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『アナと雪の女王』のネタバレ感想と考察


■あらすじ『アレンデール王国の王女姉妹エルサとアナは、幼い頃から大の仲良しだったが、姉エルサには触れたものを凍らせてしまう魔法の力があった。ある時、その禁断の力がアナを危険にさらしてしまい、責任を感じたエルサは魔法を封印し部屋に閉じこもってしまう。しかし月日が経ち、国王夫妻が不慮の事故でこの世を去ると、姉のエルサが王位を継ぐことになった。美しく成長した彼女は、新女王として戴冠式に臨むが、力を制御できずに真夏の王国を冬に変えてしまう。思わず城から逃亡し、雪山に氷の城を築いて“雪の女王”となり、氷の世界で本来の自分を解放していくエルサ。一方、彼女が心を閉ざしてしまった理由を知ったアナは、大好きな姉と王国の危機を救うため、危険をかえりみず雪山の奥深くへと旅立つ…。』



激しく今さら感が漂いますが、アナと雪の女王』3D日本語吹替え版を観て来ました。いや〜、相変わらず凄い人気ですねえ!3月14日から公開してる映画が、2カ月以上経った現在でも上映ランキング1位をキープしてるなんて通常では考えられませんよ。現時点(5月26日)の成績は、観客動員数1511万人、興行収入は198億円を突破しているそうです。うわあああ〜!

日本国内におけるこれまでの歴代興行収入は、第4位がハウルの動く城(196億円)だったのですが、とうとう本作が『ハウル』を抜いて歴代第4位にランクインしました。さらに第3位がハリー・ポッターと賢者の石(203億円)となっているので、『アナと雪の女王』が3位以上に食い込んで来ることは疑う余地がありません。

それどころか、このままの勢いが続けば今週中にも200億円を突破し、第2位のタイタニック(262億円)すら追い抜く可能性もあるわけで、映画史にその名を残すことはもはや確実と言えるでしょう。ちなみに全世界の興行収入は日本円で約1200億円となっており、歴代5位だそうです。すげえええ〜!

僕自身は、世間で「レリゴ〜♪」とか「ありの〜ままの〜♪」とか盛り上がってるのを見て逆に観に行く意欲が萎えてたんですけど(笑)、あまりの人気ぶりに地元の映画館でも『アナ雪』の上映回数が一気に増え、しかも今まで2D版の上映しかやってなかったのに、急遽3D版が追加される等、「どんだけ儲けたいんだよ!」と劇場側のなりふり構わぬ迅速な対応に納得できないものを感じつつ、「でも3D版をやるならちょっと観てみようかな〜」とノコノコ観に行った次第です、トホホ。

で、感想なんですけど、さすがに老舗のディズニーが満を持して作り上げただけあって、クオリティがハンパない。映像は綺麗だし音楽は素晴らしいし、「CGアニメの最高峰!」という評判に偽り無しの完成度でした。もうね、任天堂が作ったマリオの最新作みたいな安定感で、「やっぱ良く出来てるわ〜」と感心するしかないですよコレは。

ただ、タレントの伊集院光さんも言っているように、ストーリーについては正直なところ不満が無いわけじゃありません。主人公の言動や物語の展開など、色んな部分で説明不足な感じが漂います。特に多くの観客が指摘しているように、ハンス王子の変貌ぶりに関しては「オイオイ、何の伏線も無しで人格が変わり過ぎじゃないの?」と思わずにはいられないというか、かなり衝撃を受けましたよ。もう、前半と後半で別人みたいになってるじゃないですか(^_^;)

なぜこうなったのかについては、色々事情があるみたいで、そもそも『アナと雪の女王』のストーリー自体が原作に当たるアンデルセンの『雪の女王』とは全然違う内容なんです。アンデルセン版の方は、「カイという男の子の胸に”悪魔の鏡”の破片が突き刺さって心臓が凍り、雪の女王に連れ去られ氷の城へ閉じ込められてしまう。そのカイを幼馴染みの女の子ゲルダが救い出すために氷の城へ向けて旅立つ」というお話でした。

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ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 (2008-07-02)

アンデルセンの原作を元に製作されたロシアアニメで、宮崎駿監督のインタビュー映像を特別に収録しています。

つまり、”雪の女王”というキャラはもともと悪役だったのですが、『アナと雪の女王』ではヒロインの一人として描かれているのですよ。その理由は音楽にありました。楽曲を担当したロバート・ロペスとクリステン・アンダーソン=ロペス夫妻が主題歌『Let It Go』を作曲して製作総指揮のジョン・ラセターに聞かせたところ、「なんて素晴らしい曲だ!こんないい曲を歌うキャラクターが悪役であるはずがない!」と絶賛し、急遽エルサが”いい人”に変更されたのだそうです。

