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映画『ジェネラル・ルージュの凱旋』ネタバレ感想


■あらすじ『東城大学付属病院の不定愁訴外来医師・田口は、「チーム・バチスタ事件」を解決した功績で院内の諸問題を扱う倫理委員会の委員長に任命されてしまう。そんな彼女の元に、ある日一通の告発文書が届いた。その内容は、“救命救急の速水晃一(堺雅人)センター長は医療メーカーと癒着しており、花房看護師長は共犯だ”という衝撃的なもの。速水は“ジェネラル・ルージュ”の異名を持ち、優秀だが冷徹で非情な性格から悪い噂が絶えない人物。すると間もなく、告発された医療メーカーの支店長が院内で自殺する事件が起こった。院長からまたしても院内を探る密命を受けてしまう田口。さらには骨折で運び込まれてきた厚生労働省のキレモノ役人・白鳥と再会し、彼にも同じ告発文書が届いていたことを知る。こうして2人は再びコンビを組み、この一件を独自に調査することとなるのだが・・・。徐々に明らかになる院内の複雑な人間関係。速水の秘めたる思い。そして”ジェネラル・ルージュ”の異名に隠された驚きの真実とは…!?現役医師の作家・海堂尊によるベストセラー小説を基に、窓際女性医師・田口とキレモノ役人・白鳥の活躍を描いた本格医療ミステリー!』



本日テレビで放映される『ジェネラル・ルージュの凱旋』は劇場で観たんだけど、ちょっと微妙な映画だった。ちなみに僕は原作を読んでおらず、前作『『チーム・バチスタの栄光』は(世間の評判は悪いけど)まあまあ良く出来た映画だと思っている。こういうスタンスで本作を評価していると思っていただきたい。

さて、前作『チーム・バチスタの栄光』では吉川晃司を筆頭に、池内博之玉山鉄二井川遥田口浩正田中直樹佐野史郎といった一癖も二癖もありそうなバチスタ・メンバーたちが総勢7人も登場し、「いったいこの中の誰が真犯人なのか?」と大いにサスペンスを盛り上げ、更に一人一人のキャラクターを丁寧に描くなど、ドラマに厚みを持たせる工夫が随所に見受けられたため、非常に見応えある映画に仕上がっていたと思う。

しかし、『ジェネラル・ルージュの凱旋』ではメインの堺雅人の緊急医療チームに、羽田美智子山本太郎貫地谷しほり、他男性1名、とたったの5人しかおらず、その中で重点的に描かれるのは堺、羽田、山本の3人だけ。貫地谷しほりは堺に想いを寄せているような素振りを見せながらも、結局ストーリーにはほとんど絡んでこない上に登場シーンも少ない。もう一人の男性メンバーに至っては、あまりにも影が薄すぎて名前すら分からないような酷い有様だ。

更に、前作では「術中に患者が死んだのは医療事故なのか、それとも殺人なのか?」「殺人だとしたら犯人は誰なのか?」という”謎解き”が観客の興味を引き付け、最後までハラハラドキドキさせてくれたのだが、今回は「堺雅人演じる医師がワイロを受け取っているのかいないのか?」という”疑惑の解明”がストーリーの中核に据えられているため、もはや”ミステリー”ではなくなっているのが辛い(厳密に言えば背後で密かに殺人事件が起きているんだけど、それに言及するシーンが短かすぎる)。

また、『バチスタ』は全体的にギャグの比率が高かったのだが、あまりの批判の多さに自重したのか、本作は控え目になっているのが個人的には残念だった。前回は”サスペンス・コメディ”と呼べるぐらいお笑いシーンが多かったのに、今回はある意味”まともなサスペンス映画”に近くなっている。だが、残念ながらサスペンス映画と呼ぶには、サスペンスのクオリティが低すぎてかなり物足りない。

だって、怪しいキャラクターがあからさまに怪しい演技をしていれば、当然「あいつが黒幕では?」と誰でも思うじゃない?そしたら本当にそいつが”犯人”でした、みたいな印象でサプライズ感はゼロに等しい。もう少しひねって欲しかったなあ(苦笑)。

そしてビジュアル面でも、ほとんど屋内セットで撮影されているためか、妙に貧乏臭く見えてしまう点が気になった。救急医療シーンや手術シーンはなかなかリアルなのだが、肝心のセットがどうにもお金が掛かっていないように見えて仕方がない。もしかして、前作よりも製作費が安かったのだろうか?

というわけで、『ジェネラル・ルージュの凱旋』の不満点を色々と書き連ねてみたのだが、決して面白くなかったわけではない。中村義洋監督は手堅い演出とバランス感覚で、日本でも社会問題化している救急医療問題を反映しつつ、肩のこらない娯楽作品に仕上げている。特に、速水医師(堺雅人)がドクターヘリ導入など救急医療について持論を展開するシーンは、シリーズの原作者で現役医師でもある海堂尊の本音が爆発した名シーンと言えるだろう。

そして、演じる堺雅人は旬の俳優の勢いでこの話題作を完全に自分のものにしてしまった。「何を考えているのか良く分からない微妙な微笑み」で観る者の気持ちを翻弄し、時には静かに、時には激しい口調で己の主張を繰り広げる様は、一人舞台劇を観ているような迫力に満ち溢れている。「微妙な映画だなあ」というのはつまりこういうことで、ミステリー映画としては物足りないが、扱っているテーマは興味深く、エンターテイメントとしての出来はそんなに悪くないのだ。

なので、あとはセットにもうちょっとお金を掛けて、脚本をもうちょっと練り込んでいれば、更に完成度が上がったのではないかと思う。「意表を突いた意外な展開」がどこにも見られないのは、サスペンスとしてはやはり致命的だと言わざるを得ない。というわけで、次回作(があるのか?)『ナイチンゲールの沈黙』では、是非ともこの辺の問題をクリアーしていただきたい。

ちなみに、堺雅人は苛酷な現場で日々戦う速水晃一を演じる為に、7キロの減量を実施したそうだ。更に撮影現場では、速水の大好きなチュッパチャップス以外は何も口にしないという徹底ぶり。現場を訪れた記者の「どの味が一番おいしかったですか?」という質問に、「う〜ん、ストロベリー・クリームかなあ」と無邪気に答える堺さんが何だか可愛いかった(^.^)

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