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樋口真嗣監督作品『日本沈没』ネタバレ感想 


「いいか、良く聞け!プレートの断裂は北海道の南部から始まる。九州の出水断層帯も危ない!阿蘇は噴火するだろう。四国から紀伊半島に連なる中央構造線が裂けて南側は沈んでいく。日本の活断層はそのエネルギーに耐え切れず、次々に割れていく!本州中央部、糸魚川静岡間のフォッサマグナが裂け始めたら、その時はもうおしまいだ。富士山の大噴火とともに、日本は一気呵成に沈んでいくんだッ!」というワケで、絶賛上映中の『日本沈没』を観て来ましたよ〜。奇跡は起きます、起こしてみせます!尚、今回思い切りネタバレしてるので、未見の方はご注意下さい。



ううむむむ、なんと言ったらいいのか…。いや、評判が非常に悪いのは知っていたので、「リアリティが無い」とか「草なぎ剛の演技が云々」とか柴咲コウのヘルメットがデカすぎる」などの些細な問題はあまり気にならなかった(『ローレライ』の時にも批判は多かったし)。

また、「N2爆弾ってエヴァじゃねえの?」とか「厚化粧の大地真央が、途中からだんだん磯野貴理子に見えてきて仕方が無い(俺だけか?)」などの困った問題にもこの際目をつぶろう。

あと、お坊さんの役で富野由悠季が出演してたり、日本を見捨てて海外へ脱出する人の役で庵野秀明が出演してることもどうでもいい。

さらに、「後半の展開は『アルマゲドン』のパクリだ!」という鋭いツッコミに対しても、「仰る通りです!」とあえて男らしく正面から受け止めてみせましょう!『アルマゲドン』、嫌いじゃないし(笑)。

しかし、そんな海のように広い心で本作を観たとしても、どうしても許せない点が一つだけある。それがクライマックスのラブシーンだ。最後の決死作戦に赴く草磲剛が、柴咲コウに別れを告げる場面。

これで草なぎ君は生きて帰れないかもしれないから、コウちゃんは「抱いて」と身体を預ける。しかし、なんと草磲君は「できない!」と拒んでしまうのである。

なぜだあああ!?男だったら潔く抱かんかい!いや、別に二人の性交場面を見たいワケじゃないが、明日死ぬかもしれないという危機的状況下において、愛する人の子孫を残そうとするのは人間の純粋な本能であるハズだ。すなわち、“生への執着心”がどれほどあるのかという根源的な部分にも関わっている。

ならば人として、あるいは物語の流れとして、そしてなにより“男”としても、そこは当然抱くのが自然な展開というものだろう。それを拒むとは、なんというヘタレ野郎なんだ、お前は!そんなシチュエーションで断るって、あまりにも不自然だろ!?「抱いて」と迫った柴咲コウの立場はどーなる!?女に恥をかかせるなコノヤロー!

しかも、その後の展開ときたら、「甘〜い主題歌が鳴り響く中、抱き合う二人を延々と映し続ける」という何とも耐え難いシロモノ。おまけに二人の周囲をグルグル回り続けるカメラアングルが最強にダサい!そして長過ぎる!ラブシーンをじっくり見せたいのは分かるが、これじゃ間が持たんぞ!

今時このセンスの古さは、タダ事ではない。いったい、何をどうしたらこんな男子中学生の妄想みたいなシーンが出来上がるのか?と思ったら、どうやら樋口監督自身にも色々と事情があったようで、次のように語っている。

「俺、ラブシーン撮るのって初めてだから、どうしていいか全然分からなかったんですよ。それで、撮影前に剛君とコウちゃんと三人で“さあ、このシーンどうしよう?”みたいな感じで色々話し合ったんです。ああいう場面の演出って、結局自分が今まで何をしてきたかってことが出てくると思うんですよ。だから、いまだにあのシーンを見ると、恥ずかしくて仕方が無い(笑)」

つまり、図らずも樋口監督が今までの人生で培ってきた“恋愛観”みたいなものが、一気にあのシーンで露呈してしまったということなのか。そりゃ確かに恥ずかしいわ(苦笑)。一方、草なぎ君の方はこう語る。

草なぎ:「とにかく樋口監督は凄く熱いんです。特に熱くなっていたのは、小野寺と玲子のテントの中でのシーン。監督自ら小野寺を演じて見せてくれて、“玲子オォ〜!”とか叫んだりしていたんですが、そんなセリフは台本のどこにも書いてないんですよ(笑)」


樋口監督:「いや、実際にラブシーンを剛君の前で演じて見せたのは、ああしろこうしろって言葉で説明するんじゃなくて、俺はこう思うんだ!みたいな事を一生懸命出していこうとすると、いつしか身体が動いちゃってたという事なんですけど(笑)。皆が恥ずかしいと思っているシーンを撮影する為に、まず俺自身が人身御供になったという。ポール・バーホーベンを理想とする演出家としては、脱げと言われたら俺が脱ぐ!ぐらいの心意気で(笑)」

ポール・バーホーベンと言えば、『スターシップ・トゥルーパーズ』の撮影中、裸になるのを嫌がっている役者たちの目の前で自ら進んで全裸となり、「さあ、君たちも脱げ!」とスタッフ全員を全裸にさせて撮影を続行したという、信じられない逸話を残して業界を震撼させた伝説的映画監督である。そんなとんでもないオッサンを「理想の演出家」に挙げている時点で、既に方向性を思い切り間違えているような気もするが、そんな事はこの際どうでもいい。

要するに、樋口監督にとって「ラブ・ストーリーは手に余る題材だった」という事だろう。あるいは、監督自身が“ラブ・ストーリー”というものにあまり関心が無いにも拘らず映画を撮ってしまった為に、このような“魂のこもっていない”作品が出来上がったのかもしれない。だが、旧作の『日本沈没』は樋口監督にとって、特別に思い入れの深い作品だと聞いている。

現に、樋口監督が絵コンテを切ったトップをねらえ!には、「この地方に被害はない」という字幕スーパーなど、『日本沈没』に対するオマージュが満ち溢れていた。しかも、故意か偶然かは分からないが、『トップをねらえ!』のクライマックスシーンは、草なぎ剛が演じる本作のクライマックスと酷似しているのである。

トップをねらえ!』の主人公タカヤ・ノリコはブラックホール爆弾を起爆させるため、限界深度を遥かに超える凄まじい圧力に耐えながら木星の中心部へと潜っていく。愛する人たちにはもう二度と会えないと知りながら、それでもなお命を懸けて使命を全うしようとするその姿は、この上なく美しく感動的だった。

そしてこの『日本沈没』でも、主人公の草なぎ剛は愛するヒロインや日本を救うために、限界深度を遥かに超える凄まじい圧力に耐えながら深海へと潜っていくのである。

しかし、全く同じシチュエーションなのに、草なぎ君の姿には1ミリたりとも感動できない。この差はいったい何なんだ?

本作からは、『ローレライ』の時に感じた樋口監督の“熱い男の心意気”を感じることは出来ず、まるで一昔前のトレンディドラマみたいな、単に“恋愛映画の形式”をなぞっただけの、当たり障りの無い作品になってしまっている事が非常に残念だった。

まさに、「ああ、奇跡は起きなかったか…」(byタシロ艦長)という心境である、トホホ。『日本沈没』にラブ・ストーリーなんぞ必要ない!頼むからもっと男臭くて、もっと熱い映画を撮ってくれ!

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