■あらすじ『エイリアンが宇宙貨物船ノストロモ号を襲った惨事から唯1人生き残った2等航海士リプリー(シガニー・ウィーバー)は、57年後、催眠カプセルの中で眠りながら宇宙空間を漂っているところを発見される。彼女は貨物船会社の上層部にエイリアンの話をするが、誰も信じようとはしない。そればかりか、エイリアンの卵の巣である未踏の惑星LV426に宇宙技術者やその家族が住みついていると聞いて驚愕するのだった。今はアチェロンと呼ばれているその惑星との連絡が途絶え、リプリーはその原因調査を依頼され、宇宙海兵隊員と共に軍事用輸送船スラコ号に乗り込むことに。荒れ果てた植民地を探索するうち、両親をエイリアンに殺された7歳の少女ニュート(キャリー・ヘン)を発見。やがて、ほぼ街全体がエイリアンとその卵に占拠されていることを知り、愕然とする。そして、前よりもはるかに凄絶な戦いが始まった…!監督・脚本は『ターミネーター』のジェームズ・キャメロン。エイリアンと戦った唯1人の生存者リプリーとエイリアンの再戦を描くSFアクション超大作!』
本日、水曜プレミアシネマで『エイリアン2』が放映されます。監督は、当時まだ新人で『ターミネーター』ぐらいしか実績がなかったジェームズ・キャメロン。
大ヒット映画『エイリアン』の続編を依頼されるという異例の大抜擢を受けたキャメロンは、前作と同じような作品にならないよう、「ホラー」から「戦争アクション」へと大きくスタイルを変更し、1作目に劣らない素晴らしい映画を完成させ、またまた世界中で大ヒットを記録しました。しかし、そんな成功の舞台裏では数々のトラブルがあったようです。というわけで、本日は『エイリアン2』の制作にまつわるマル秘エピソードをご紹介しますよ。
●たったの二日間で書かれた脚本
ジェームズ・キャメロン監督が『エイリアン2』の企画に関わった時、『ターミネーター』はまだ撮影前の段階で影も形も存在していなかった。しかし、『ターミネーター』の脚本を読んだプロデューサーが「これは凄い映画になる!」とキャメロンの実力を見抜きし、2本の脚本執筆を依頼。そのうちの1本が『エイリアン2』だった。ちなみに、もう1本は『ランボー/怒りの脱出』である。当時、仕事が無かったキャメロンは大喜びで引き受けたものの、『ランボー/怒りの脱出』の脚本を書き始める前に軍隊や戦闘に関する資料を集めなければならず、執筆に大変な時間が掛かったという。
●シガニー・ウィーバーが来ない!!
ジェームズ・キャメロンは撮影を効率的にこなすため、事前に綿密なスケジュールを計画していた。ところが、当時シガニー・ウィーバーが撮影していた『ハーフムーン・ストリート』の現場でトラブルが発生し、クランクアップが大幅に遅れるという非常事態が勃発。当然、その撮影が完了するまでシガニーは『エイリアン2』の現場に来ることができない。キャメロンが立てた綿密な撮影スケジュールはいきなりメチャクチャになってしまったのである。結局、シガニーは3週間遅れてようやく現場に入り、監督及びスタッフは熾烈な突貫作業を余儀なくされた。
●「バカヤロー!」現場に鳴り響く監督の怒声
『エイリアン2』の撮影は前作同様イギリスで行われ、スタッフの大半は英国人だった。昔から、「イギリスの映画スタッフはアメリカ人監督の指示には従わない」という慣習があるらしく、ジョージ・ルーカスがイギリスで『スター・ウォーズ』を撮った時も、大変な苦労を強いられたという。
しかも、ただでさえスケジュールが遅れているのに、お茶の時間になると毎日しっかり休息するスタッフを見て、とうとう我慢の限界に達したキャメロン監督は「まじめにやらないならお前らクビにするぞ!」と現場で絶叫したらしい(この言葉は単なる脅しではなく、当初撮影監督を務めていたディック・ブッシュが本当に解雇された)。
