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実写映画『ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ』ネタバレ感想


■あらすじ『巨額のマネーを懸けて、欲にかられたプレイヤーたちが究極の騙し合いを展開するライアーゲームの決勝戦は、準決勝までを勝ち残った精鋭11名によって争われることになった。そのゲームの名は“エデンの園ゲーム”。優勝賞金は50億円!女子大生の神埼直(戸田恵梨香)は、元天才詐欺師:秋山深一(松田翔太)の力を借り、過酷なる試練に立ち向かってゆく。しかし、ファイナリストの中には最強の刺客“プレイヤーX”が潜んでいた!果たして”X”の正体は誰なのか?そして最後に50億円を手にする者は?無数の謎を秘めたまま、今、最後の戦いが始まる…!』


※以下ネタバレしてます。観てない人はご注意を!


本日、金曜プレミアで実写映画ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ』が放映されます。本作は2010年3月6日に全国283スクリーンで公開され、映画観客動員ランキングで当時絶好調だった『アバター』を抑えて、初登場第2位を獲得。

更に、公開30日間で観客動員数173万1466人、興業収益20億9758万7120円を突破し、香港、マカオシンガポールなどアジア6ケ国地域への配給も決定するなど、大ヒットを記録しました。このような成功を受け、続編の『ライアーゲーム-再生-』も制作されてこちらも鑑賞済み。まあ、個人的にはかなり好きな映画なんですよ。

僕が最初に『ライアーゲーム』を知ったのはテレビドラマからでした。深夜に何気なくテレビを見ていたらたまたま放映してたんです。普段あまりドラマを見ない僕ですが、その時は何か興味を引き付けられたんですよね。以来、録画して毎週見るようになり、更に原作の漫画も全て読破。「こりゃあ面白い!」と完全にハマってしまいました。

ライアーゲーム』はその特徴的な内容から、福本伸行の『カイジ』と比較されることが多いようです。たしかに、「謎の巨大組織が主催している」、「主催者側が考案したオリジナルのゲームで勝負する」、「負けると多額の借金を背負う」など、共通する部分も多数見受けられ、頭脳戦・心理戦を描いた物語としては、ほぼ同じカテゴリーに属すると言っていいでしょう。

ただし、『カイジ』の場合はゲームのルールがシンプルで分かりやすく、主に「対決する相手との駆け引き」をじっくり描く”心理戦”を強調していました。それに対して『ライアーゲーム』は、徹底してゲームの仕組みにこだわり、「どうやって攻略するか?」をメインとした”頭脳戦”になっているところが大きく異なっているのですよ。

でも、原作の『ライアーゲーム』は論理的なゲーム展開を重視するあまり、「ゲーム内容そのものが難し過ぎる」という欠点が以前から指摘されていました(僕もマンガを読んだ時、一度ではルールが把握できず何度も読み直したことがあります)。

ここで実写ドラマ版が優れているのは、そういう複雑なゲームを視聴者に分かりやすく伝えるために、アレンジを加えているところなんですね。アニメを使ってゲームの流れをシミュレーションして見せたり、ゲーム内容を簡略化したり、様々な工夫を施しているのが素晴らしい。

実は、『カイジ』も以前に実写化された際、分かりやすくするために多少ルールを変更しているのですが、あまり上手くいっているとは言い難いんですよね。たとえば「限定ジャンケン」の場合は、単純にグー、チョキ、パーで勝敗を決するゲームに簡略化され、各カードの残数を示すカウンターも無くなり、原作者が意図した「株式相場の変動をイメージさせる要素」は完全にカットされていました。しかし、これでは原作にあった”戦略性”や”知的考察”を楽しむことはできません。

それに対して実写ドラマ版『ライアーゲーム』は、”原作のゲーム性や面白さ”を損なうことなく、できるだけシンプルに再構成しているところが実に上手い!「テレビの連続ドラマなので丁寧にゲーム展開を描くことができた」という利点はあると思いますが、劇場版でも分かりやすくゲームを見せながら、尚且つ”ゲームを攻略する醍醐味”をしっかり再現してある点が凄いなと。

また、マンガのキャラを実写化するにあたり、それぞれ個性的な俳優がキャスティングされていて、予期せぬ面白さを生み出しています。多彩なキャラクターも『ライアーゲーム』の魅力の一つで、特にヒロイン神崎直ちゃんの騙されっぷりが凄まじい。1ゲームにつき最低2回は騙され、これまでに計20回以上騙され続けているにも関わらず、決して人を信じることを止めないのです。「直ちゃんてホントに学習能力ないよね〜!」などと散々バカにされてもひたすらに人を信じ続ける一途な女子大生。

これはもう、「お人よし」とか「バカ正直」とかそんなレベルをとっくに超えていて、ある種、ヘンな新興宗教に入信している女性信者のような危ない気配すら感じさせますが、直ちゃんがまんまと騙される場面もまた本作の見所の一つと言えるでしょう。

そして、「このゲームには必勝法がある!」とか「お前の負けだッ!」など、毎度繰り出されるキメ台詞がクールな主人公の秋山。演じる松田翔太さんの、演技しているのかどうなのか良く分からない無表情ぶりもいい感じですよ。ドラマ版に引き続き、映画版でも「この場を支配しているのは俺様だ!」と言わんばかりの自信満々な雰囲気が出まくってます。

そんな中でも一番目立っていたのが、鈴木浩介さん演じる福永!原作では「坊主頭のニューハーフ」という奇抜すぎるスタイルで登場しますが、実写版では(忠実に再現することが困難だったためか)男性キャラに変更。しかし、キノコヘアーに黒ぶちメガネにド派手な衣装というインパクト抜群の出で立ちで現れ、「君ってホントにバカだよね〜!」などと大声で他人を罵倒しまくる強烈なキャラクターを確立し、原作ファンや視聴者を驚愕させました。

