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実写版『るろうに剣心 伝説の最期編』ネタバレ映画感想


■あらすじ『日本征服を狙い、強大な武装集団を作りあげた志々雄を討ち取るべく京都へ向かった剣心(佐藤健)だったが、志々雄一派の圧倒的な力の前に苦戦を強いられる。やがて志々雄(藤原竜也)が甲鉄艦・煉獄で東京へと攻め入ろうとする中、剣心は再会した師匠・比古清十郎(福山雅治)に奥義の伝授を懇願。果たして志々雄の野望を打ち砕くことは出来るのか!?衝撃の結末を括目せよ!前後編部作で描く時代劇アクション超大作の堂々たる完結編!』



シリーズ完結編となる映画るろうに剣心 伝説の最期編』の勢いが凄まじいことになってます。初登場で1位を記録して以来、4週連続で首位をキープ。先週末2日間の成績は観客動員が13万1714人、興業収入1億7743万5300円と相変わらず大ヒットを継続中。累計興収は既に34億円を突破しており、前作『京都大火編』と合わせると90億円近くに達しているそうです。

今回の『るろうに剣心』は最初から前編と後編を同時に撮影し、『京都大火編』と『伝説の最期編』に分けて公開しているため、1作当たりの製作費は(規模の割には)かなり抑えられているとのこと。なので、2作合わせて興行収入が100億円以上になりそうな今回のパターンは大成功と言えるでしょう。

そんな『るろうに剣心 伝説の最期編』を観て来たわけですけど、いや〜凄かった!前編も凄まじいアクションに度肝を抜かれたんですが、完結編となる本作はもう、さらに凄いアクションが目白押しで、息つく暇も与えません。

普通、シリーズ物の完結編となれば物語を収束させることに力点が置かれるため、必然的にドラマの比率が多くなり、アクションシーンは少なくなりがちなんですけど、この映画の場合は逆にアクションの比率が増えているというか、むしろ「アクションで全てを語ってやろう!」という意気込みすら感じられるのですよ。

この件に対して大友啓史監督は、「ふつう”緩急つける”っていうと、緩がドラマで急がアクションだよね。でも今回は逆。下手すりゃアクションだけで見せ切る気持ちで作っていた。なぜなら、圧倒的なものには説得力があるから。映画において、圧倒的なアクションはすごく雄弁だと信じている」とコメントしていました。

その言葉通り、話が進むに従ってどんどんアクションのボリュームが増していき、クライマックスシーンに至っては「これが集大成だ!」と言わんばかりのテンションで、メインキャスト全員が全力のアクションを披露しています。その迫力には圧倒されること間違い無し!

というわけで、『るろうに剣心 伝説の最期編』の中で気になったアクションシーンを振り返りつつ、全体の感想を書いてみましたよ。なお、以下の文章にはネタバレが含まれているので、まだ映画を観ていない方はご注意ください。


●比古清十郎 VS 剣心
前作のラストでチラッと登場した福山雅治さんが、今回は冒頭から出っぱなし。やはり存在感がありますねえ。師匠:比古清十郎として剣心を厳しく鍛えます。しかし師匠ということは、剣の達人である剣心よりもさらに凄い剣豪ぶりを見せなければいけないわけで、かなりハードなアクションを要求されたとか。

その動作を見てみると、激しく動き回る剣心に対して、どちらかというと緩やかでどっしり構えるスタイルが印象的でした。ただそれは、向かって来る剣心の動きを比古清十郎が見切り、必要最小限度の動作で対応しているからで、攻撃を仕掛けたりさばいたりするアクションそのものは見た目以上にキツかったようです。

さらに、音楽活動や他の仕事で大忙しの福山さんは、なかなか練習時間が取れず、ロケでアフリカに行った際も、現地でマネージャーを相手に立ち回りの稽古を行うなど、殺陣をマスターするまで苦労したらしい。こうして必死に清十郎を演じた福山さんは、撮影後に「今まで経験したことのない関節の痛みに襲われたよ」とアクションの激しさを振り返っていたそうです。


●剣心 VS 蒼紫
前作で「抜刀斎はどこだあああ〜!」とひたすら剣心を捜し回っていた四乃森蒼紫(伊勢谷友介)。今回ようやく対決できたわけで、溜まりまくった鬱憤を爆発させるかのような物凄いアクションが炸裂してます。刀を二本使う二刀流剣法ですが、単に二本の刀を振り回しているだけでなく、途中で片方の刀を地面や木に突き立てて1本で戦うなど、かなり変則的な殺陣になっているのが見どころ。

