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映画『2001年宇宙の旅』はなぜ凄いのか?その舞台裏とスタンリー・キューブリック監督のこだわりを徹底解説!


■あらすじ『旅客用宇宙飛行機オリオン号がケープケネディ空港から月に向かって飛び立った。乗客のフロイド博士(ウィリアム・シルベスター)は、最近月で発見された謎の物体について専門技術家、学者たちが開く会議に出席するため月面基地へ向かっている。現地では石碑のような黒い石板が発掘され、木星に向かって強烈な放射能を発射していた。この事件を調査するため、科学者たちは原子力宇宙船ディスカバリー号木星へ向かって旅立った。その途中、宇宙船を操縦していたプール飛行士(ゲイリー・ロックウッド)とボウマン隊長(キア・デュリア)は、コンピューターからのただならぬ注意信号を受信する。それが全ての始まりだった……』



本日久しぶりに2001年宇宙の旅を鑑賞した。スタンリー・キューブリック監督が撮った本作は、”SF映画における金字塔”として映画史にその名を残し、現在もなお高評価され続けている不朽の名作である。

個人的には(内容はそれほど好きなわけじゃないんだけど)、他の追随を許さない圧倒的なビジュアル・イメージがあまりにも素晴らし過ぎるため、長年に渡りビデオ ⇒ LD ⇒ DVD ⇒ ブルーレイとメディアが変わる毎に買い替え続けているフェイバリット・ムービーなのだ。映画ファンとしては、常に最高画質で手元に置いておきたい究極の1本と言えるだろう。

久しぶりに観たせいで、映画が始まって早々真っ暗な画面が延々と続いた時、「ブルーレイが壊れたのか!?」と一瞬焦るが、そう言えばこういう演出だったと気付き一安心(公開当時、劇場で観た人もびっくりしただろうなあ)。メイン・タイトルにリヒャルト・シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」が流れると、「ああ、”2001年”だ!」と実感。何度見てもかっこいいオープニングだねえ。

この後「人類の夜明け」シークエンスに入るとちょっとダルくなる。サルの生態を延々と見せるだけで状況の変化に乏しいからだ。でも、このシーンの素晴らしさは、スタジオ撮影なのにまるでロケ撮影のようなスケール感があること。

当初は南アフリカ周辺で撮影する予定だったが、キューブリック監督の「俺は飛行機が嫌いだから行きたくない」という一言で却下されたらしい(どんだけわがままなんだよw)。

このため、全ての撮影をスタジオ内で行うことになったスタッフは、リアルな背景を描き出すため、当時はまだほとんど使われていなかったフロントプロジェクションシステム(スクリーンに風景を投射する方式)を採用。

さらに太陽と同等の光量を得るため、天井に3000個の電球を設置するなど、大変な苦労を余儀なくされたそうだ。しかし、その甲斐あって非常にリアルな映像が完成した。眼前に広がる景色は本物のアフリカと見紛うほど広大で美しい!


また、このシーンで大量に登場する猿のメイクは『スター・ウォーズ』でお馴染みのスチュアート・フリーボーンが担当している。リアルな猿を作り出すために試行錯誤を繰り返したそうだが、中でも一番難しかったのは「類人猿の赤ちゃんが母親の胸から母乳を吸う」というシーン。

普通なら役者にメーキャップを施して撮影するところだが、人間の赤ちゃんにそんなことはできない。ラバーで人形を作りワイヤーで動かす方法も、「本物でなければダメだ!」キューブリックに却下されてしまう。

悩んだ末、チンパンジーの赤ちゃんにメイクを施すことにしたものの、暴れてすぐにメイクが剥がれてしまうなど悪戦苦闘。そこでフリーボーンは、チンパンジーに慣れさせるために、なんと3週間に渡って一緒に生活することを決意。日常的にチンパンジーを連れ歩き、寝食を共にし、どうにか慣れさせることに成功した。

そしてチンパンジー役の人にラバー製の乳房を装着し、数時間がかりで何とか撮影完了。しかし、困難を乗り越えてようやく撮影されたこのシーンは、「思っていたより面白くないな」というキューブリックの血も涙もない一言で全てカットされてしまったのである。アンタは鬼か!

