本日、テレビで阿部寛さんや上戸彩さんが出演した実写映画『テルマエ・ロマエ』が放送されます。この作品は”お風呂”を題材にしたコメディドラマで、公開されたとたんに58億円の大ヒットを記録!さらに原作漫画も累計900万部を超えるベストセラーとなりました。
ところが、そんな状況の中(2013年当時)、原作者のヤマザキマリさんがテレビ番組に出演し、「漫画家がもらえる原作料は興行収入58億円のうち、約100万円です」と衝撃の事実を告白したのです。
この発言にネット上では「安すぎる!」と批判殺到。「58億も稼いだ映画の報酬が、どうしてたったの100万円なのか?」と話題になりました。
この番組は、2013年2月23日に放送された「ジョブチューン 〜アノ職業のヒミツぶっちゃけます!」(TBS系)というバラエティ番組で、ファッションモデルやテニスプレーヤーなど様々な分野のプロフェッショナルが登場し、その業界の知られざる裏話を公表する、という内容でした。
その中で、ヤマザキマリさんは『テルマエ・ロマエ』の原作者として出演し、「映画化の際に支払われた原作使用料は約100万円だった」「映画がいくらヒットしても私自身は全然儲からない」など意外な真相をぶちまけ、スタジオが騒然となったのです。以下、番組内のやりとりを抜粋してみました。↓
ヤマザキ:大ヒット映画『テルマエ・ロマエ』で、漫画家がもらえる原作料は興行収入58億円のうち、約100万円です。
司会者:え〜!?ちょっと少ない感じがしますけど…。
ヤマザキ:でも、漫画家は皆さんそんな感じですよ。
司会者:映画がヒットしたら、増やしてもらうってことはできないんですか?
ヤマザキ:もう全然!要するに、権利を出版社に売ってしまう形になるので。
司会者:え?100万円で全部売ったってことですか?
ヤマザキ:そう100万円で、何やってもいいよという状況ですね。
司会者:100万円って金額はどうやって決まったんですか?
ヤマザキ:知らないうちに決まってました。
司会者:知らないうちに?
ヤマザキ:ある日突然、出版社から「あんたの所に後で100万円ぐらい入るけど、あれが原作使用料だから」って連絡があって。
司会者:え〜?
ヤマザキ:だから一番困っちゃうのが、会う人がみんな「ヤマザキさん、今左うちわもいいとこだね」みたいな感じで言ってくるんですけど、それ違いますから!
司会者:映画化されても、いいことばかりじゃないってことですか?
ヤマザキ:いいことも当然ありますけど、それ以上に気を遣うことが多いですね。
司会者:気を遣うって何を?
ヤマザキ:例えば、映画の宣伝で色んなところに連れ出されるじゃないですか?そういうのも全部ノーギャラだし。番宣って丸1日かかるじゃないですか?1日あったら原稿5枚描けるんですよ。その方がお金になるんですよ!
司会者:なるほどねえ…。
ヤマザキ:しかも私は海外に住んでるので、日本の人よりも税金を引かれる率が多いんですよ。
司会者:ヤマザキさん、何かダマされてるんじゃないですか?w
ヤマザキさんの告白を見た視聴者からは「原作者がかわいそう」との意見が相次ぎ、さらにこの番組はTBSですが、映画『テルマエ・ロマエ』の製作はフジテレビだったので、フジテレビへ対する批判も高まっていきました。
今のテレビ見たくなかった・・・テルマエ映画58億円興行収入の内、原作者がもらった額は100万円
— にゃるせ@ハワイ (@_nyaruse_) 2013, 2月 23
知らないうちに出版社が100万円で権利売ってたって酷いな・・・
— にゃるせ@ハワイ (@_nyaruse_) 2013, 2月 23
今、テレビ番組でテルマエロマエの作者さんが映画化までの流れを話してたんだけど、「原作使用料として100万円入金されるからよろしくね」っていきなり言われて終わっちゃったんだって。金額も勝手に決められてたんだって。そりゃ原作者の意向なんてまるまる無視のひどい実写化が横行するわけだ…
— あましょくからこ/天色空湖 (@karako) 2013, 2月 23
実は、こういう話はヤマザキさんだけではありません。過去にも似たような騒動は起きていて、『海猿』の原作者の佐藤秀峰さんも、「映画が大ヒットして70億円になっても僕は250万円しかもらえなかった」とツイッターで不満をぶちまけているのです。以下、佐藤秀峰さんの発言から。↓
僕は海猿の原作者だけど、映画の2作目が公開された時、もらったお金は250万円くらいだった。70億ヒットとか言われても関係ない(今は交渉してしっかりもらってる)。漫画家はいい様に利用されていて、それでも映画化されると喜ばなきゃいけない。なめられてると思う。