しかも技の手数は400手を超えているそうで、アクション監督の谷垣さん曰く「この場面だけで普通のアクション映画の軽く1本分ぐらいあります。明らかに異常な分量ですよ(笑)」とのこと。確かに手数の多さとスピード感は過去のどんなチャンバラ映画よりも凄まじく、まさに別次元の迫力を生み出していましたよ。

●浜辺の戦い
緋村剣心斎藤一江口洋介)が大勢の敵を相手に戦うシーン。足場の悪い砂地でのアクションということで撮影は苦労したそうですが、非常にダイナミックな活劇シーンに仕上がっていました。中でも見どころは斎藤一の必殺技:牙突でしょう。前作で出なかった牙突がようやく出たということで、ファンも溜飲が下がったのではないでしょうか(見た目も1作目よりカッコ良くなってる気がするw)。


●煉獄に乗り込む剣心
いよいよ志々雄の待つ煉獄へ剣心が乗り込むシーン。走って飛んで敵を斬ってまた走って……という複雑極まりないアクションを全てワンカットで撮っているところが凄い!アクション監督の谷垣さんによると、「”佐藤健が速く見えるのはカット割のせいだ”と言われるのが悔しいから、”本当に速いんだよ!”という意味も込めてこのシーンを作った」とのことですが、演じた佐藤さんは次の日「膝が死んだ」と言っていたそうです(笑)。


●剣心 VS 宗次郎
前作で宗次郎と戦った時、剣心は逆刃刀を折られてしまいました。今回はそのリベンジマッチということで、さらに速く、さらに激しく、二人の殺陣が加速します。ここでのアクションの特徴は、単に刀と刀がぶつかるだけでなく、立ち回りをしながら同時に膝を崩したり、相手の脚を素早く払うなど、チャンバラとグラウンドを巧みに融合させている点でしょう。

普通、チャンバラといえば立った状態で相手を斬り付ける「スタンド」の攻防が基本です。しかし、この場面では刀を持ったまま殴る・蹴るの打撃技を繰り出し、それに加えて投げる・関節を極めるなど「グラップリング」の要素も取り入れようとしているのですよ。相手のバランスを崩して上から攻撃する技は現場で”剣心コンボ”と呼ばれていたそうですが、まさに新世代の剣劇ですね。高度な技を難なくこなす神木隆之介さんの身体能力の高さも只事ではありません。

ちなみに、元々『るろうに剣心』の大ファンだった神木さんは瀬田宗次郎を演じるにあたって、頭を叩きながら「イライラするなあ!」と怒鳴ったり、片足をトントンする仕草など、自分でも色々なアイデアを提案して演技に取り入れていたらしい。

●佐之助 VS 安慈
1作目の相楽左之助青木崇高)VS戌亥番神須藤元気)のバージョンアップ版とでも言うべき肉弾アクションが素晴らしい。前回の”素手で殴り合うシンプルなバトル”がアメリカ人に好評だったので、今回もそのニュアンスを取り入れたそうです。

ただし、前回よりもさらにリアルなアクションを目指して、クラヴマガやCQC(Close Quarters Combat:近接格闘術)などの軍隊格闘技を組み合わせ、よりハードなファイティングシーンを作り上げていったという。男がひたすらド突き合うだけのパワフルなスタイルが逆に潔い!

しかも、安慈役の丸山智己さんが左之助役の青木崇高さんとプライベートでも仲がいいとの話を聞いた谷垣アクション監督は、さらなるリアリティを求め、撮影中もほぼ二人に任せて本気に近い殴り合いを演じてもらったとか。谷垣さん曰く、「このシーンは二人に気持ち良くやってもらおうと撮りっ放しにしました。ほとんどガチでやってるでしょ(笑)」とのこと。


●剣心・佐之助・斎藤・蒼紫 VS 志々雄
いよいよ最終決戦、ラスボスの志々雄との対決です。「いったいどんな戦いになるだろう」と思ったら、なんと志々雄一人に対して剣心と佐之助と斎藤と蒼紫が同時に攻撃を加えるという、まさかの4対1!これは大友監督から「『プロジェクトA』のクライマックス(ジャッキーとサモハンとユンピョウがディック・ウェイと戦う3対1のラストバトル)を超える4対1のアクションにしたい」との指示があったためにこうなったんだとか。

