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ジャッキー・チェン主演『ライジング・ドラゴン』映画感想(ネタバレ)


■あらすじ『19世紀の清王朝時代。英仏軍の進出により、十二支をモチーフにした国宝のブロンズ像“十二生肖”が略奪され、散逸してしまう。そして現代、世界中に散らばった12体のブロンズ像は、それぞれが高額で取引されていた。アンティーク・ディーラーのマックス・プロフィット社は12体すべてを手に入れるべく、その収集を“アジアの鷹”と呼ばれるトレジャー・ハンターのJCに依頼する。高額の報酬に惹かれて依頼を受けたJCは、さっそく精鋭メンバーによる特殊チームを結成、秘宝を追って世界各地へと繰り出していくのだったが、そこには想像を絶する波乱が待ち受けていた!アジアが世界に誇るスーパー・スター、ジャッキー・チェンが、自身最後のアクション大作と公言し、自ら監督・製作・脚本も務めて撮り上げた超大作娯楽活劇!』



ジャッキー・チェンの劇場最新作『ライジング・ドラゴン』を観に行って来ました。今回のジャッキーは監督・製作・脚本・主演という、1998年の『WHO AM I?』以来実に15年ぶりの大活躍を見せており、映画に対する本気具合がヒシヒシと伝わってきます。

しかも「最後のアクション超大作!」などと煽られたら、ジャッキー・ファンを公言する僕としては観ないわけにはいきません。ただ、いかにジャッキーの身体能力が優れていようとも、既に今年で59歳というご老体。還暦間近の疲れ果てた肉体で、果たしてどこまで激しいアクションに耐えられるのか?多くの観客が不安を抱いていたことでしょう。

結論から言うと「ジャッキー・アクションは健在」でした!もちろん、往年の『ポリス・ストリー』や『プロジェクトA』の頃とは比べようもありませんが、近年の『1911』や『新少林寺』を観てガッカリした人でも納得できるぐらいの仕上がりではないかと。個人的な感覚としては、『ドラゴン・キングダム』や『ラッシュアワー3』レベルのボルテージには達しているんじゃないかと思います(あくまでも僕の感覚ですけど)。

その反面、ストーリー的には色々酷いことになってます(苦笑)。「世界に散らばった秘宝を盗み出すトレジャー・ハンターの冒険」という単純明快な物語のはずなのに、不必要にひねくり回して間延びしているような印象でした。途中、明らかに「それ、いらないだろ!」と思えるようなエピソードが入っていたり、突然リアリティを無視したギャグが飛び出したり、全体の完成度は決して高いとは言えません。

特に困ったのが、やたらと政治色が強いこと。列強に侵略されてきた中国の歴史を声高に語り、自国の正当性を堂々と主張するくだりは、昨今の日中関係如実に反映しているようで少々うんざり。全体的に説教臭さを感じました。こういう思想的な内容って、ジャッキーの映画に合わないと思うんだけどなあ(特にアドベンチャーの場合は)。

しかし、基本的に観客がジャッキー映画に求めているのは”凄いアクション”のみなので、まあ問題無いっちゃ問題無いんですけどね(笑)。というわけで、本日は『ライジング・ドラゴン』におけるアクション・シーンの見どころなどをざっくり解説してみますよ。多少ネタバレ気味ですけど、この映画には「あっと驚く意外な展開」とか「感動的な人間ドラマ」などは一切含まれていないので、ネタがバレてもほぼ支障は無いと思います(笑)。


●ローラー・アクション
まずは冒頭、JC率いるハンター・チームがとある軍事施設に潜入するシーン。ここでジャッキーが披露するのが、胴体・背中・両手両足にローラーを装着した”ローラー・ブレード・スーツ”で斜面を疾走する「ローラー・アクション」です。

ローラーを使ったアクションとしては、過去に『五福星』のトラック下くぐり、『バトルクリーク・ブロー』のローラースケート、『スパルタンX』のスケボーなど、様々な技に取り組んできたジャッキーですが、本作で見せるスタントはまさにそれらの最終進化形態と言えるでしょう。

山道を全面閉鎖して行われたこのアクションシーンの撮影は、なんと1ヵ月半にも及んだそうです。その苦労の甲斐あって、通過する車に手をバタバタ添えたり、衝突するトラックをギリギリでかわしたり、コミカルかつスリリングな絶体絶命アクションがてんこ盛り!これぞジャッキーアクションの真骨頂!でも、車やバイクで逃げた方が絶対に早いと思うけどな〜w

●古城アクション
続いてのアクションはフランスのお城が舞台。十二支の一つを盗み出すために、上流階級の屋敷に忍び込むミッションです。古いお城に潜入するアクションと言えば『サンダーアーム』や『スパルタンX』を思い出しますね。ここでジャッキーは「宙に放ったガムを口でキャッチする小技」を披露。本作は『サンダーアーム』の続編なので、お約束の技を見せているわけですな(後半にも出てきます)。

屋根の上をぴょんぴょん飛び越えたり、2階から1階まで降りる場面をワンカットで撮ったり、相変わらずアクロバットなアクションを自然に見せているところが凄い。更に、見事お宝を盗み出し、逃げようとしたら犬に追いかけられ、庭に作られた迷路に迷い込むジャッキー。

このシーンでジャッキーはドーベルマンにお尻を噛まれて病院に運び込まれたそうです(笑)。しかも撮影に3か月も掛かったため、スタッフやキャストのフランス滞在費がとんでもない金額になったとか(^_^;)

