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スタッフが次々と脱走!『超時空要塞マクロス』の制作現場はブラック企業ばりの修羅場だった!?

超時空要塞マクロス−愛・おぼえていますか
超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか

あらすじ『人類誕生より遥か昔、宇宙にはプロトカルチャーという高度文明の種族がいたが、男=ゼントラーディ軍と女=メルトランディ軍に分れて50万年以上も戦っていた。ところが2009年、平和な地球を突如ゼントラーディ軍が襲う。迎撃する地球側の巨大宇宙戦艦マクロスは、トラブルを起こして太陽系外縁にとばされてしまった。そして地球との交信も絶え、自力で地球への帰還の途につくマクロス。艦内には彼らのための居住区の他に商業地区もあり、鑑自体が一つの宇宙都市を形成していた。だが、人気歌手ミンメイのコンサートの日、マクロスは再びゼントラーディ軍の攻撃を受け大混乱。若い戦闘パイロットの輝はミンメイを助け、いつしか二人の間に恋が芽生える事に…。宇宙戦争下の愛と、戦いにゆれ動く若者群像、そして人類誕生の秘密を描く、同名TVシリーズを劇場用に新たに製作したSF超大作アニメーション!』



超時空要塞マクロスは1982年10月から全36話がTV放送され、熱狂的なファンを獲得した伝説的アニメである。そして84年夏、その人気を受けてTVの内容をダイジェストする形で新たに描き起こした長編映画愛・おぼえていますか』が劇場公開された。

本作は、『ヤマト』『ガンダム』に関わったスタジオぬえがマニアックなこだわりと気恥ずかしいラブストーリーをそのままロボットアニメに突っ込んだマニア狂喜乱舞の作品であり、リン・ミンメイ飯島真理)の歌に敵も味方もファンもクラクラ。

何よりも、『マクロス』の映像は衝撃的だった。その代表格として挙げられるのがミサイルの一斉発射だ。リアルでありながら、高速で視点が入り乱れるように動いていく無数のミサイル!本放送当時の各アニメ雑誌は、この映像をクリエイトしたアニメーター:板野一郎の名前をとって板野サーカス命名した。

ミサイルが噴射煙を糸引くように飛跡を残しながら空間を切り裂いて飛ぶ様は、一度見たら忘れられないほどの凄まじいインパクトを与えた。ミサイルや噴射の煙も、アニメーターが生命を与え演技する役者であるということを、マクロスの映像は証明して見せたのだ。

「闘うアニメーター」の異名を取っていた頃の板野一郎は、メカや爆発やアクション場面を得意としていた。しかし、そんな彼も初めからアニメーターを目指していたワケではない。むしろ学生時代はバイクに狂い、アニメなど見向きもしなかったそうだ。ところがある日たまたま道に落ちていた新聞を拾ったら「アニメーター募集」の広告が載っており、見学のつもりで事務所に行ったところ、成り行きで試験を受けさせられたという。

この世界に入ったのは、まさに全くの偶然としか言いようがない。タップの使い方はおろかトレス台の存在すら知らず、原画を目の前の棚に貼り付けて”目視”で似せようと努力した動画時代から、彼の周りにまとわりついていたのはアニメーターとしてのそれよりも“変わり者”としての評判の方が多かった。

板野一郎にまつわる面白エピソードは枚挙に暇が無く、「夜はアニメを描いて朝は新聞配達をしているらしい」とか、「スタントマンのバイトでビルの二階から飛び降りたらしい」とか、「霊感が強くてスタジオで幽霊を見たらしい」とか、全くそのテの話題には事欠かない存在だった(作画作業中に眠くなると自分の顔をグーで殴って睡魔と闘い、たまに強く殴りすぎて鼻血を出していたという逸話もあり)。

そんな彼を一躍有名にしたのが『伝説巨神イデオン』における空中戦、とりわけイデオンの全身から一斉に発射されるミサイル群の作画だった。そのスピード感や爆発の絶妙なタイミングはまさに神業!何しろ何十発ものミサイルがそれぞれ一つ一つ、まるで生き物のように別々に動くのだからただ事ではない。

ミサイルは速いもの、という固定観念を打ち砕き、本物では決して有り得ない速度で描くことによって、より「本物らしく」見せる。板野が提出した「見せるアニメのメカの動き」という理念が果たした役割は非常に大きいと言えるだろう。

では、”板野サーカス”はどのようにして生み出されたのか?

