリの効いた演説で世論を煽り、ロボコップ誕生のきっかけを作る重要なキャラとして登場。相変わらず「マザー・ファッカー!」を連発するなど、やりたい放題な感じが気持ちいい。ただ、直接ストーリーに絡んでこないのがちょっともったいなかったです。

というわけで、総合的な評価としては、「オリジナルを知らなければ結構楽しめるかな?」という感じでしょうか。単純に”SFアクション映画”という括りで見れば、無難な作りで決して悪くはありません。

ただ、バーホーベン版を好きな人が観た場合は、やはり不満が残るでしょうね。なんせバイオレンス描写は控え目だし、シニカルな笑いは少ないし、何より「記憶を無くしてロボットにされてしまった主人公がアイデンティティーを取り戻す」という主題が全然違うものに変更されているわけだから。

この感覚は、リメイク版のトータル・リコールを観た時とよく似ています。エロ・グロ・バイオレンスが全開だったオリジナル版に対し、デザインもストーリーも現代風にアレンジされたリメイク版は、確かにスタイリッシュでかっこいいんだけど「何だか物足りない」という印象を拭い切れないのですよ。その辺を、観た人がどう判断するかで評価は変わってくるでしょうね。

あと、リメイク版にはオリジナル版のような”細かい伏線”が無いのも気になりました。例えば主人公がアクションドラマ好きな息子のために拳銃をクルクルとスピンさせる練習をしていて、その後ロボコップになった時にもその仕草をやっているとか。手からアイスピックのような鋭い端子を「シャキーン!」と出してコンピュータの端末に接続し、クライマックスではクラレンスと戦っている最中にその端子を相手に突き刺すとか。

オリジナル版にはそういう、「あの時のアレがここで出てくるのか!」みたいな伏線が必ず入っていたので、本作にもちょっとしたサプライズが欲しかったなと。それにしてもポール・バーホーベンって、大雑把に見えて意外と細かいことやってたんだなあ(笑)。

それから、ラストの展開もありきたりで、「もう少しどうにかなっただろう」と思わずにはいられません。オリジナル版は、「オムニ社の重役だから撃てない」→「お前はクビだ!」→「どうも。ズドン!」という痛快な流れだったのに対し、リメイク版は「ロックされていて撃てない」→「でも根性で撃つ!ズドン!」という、ほとんど論理性が感じられないゴリ押し的な流れで、半ば強引に事態を解決してしまうのですよ。

こういう展開を”悪い”とは言いません。でも”古い”です。もう何十年も前からアニメやマンガで散々見せられた、「バ、バカな!動けるはずがないのにヤツはなぜ動けるんだ!」みたいな、”主人公が気合いだけで相手を倒すお約束の展開”と全く同じなんですよねえ(主人公の精神力が機械の制御を上回ったってことなんでしょうけど)。

上で書いたように、”家族の絆”を描いている点は凄くいいと思うんですよ。だから、他の部分はあまり変えないで、もっとストレートに「最後に主人公が家族愛を取り戻す」という着地点を目指せばそれで良かったんじゃないかなと。オリジナル版に欠けていた要素をリメイク版で補完できれば、更に完璧な『ロボコップ』が完成したような気もするので、その辺が惜しいなと思いました。

ちなみに、パンフレットは800円で少々高めなんですが、情報量がメチャクチャ多くて非常に充実した内容になっています。今回の『ロボコップ』が気に入った人は買う事をオススメしますよ(新・旧の『ロボコップ』のパンフレット↓)。

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