しかし、”雪の女王”が悪人ではなくなると、それに変わる新たな悪役を設定しなければなりません。そこで、ハンス王子やウェーゼルトン公爵というヴィラン(悪役)を作り出し、ストーリーも「”雪の女王”になってしまった姉を妹が救い出す話」に大幅に変更。こうして、ほぼオリジナル・ストーリーと化した『アナと雪の女王』が出来上がったそうです。

ただ、この変更が「上手くいっているか?」と言われれば少々疑問が残りました。本作のあらすじを簡単に見てみると、「あるところに仲の良い姉妹が住んでいた → しかし姉が魔力を持っていたことで二人の仲に亀裂が生じる → そしてとうとう姉が城を出ていってしまった → 妹はどうにか姉を説得しようと試みるものの全く聞く耳を持たない → 逆に姉の魔法で心臓が凍り始める妹 → 城に戻って助けを求めるが、王子は邪悪な本性を表わし、姉を殺そうと剣を振り上げる → 姉を助けるために自分を犠牲にする妹 → そんな妹の姿に心を打たれて姉は正気を取り戻す → 妹も助かってハッピーエンド」という物語になっています。

こういうドラマ構成なら、”最初から王子は悪い奴”という設定の方が良かったんじゃないかなあと思うんですよ。そうすれば、話の途中で急に悪人になる不自然さも解消されるし、”倒すべき相手”というポジションも明確になりますから。

実は、ネット上では既にハンス王子の奇妙な言動について様々な検証が成されており、その中で「実はハンス王子はキャラクターではなく、相手の想いを具現化する鏡だった」という説があるんですよね。調べたら、分かりやすく解説してあるサイトがあったので引用させていただきます↓

「本当の」ハンスという存在は、どこにもないのです。『アナと雪の女王』で、ハンスが登場する全てのシーンにおいて、彼は”他のキャラクターの鏡”として機能します。彼らの感情や思いを具現化するのです。彼は誠実でないわけではありません。むしろその反対です。彼はどの瞬間も反映する人たちに誠実なのです。ある瞬間には真摯に愛し、またある瞬間には真摯に優しさを見せ、そしてまたある時には死刑を執行します。彼の人格は「共感」であり、自分の傍にいる人を映し出すのです。「ハンスって誰?」とオラフは尋ねます。その答えは、人ではなく、キャラクターでもありません。彼は鏡なのです。それも、もしかしたら超自然的な鏡かもしれません――周りの人たちを、彼らの愛や恐れ、悪徳や美徳、人生や死を反映する鏡なのです。(「Red Notebook」より)

確かに、原作の『雪の女王』にも”悪魔の鏡”というアイテムが登場していて、監督のジェニファー・リーもインタビューで「ハンスの役割は鏡」とコメントしているそうです。ただ仮にそうだとしても、ディズニー・アニメを観に来た小さな子供には表現があまりにも抽象的すぎるし、展開の不自然さをフォローできるほどの説得力も感じられません。ハンス王子が本当に”悪魔の鏡だった”という設定ならまだしも、物語の中では普通の人間なんだから、どう考えても無理がありますよ。

なので例えば、主人公の敵役として”悪い魔法使い”みたいなキャラクターを登場させても良かったのではないでしょうか?そいつが幼いエルサに”氷の魔力”を授け、その能力を見た周りの人たちは彼女を恐れて部屋へ閉じ込めてしまう。それから数年後、再びエルサの前に現れた魔法使いは「人間たちはお前のことを嫌っているから私の仲間になれ!」とか言って誘惑するわけですよ。魔法使いにそそのかされたエルサは雪山に籠り、アナが救出に向かう(途中でクリストフやオラフと合流)。

そして、”悪い魔法使い”の手下を倒しつつ、どうにか氷の城に辿り着くものの、魔法攻撃を受けたアナは凍りついてしまった。その姿を目の当たりにしたエルサは、自分を苦しめてきた忌まわしき”氷の魔力”を使って魔法使いに最後の戦いを挑む!果たして最強の敵を倒すことはできるのか?姉妹の愛が奇跡を起こす…!