この場面、「一人に対して4人で襲い掛かるなんて卑怯じゃないか」という意見もあるようですが、志々雄の圧倒的な強さを表わす表現方法としては間違っていないと思います。アクション映画の基本が「最後に強敵をやっつけること」だとすれば、その敵が強ければ強いほど満足度(カタルシス)も増すわけですよ。そういう意味では、「4人が束になっても敵わないほどの強さ」を見せ付けた名シーンと言えるんじゃないでしょうか。

ただ、志々雄役の藤原竜也さんは相当苦労したようで、「まずあの衣装が大変でした。包帯のように見えるラバースーツなんですが、頭が締め付けられて耳も聞こえない。暑くて動きも鈍くなるからアクションがやりづらい。おまけに物も食べられないしトイレにも行けないし。その上、4人の男から同時に攻撃されて……もう散々な目に遭いましたよ」と愚痴っていました(笑)。

4対1の殺陣に関しては谷垣アクション監督曰く、「最初はバラバラに攻撃してるんだけど、よく見ると剣心と佐之助が交叉したり、徐々にチームプレイに変わってるんですよ。そしてカメラを引いた時、ちゃんと4対1で戦っているように見える。そんな画にしようと思ったんです」とのこと。一見すると4人が勝手に戦っているように見えますが、ちゃんと連係してたんですね。尚、谷垣さんによると、プロジェクトA』には3対1で戦ってるシーンはほとんどないそうです(笑)。


●剣心 VS 志々雄
さあ来ましたよ、主人公とラスボスとの直接対決が。直前まで4人を相手に凄まじい戦いを繰り広げ、「それでも倒せないほどの絶対的な強さ」を存分に見せ付けていた志々雄。もはや誰が相手でも勝てる気がしません。だけど、強すぎる敵をさらに凄いパワーでねじ伏せる、それでこそ主人公ってもんでしょう!最後の最後はやっぱり剣心が決めなきゃ!

そんな気迫がこもったラストシーン、剣心の鬼気迫るアクションが本当に凄くて圧倒されました。佐藤健さんは極限状態を表現するために、長時間逆立ちをして頭に血を上らせたまま撮影していたらしい。顔全体が赤く腫れて目も充血してたから「どうなってるんだ?」と思ったんですけど、そこまでやっていたとは!

最終的には二人とも傷付きボロボロで、フラフラになりながらそれでも刀を握って相手に向かって行きます。スマートな剣心の姿は見る影もなく無残に成り果てながら、尚も戦いを止めようとしません。これぞ激闘!まさに限界を超えた壮絶なバトルシーンですが、実際の撮影も27時間ぶっ通しで続いていたため、やっと終わった時には満身創痍で放心状態だったそうです。本当にお疲れさまでした(^.^)

というわけで、映画『るろうに剣心 京都大火編・伝説の最期編』は日本映画界におけるアクションレベルを一気に何段階も押し上げた快作となっています。「現時点で出来ることは全てやり切った」という熱気が画面からヒシヒシと伝わっており、今後(少なくともチャンバラ活劇という分野においては)本作を超えるアクション表現はしばらく出て来ないでしょう。

正直、”十本刀”と言いつつ実際は五本ぐらいしか活躍してないじゃん!とか、浜辺での「茶番は終わりだ!」のシーンが本当に茶番だったとか、四乃森蒼紫が改心する過程が曖昧だなー(そもそもどうやって煉獄に乗り込んだ?)とか、佐之助と安慈の戦いが思ってたのと違う!とか、内容に関して色々と不満に思う部分が無いわけではありません。

でも、長きに渡り邦画のアクションは”不毛地帯”と言われ続け、誰もが忸怩たる思いを抱いてきました。日本ではアクションを主体とした映画が作られる機会が少ないし、そもそもアクション作品を支える需要自体が非常に少ない。

さらに、アクション映画を作るには普通の映画の何倍も予算と時間が掛かる。「需要の少なさ」と「製作費の高さ」という大きな制約のせいで、邦画のアクションは極めて成立しにくい状況になっています。そんな厳しい状況の中で、「黙っているだけでは何も変わらない!」「俺たちの手でこの現状を変えてみせる!」と決起した作り手側の心意気が、映画ファンとして何よりも嬉しかったのですよ。

大友啓史監督が「日本映画史上に残る凄いアクション映画を作ってやろう!」という大きな目標を掲げ、その想いに共感した谷垣アクション監督が見事なアクションシーンを設計し、佐藤健や大勢のキャストが懸命にそれを演じ切り、さらにスタッフやスタント・チームが彼らを支える、そのような優れたチームワークの元、最後まで「凄いアクション映画を作る」という軸がブレなかった。その、理想に向かって邁進する姿勢が本当に素晴らしいと思いました。


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