●銃を使うシーンに困惑
シガニー・ウィーバーは銃規制法の賛同者として知られ、「銃が出る映画や殺人シーンのある映画は一切見ない」と公言している。しかし『エイリアン2』にはリプリーが銃でエイリアンと戦うシーンがあったため、「出演は難しいのでは?」と思われていた。ところが、あっさり出演OKの返事が。実は、シガニー・ウィーバーは脚本をよく読まずに仕事を引き受けていたらしく、撮影現場で銃を渡され「え?私がこれを使うの?」とビックリ仰天。戸惑う彼女を見て監督も呆れ返っていたそうだ。
●エイリアンはゴミ袋でできていた
『ターミネーター』で素晴らしい仕事ぶりを見せたスタン・ウィンストンを気に入ったキャメロンは、『エイリアン2』でも彼を指名した。1作目の『エイリアン』が大好きなウィンストンは大喜びで引き受けたという。しかし、『エイリアン2』では壁から壁へ飛び移ったり、天井から逆さまに吊り下がるなど、突発的で素早い動きが求められたため、1作目のようなゴム製の着ぐるみ方式は使えないことが判明。
そこで、エイリアン(ウォリアー)の製作に入る前にスタッフは、色を塗った気泡ゴムや黒いゴミ袋など、ありあわせの材料で試作品を作ることにした。スタジオ外のガレージで動作確認をしたところ見事成功。キャメロンもご満悦だったらしい。
スタン・ウィンストン曰く、「笑えるのは、衣装ラックにかかっている時には黒いレオタードにゴムの破片がくっ付いているようにしか見えないんだ。でも映画じゃ、全身が濡れてネバネバしてるから、僕達のやり方と1作目との違いは誰にも分からないんだよ」とのこと。
●廃棄車両をリサイクル
デザイナーのロン・コブは、海兵隊員を輸送する巨大な装甲車両APC(Armored Personnel Carrier)をデザインしたが、ゼロからそんなものを作る予算は無かった。そこでスタッフが利用できそうな物を探していたところ、ロンドンのヒースロー空港で、ボーイング747を牽引していた廃車予定の大型牽引車を発見。喜んで購入してみると重量が72トンもあることが発覚する。撮影まで3週間しかなかったため、大急ぎでボディの鋼板を剥がし、ロン・コブのデザイン通りに大改造を施した。
宇宙船の中を軽快に動き回り、ラストはクイーン・エイリアンと壮絶な死闘を繰り広げるパワーローダー。今ならCGで簡単に再現できてしまうようなシーンだが、当時にそんな技術はない。「どうやって撮影したんだろう?」と初めて観た時は非常に不思議だったものの、仕組みは意外と単純。
なんと人間がパワーローダー型の着ぐるみをスッポリ被り、その状態でシガニー・ウィーバーを乗せていただけなのだ(かなりの重量になるため、ウェイトリフティングの全米チャンピオンが起用されたらしい)。物凄いアナログ撮影だなあ(笑)。
基本的に、本作で使用される武器は現行の銃火器が多い。しかし、自他共に認める”銃オタク”のジェームズ・キャメロンが自分でデザインしたオリジナルSFガンの出来映えも非常に素晴らしく、確実に映画の完成度を引き上げていると言っても過言ではないだろう。
まずは弾薬残量を示すデジタルカウンターをレシーバー部分に設置したM41Aパルスライフル。この銃の正体はトンプソンM1A1サブマシンガンとレミントンM870ショットガンを合体させ、さらにSPAS12のバレルカバーを前後逆に取り付けたものだ。エイリアンをバリバリと撃ち殺しながらグレネードランチャーを連射する戦闘シーンは絶叫するほどのド迫力!
