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人を騙してナンボの世界!岡田斗司夫の生き方とは?


「『トップをねらえ!』の脚本を書いたのは岡田斗司夫じゃなくて山賀博之だった」

先日、こういう発言がツイッターに投稿されると、「あいつゴーストライターを使っていたのか?」「マジかよ!岡田斗司夫ってサイテーだな!」などと話題になっていたため、「確かにそれは事実だけど、山賀が名前を出したくなかったからだよ」と詳しい経緯をブログに書いたら結構読んでもらえたようだ。
type-r.hatenablog.com
例の”愛人問題”が発覚して以来、すっかり評価がダダ下がりしている岡田斗司夫だが、一旦炎上したらこういうネタでもとことん叩かれるらしい。まあ、自業自得だとは思うけど(笑)、敢えて記事に書いたのは「事実関係ぐらいは明確にしておいた方がいいだろう」と思ったからである。

で、『トップをねらえ!』の時は、山賀氏が脚本を書く過程で「岡田氏が最初に構想していたものとは全然違うアニメに仕上がった」ということが判明している。つまり、プロットを考えたのは岡田斗司夫だが、それはあくまでも「パロディ満載のギャグアニメ」であり、山賀博之がシナリオを書き、庵野秀明が監督したことで、最終的には「感動的なSFアニメ」へと大きく変化しているのだ。

では、その前に作った『王立宇宙軍 オネアミスの翼』はどうなのか?これも岡田斗司夫プロデュース作品として知られているが、果たしてどの程度、彼の意向が反映されているのだろう?調べてみると「オネアミスの翼王立宇宙軍 (THIS IS ANIMATION ザ・セレクト 12)」という本に岡田・山賀・赤井孝美のインタビューが載っていたので抜粋してみる↓

山賀:私はその頃(学生時代)、計画を立てていたわけですよ。まず3年以内に、23歳までにはまず演出をやろうと。で、25歳までには番組のチーフディレクターか映画監督になろうと。そう勝手に決めてたわけです。で、具体的な路線図を引いてみたら、成り立たないんだこれが(笑)。難しいなあと。どうしようかと思っている最中に、岡田さんが無茶な事を言い始めた。「映画を作ろう」と。で、岡田さんはノリだけでものを言うから、映画やろう映画やろうでそのまま映画ができちゃうと思ってるところがあるなあと思ったわけです。


岡田:思ってる思ってる(笑)。


山賀:で、そう簡単にいくもんか、という部分がありまして。


岡田:簡単にいく簡単にいく(笑)。


山賀:とりあえず、あの気楽な考えは、ここで一発プロデューサーでもやらせて…


岡田:つらい目に合わせて?


山賀:そうそう(笑)。で、映画とはどんなに難しいものなのか、私が教えてあげようと(笑)。話し合いの場を持ったわけです。で、まあ私としては、わりと意地悪な意味合いを持って、岡田さんに「どんな映画を作りたいですか?」と聞いたんですよ。すると岡田さんは、結構正直者だから正直に答えるわけです。「まずSFモノがいい」と。そこで「SFって、私全然わかんないんですよねェ」とまた意地悪なことを言うわけですよ(笑)。


岡田:覚えてない(笑)。


山賀:すると、岡田さんの方から「いやSFモノっていうのは、別に宇宙を飛び回って何だかんだするやつだけがSFじゃないんだ。とにかく、あっと驚くやつは全部SFだ!」と(笑)。「何でもSFだから安心したまえ」と。「あ、何でもSFですか。じゃ私ストーリー考えてきます」と言って帰ったわけです。


赤井:センス・オブ・ワンダーって、あの頃盛んに言ってましたからね。


山賀:で、どうしようかなーと、何かいいのないかなーとフラフラと大学の図書館に向かって歩いていくとですね。大学の校舎(大阪芸術大学)がこう、お城に見えるわけですよ。で、そこに何かこう、金メッキの甲冑を着た、現代風のいわゆるプロテクトスーツのような格好をした武者が、バイクに乗って校舎を上がっていく、そういうのを見せれば何というか…


赤井:びっくりするだろうと。


山賀:そういう世界観っていうのはびっくりするんじゃないかと。でも岡田さんはどっちかというと、正統派のSF映像というか、そっちのタイプでして。私のように、何か斜に構えた意味でのSFっぽいところを狙ったようなやつは、「そういうものもあるだろう」という程度にしか見てなかった。で、岡田さんが本当に何がやりたいのかを引き出しながら、それに対しての答えはこれしか無いんだ、みたいなことで説得していくような感じで企画は進んでいったわけです。


まあこっちとしては、「岡田さんが何と言おうと俺が今作るとしたらこれだね」というやつは決まっていたので、あとは岡田さんを説得するような形になるわけで。岡田さんは別にそれが嫌だと言ってるんじゃなくて、映画を作りたいと言ってるわけだから、非常に素直に話を聞いてくれるわけですよ。


