漫画家の島本和彦さんがマンガ誌「ゲッサン」(小学館)に連載中の『アオイホノオ』が、テレビの連続ドラマとして実写映像化されることになりました。『アオイホノオ』は、島本さん自身が大阪芸術大学時代に体験したエピソードをベースとした熱血青春ドラマで、1980年代初頭を舞台に、プロのマンガ家を目指しつつアニメーターにも関心のある主人公:焔(ホノオ)モユルが、出版社への原稿持ち込みをきっかけにマンガ家への道を歩んでいく姿を克明に描いています。
実写版で焔モユルを演じるのは、これが地上波連続ドラマ初主演となる柳楽優弥さん。柳楽さんといえば、2004年に映画『誰も知らない』に出演し、第57回カンヌ国際映画祭コンペティション部門にノミネート、当時14歳だった柳楽さんは史上最年少で日本人初の主演男優賞を受賞したことでも話題になりました。
そんな柳楽さんは焔モユルを演じるにあたり、「今回初めて、熱血的かつユニークな役を演じさせて頂く事になりました。福田雄一さんワールドに入れる事を楽しみにしています。皆さんに楽しんで頂けるように、僕も撮影期間中、笑倒して挑みます!」と気合十分なコメントを寄せています。
また、監督・脚本は『勇者ヨシヒコ』シリーズ、映画『HK/変態仮面』などで知られる福田雄一さんが担当。島本さんともともと親交が厚い福田監督は、「僕の創作の師匠である島本先生の原作を初めて演出させて頂くことが何よりの幸せです。さらに、主人公に柳楽くんという最高のキャストも頂きました。島本作品を映像化できるのは自分しかいない!これでドラマが失敗したら、すべて僕のせいです!」と意気込んでいるそうです。
そして、原作者の島本和彦さんは、「すべて神回にすると福田雄一は言った!奴ならできる!私はわくわくして祈るのみだ!あとは原作も負けないように魂を叩きつけ続けるのみだッ!!!!」と非常に熱いエールを送っていました。ドラマは7月よりテレビ東京系「ドラマ24」枠にて放送される予定で、現在撮影真っ只中。どんなドラマになるのか楽しみですね。
ただ、気になる点が一つ。この漫画、基本的にはフィクションなんですが、島本和彦先生が学生時代に体験したことがベースになっているため、実在する人物の個人名が結構出てくるんですよ。しかも、そういう有名人達を主人公が上から目線で批判するというのが、この漫画の面白さの要因にもなっているが故に、避けては通れないというか物語上外せないわけで、その辺はどうやってクリアーするのだろうかと。
・例えば野球漫画の第一人者:あだち充先生に対してはこんな発言を↓
・高橋留美子先生にはこういうことを↓
・そして原秀則先生のマンガに対してはこんな失礼な発言まで↓
一応、「世間知らずの主人公が的外れな批判を繰り広げていて恥ずかしい」というシチュエーションなんですけど、これらの問題発言の数々を、TVドラマ版ではどうやって処理するんだろう?と思っていたら、なんと小学館サイドで各先生と交渉し、見事に許可を得たらしい。どうやら原作そのまんまで再現するようです。さすが大御所、心が広いなあ(^.^)
あ、『アオイホノオ』TVドラマ化で、あだち充、高橋留美子両先生だけでなく、原秀則先生の許可も頂きました!全面的に作品使用を快諾して下さった太っ腹な先生方に感謝しております。「あだち充は野球漫画の描き方がわかってないんだ!」あの暴言の数々が今、テレビ画面で再び!(市)
— ゲッサン編集部 (@gessanofficial) 2014, 5月 5
それから、主人公の同級生として『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明監督が登場するのですが、これがまた結構重要なキャラクターで、物語に深く関わってくるんですよね。この当時はまだ単なる大学生なので、現在のように宮崎駿と仲良くなるなど想像もしていないでしょうけど、会話シーンには宮崎監督の名前も出てきます。いったい誰が庵野さんを演じるんでしょうか?