少年時代人造人間キカイダーの大ファンだった板野一郎は、バイクの免許を取ったら早速キカイダーのマネをした。バイクの前輪フレームにロケット花火を大量に取り付けて、運転しながらロケットを発射するという「ゴッコ遊び」に熱中したのである。

ロケット花火は案外速度が遅く、飛んでいる花火を自分のバイクが追い越す時がある。高速で移動する物体が止まって見えるような奇妙な映像世界。そんな独特の視覚体験から”板野サーカス”は生み出されたそうだ。

だが、82年に『マクロス』が放映されていた当時、僕はほとんどTVを見ていなかった。なぜならTV版の『マクロス』は、もう有り得ないぐらい作画がボロボロだったからである。当時『マクロス』を作っていたスタジオは大変な人手不足で、まだ大学生だった庵野秀明(『エヴァンゲリオン』の監督)や山賀博之(『オネアミスの翼』の監督)までもがスタッフとして駆り出されていたらしい。

そして総監督の石黒昇が山賀に「お前、車の免許持ってないのか。しょうがねえなあ、じゃあ絵コンテでも描いとけ」と、いきなりオープニングの絵コンテを描かせるなど、とんでもないことばかりやっている現場だったのだ。

しかも発注した原画は全然上がって来ないわ、スタッフは次々と逃げ出すわ、メチャクチャな状況の中で『マクロス』は作られていたのである。山賀曰く、「テレビで放映する商業アニメなのに、作り方は自主制作並みだった」というのだから呆れ果てて言葉も出ない(「オンエアに間に合うかどうか」すら分からないほどギリギリだったという)。

そんな”毎回綱渡り”みたいなTVアニメ『マクロス』だったが、中でもズバ抜けて作画の仕上がりが遅く、業界関係者の間でもいまだに語り草となっている回が存在する。それが第9話「ミス・マクロス山賀博之第一回演出作品である。

当時の山賀は大阪芸術大学の学生だったのだが、マクロス本編の演出を任されたことで「自分が思う通りにやってみたい」と考えたのだろう。なんと、すでに完成していた原画を全部捨ててしまい、大学の仲間を呼び寄せて勝手にアニメを作り始めたのである。しかし、所詮は素人なのでなかなか計画通りにいかず、スケジュールがどんどん遅れてえらいことに…

アニメの作画が遅れて何が困るかといえば、声優さんのアフレコの時に絵が入らなくて困るのだ。この場合、”線撮り”りをしなければならない。セルの仕上がりが間に合わないので、動画をそのまま16ミリフィルムで撮ってしまうのだ。鉛筆で描かれた線画がそのまま動いて、それを見ながら声を入れる。これが動画撮影、いわゆる”動撮”というやつだ(映画『ザブングル・グラフィティ』でもネタにされたことがある)。

ザブングル・グラフィティ
ザブングル・グラフィティ

”動撮”が間に合わなかったら原画を撮る。これが”原撮”。これでも間に合わなかったら”レイアウト撮影”。さらに間に合わなかったら”コンテ撮影”になって絵コンテをそのまま撮ってしまう。でもこれだとキャラの口が動かないので、しゃべるタイミングが分からない。そこで、しゃべり始めてから終わるまでを一本の線で表現するワケだ。これが”本物の線撮り”である。

しかし、当然ながら線撮りは声優さんに嫌がられる。線だけでは演技のしようがないからだ。スタッフが「申し訳ありません。今回、どうしても作画が間に合わなくて3カットだけ線撮りがあります」と言うと、怒って帰ってしまう声優さんもいたほどだ(特にクローディア役の小原乃梨子さんがよくブチ切れていたらしい)。

だが、問題の第9話「ミス・マクロス」はそんな生易しいレベルではない。なんと初めから終わりまで、全部線撮りだったのだ!正確には何箇所かコンテの絵が入っているだけで、ほとんど線だけという凄まじい有様だったらしい(もちろん、オンエアまでにはどうにか間に合わせているが)。