2から3は、かなり間が空いたでしょ?理由は僕が許可しなかったから。テレビとか映画の人は、自分達で物語を作る能力は無いんだけど、メディアとして大きいので、プライドが高くて困る。原作も「使ってやってる」と思ってる(そうじゃない人もごく一部にいるけど)
一般論としてですが、漫画を原作に映像作品が作られた場合、原作者である漫画家に支払われる原作使用料の相場は以下の通りです。1時間テレビドラマであれば、20〜30万円、映画であれば100〜200万円。1クールドラマをやれば200〜300万円です。
視聴率や興行収入に応じて、成功報酬が支払われる例は少なく、1回原作使用料を受け取ってお終いというのがほとんどです。後は、テレビでの再放送を何回まで認める、というような決まりがあるので、上限を超えて再放送が行われた場合などに、再度、原作使用料をもらえることがあります。
その他にDVD化された場合などは、実売数を基準に、定価から数%のロイヤリティをもらえます。これは原作使用料よりもらえることもあります。海猿は当時、邦画で歴代1位のDVD販売数で、原作使用料の数倍のお金をもらいましたが、他の原作者はそれ以下の収入だろうと思います。
出版社は「例え原作使用料が安くても、映像化が宣伝になって単行本の売り上げが伸びるので、損を飲んで得を獲れ」的なことを漫画家に対して言いますが、過去はいざ知らず、現在はその法則はあてはまりません。
理由は、あまりに漫画原作を乱発しすぎたせいではないかと思っています。以前は、「面白いと評判になった漫画が映像化されるパターン」が多かったですが、近年は「低コストで手っ取り早く映像作品を作るために漫画を原作に使用するパターン」が増えています。
読者も「ドラマ化された作品だから面白いに違いない。単行本を買ってみよう」とはならないのです。いい加減、みんな気づいています。海猿で言えば、前回の映画化で単行本の増刷は1冊もかかりませんでした。映像化と単行本の売り上げは連動しないという一例だと思います。
今、述べてきたことは一般論で、交渉次第では成功報酬を受け取ることもできますし、漫画家はエージェントを自前で探した方が良いのではないかと思っています。
現在は出版社が作品の二次使用の管理を行うケースが多いですが、彼らと漫画家の利害は必ずしも一致していません。例えば映像化は、出版社的には単行本の売り上げに繋がればよいので、速やかにテレビ局、映画会社との契約を結びたいと思っています。漫画家がいくら儲かるかは最重要ではありません。
これも実例で言うと、僕の場合、出版社に交渉を頼まず、代理人に交渉をお願いした結果、映像化の報酬は数十倍に上がりました。なので、僕自身は現状に不満はありませんが、それまではそのお金は誰の懐に入っていたんだろう?と思います。
「なぜ漫画家は正当な権利を主張しないのだろう?」と、いつももどかしく感じます。スタッフの手配から取材も資料集めも外部との交渉も出版社におまかせで、やってもらうことに慣れちゃってるからなのかな?鳥かごの中の自由はもう飽きたよ。
このようなヤマザキさんや佐藤さんの告発を見ると、どうやら自分の漫画が映画化されても、原作者に入るお金はせいぜい200万円ぐらいで、たとえ映画が100億円を超えるような大ヒットになったとしても、追加でもらえるお金はゼロのまま、ということみたいですね(100万円しかもらえなかったヤマザキさんは、相場よりもさらに安い金額だったのか…)。
近年は人気のあるマンガやアニメを実写映画化するパターンが非常に増えていますが、そのほとんどが映画会社と出版社の言いなりで、漫画家は常に安い原作使用料を強いられていたようです。まあ、制作する側としては格安で上質なコンテンツが手に入るわけだから、こんなにおいしい話はありません。なので、こういう流れが慣例化していたのでしょう。
しかし、これに対して「おかしいだろ!」と声を上げた佐藤さんは、自分で専門家を雇って映画会社と直接交渉しました。その結果、もらえる報酬が数10倍に跳ね上がり、さらに『海猿』の関連グッズなどが作られても、以前は全く権利料が入ってこなかったのに、「それも交渉したらお金が入るようになった」とのことで、大幅に収入が増えたそうです。
結局、漫画家が自分で権利を主張しない限り、正当な対価は支払われないということなんでしょうねえ。ちなみに、ヤマザキマリさんも前回の経験を踏まえ、続編映画『テルマエ・ロマエ2』の製作が決まった際は、弁護士を介して映画会社と直接契約を結び、見事に報酬アップと各種権利料をゲットしたそうです。スゲー!
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