映画版でもエキセントリックな言動は相変わらずで、「どうせ今回もまた、いい人のフリをして皆を騙すんだろうな〜」という予測を全く裏切らない”いつも通りの展開”はむしろ安定感があって潔い(笑)。福永を演じた鈴木浩介さんも、「テンションの高さをキープするのは大変ですけど、アドリブを入れながら楽しく演じることができました」と気に入っている様子。フクナガの存在が実写版『ライアーゲーム』の世界観に大きな影響を及ぼしていることは間違いありません。

その他、多種多様な登場人物がお互いに騙し騙され入り乱れる展開はテレビ版同様にエキサイティングでワクワクさせられたんですけど、『ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ』における最大の注目人物は誰かと言えば、やはり仙道アラタを演じた田辺誠一さんになるでしょう。最近はその独創的すぎる”お絵かきツイート”が話題を集め、「画伯」と呼ばれるほどの人気者になっていますが、本作で演じたキャラも独特でした。

一見、真面目なサラリーマンのように見える仙道アラタ。だが、その正体は最強のプレイヤーXだった!みたいな感じで正体がバレたとたんに本性を現わし、「ハーハッハッハッ!気付くのが遅かったな!この勝負、俺の勝ちだ!」とラスボス感満載の演技を炸裂させます。

ところがその直後、秋山の仕掛けたトリックにはまって大逆転!勝利の絶頂から絶望のどん底へ突き落とされた瞬間の田辺誠一さんの演技が物凄い。「この俺が…負けただとおおォ〜!?うぐあああァァ〜!!!!!!!」と頭を掻き毟りながらその場に崩れ落ちる仙道アラタ。

つまり、本作の田辺さんは、気弱な銀行員 → 勝ち誇ったラスボス → 騙されたことに気付いて激怒 → 敗北を確信して絶望、という見事な変貌を短時間で一気に見せ切っているのです。しかも、最後は神崎直の献身的な説得によって”浄化”され、「人を信じるってのも悪くないな…」というセリフをつぶやくなど、すっかりいい人になってるんですよ。というわけで、目まぐるしく変化する田辺誠一さんのノリノリ演技を是非ご覧ください(^_^)

あと、こういうキャラクターの変化にも関連しますが、映画版『ライアーゲーム』は”人間ドラマ”をしっかり描いてる点も特筆すべきポイントかなと思います。原作にも「敗者を救うために自分の賞金を差し出す」みたいな展開は一応あるんですけど、メインがあくまでもゲーム場面なのであまりじっくりと描かれていません。

でも本作では、プレイヤーは互いに相手を騙しながらも、次第に神崎直の影響で心情に変化が現れ、最後は一致団結して赤リンゴを揃えるという、王道の感動ドラマに仕上げているのですよ(ヨコヤなんて別人みたいにキャラが変わってるしw)。そこが、原作の魅力を更に押し上げている要因ではないかと思いました。

さて、本作で描かれる「エデンの園ゲーム」は、映画版オリジナルのゲームです。原作を読んだ人も知らない全く新しいゲームなので「どんな展開になるんだろ?」とワクワクしてたんですけど、監督は「正直に言えばオリジナルを作りたくなかった」と心境を告白。

「映画の製作が決まった時、できれば原作のゲームでやりたいと思いましたね。甲斐谷先生が作る物語は普通のドラマと全く違っているので、簡単にマネすることは出来ません。そこに対する不安はありました。」 (松山博昭監督のコメントより)

結局、オリジナルゲームを作ることになったものの、監督の不安は的中し、大変な苦労を余儀なくされたそうです。まず最初に「エデンの園ゲーム」のルールを考え、それを元にシナリオを組み立てていったのですが、あるシーンを考えるとその過程でゲームの不備が発覚。そしてルールを修正すると、今度は別の場面で矛盾が発生。

という具合に、1か所直すと他の部分も連鎖的に変わってしまうため、どこかを修正するたびにシナリオを最初から全部見直していかなければならなかったのです。結局、シナリオが完成するまで1年近くもかかってしまい、出来上がったのは撮影開始直前でした。

さらに監督が「これでもう大丈夫だ」と思っていたのに、現場で役者さんが演じてみると「あれ?このシーンちょっとおかしくね?」と矛盾に気付くなど、撮影中も次々と修正点が出てきたそうです(ADさんに指摘されて慌てて直したこともあったらしい)。松山監督曰く、「ゲームの抜け道をふさぐ作業がかなり大変で、やってもやっても終わらなかった」とのこと。確かに、「こうすれば勝てる!」みたいな抜け道を簡単に見つけられたら台無しだもんねえ(苦笑)。

ちなみに、実写版『ライアーゲーム』はカット数が異常に多いことでも知られています。登場人物がただ振り向くだけのシーンでも、何度も同じアクションを繰り返して必要以上にカットを割りまくるなど、普通の映画でこれほどカット数が多いものはまずあり得ません。

たとえば2時間程度の映画の場合、平均的なカット数はおよそ1000カット前後。アクションシーンが多いマイケル・ベイの映画でさえ、せいぜい2000カットぐらいの分量と言われています。ところが『ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ』の総カット数はなんと3066カット!ある場面では25秒のシーンに23カットも費やしており、”ほぼ1秒に1カット”というとんでもない分量に達しているのですよ。凄いですね〜(^.^)



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