後に、山賀が宮崎駿監督にこの話をしたら烈火のごとく怒り出し、「お前そこに座れ!」と言われて延々と説教されたそうだ。「線撮りは無いのが当たり前だよ。しかも僕らが線撮りといったら、普通は動画撮影のことを言うんだよ。動撮があってはじめて”すみません”と謝るもんだ。それなのに、動撮でもなければ原撮でもなければレイアウト撮影でもなければコンテ撮影でもなくて、ホントの線撮りとは何事だッ!」と、それはもう大変な怒りようだったらしい。最低ラインの仕上がりからさらに何段階も離れているのだから、宮崎監督が怒るのも当然と言えよう。

この第9話はアニメ業界で話題となり、さらに製作母体のタツノコプロからもクレームが殺到。そしてついに山賀は石黒監督から呼び出され、「あのな、ちょっと言いにくいんだけど…。お前、タツノコを出入り禁止になっちゃったんだよ」と言われてしまったのである。

しかし、山賀はそろそろ学校に戻って自主制作アニメ『DAICONⅣ』の準備をしなければならなかったので「ああ、そうですか。じゃあ辞めますよ」とあっさり辞めてしまったのだ。しかも『DAICONⅣ』を作る為に板野一郎美樹本晴彦など、『マクロス』のスタッフほぼ全員に作画を依頼していたというのだから恐るべし(どんだけ図太い神経なんだw)。※1998年3月発行『クイック・ジャパン vol.18』に掲載された山賀博之の証言より

だが、その後も『マクロス』の現場はどんどん状況が悪化していき、第11話『ファースト・コンタクト』でついにアニメ史に残る惨劇が起きる。完全にスケジュールが破綻し、作画が間に合わなくなったのだ。通常、原画と原画の間には動画を入れて動きをなめらかにする(これが無いとカクカクした動きになるから)。しかし、第11話の制作時には動画を描いている時間すらなくなり、原画だけを撮影したフィルム(原撮)をそのままオンエアしてしまったのだ。

この第11話がテレビで放映された時、全国のアニメファンが凍りついたという。もはや放送してはいけないレベルに達していたからだ。いったいなぜ、こんなことになってしまったのか?その理由はアニメの制作工程にある。今では海外に動画を任せるのが当たり前になっていて絵のレベルも向上しているが、『マクロス』をやっていた当時はまだクオリティが一定ではなかったため、”事故”が多発していたらしい。

例えば、韓国の下請け(スタープロ)に作画を回したら、とんでもない絵が上がって来たという。それは「バルキリーの変形シーン」なのだが、なにやら紙飛行機をグシャグシャにしたようなモノが何十枚も描いてあるのだ。「こいつはいったい何が描きたかったんだろう?」とスタッフ一同は頭を悩ませたが、当然そんな絵は使い物にならない。

仕方なく「板野さん、これ直して下さい」と持っていったら、板野一郎大激怒。「こんなモン、直せるようなレベルじゃない!君らはビフテキに何か足したり引いたりしたらケーキになるとでも思ってるのか!」と、テーブルをひっくり返さんばかりの凄まじい勢いで怒られたそうだ。

でも、今さらリテイクを出している時間は無いし、描き直している時間ももちろん無い。で、どうしたかというと、変形前の絵と変形後の絵だけを使い、変形の瞬間は手前に爆発シーンを入れてごまかしたのである(苦肉の策だが、逆に展開がスピーディになって良かったそうだw)。

この他にも、絶望的にスケジュールが間に合わなくて、仕方なく今までの総集編みたいな話をでっち上げたり、キャラクターの顔が崩れ過ぎて誰が誰だかさっぱり分からなかったり、アニメなのに紙芝居みたいな動きだったり、業界関係者を震撼させるようなとてつもない伝説を次々と生み出していったのである。当時の凄まじい製作状況を、メカ作監板野一郎は次のように語っている。

マクロス』第1話で、もう死に物狂いで戦闘シーンを作ったんです。それで第2話は全部、韓国のプロダクションに外注したんですけど、仕上がりがメチャクチャひどいんですよ!やっぱり文化も違うし、スケジュールも無いんで、みんなそれを見てホッチキスで留めて後ろに放り投げていく。あまりにも酷い絵は破いてゴミ箱に捨てて、最初から全部描き直し、みたいな。

それでどうにか第2話までのストックができたところで、ちょうどその同じ日に放送が始まるはずだったレインボーマンというアニメがですね、穴を開けてしまいまして。それで『マクロス』は急遽、第1話と第2話を同時に放送するスペシャル版になってしまったんですよ!そのおかげで作り貯めていたストックが無くなって、かっこいい戦闘シーンが5本に1本ぐらいしかできなくなってしまったんです。