岡田さんにとっては、どうしてそれが面白いのか分からないというところから、どうしてこれが面白いのかということまで分解して話すことができるわけです。逆に言うとそれは説得じゃなくて、説明しながら組み立てていく、という形なんですね。で、どうして面白いのか、からさらに発展して、何が面白いのかと…。


赤井:説明することによって、自分の中でも再検討できると。

とまあ、こういう感じで『王立宇宙軍 オネアミスの翼』の内容は決まっていったらしい。このインタビューを読むと、岡田斗司夫の当初の意向は「映画を作りたい」、そして「SFものがいい」という漠然としたもので、後はほとんど山賀氏の発案だったようだ。

よくよく考えてみると、今まで岡田斗司夫がやってきたことは全て「凄い自主制作アニメを作りたい!」とか「凄いSF映画を作りたい!」という自分の願望を具現化することが主な目的であり、巧みな話術で才能溢れるクリエイターたちを仲間に誘い込み、彼らのスキルを集結させることよって、次々と優れた作品を生み出していたのである。

こう書くと「岡田斗司夫自身は結局何もクリエイティブな仕事をしてないじゃないか!」ってなりそうだけど、”プロデューサー”とはそもそもそういう役割なわけで。つまり岡田氏にとっては「自分のやりたいことを企画し、優秀な人材を集めて、熱い言葉で彼らの気持ちを盛り上げ、素晴らしい作品を作らせる」という、まさに自分の”才能”をフルに発揮した天職と言えるんじゃないだろうか。

さらに、岡田氏の話術に乗せられたのは制作スタッフだけではない。大手玩具メーカーバンダイも、彼の巧みなセールストークに引っ掛かり、8ミリの自主制作アニメしか作った経験がない素人同然の若者たちに対して、総製作費8億円もの出資を余儀なくされたのだ。この時の様子を、バンダイビジュアル専務取締役の渡辺繁氏は次のように語っている。↓

当時、宮崎駿さんに岡田斗司夫の企画に騙されたバンダイと言われましたよ(笑)。そのバンダイでも一番初めに騙されたのが僕だと(笑)。しかし、騙すとか騙されるとか、そんな話ではなくてですね。僕は単純な人間ですから、ただ面白そうだからやってみたかった。誰もバンダイが映画をオリジナルで作れるなんて思わなかったんですよ。ノウハウだって全く無かったし。でも、だからこそ面白いと思ったんです。(「ガイナックス・インタビューズ」より抜粋)

ガイナックス・インタビューズ

庵野秀明山賀博之など、ガイナックス創設メンバーたちの貴重な証言集(なぜか岡田斗司夫は入ってないw)
こうして渡辺氏もまんまと岡田氏の口車に乗せられたわけだけど、岡田斗司夫って、要は人をたぶらかすことが抜群に上手いんだろうね。典型的な”山師”であり、しかもプレゼンの達人。だから、男も女も皆その魅惑的なフレーズに騙されてしまうのではないかと。今さらながら、『アオイホノオ』のキャラクター描写の的確さには感心せざるを得ないよなあ(笑)。

島本和彦著『アオイホノオ』より)

このように”熱い語り”で人の心を引き付け、自分のやりたいことを実現させる手腕こそが”プロデューサーの資質”であり、だからこそ『王立宇宙軍』や『トップをねらえ!』などの優れた作品を世に送り出すことが出来たのだろう。

しかし、理屈優先の強引すぎるやり方は時として人々の反感を買い、人間関係にも支障をきたす。それ故に世間からバッシングを浴びる結果になったことは否めない。例の愛人問題も、もしかしたらこういう部分に起因してるんじゃないだろうか?

ちなみに、『王立宇宙軍』が作られる前の1985年当時、庵野秀明に誘われて大阪に来ていた樋口真嗣は、自主制作映画『八岐之大蛇の逆襲』のスタッフとしてダイコンフィルムに参加していたものの、生活費が無くて困っていたらしい。すると岡田斗司夫が毎月4万円ぐらいのお小遣いをくれたので、「なんていい人なんだ!」とありがたく受け取っていたそうだ。

ところが、自主制作映画が完成する頃になって、いきなり岡田から「このまま俺たちと一緒に東京へ来て『王立宇宙軍』を手伝え。そうすれば、あの借金はチャラにしてやる」と告げられビックリ仰天!「えええ!?借金ってなに?全然聞いてないんですけど!」と衝撃を受ける樋口真嗣。なんと、”お小遣い”だと思っていた金は、実は知らない間に貸し付けられていたのである。うわあああ…

結局、樋口氏は助監督として『王立宇宙軍』の制作現場へ放り込まれ、1年以上も拘束されるハメになってしまったそうだ。後に樋口氏はこの時の状況を次のように語っている。「そんな『ナニワ金融道』みたいな話ってあるの?と思いましたね(笑)。人身売買かよ!って。たぶん俺だけだと思いますよ。借金返済のためにガイナックスへ自分を売った人間は(笑)」 さすが岡田斗司夫、30年前から生き方が全くブレてない(^_^;)

八岐之大蛇の逆襲 [DVD]

赤井孝美監督のSF特撮自主映画(樋口真嗣がミニチュアワーク等を担当している)

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