先月7月16日、映画監督のジョージ・A・ロメロが、肺がんのため77歳で死去したとニュースで報じられました。ロメロ監督は“ゾンビ映画の父”とも言われ、1968年の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』以降、『ゾンビ』や『死霊のえじき』などの優れたゾンビ映画を次々と制作。
さらに、その影響を受けた他の監督が様々なゾンビ映画を生み出し、当初はマイナーなジャンルだったゾンビ映画の認知度を一気に押し上げたのです。近年はゲームのキャラクターにも採用されるなど、今や完全に”ゾンビ”というワードは一般化したと言ってもいいでしょう。
だがしかし!
世間の人たちは、みんなゾンビ映画を観ているのでしょうか?そもそも怖がりの人はそういう映画を観ないだろうし、いくら世の中に大量のゾンビ映画が溢れていても、そのほとんどは知られていない可能性があるのでは…?
それは非常にもったいない!
というわけで本日は、怖がりな人でも大丈夫なゾンビ映画をいくつかピックアップしてご紹介しますよ。もちろん、ゾンビが出て来る以上、人間をムシャムシャと貪り喰う場面も当然あるわけですが、エグい映像が苦手な人でもギリ耐えられる程度の作品を選んでいるのでご安心ください(^_^)
まずは定番のこちらから。ゾンビ映画を観たことがなくても、この作品を知っている人は割と多いんじゃないでしょうか?『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』のエドガー・ライト監督と、『ミッション・インポッシブル』シリーズのサイモン・ペグ。
ジョージ・A・ロメロ監督の『ゾンビ』をこよなく愛するこの2人が作った本作は、全編ゾンビ愛に満ち溢れたホラーコメディとして圧倒的な面白さを実現し、年季の入ったゾンビファンからも「『ショーン・オブ・ザ・デッド』はいいぞ!」と絶賛されるほどのクオリティを獲得しました。
しかもそれだけでなく、本作を観たロメロ監督も大喜びし、なんとエドガー・ライトとサイモン・ペグを自身の監督作『ランド・オブ・ザ・デッド』(2005年)にカメオ出演させたのですよ。凄いですね〜!
●『ゾンビランド』
『ソーシャル・ネットワーク』のジェシー・アイゼンバーグや、『ラ・ラ・ランド』のエマ・ストーンなど、意外と出演者が豪華なゾンビ映画です(ウディ・ハレルソンやビル・マーレイも登場)。
胃弱で引きこもりのオタク少年が久しぶりに外へ出てみたら、世界はゾンビで埋め尽くされていた!という絶望的な状況にもかかわらず、悲壮感はゼロ(笑)。
さらに、自ら「ゾンビの世界で生き残るための32のルール」を作り、それを実行しながら両親の住むオハイオ州へ向かい、その道中で色んな人々に出会う…というゾンビ版青春ロードムービーなのですよ。鑑賞後は妙に爽やかな気分になる不思議なゾンビ映画です。
●『ロンドンゾンビ紀行』
ある日突然、ロンドンの街に大量のゾンビが発生!何も知らずに老人ホームで暮らしているお爺ちゃんやお婆ちゃんに、ゾンビの魔の手が迫る…!
と聞くと実に怖そうですが、実際に観てみると、「ゆっくり襲ってくるゾンビ VS ヨロヨロと逃げるジジイ」という”映画史上最も緊迫感のない超低速デッドヒート”が繰り広げられるのですよ。
ゾンビに襲われそうになっているジジイを見て「お爺ちゃん!後ろ!後ろ〜!」と叫んでいる場面は、完全に「志村〜!後ろ!後ろ〜!」の世界ですね(笑)。ゾンビ初心者はぜひどうぞ。
●『ゾンビーノ』
ゾンビを鎮静化させ飼いならせる技術が実用化された世界で、「人間とゾンビの共存」を描いた本作は、単なるコメディではなく、人間ドラマとしても優れています。
苛められっ子で、いつも寂しく一人で過ごしていた少年ティミーは、ある日一人のゾンビと出会い、一緒に遊ぶようになりました。「ファイド」と名付けたゾンビと次第に仲良くなっていくティミー。
しかし、別のゾンビにティミーが襲われる事件が勃発!そのピンチに駆け付けたのは…なんとファイドでした!少年とゾンビの奇妙な友情を描いた秀作です。でも「愛と勇気のゾンビ・ファンタジー」って何だろ?