マクロス』の作画に入る前、一応、監督の石黒さんと相談して、アートランドの美樹本の班の方がキャラクター中心の芝居を1本。そして僕がアニメフレンド組っていうか、アートランドから出向で行っていて、庵野秀明とか、ほとんど新人だけ集められて”メカ班”っていうチームが作られまして。それが5本に1本、それからアートランドの回がキャラクターの綺麗な回と、メカの凄い回が5本に1本か2本だったんですね。その中の2本をフルに使ったヤツを「1・2話スペシャル」として放送してしまったものだから、いきなりストックが無くなって…。

まあ、そういうひどい状況でテレビアニメがスタートしたわけで、最初から既に地獄でした(笑)。俺たちはもう、「雨が降らないでくれー!晴れてくれー!野球やってくれー!」って、スタッフみんなで神様にお願いしながら『マクロス』を作ってましたからね。「1回でもオンエアが伸びるといいな」って。少しでもスケジュールに余裕ができるから(笑)。

とにかく、TV版の『マクロス』は本当に酷い環境でした。まず、制作進行が逃げ出していくんですよ。それも、外回りの途中で、赤信号の道路に会社の車を乗り捨てて。それで、警察から電話がかかってきまして。「そこの路上にタツノコの車が止まってる」と。「ドライバーがいないので引き取りに来てくれ」って。『マクロス』の製作中には、ほとんどの制作進行が逃げて辞めちゃって。誰もいなくなってしまったんですよ。

制作進行がいなくなると、アニメーターが描いた絵を回収できなくなるから作業がストップしてしまうんです。それで、しょうがないから俺、作画監督なのにオートバイで平野さんのスタジオにレイアウトのコピーを届けに行ったり動画を回収しに行ったり、進行みたいなこともやりながら。しかも自分で原画も描いてましたからね。もうムチャクチャですよ!すごい戦争状態というか、戦いでしたね。そんな生活を続けてたら、10話目ぐらいにぶっ倒れて入院してしまいました(笑)。

で、アニメーターもだいぶ逃げ出して、最後はもう、プロデューサーと制作デスクぐらいしか残ってなくて。おまけにプロデューサーは免停になってるし(笑)。そのプロデューサーがまたひどいんですよね。原画で上がってきた絵をほとんど捨てちゃって、1枚だけにして。「もう仕上げが間に合わないから」って言うんですよ。もう塗りが間に合わないから、ミサイルの煙もマジックみたいなもので適当に描いちゃってるんですよ。もう塗らなくていい!これでいい!って。

それって完全に手抜きですよね?いくらスケジュールが無いからって、せっかく描き込んだ影の指定を全部取られて影なしにされたり、色トレスも抜かれたりして。挙句の果てには動画も全部抜かれて「止メ絵でいいよ、こんなもん!」という感じで、原画だけでオンエアされたりしたんです。演出や作監が相談して決めるならともかく、上の判断で勝手にそういうことをやってるパターンが非常に多かったんですよ。

最終的には、「放送事故があっても最低6秒間は耐えられる絵にしよう」って考えになっていきましたね(笑)。止メ絵なら10秒耐えられればそれでいい。動いているなら、原画の流れの中の1枚が3秒耐えられればいい、とかね。やっぱり、理想でモノは作れないんですよ。だって当時、俺は即席ラーメンも食べられなかったんだから。いや貧乏だったからじゃなくて、あまりにも時間が無くて。即席ラーメンだと両手を使っちゃうんで、良くてサンドイッチ。片手でサンドイッチを食べながら必死で原画を描いてました。そういう状況の中で『マクロス』は作られていたんです。

(「BSアニメ夜話板野一郎のコメントより)

このようにTV版『超時空要塞マクロス』は、「よくこれをテレビで堂々と放映できたもんだ」と感心するぐらいの凄まじいアニメだったのだ。もはや、ほとんど放送事故だったと言っても過言ではないだろう。

基本的に、テレビアニメのシリーズを回しているスタジオで余裕のある所なんかほぼ存在しないと言っていい。大体どこのスタジオも、時間もお金も人間もギリギリでやっているのが実情だ。そんな厳しい業界の中でも、『マクロス』のギリギリ度合いは他を圧倒していたのである。

