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実写映画『テルマエ・ロマエ』ネタバレ感想


■あらすじ『古代ローマ帝国。浴場設計技師のルシウスは生真面目な性格が災いし、流行に乗り遅れて職場をクビになってしまう。気分転換にと友人に誘われ、公衆浴場(テルマエ)にやってきたルシウス。そこで溺れてしまった彼は、なぜか突然現代日本の銭湯にタイムスリップしてしまった。漫画家志望の山越真実ら、見たこともない平たい顔ばかりを前に途方に暮れるルシウスは、ローマよりも遥かに進んだ風呂文化を目の当たりにして愕然。やがて古代ローマに戻ったルシウスは、平たい顔族(日本人)の風呂文化を採り入れた浴場を設計し大評判となるのだが…。マンガ大賞手塚治虫文化賞のW受賞を果たした、ヤマザキマリの大ベストセラーコミックを完全実写映画化。現代日本にタイムスリップした古代ローマ人浴場設計技師が巻き起こす騒動を描く歴史コメディ!』



遅ればせながら大ヒット上映中の『テルマエ・ロマエ』を観て来ましたよ。初登場以来3週連続首位だった『テルマエ・ロマエ』は、ジョニー・デップの『ダーク・シャドウ』に抜かれて現在2位に下がったものの、土日2日間の観客動員数は24万8,973人、興行収益は3億2,718万8,050円、前週土日との動員比でも95パーセントと、ほとんど落ちていないのが驚きです。

さらに公開から4週を迎え、累計動員数288万7,832人、累計興収36億6,412万6,800円というとてつもない数値を叩き出しました。この勢いが続けば40億を突破することは確実で、50億の大台も夢ではありません。すげえええ!

原作の漫画は以前読んだことがあるんですが、その時はまさかこれほど人気が出て、しかも映画化されるなんて思ってもいませんでした。なんせ、掲載されている本がコミックビームですからね。皆さんはこの本、知ってますか?コンビニに無いのはもちろん、ヘタすると近所の本屋にも置いてないぐらいの超マイナー雑誌で、普段「ジャンプ」とか読んでる小中学生は存在すら知らないでしょう。

ただ、過去にビームで連載していた『真夜中の弥次さん喜多さんしりあがり寿)』、『恋の門羽生生純)』、『アベックパンチタイム涼介)』などが実写映画化されているので、業界ではそれなりに注目されてる雑誌なのかもしれません。

かつては、あまりの業績不振ぶりに休刊(廃刊)の噂さえ流れたコミックビームですが、『テルマエ・ロマエ』の予期せぬ大ヒットにより見事復活。出版元のエンターブレインも笑いが止まらないそうです。掲載作品自体は相変わらずのマイナー路線を爆走中ですが(笑)。

で、映画版の方なんですけど、前半はほぼ原作通りの展開で、古代ローマの風呂職人:ルシウス(阿部寛)が考え事をしながら風呂に浸かっていると、突然時間と空間を飛び越えて現代の日本の浴槽へタイムスリップ、そこで巻き起こる珍騒動!という流れ。後半部分は映画オリジナルの展開で、漫画家志望の山越真実(上戸彩)が活躍するというストーリーになっています。

映画のジャンルとしては、全く異なる文化圏にやってきた主人公のトンチンカンな言動を面白おかしく描いた「カルチャーギャップ・コメディ」ってやつで、『クロコダイル・ダンディ』とか『ブッシュマン』とか、まあ昔から作られているポピュラーなネタですね。

阿部寛演じるルシウスは古代ローマからタイムスリップしてくるわけですが、特徴は「本人がタイムスリップしてきたことに気付いてない」ってこと。どこか他の国へ迷い込んだと勘違いしてるんですよ。で、「この国の文明は我々ローマ人の技術を遥かに凌駕している!」といちいち驚く。阿部ちゃんがクソ真面目にリアクションすればするほど面白さが倍増するという仕組みです(^_^)

この映画の最大のポイントはやはり、古代ローマ人を日本人が演じている」というところでしょう。本来であればジョージ・クルーニーとかヒュー・ジャックマンとか、本物のハリウッド俳優をキャスティングして、「えっ!あの人がこんな役を!?」みたいな意外性を演出するのがセオリーです。

しかし、当然ながら日本映画でそんなことは不可能なので、なんと「顔の濃い俳優ばっかり揃える」というウルトラC級の荒技で乗り切ってしまったのですよ。この発想は素晴らしいと思いましたね。「これなら登場人物が外人でも全部日本人で撮れるぞ!」って(まあコメディだから出来たことなんですが)。

それから、映像にスケール感があるのも良かったです。なんせ、CG合成ではなく、本物の背景を使っているのですから!もちろん、日本でこんな大きなオープンセットを組めるはずはなく、海外のセットを借りて撮影されたんですけど、ヨーロッパ最大規模と言われるチネチッタ・スタジオの巨大なオープンセットを使ったロケーション撮影は、背景合成では決して得られない迫力と臨場感を描き出していました。

それにしても、かつては『ベン・ハー』や『クレオパトラ』などの超大作映画が製作された由緒あるスタジオで日本のコメディ映画を撮影するとは、なんという贅沢さ!こういう、「バカバカしい映画を豪華に撮る」ってアプローチは方向性として完全に正しいと思います。

ただ、内容的に結構チグハグな仕上がりになっているのが残念。身も蓋も無い言い方になりますが、そもそも原作マンガは劇場用の長編ストーリーに適した内容ではないんですよ。

テルマエ・ロマエ』は1話完結タイプの短編コメディで、たまたま人気が出たため連載マンガとして毎回色々なネタを作り出すようになりましたが、内容は似たようなエピソードの繰り返しで本来大したストーリーは無いんです。

それを2時間の映画に引き伸ばすために、原作ではサブキャラ扱いだった山越真実(上戸彩)をドラマの牽引役として配置しているものの、上手く機能しているとは言えません。

前半は阿部寛が繰り出すカルチャーギャップ・ギャグ及び渾身の全裸芸で笑わせてくれますが、後半は結構シリアスな方向へ流れてしまい、ストーリー全体のバランスが取れていないのです。ドラマの落とし所にも整合性が無いし、張られた伏線も投げっ放しだし(旅館再建問題はどうなった?)。

観た人の意見を聞くと「意外と悪くなかった」という感想が多いようですが、これはそもそも映画に対する期待値がそれほど高くなかったからであり、更に原作マンガも軽いコメディとして描かれ強いメッセージ性など皆無であるが故に、『ヤマト』や『GANTZ』に見られた「原作と全然違う!」という”原作厨大激怒”みたいな状況になりにくかったからではないかと思われます。

というわけで、映画『テルマエ・ロマエ』は阿部寛の文字通り”体を張った渾身の全裸ギャグ”と上戸彩の入浴シーンを楽しみにしている人には非常に満足度の高い作品と言えるでしょう。

ストーリー性の弱さは否めませんが、古代ローマ時代のヴィジュアルも邦画とは思えない程の迫力に満ち溢れ、低予算コメディ作品としては破格の完成度だと思います。「濃い顔好き」の人はお見逃しなく(^O^)/


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