●苛酷すぎる撮影にすっかりやさぐれてしまったチンパンジー役の人 ↓

そんな中でも、一番キューブリックのわがままぶりが炸裂したのが謎の石板モノリスだ。キューブリックは当初、パースペクスという素材を使って透明なモノリスを作ろうとしていたらしい。

しかし、パースペクスは非常に扱いが難しく、加工するだけで2カ月かかり、更に冷却で1ヵ月もかかったという(冷却に時間をかけないと粉々に割れてしまうため)。

その後、数人がかりで3週間かけて表面を完璧に磨き上げ、ようやく完成したものをキューブリックに見せたところ、「ちょっとグリーンっぽく見えるな。もっと完全に透明なものを期待してたんだが…」などと不満を言い出したのである。

慌ててスタッフが「確かに完全な透明ではありません。でも、厚さが2フィートもあるのでこれ以上は無理ですよ!」と事情を説明。しかしキューブリックは冷淡に、「もういい、片付けろ」と言い放ち、結局この透明モノリスは使われることなく破棄されたそうだ(もったいない)。

モノリスはこの後、木材を加工し黒く塗ることでようやくキューブリックの承認が得られたものの、「絶対に埃をつけるな!指紋もつけるな!」と徹底してクリーンな状態を保つように要求したため、スタッフは信じられないほどの苦労を強いられたらしい。キューブリックの下で働く人は大変だなあ。

ちなみに、宇宙船のコックピットを映すシーンで、ディスプレイに表示されるコンピューター画面は”全部ニセモノ”ということを知っている人はどれぐらいいるだろうか?

実は、1964年の制作当時は、CG画像を劇中のように表示させる技術がまだ存在しなかったため、アニメーターがCGのように見える画像を作画し、コックピットに見立てたセットの裏側からディスプレに投射する、という極めてローテクな技法で撮影されたのだ。

物語の重要なシークエンスで、メインコンピュータのHAL9000が「アンテナの”AE-35ユニット”が故障しています」と宇宙飛行士に報告する場面も同様にローテク撮影である。

この時、モニターにはAE-35ユニットがワイヤーフレームで表示され、上下左右にグルグルと動いて解析される様子が映し出されるのだが、もちろんこんな表現は当時のCG技術では不可能だ。

ではどうやって作ったのかというと、まず太めの針金でユニットのフィジカルモデルを作り、白く塗装する。それを小型のジンバルに乗せて、黒いバックグラウンドの前で少しずつ方向を変化させながら高感度カメラで撮影。

その後、コントラストの強いネガを作り、カラージェルを通して再度撮影すると、まるで3DCGで作ったワイヤーフレームのように見えるというわけだ(ただし本物のワイヤーだけどw)。

また、本作には数々の宇宙船や宇宙ステーションが登場するが、それらの撮影方法も常軌を逸していると言わざるを得ない。宇宙空間には空気が無いため光の拡散作用が起きず、物体を撮影すると明暗の差がはっきりした映像になる。

これを地球上で再現するためには太陽よりも明るいライトで照らさなければならないが、そんなものは存在しない。そこで編み出された撮影技法が「長時間露光」である。キューブリックは宇宙船のミニチュア(全長15メートル)に強烈なライトを当てながら、カメラのシャッターをなんと600秒間も解放したのだ。

普通、カメラのシャッタースピードは(良く晴れた日なら)1000分の1秒ぐらいで十分とされている。光量が足りない夜間撮影などの場合は、10秒程度シャッターを開けっ放しにすることもあるが、基本的にはほんの一瞬だ。

ところが、本作の場合は凄まじい光を当てつつ600秒間もシャッターを解放したのである。すると物体は完全に光と影だけの存在となり、まさに宇宙空間で撮影されたかのような、リアリティ溢れる映像が出来上がったのだ。

しかし、この撮影方法を実行したスタッフの苦労たるやハンパではなかったようで、途中で逃げ出す人が続出したらしい。1秒間のフィルムは24コマの画像で構成されており、1コマの撮影に600秒(10分間)も掛かる。

ということは、たった1秒の動画を作るのに240分(4時間)もかかってしまうのだ。映画に登場する全てのシーンを撮影するにはいったい何カ月かかるのか、想像しただけで気が遠くなる。

しかも、ミニチュアを宇宙空間に合成するためには、更に倍以上の手間暇を費やさなければならず、途方もない制作期間と贅沢な資金がなければ決して成し得ない非常識すぎる撮影方法なのだ。完成までに4年以上もかかるわけだよ、トホホ。

余談だが、映画ファンの間では「”HAL”の名称はコンピュータ会社の”IBM”を1文字ずつ前にずらして命名されたもので、IBMよりも1歩先を行くコンピュータ”を意味している」という説がちょっとしたトリビアのように語られているらしい。

しかし、これは単なる都市伝説で、実際は「”H”euristically programmed ”AL”gorithmic computer(発見的なプログラムを施されたアルゴリズム・コンピュータ)」の頭文字からとったものだ(原作小説でも”IBM説”を否定している)。

一方、『2001年宇宙の旅』は”難解な映画の代名詞”としても知られている。厳密に言えば、本来あるべき説明部分がことごとく省略されているために、観客がシーンの意味を十分に理解できないのだ(元々はナレーション等が入る予定だったが、キューブリックの指示で全てカットされたらしい)。このため、公開直後から「わけがわからん!」という批判に晒されてきたわけだが、今では”名作映画”の地位を不動のものとするに至っている。いったいなぜか?