気の毒なのはそこで働くスタッフたちだ。中でも山賀博之庵野秀明貞本義行など、後のガイナックスの中心的メンバーが初めて体験した「プロの現場」が『マクロス』だったことは、まさに不幸としか言いようがない。全員「これが業界の標準なんだ」と勘違いしてしまったのである。

そのため、自分たちで『ナディア』や『エヴァ』を作った時も常にギリギリで、「いつ放送できなくなってもおかしくない状況」だったらしい。特に『ナディア』なんか、製作途中で時間もお金も底を尽き、”ギブアップ寸前”の状況であったという(湾岸戦争が勃発して放送が延期されたおかげで、何とか最終回まで持ちこたえることが出来た)。ある意味、彼らは『マクロス』の犠牲者と言えるかもしれない。

そんな、どうしようもないTV版の反動からか、劇場版『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』のクオリティは今観ても絶句するほど素晴らしい。間違いなく、当時の作画レベルの頂点を極めた作品だろう。この劇場版に関して、板野一郎は次のようにコメントしている。

結局、テレビ版はボロボロのままで終わって、僕たちはあれを”負け試合”だと思ってたんです。第1話と第2話は全部直せたから良かったんだけど、その後はもう二百三高地みたいなもので、劣化して死んでいくしかない。「早く指揮官が止めてくれないかなぁ」みたいな(笑)。

ただ、自分たちが掲げている理想と、オンエアされているものが全く違うという状況の中で、「”俺たちは本当はこういうものが作りたかったんだ!”というものを、1本まともに作りたいね」という話が、現場で徐々に出始めていたんです。

自分としてはまあ、何を作っても悔いは残るんですけど、やっぱり自分なりにやり切った感がある作品っていうのは、0号とか初号とか試写会を見に行くのが楽しみなんですよ。でもTV版の『マクロス』の場合は、試写を見るどころか、もうオンエアが怖くて怖くて(笑)。

もらったDVDも封印(笑)。1回も見ないで、ビニールすら開けないまま、押入れの奥の方に隠してありますからね。いや、今見たら本当に”ふざけんな!”って思いますよ。”これで上手いと思ってんのか、お前は!”っていうぐらいダメダメだったんで。

だから劇場版をやり切れて良かったなあというか、劇場版を作ってないと言い訳できないじゃないですか?「リベンジ」なんてカッコいいもんじゃなくて、多分「言い訳」なんですよ。言い逃れっていうか。「すいません、本当はちゃんと描くとこのぐらいはできるんですよ。ごめんなさい!」っていう(笑)。本当は、これを目指してやってたんだけど、どういうわけかこんな風になってしまい、お見苦しいものを見せてしまいました。大変申し訳ない!みたいな(笑)。

(「BSアニメ夜話板野一郎のコメントより)

このようなTV版の悔しい想いを晴らすかのように、劇場版の作画にはアニメーターの情熱がほとばしっている。TV版では「時間が無い」との理由でカットされていた”影”の表現も、「これでも食らえ!」と言わんばかりの勢いで2段影、3段影をつけまくり!特にメカの影は特徴的で、まるで溶けたようにグニャグニャとつけられた影は、メカを画面に映えさせるための定番デコレーションとなっていた。

さらに、劇場版のために集結したクリエイターたちも凄まじく豪華で、作画監督板野一郎美樹本晴彦平野俊弘作監補佐に飯田史雄、垣野内成美、原画に庵野秀明合田浩章、北久保弘之、なかむらたかし森本晃司結城信輝など、超一流のメンバーがズラリと並んでいる。

特に美樹本晴彦が自分で描いたミンメイは、信じられないほどの美しさを醸し出し、観る者の心を捕らえて放さない!しかも、ミンメイの歌をバックに、渾身の板野サーカスが宇宙空間に炸裂する!本作を観る場合、ヒロインに惹かれるもよし、バルキリーに心躍らせるもよし。

しかし、同時にメカアクションの描写やキャラクターの動きなどをじっくりと鑑賞してみて欲しい。各アニメーターたちが「本当はこれがやりたかったんだよ!」という執念を込めて描き込んだ驚異の作画。そういった緻密なヴィジュアルこそ、劇場版『マクロス』の真骨頂なのである。


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