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地上波初放送!阿部寛主演の映画『テルマエ・ロマエ』裏話


本日、土曜プレミアムにて『テルマエ・ロマエ』が地上波初放映されます。阿部寛が主人公を演じた劇場版が大ヒットしたことで、今ではすっかり有名になった本作ですが、原作版の方は当初は連載すら危ぶまれるほど不人気だったとか。

作者のヤマザキマリさんは、以前から講談社などで連載を持っていたため、この作品も最初は大手出版社に持ち込んだそうです。しかし、古代ローマの話で派手なバトルシーンも無く、ヒロインも登場しないという内容に、どこの出版社からも「こんなの売れないよ!」と断られてしまいました。それでも頑張って出版社を回り続けたヤマザキさん。

そして、最後に持ち込んだのがコミックビームというマイナー雑誌です。現在、日本のマンガ業界は、集英社講談社小学館の大手3社が市場をほぼ独占しているような状態で、IT系の出版社(エンターブレイン)から出ているコミックビームは、当時マニアしか知らないような弱小マンガ雑誌でした。

なんせ、そこで連載している漫画家(桜玉吉)が冗談で「コミックビームが廃刊になった!」とマンガに描いたら、本気にした読者や業界関係者から問い合わせが殺到し、編集部がパニックになったというのですからシャレになりません。

しかも、そんなコミックビームの編集者でさえも、初めて『テルマエ・ロマエ』を読んだ時、「これは売れないだろうなあ…」と思ったそうです。そこで当初は、読み切りとして1話だけを掲載し、その後はヤマザキマリさんに全く別の長編漫画を描かせようと画策。つまり、テルマエ・ロマエ』は本来なら1話で終わってしまうマンガだったのですよ。

ところが、その新企画がなかなか進まず、そうこうするうちに「2話目のアイデア思い付いちゃった〜♪」とヤマザキさんから連絡が。なんと、担当者の意向を無視して『テルマエ・ロマエ』の続編のネームを作っていたのです。

元々別の漫画を描かせる予定だった担当編集者は大いに困惑したものの、一応上司に相談。するとベテラン編集長曰く、「ワシは風呂が好きだからそっちを載せよう」とあっさりOKに。こうして、1話で終わるはずだった『テルマエ・ロマエ』は、風呂好きな編集長のおかげで、2話目以降も掲載されることになりました。

その後、不定期ながらも5話まで連載するものの、特にこれといった反響も無く、マンガ業界でもあまり話題にならず、コミックビームの社内でも「そんなマンガやってたの?」と知らない人がいたくらい、全くヒットの兆しは全く見えなかったそうです。

ところが、単行本が発売されたとたん一気にブレイク!初版は1万5千部でしたが、発売後すぐにネットで話題となり、たちまち3千部の増刷が決まりました。しかも、それが刷り上がる前に早くも次の増刷が決まるなど、印刷が追い付かないほどの猛烈なスピードで売れていったのです。

その後、第2巻は初版40万部で刊行、第3巻が60万部、第4巻が80万部、そして第5巻ではついに初版が100万部を超える大ヒットを達成!少年ジャンプならともかく、圧倒的に知名度が低いコミックビームからミリオンセラーが出たという点において、『テルマエ・ロマエ』まさに”奇跡”と呼ぶに等しい快挙を成し遂げたのです。

ちなみに、この影響でコミックビームの発行部数も伸びたかと思ったら全然そんなことはなかったようで、作品の人気は雑誌にはほとんど跳ね返らなかったという。『テルマエ・ロマエ』は温泉好きの女性読者にウケたと言われていますが、「それはコミックビームの読者層とは完全に異なっていた」とのこと。コミックビームでは、今でも相変わらず編集長を含めてたったの4人で雑誌を作っているそうです、トホホ(^_^;)

そしてこの後、『テルマエ・ロマエ』はついに映画化が決まりました。古代ローマ人の主人公を阿部寛が演じ、市村正親北村一輝、宍戸開など、日本が誇る”濃い顔俳優”たちが集結したことでも話題になり、公開されたとたん日本中で大ヒット!観客動員数500万人、興行収入60億円という凄まじい記録を叩き出したのです。

しかし、撮影直前に東日本一帯で未曾有の大地震が発生するなど、映画の制作には様々な試練が待ち受けていました。いったい、劇場版『テルマエ・ロマエ』を撮った武内英樹監督はどのような心境で撮影に取り組んでいたのでしょうか?以下、インタビュー記事より抜粋してみましたよ。


●原作のマンガはご存知でしたか?
「僕は監督のお話をいただいてから読みました。バカバカしくて、ギャグも凄く好きなテイストだったので面白かったです。ただ、古代ローマの描写をどうしようかと。セットを作るにしてもCGにしてもお金が掛かるし…。そんな時、たまたまイタリアのチネチッタ撮影所に残っていた古代ローマのオープンセットが使えることになって。古代ローマを映像化できるんだ!という喜びでワクワクしました。」