2001年宇宙の旅』の素晴らしいところ、その一つは公開されてから40年以上が経過しているにもかかわらず、ビジュアルが全く古びていない点であろう(2001年がとっくに過ぎているのに!)。これは、SF映画としては画期的なことである。なぜなら、未来世界を描いたほとんどのSF映画が、時代の変化と共に陳腐化していく中で、『2001年宇宙の旅』だけが唯一古さを感じさせることなく、永久不変の存在で有り続けているからだ。

たとえば、『2001年』から約10年後に作られたスター・ウォーズの中で、デススターのワイヤーフレーム画像が登場している(クライマックス前の作戦会議室のシーン)。これはコンピューターで作られた本物のCGで(制作はダン・オバノン)、技術的には『2001年』よりも明らかに向上している。

にもかかわらず、『2001年』のニセ・ワイヤーフレームよりもむしろ古臭く見えるのだ。もちろん、公開当時は「おおっ!」と驚いたものだが、最新のCGが溢れ返っている現在においては正直「ショボい」と言わざるを得ない(『スター・ウォーズ』のCG↓)。

そして、『スター・ウォーズ』の影響を受けた『エイリアン』もリアルなSF映画として高い評価を得ているが、今観るとおかしなシーンも多い。例えばオープニング直後、宇宙船のメインコンピューターが起動する時、良く見ると「ピー!ガガガガ!ガチャガチャガチャ!」と物凄い音を立てているのだ。もしかしてフロッピーディスク?OSは何?時代設定は2122年なのに、どう考えても僕が今使っているパソコンより古いんだが。こんなものでちゃんと宇宙船を飛ばせるのかなあ?

それから、リプリーがマザーコンピューターと会話するシーンも、今観るとかなりダサい。壁一面に小さなランプがピコピコと点滅している奇妙な場所で、リプリーは手元のキーボードを使って質問内容を打ち込んでいるのだ。今時、携帯電話に話しかけてもきちんと答えてくれる機能があるのに、なんで2122年にキーボードなのよ?

まあ、『エイリアン』が撮影された1978年の時点では最新のテクノロジー表現だったのだろうが、リアリティを出そうと既存の機械を使ったことが逆に、時代が進むに連れて古さを感じさせる要因となってしまったことは「皮肉な結果」と言わざるを得ない(それでも『エイリアン』が傑作映画だという評価に変わりはないけど)。

また、1984年公開のさよならジュピターも2125年が舞台となっているのに、なんとノートパソコンの液晶ディスプレイがモノクロという情けなさ。当時はまだノートPCがほとんど普及しておらず、ソニーが開発中だった試作機を無理矢理借りてきて撮影したらしいが、劇中の感覚で考えるともはや”骨董品レベル”なんじゃないだろうか(誇らしげに見せているところが逆に物哀しさを感じさせる)。

ちなみに、『さよならジュピター』の撮影現場では『2001年宇宙の旅』に対抗意識を燃やした特撮担当者たちが、当時の日本映画としては驚くほど精密なミニチュアを使って、徹底的にリアルな宇宙SF映画を作ろうと試行錯誤していたらしい。しかし、『2001年』みたいな長期の撮影スケジュールが取れるはずもなく、長時間露光は諦めざるを得なかった。

そこで『さよならジュピター』のスタッフは、ミニチュア模型のすぐ近くから強烈なライトを当てて、短時間でクッキリした映像を撮ろうとしたのである。そしたら、ライトの熱でミニチュアが溶け出してスタッフ大慌て!結局、ミニチュアの影になる部分を黒く塗りつぶすことで、「光と影」を表現することになったそうだ。当然、画面のリアリティは大きく下がり、『2001年』とは比べ物にならないほどショボい映画になってしまったのである。

このように見てみると、『2001年宇宙の旅』のイマジネーションやデザイン・コンセプトや撮影技術がいかに革新的で揺ぎ無いものであったかがわかるだろう。「何年経っても鑑賞に耐え得る映画」というものは、実はそれほど多くない。それはある意味、娯楽作品の宿命と言えるのかもしれない。

ましてや、SF映画は「誰も見たことがない最先端の映像表現を提示する」ということ自体が存在価値であるが故に、時代の流れが劇中のビジュアル・イメージを追い抜いた時点でその価値は失われてしまうのだ。そんな厳しい条件下でも全く色褪せる事無く、公開から40年以上を経て尚も輝きを放ち続けている凄まじさ!それこそがまさに名作の証しと言えるのではないだろうか。

・セットの中に立つスタンリー・キューブリックと原作者のアーサー・C・クラーク

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