●『ゾンビスクール!』
とある小学校で、給食のチキンナゲットを食べた生徒に異変が発生。なんと小学生が全員ゾンビになって、先生たちに襲いかかって来た!果たして、生ける屍の巣窟と化した小学校から脱出できるのか…?
教師のクリント(イライジャ・ウッド)は、生き残った他の先生たちと協力してゾンビに立ち向かうんですけど、「小学生がゾンビ」という設定を利用して、大人が子供をボコボコにしばき倒すという、倫理的にだいぶアウトな映像が続出します(笑)。
●『ゾンビコップ』
「いくら撃っても死なない不死身の強盗団」に出くわした2人の刑事が、謎の事件を調べているうちに自らもゾンビになってしまう…という刑事アクションのゾンビ版です。
この映画、とにかくテンポが抜群に早い!『ターミネーター』や『ランボー/怒りの脱出』などの編集を担当したマーク・ゴールドブラッドが監督してるので、次から次へとストーリーが展開していくのですよ。
やがて2人は死体を蘇生させる技術を開発した会社を突き止めるのですが、捜査の過程で潜入した中華料理屋でブタの丸焼きに襲われるなど、面白アクシデントの連続!
もちろん、カーチェイスあり、派手な銃撃戦あり、アクション映画としての見どころも盛りだくさん。いや〜、バディ・ムービーとゾンビがこんなに相性がいいとは思いませんでした。
●『ゾンビ処刑人』
バディ・ムービーをもう一つ。こちらは刑事じゃなくて、主人公のバートが死亡し、葬儀に参加した彼の友人ジョーイが生き返ったバートを見つけてビックリ、という展開です。
ゾンビになったバートは「人間の生き血を摂取しないと肉体が腐ってボロボロになる」ということに気付き、ジョーイとコンビを組んで街の悪党を成敗する「必殺仕事人」みたいなことをやり出します(そのついでに生き血をもらう)。
「正義のヒーロー気取りで悪者を処刑していく2人」という設定は、おそらく、ノーマン・リーダスが主演した『処刑人』のゾンビ版を目指していたのかなと(クオリティはかなり差がありますけどw)。
●『ゾンビーワールドへようこそ』
モテない童貞3人組が、何とかして女の子とエッチしようとドタバタする様は、70年代に流行った『グローイング・アップ』シリーズ等の青春エロ・コメディを彷彿させます。本作はそれにゾンビ要素をプラスした青春エロ・コメ・ゾンビ映画で、お色気シーンもありますよ。
●『ウォーム・ボディーズ』
『マッドマックス 怒りのデスロード』のニコラス・ホルト主演作です。今までの映画にも「途中でゾンビになってしまった主人公」はいましたが、本作は最初からゾンビなのがミソ。彼には人間だった頃の記憶がほとんどなく、”R”という頭文字しか覚えていません。
そして普段は廃墟に閉じこもり、仲間のゾンビたちと人間をムシャムシャ食べるだけの生活を送っていました。そんなRくんが、ある日可愛い女の子と出会ったことで、徐々に人間らしさを取り戻していくのです。
これはつまり、「内気でコミュ障なオタク男子が、生まれて初めて彼女と付き合い始めたことでリア充になっていく姿」を描いた青春ラブ・コメディなのですよ。「ボーイ・ミーツ・ガール」ならぬ「ゾンビ・ミーツ・ガール」ですね(笑)。
●『ライフ・アフター・ベス』
こちらも『ウォーム・ボディーズ』と同じくラブ・コメディですが、主人公の男子は人間で、彼女の方がゾンビになります(ちなみに主演は『クロニクル』のデイン・デハーン)。
ゾンビ化した彼女はとんでもない怪力を発揮し、縛り付けられたオーブンを背負ったままハイキングに出かけてしまうなど、面白シーンも満載ですよ。
●『バタリアン』
これはもう、超有名なゾンビ・コメディなので、知っている人も多いでしょう。ちなみにタイトルの”バタリアン”とは、本来は「大群」という意味ですが、日本で配給した東宝東和がゾンビたちの総称として命名。