クライマックスでリプリーはこれにさらに小型火炎放射器をくっつけ、クイーンエイリアンに戦いを挑む。ちなみに設定では「10mm口径のケースレスカートリッジを使用」となっているが、良く見ると薬莢をバンバン排出しているのが確認できる(全然ケースレスじゃないw)。
尚、このパルスライフルの残弾カウンターは、本来なら左側面に付いていなければ射撃主は見ることができないはずだ(いちいち覗き込まなければならず不便)。なのに右側に付いているのは、画面に映りやすいというジェームズ・キャメロンの狙いがあったためだろう。
そしてもう一つのSFガンが、映画撮影用のステディカムにスパンダウ・タイプの機関銃を固定したM56スマートガンだ。この銃の正体は、ドイツ軍が第2次世界大戦で使用していたMG34の量産型MG42である。
バイポッド(2脚架)、フロント及びリアサイト、グリップなどを外し、銃中央左側面と最後部にオートバイ(カワサキ製)のハンドルグリップをくっつけたこの物干し竿のように巨大な銃を、バスケスが腰だめで「ズドドドッ!」と豪快に撃ちまくる姿は涙が出るほどのかっこ良さ!マズルフラッシュの迫力も凄まじい!アルバート・ピュンの『ネメシス』でスマートガンをパクってたけど、もっと他の映画でも使えばいいのになあ。
●現場では事故が続出!
隊員が誤って輸送車内に火を放ってしまう場面の撮影中、プラスチックから有毒ガスが発生し、俳優の一人が呼吸困難に陥るアクシデントが勃発。また、輸送車がカメラに向かって突進してくる場面では、ブレーキが壊れてカメラが大破したり、車内の映像を撮影する際に天井の鉄板が抜け落ちて、ゴーマン役のウィリアム・ホープの頭部を直撃するなど、撮影現場では事故が多発していたらしい。
●偶然に役をゲットしたビル・パクストン
お調子者でヘタレな海兵隊員ハドソンを演じているビル・パクストンは、本来この映画にキャスティングされていなかった。しかし、プライベートでも仲がいいジェームズ・キャメロンに「俺にも何か役をくれよ」と冗談で頼んだら何と本当に採用されてしまう。慌てて、既に内定していた『ポリスアカデミー3』のオファーを断ったらしい。
●ビショップのナイフ芸にクレーム
アンドロイドのビショップが、指と指の間に高速でナイフを突き立てる”ナイフ芸”を披露するシーンについて、ヒックス役のマイケル・ビーンは長年疑問を感じているという。「この場面には以前から納得できない。ハドソン(ビル・パクストン)の手の方が下になってるのに、どうしてあんなに怖がるんだよ?失敗しても自分がケガするわけじゃあるまいし。ビビリすぎだろ」とのこと。たしかにその通りだ(笑)。
●ビショップ、牛乳に悪戦苦闘
クライマックスでクイーン・エイリアンに体を真っ二つにされ、口から白い液体を噴き出すビショップ。あの液体の正体は牛乳とヨーグルトを混ぜたもの。ところが、どうやらその牛乳が腐っていたらしく、撮影中にランス・ヘンリクセンの体調がどんどん悪くなっていった。しかし、スケジュールがギリギリだったため、牛乳を取り変えただけで撮影はそのまま続行されたとのこと。酷い話だ(笑)。
●特撮のトリックがモロバレに!
そんな気の毒なヘンリクセンさんが、クイーンに下半身を引きちぎられて床に転がっているシーンに注目。この場面は床に穴を開けて役者が体を突っ込み、下半身がちぎれているように見せかけるという古典的な方法で撮影している。ところが、良く見るとヘンリクセンの腰の部分と床の穴が(一瞬だが)丸見えになっているのだ。これはキャメロンもうっかり見落としていたらしく、「こんなに酷い特撮なのに、劇場で公開するまで全く気付かなかったんだよ」と大いに反省(なおブルーレイ版では修正されている)。
●キャメロンと作曲家が大喧嘩!
作曲を担当したジェームズ・ホーナーは、非常にタイトなスケジュールの中、編集途中の映像のみで作曲するように迫られた。しかも、録音直前に大幅な変更が生じ、更に不眠不休でようやく書き直した音楽にもジェームズ・キャメロンが文句をつけたため、ついに「時間が無いのにやってられるか!」とブチ切れてしまう。この事件でキャメロンと険悪になり、その後しばらく絶縁状態が続くものの、11年後の『タイタニック』で再びタッグを組み、2人は念願のオスカーを手にしたのだった。エエ話やな〜(^_^)
ヒックス、ハドソン、そしてエイリアン・ウォーリアーの3種類セットで劇中のシーンを完全再現できるぞ!
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