無人島アクション
3番目のステージは南太平洋にある無人島。このシーンは北京のセットで撮影したそうですが、あまりにもセットがモロバレすぎて逆にびっくりしましたよ(笑)。こんなにもセット感丸出しであるにもかかわらず、それを隠そうともしないその図太い神経が凄いというか、もう少しやる気出せ!と言いたいです。

実は、僕が『ライジング・ドラゴン』を観て一番ひどいと思った場面がこのシーンでして(苦笑)。安っぽさ全開のセットも問題ですが、ここで登場する海賊の衣装が本当に酷くて参りました。

アフロヘアーのラッパーみたいな奴がいたり、オシャレでカラフルなパンツを履いている奴がいたり、ジャック・スパロウのコスプレしてる奴がいたり、「絶対こんな海賊いねえだろ!」って感じが炸裂してるんですよねえ(-_-;)

中でも衝撃だったのが、ギャグのセンスがあまりにも古いこと。爆発に巻き込まれた海賊が、チリチリの髪の毛で口から白い粉をゴホゴホと吐きながら現れたり、蜂に刺されて顔中がデコボコになったり、”昭和のコント”そのまんまなんですよ。

1978年の『酔拳』にもトンカチで殴られた悪党の頭がデコボコになる、という珍シーンが出てくるのですが、その表現と全く一緒。35年経ってもギャグのセンスが1ミリも進化してない!「本当に平成25年の映画なのか!?」と度肝を抜かれました。

それから、この海賊たちがなぜか日本語を話してるのも気になりましたねえ。「日本人の海賊」ってどういう設定なの?違和感バリバリですよ。おまけに、肝心のアクションもヌルいというかテンポが悪い。完全に合成と分かる合成シーンやワイヤーアクションが満載なので、ちっともハラハラドキドキできません。本当にもう、この無人島ステージだけは丸ごとカットしてもらいたいぐらいです、トホホ。

●工場アクション
4番目の舞台は、敵のアジト。悪徳企業が運営する贋作製造工場内でのアクションシーンです。ジャッキー映画で、クライマックスに工場や倉庫みたいな所で戦うのはもはやお約束(『サイクロンZ』や『プロジェクト・イーグル』他)。本作でも、工場内の設備を最大限に利用し、ソファやカメラの三脚など様々な小道具を駆使した、まさにジャッキーならではのアクションを堪能できますよ。

やっぱり、ジャッキー・チェンはこういう場所で戦ってこそ本領を発揮しますよね〜。実は同じジャッキーが主演した映画でも、サモ・ハン・キンポーとジャッキーではアクションの演出が違うのだそうです。サモ・ハンの場合は、1対1のタイマン勝負が多く、突きや蹴りをしっかり表現して格闘技テイストを強く打ち出すガチ・バトルのスタイル。

それに対してジャッキーの場合は、1対多数の戦いが多く、手近にある小道具を上手く活用しながらギリギリで攻撃をかわし、めまぐるしく動き回りながら相手を倒す、というファイティングスタイルを得意としているようです(突きや蹴りも、多少雑でもいいから自然でリアルなアクションを目指しているとか)。

二人の違いは『サイクロンZ』を観れば良く分かります。後半のベニー・ユキーデ戦はサモ・ハンの演出ですが、前半の船の中でのアクションはジャッキーが演出しているので、殺陣の印象が全く異なっているのですよ。

そんなわけで、ここでのアクションは今までのジャッキー映画における「小道具及び工場内アクション」で培ったテクニックを存分に極めたクライマックスシーンとして、非常に高い完成度を誇っていると言えるでしょう。大満足です(^.^)

●スカイダイビング・アクション
ラストを飾る舞台はなんと大空!スカイダイビングだけなら過去にもやっていますが、今回は空中での格闘戦にも挑んでいます。実際の撮影は地上に設置した巨大送風機の上で行ったようですけど、空中でクルクル回転しながらのアクションはちょっと珍しい。ただ、顔が良く見えないのでジャッキーじゃなくてもいいような気がしなくもないw

そして最後は、火山の頂上から斜面を転げ落ちるという超絶スタントが炸裂!オーストラリアの本物の火山で撮影されたこのシーンは、30分に一度噴火するほどの危険な場所で、しかも鉄片が周囲に降り注いでいる状態だから、常に目を水で洗い流さなければならなかったらしい。いや、こういう場所こそセットで作れよ!正直、噴火口のすぐそばを生身で転がるジャッキー・チェンを見て思わず鳥肌が立った。なぜそこまでするんだあああ!?

●まとめ
というわけで、それぞれのアクションを見れば分かるように、過去にジャッキーがやってきたスタントのセルフ・オマージュというか、「ジャッキー映画の集大成」的なアクションシーンに仕上がっているのですよ。昔からのファンなら過去の名場面を思い出しながら楽しめるし、そうでない人も59歳とは思えぬ軽妙なアクションにハラハラドキドキできるんじゃないでしょうか。

ちなみに、映画の中で”主人公の奥さん”を演じている女性は、なんとジャッキー・チェンの本当の奥さんだそうです。「絶対イヤ!」と拒否する奥さんを「頼む!僕の最後のアクション映画だから出てくれよ!」と無理矢理説き伏せ、ようやく出演してもらったんだとか。最後の記念に、どうしても奥さんと共演したかったんですね。でも、ジャッキーはこの後、『ポリス・ストーリー レジェンド』や『ラッシュアワー4』などへの出演が決まっているので全然最後じゃないんだけどなあ(^_^;)


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