●映画化する際に苦労した点は何でしょう?
「『テルマエ・ロマエ』の原作はショートエピソードの積み重ねなので、それを1本の映画としてどういう物語にしていくかが大変でした。ひたすら原作を読み返しながら、お風呂で溺れた主人公ルシウスが、皇帝ハドリアヌスのために必死でバナナの種を追いかけて泳ぐという、その一コマが決め手になりましたね。」


「ある意味”皇帝と私”というか、ローマを愛してやまないルシウスが、民衆からは偏屈な皇帝だと思われているハドリアヌスの”ローマを愛する心の深さ”に気付く。その二人にしか分からない”絆”のようなものをベースに物語を作っていけばいいんじゃないかと思いました。」


「何度もタイムスリップを繰り返して日本の風呂文化に触れるシーンや、現代の技術に感激して大げさに驚くルシウスの姿が原作のキモであることは間違いないし、そこをきちんとやらないと原作ファンは納得しないだろうと思っていましたが、映画としては、多分タイムスリップは5回で飽きられるだろうと(笑)。なので、前半は原作の笑いのエッセンスを忠実に表現しながら、さりげなくルシウスとハドリアヌスの物語を振っていって、中盤から徐々にオリジナルの世界に引き込んでいくような感じで、シナリオを作っていきました。」


●観客の反応はどうでしたか?
「面白かったのは、ローマでプレミア上映をしたんですけど、イタリア人の観客に物凄く受けが良かったんです。アントニヌスがハドリアヌスのことを神格化して、最終的に彼は皇帝ではなく、”神”と称されたというのは、イタリアでは教科書にも載っているような話なので、彼らにとっては後半の展開は非常に入り込みやすかったようですね。”感動した!”とまで言われてしまって(笑)。それに、彼らはシャンプーハットを知らないし、ウォシュレットも使わないから、ルシウスと同じ目線でびっくりしてるんですよ(笑)。そういう比較文化論的な観点でも楽しめると思います。」


●撮影で印象に残ったエピソードなどは?
「温泉場でおじいちゃんがいっぱい出てくるじゃないですか。あれなんか、撮影するときは本当に長回しでほったらかしにしていると、どんどんお風呂に馴染んでくるんですよね(笑)。おじいちゃんだから、長く回しすぎてのぼせたらヤバいかなと思ったけど(笑)、本当にいい味が出てくるんですよ。」


東日本大震災の影響はあったのですか?
「僕らがイタリアに入った次の日に震災が起きて、役者達はその翌日に出発する予定だったので、本当に来られるのかとか、色んな心配がありました。撮影が始まってからも、イタリアのTVで毎日のようにとんでもない被害の映像が流れているわけですよ。イタリア人のスタッフも、”お前たち、こんなところで映画なんか撮っていて大丈夫なのか?”って心配してくれて。


でも、”俺たちは自分ができることを精一杯やるしかないんだ”みたいに説明すると”わかった。じゃあ一生懸命手伝うよ!”という感じのやり取りがあって、普段はルーズなイタリア人が物凄く熱心に働いてくれて、とても効率良く撮影ができました。だから、向こうでの苦労は意外と少なかったんです。むしろ、日本で古代ローマに見える場所を探す方が大変でした(笑)。」


●この映画に込めた監督の思いとは?
「やっぱり、何かしらのメッセージは伝えたいと思って作ってますよね。物語の中でヒロインが”日本ではやりたくもない仕事をやってる人はいっぱいいるんだよ”って言うでしょ。ルシウスはそれを聞いて”死んだ方がマシだ!”と答える。この場面は、日本人に一番足りないものを提示することで、逆に日本人の良さに気付いて欲しいという思いがありました。


平たい顔族の老人たちが、自分達には何のメリットもないのに一生懸命オンドル小屋を作ったりするシーンなんかも、震災でみんなが懸命にボランティア活動をやっているような、東北の復興を重ね合わせたりして。まあ、元々そういう脚本だったんだけど、震災のニュースを毎日見ながら撮影していて、やっぱり日本人って捨てたもんじゃないよなって。『テルマエ・ロマエ』を観たお客さんが、日本人としての誇りと自信を持って生きていけるようになってくれればいいなと思っています。」

イタリア人のスタッフと共に本場イタリアでロケした『テルマエ・ロマエ』は、日本映画とは思えないほどのスケールと風格を生み出しました。これだけ大規模なロケーションを駆使して、でもやってることはくだらないギャグのオンパレードという、そんなギャップがこの映画をより一層面白く感じさせているのだと思います(^_^)


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