てな感じで完全に僕の妄想ストーリーですが(笑)、こうすればハンス王子を出さなくてもドラマは成立するわけですよ。むしろ出さない方が良かったかもしれません。なんせ、”王子様”としての役割を全く果たしていませんからね(笑)。

過去のディズニー・アニメは『白雪姫』にしても『シンデレラ』にしても、「最終的にヒロイン(お姫様)がヒーロー(王子様)に愛されてハッピーエンド」という展開がお約束でした。

すなわち、「お姫様は王子様に助けられる存在であるべき」という不文律が物語の中に組み込まれていたわけです。ところが、時代の変化と共に女性の社会進出が顕著になってくると、”女性の自立”とか”自己実現”などがテーマとして取り上げられるようになりました。

そうなると、従来までの「王子様に助けられる”か弱いお姫様”」という受動的なフォーマットが通用しなくなり、近年のディズニー・ヒロインはどんどん強くなっていったのですよ。そして最新作の『アナと雪の女王』では、そういう傾向が極まり過ぎて、とうとう最終局面に到達。

なんと、王子様が「倒すべき敵」として設定されているのです!「お姫様が悪い王子様をやっつけてハッピーエンド」なんて、これまでの正統派ディズニー作品では考えられない衝撃の展開ですよ。

また、アナの方は心臓に氷の魔法を受け、全身が凍り始めてこのままでは死んでしまう、という状況の中、「助かる方法は真実の愛だけじゃ!」という教えに従い城に戻ったら、王子様はとんだ悪党で役に立たず。そしてもう一人のヒーロー:クリストフが「アナ〜!」と駆け寄ってきたら、アナは彼を無視してエルサを助ける始末。

結局、氷を溶かしてヒロインを救ったのは「ヒーローとは全く関係ない”真実の姉妹愛”だった」というオチで、ここでも”ヒーロー不要論”を貫いているわけです。つまり、現在のディズニー・ヒロインは、もはやヒーローの助けを必要としていない、ということなんですね。

さらにもう一つ、過去のフォーマットを崩しているのが”呪い”の描き方です。姉の方は、生まれつき周囲を凍らせる魔力を持っているという呪いを受けてるんですが、今までのお伽噺だったら「最後に呪いが解けてハッピーエンド」だったんですよ。ところが、この映画ではハッピーエンドになっても魔力が消えません。逆に、「呪われたヒロインを周囲が受け入れ、魔力を有効活用する」という終わり方なんです。

これは、「女性がどんなに素晴らしい能力を持っていても、男性に優位な社会ではそれを発揮する機会が与えられていない」という風潮に対するアンチテーゼと受け取れますが、同時に「価値観の多様性」や「マイノリティを肯定する」という近年の社会認識を如実に表していると思われ、さらに突っ込んだ意見としては「世間から異端視されている存在、すなわち同性愛者がカミングアウトする映画だ」と解釈する人まで、実に様々な考察が繰り広げられているようです。

確かに、孤独なエルサは男性からの求婚を一切求めていないという点において、ディズニーアニメとしては極めて特異なキャラクターであると言えるでしょう(アナにはクリストフがいるが、エルサには最後まで男性パートナーが現れない)。

さらに劇中でエルサが歌う有名な主題歌「Let It Go」は、”ありのままの自分でいい”と、ノーマルではない自分自身を肯定する内容であるため、「同性愛を告白している歌だ」とみなす人々も少なくないそうです。

また、物語全体にも「男女間に限定しない様々な愛の形があってもよい」というメッセージが込められており、同性婚を合法化する国々が増える昨今の世相を反映している、との意見もあるらしい。

そのため、3月12日付の米業界誌ハリウッド・リポーターや英紙ガーディアンなどによると、米コロラド州のケビン・スワンソン牧師が、自身のラジオ番組で「『アナと雪の女王』は5歳の子供を同性愛に導く非常に邪悪な映画である!」などと非難する騒ぎまで起きたそうです。

このように、これまで当たり前のように使われ続けてきたテンプレートを敢えて裏切り、ディズニーのお家芸ともいえる男女間の恋愛ではなく、同性愛まで肯定するかのような”従来の価値観とは全く異なる新しい愛の形”を堂々と描いた点が、『アナと雪の女王』の大きな特徴ではないかと感じました。

さらに物語のクライマックスでは、「ヒロインはヒーローから愛されて幸せになれる」 = 「ヒーローから愛されなければ幸せになれない」という古い固定概念を打ち砕き、「女性の力だけでも幸せを獲得することは可能だ」とはっきり宣言しているのです。だからこそ、生き方の多様性を求める現代女性から多くの共感を得ることが出来たのではないでしょうか(^_^)


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