原題は『The Return of the Living Dead』で、劇中に「ロメロ監督の『ゾンビ』は実話なんだよ!」というセリフがあることから、『ゾンビ』のパロディまたは後日談的な位置づけになるようです。
なお、当初はトビー・フーパーが監督する予定だったものの、諸事情でクビになり、ダン・オバノンにオファーが回って来たらしい(当時、ダン・オバノンは『ブルーサンダー』の監督に内定していたが、それを蹴って『バタリアン』を選んだ)。
●『死霊のはらわた2』
『スパイダーマン』のサム・ライミ監督が、新人時代に勢いにまかせて作り上げたアクセル全開のぶっ飛びゾンビ映画『死霊のはらわた』。本作はその続編であり、セルフリメイクでもあります。
予算はなんと前作の10倍!ただし、前作がたった35万ドルの低予算だったので、10倍になってもたかが知れてますけど(笑)。でも、前作の過激なノリは10倍以上にパワーアップ!
特に、「死霊に乗っ取られた自分の右手を相手に、全力でバトルを繰り広げる主人公」という映画史に残る珍場面を、見事な一人芝居で演じ切ったブルース・キャンベルが素晴らしすぎる(笑)。
本作は、ゾンビ・綺麗なお姉ちゃん・激しいガンアクション・壮絶な血しぶき・くだらないギャグ等、ロバート・ロドリゲス監督のやりたいことだけを詰め込んだ、壮大なB級映画です。間違っても感動するような内容ではありません(笑)。非常にバカバカしくて面白いんですが、基本的に突っ込みどころ満載なので、その手の映画が好きな人だけご覧ください。
●『バイオハザード』
これまた超有名作品というか、日曜洋画劇場で飽きるほど繰り返し放送されていたので、恐らく一度は観たことがあるんじゃないでしょうか(なぜ日曜洋画劇場がこのシリーズを猛プッシュしていたのかは謎w)。
数あるゾンビ映画の中でも、地上波でここまで何度も放送された作品は『バイオハザード』シリーズだけであり、まさに「お茶の間で家族団らん安心して楽しめるゾンビ映画」と言えるでしょう。
(画像は『怒りのロードショー』より)
本来、ゾンビ映画とは”低予算”の代名詞でした。大掛かりなセットを組まなくてもいいし、高価なVFXも不要。ゾンビ風のメイクを施した一般人を適当にフラフラと歩かせておけば、それなりにゾンビ映画が撮れてしまうのです。
だからこそ、『桐島、部活やめるってよ』みたいに学生やアマチュアが次々とゾンビ映画を撮っていたわけですが、それを大予算で作ったらどうなるか?というのが本作です。
なんと、ゾンビ映画史上最高の200億円という製作費をつぎ込み、ハリウッドの一流スター:ブラッド・ピットを主役に迎え、フィラデルフィア・スコットランド・イスラエルなどで大規模なロケを敢行。
その結果、途中で予算が足りなくなり(追加撮影の費用も原因)、映画の終盤が何となくショボい感じに見えるかもしれませんが(笑)、その辺も含めてお楽しみください。
なお、ラスト付近で「ペプシのジュースをゴクゴクと飲み干すブラピの姿」がCMみたいに大きく映ってるんですけど、実は足りなくなった製作費をペプシが出してくれたため、こういう映像を入れることになったそうです。まあ、色んな事情がありますよね(^_^;)
というわけで本日は、今までゾンビ映画を観たことがない人や、ホラー映画が苦手な人でも(多分)安心して楽しめる「初心者向けゾンビ映画」をご紹介しました。
次回は(次回があるのかどうか分かりませんがw)、ジョージ・A・ロメロ監督の作品を筆頭に、本家の影響を受けた「新世代ゾンビ映画」の数々を解説してみたいと思います。それでは、また!(^O^)/
●参考文献
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