昨日、金曜ロードSHOW!にて『デイ・アフター・トゥモロー』が放送された。監督は、「人類が大変な災害に襲われてエラいこっちゃ!」な映画(いわゆるディザスター・ムービー)で良く知られているローランド・エメリッヒだ。
エメリッヒ監督といえば、超巨大UFOが地球に攻めて来るSF映画『インデペンデンス・デイ』で観客の度肝を抜きまくり、以降、良く言えばスケールのでかい、悪く言えば大雑把な映画ばかり撮っているイメージだが実際はどうなのだろう?
というわけで、本日はローランド・エメリッヒ監督の過去の作品歴について色々と書いてみますよ。
●『MOON44』(1990年)
内容は「”44番目の月”と呼ばれる荒廃した惑星を舞台に、戦闘ヘリコプターを操る男の孤独な戦いを描いたアクション映画」で、この作品には後に脚本家としてコンビを組むディーン・デヴリンが俳優として参加している。
当時、アメリカで売れない役者をやっていたデヴリンは、出稼ぎでドイツへやって来て『MOON44』に出演することになったものの、あまりにもシナリオが酷かったため、「せめて僕のセリフだけでも自分で書き直していいですか?」とエメリッヒに確認し、OKをもらう。
すると数日後、デヴリンが泊っていたホテルの部屋にエメリッヒが訪ねて来て、「他の俳優達から”どうしてあいつだけまともなセリフを喋ってるんだ!”と苦情が出ている。悪いけど、他のセリフも全部書き直してくれないか」とデヴリンに依頼。こうして、監督:ローランド・エメリッヒ、脚本:ディーン・デヴリンの最強コンビが誕生したのである。
●『ユニバーサル・ソルジャー』(1992年)
本作でディーン・デヴリンは脚本のリライトを担当し、さらに制作現場に張り付いて全ての行程を体験(この経験をもとに次回作の『スターゲイト』ではプロデューサーも務めることになる)。なお、映画は1億200万ドルのスマッシュヒットを記録し、エメリッヒには次々と監督の依頼が舞い込むようになった。
●『スターゲイト』(1994年)
また、本作は『2001年宇宙の旅』の影響も受けており、「スターゲイト」という名前は『2001年〜』の主人公が異星人の作ったワープ装置に突入して宇宙の彼方へ飛ぶシーンから拝借している。この作品は1億9600万ドルの大ヒットを記録し、エメリッヒの評価はますます高まっていった。
●『インデペンデンス・デイ』(1996年)
しかし、すでにVFXその他で巨額の費用を投じており、FOXとしてはタイトルにまでお金を掛けたくなかった。そのため、公開ギリギリまで『Independence Day』という言葉を使わず、『ID4』という奇妙な略号がポスターや予告編に使われていたのである。
ちなみに、巨大宇宙船の攻撃でニューヨークの街並みが炎の海に飲み込まれるシーンは、当初CGで作られる予定だったが「費用が掛りすぎる!」と反対されたため、ミニチュア模型で作った街並みのセットを縦に設置し、カメラを真上にセットして下から炎を吹き上げる、という方法で撮影。
この「CGを使わないアナログ特撮」が見事な効果を発揮し、「F/A-18と小型宇宙船の追跡シーン」なども全てミニチュアで撮影された(なお、これを観た樋口真嗣は”ニューヨークの街並み”を”渋谷”に置き替え、『ガメラ3』でほぼ同じビジュアルを再現している)。
興行収入は日本だけで66億円、全世界で8億ドルを超える特大のメガヒットを記録し、エメリッヒ監督の評価は決定的なものとなった。
●『GODZILLA』(1998年)
エメリッヒ監督はエンパイア誌のインタビューにて、「ゴジラには全く興味がなかったので4回断った。しかしそれでも強く要望されたため、いい加減な脚本とデザインを提出し、”これなら向こうから断るだろう”と思っていたらゴーサインが出てしまい、仕方なく引き受けた」とコメント。ひどい話だ。
ただし、フルCGや巨大なアニマトロニクスで作られたゴジラの造形は非常に素晴らしく、「『ゴジラ』と思わなければそれなりに面白い」と擁護する声もチラホラ。なお、日本では興行収入30億円を超える大ヒットを記録している。
●『パトリオット』(2000年)
●『デイ・アフター・トゥモロー』(2004年)
●『紀元前1万年』(2008年)
●『2012』(2009年)
●『もうひとりのシェイクスピア』(2011年)
●『ホワイトハウス・ダウン』(2013年)
なお、同時期に『エンド・オブ・ホワイトハウス』というほぼ同じ内容のアクション超大作が公開され、「あれ?どっちの映画だっけ?」と混乱する観客が続出した模様。
●『ストーンウォール』(2015年)
しかし世間の評価はかなり厳しく、「頭が麻痺するほど粗末な映画」、「『紀元前1万年』よりも歴史考証が不正確」などと批判が殺到したらしい(興収はたったの29万ドルで、エメリッヒ監督の過去最低記録を叩き出す)。
●『インデペンデンス・デイ・リサージェンス』(2016年)
というわけで、ローランド・エメリッヒ監督のフィルモグラフィをざっくり振り返ってみたんだけど、「やはりこの人はディザスター・ムービーが一番得意なんだなあ」と思わざるを得ない。
よくマイケル・ベイ監督と比較されがちだが、エメリッヒ監督が時々”真面目な映画”を撮っているのとは対照的に、ベイ監督は一貫して派手なアクション映画を撮り続けている。
もしかするとエメリッヒ監督の中では「いつまでもそういう作風ばかりではダメだ」という思いがあるのかもしれないが、「真面目な映画を作る」 → 「コケる」 → 「派手な映画に戻る」というサイクルを何度か繰り返している印象だ。
なので、もうそろそろ開き直って「とことんディザスター・ムービーを極めてやるぞ!」的な体制になってもいいのではないだろうか。マイケル・ベイみたいに(^_^)
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