そして、ある意味庵野秀明監督以上に気になるキャラクターが、ガイナックスの創設者にしてオタク界の教祖:オタキングこと岡田斗司夫!本来、島本和彦と岡田斗司夫は学生時代には出会っていません。なので、このマンガの中で二人の接点は無いのですが、庵野秀明が自主制作アニメを作る過程で岡田氏と出会ったことから、必然的に岡田さんも登場することになったのです。しかも強烈なキャラクターとして。
しかし岡田斗司夫自身は、「テレビドラマはどうせ12話程度で終わるから、たぶん自分の出番は無いだろう」と思っていたらしい。ところが、ある日島本和彦から衝撃の電話が…。以下、実写ドラマ版『アオイホノオ』に関する岡田斗司夫氏のコメントを引用します。
ドラマ化の話を聞いたときは「あ、オレの出番は無いな・・・」と思ってたんです。なぜかというと・・・
「アオイホノオ」はかなり特殊なマンガです。連載で主人公・モユルが登場しない回もあります。主人公のライバルで、後にエヴァンゲリオンを監督する庵野秀明君たちがアニメを作るくだりは、もうまったく主人公不在!半年間のアニメ制作のあと、完成したフィルムだけをモユルが見て、「負けた!」というだけで連載一回分を使い切ってしまいました。
当然、ドラマ化の時はそういうデタラメはしないはず。ちゃんと普通のドラマっぽく、俳優さんたちの力関係や人気度に応じた登場頻度になるはずです。
なので、僕としては「全12話で、1話40分程度」というフォーマットなら、岡田トシオの出番は無い、と踏んでいました。庵野くんたちが自分のアパートでアニメ作ってる描写さえあれば充分。そのほうがモユルの行動範囲内です。
原作というか史実では庵野くんたちは僕の実家に寝泊まりしてアニメを作りました。でもそれをドラマでやっちゃうと、モユルとの接点がゼロになってしまいます。つまり「せっかくの”絵的な見せ場”に主人公が不在」になってしまいます。
ドラマは、少なくともテレビドラマとは「俳優さんがカッコいいセリフを言うための装置」です。映画よりも舞台に近い。まずスターありき。そしてスターの魅力を引き出すセリフ。これがドラマ作りのセオリーなのです。しかし、島本先生は電話で「岡田トシオ、ドラマに出していいですか?」と聞いてきました。
ええっ!本気なの!?
「ひょっとしてDAICONIIIアニメ、やるつもりなの?」
「監督はやるつもりみたい・・・」
うぎゃ!すげーことになってきた!
「だから岡田さんも登場するし、アニメ作るシーンでは岡田さんの実家も出るかも・・・」
な、なんだって〜!!
数週間後、吉祥寺の中華料理店で僕と元・奥さん(マンガにもセリフつき2ページぶち抜きで登場しました)は、監督とプロデューサーと4人で会食しました。ここから先はまだヒミツだけど、とにかく何もかもが予想以上のすごいドラマになりそうです。あ〜、夏が怖い・・・
う〜ん、このコメントを読む限り、庵野秀明はもちろん岡田斗司夫もバッチリ登場するみたいですねえ。となると、山賀博之(『オネアミスの翼』監督)や赤井孝美(『グレンラガン』製作)なども間違いなく出るでしょう。ひょっとして矢野健太郎も出るとか・・・?なんか凄まじいドラマになりそうな予感がするなあ(^_^;)
ちなみにアオイホノオのドラマのスタッフが 原作漫画通りに漫研CASを「カス」と呼んだところ、現役芸大生から「うちはキャスです!!!」とキレ気味に言われたそうで……
いつの間にそんな革命が!?��(゚□゚;
— 矢野健太郎 (@yanoja) 2014, 5月 5
なお、マンガの中では焔モユルと矢野健太郎が普通に会話していますが、島本和彦自身は学生時代に矢野さんと喋ったことはほとんど無いそうですw
●人気記事一覧
・これはひどい!苦情が殺到した日本語吹替え版映画ワースト10
・まさに修羅場!『かぐや姫の物語』の壮絶な舞台裏をスタッフが激白!
・日本映画のレベルが低くなったのはテレビ局のせい?
・町山智浩が語る「宮崎アニメの衝撃の真実」
・「映像化不可能」と言われている小説は本当に不可能なのか?