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大泉洋主演『アフタースクール』ネタバレ映画感想


■あらすじ『母校の中学校で働く人のいい教師、神野(大泉洋)。夏休みにもかかわらず部活動のために出勤していた彼のもとに、同級生だと名乗る北沢(佐々木蔵之助)が訪ねてくる。彼は、神野の親友のエリートサラリーマン、木村(堺雅人)の行方を追っていた。

神野はちょうどその朝、仕事で全然つかまらない木村に代わって産気づいた佐野(常盤貴子)を病院へ連れて行ったところだった。そんな神野に北沢は、今朝撮られたという写真を見せる。

そこには、若い女性と親しげにしている木村の姿が!ショックを受けた神野は、そのまま探偵の強引なペースに引きずられるように木村捜しを手伝わされるハメになるのだった。

人を疑う事を知らない男と、人の裏側ばかり見てきた男。ちぐはぐコンビの捜査活動から、神野の知らなかった友人・木村の意外な一面が次々と明らかになり、物語は思いもよらぬ方向へと転がり出す!

練り上げられた脚本の完成度で、長編デビュー作「運命じゃない人」が高い評価を受けた内田けんじ監督待望の長編2作目。笑って、驚いて、巻き込まれて、最後は思わずグッとくる。何の疑いも無く信じていたものが全てひっくり返るような、驚きエンターテインメントムービー!』



本日、午後のロードショーにて『アフタースクール』が放映されます。昨年『鍵泥棒のメソッド』を撮った内田けんじ監督の長編3作目となる本作は、「甘く見てると、ダマされちゃいますよ」のキャッチコピーから分かるように、”どんでん返し映画”として劇場公開されました。一見、何気ないように見える登場人物の仕草一つにも、全て”あるトリック”が仕掛けられており、観客を驚かせるためにあらゆる場面が緻密に構成されているのです。

でも、こういう挑戦的なコピーを付ける映画って大抵がっかりさせられる事が多いんですよね。「よ〜し、絶対に見破ってやるぜ!」と観客が身構えてしまい、必然的にハードルが上がってしまうからです(『シックス・センス』のように敢えて”どんでん返し”をアピールしない宣伝方法がベストだと思う)。

なので、今回も「どうせ、大したどんでん返しじゃないだろう」と高をくくっていたのですが、いや〜まんまとダマされてしまいました。完全に甘く見てましたよ、トホホ。この手の映画って核心に触れないように感想を書くのが難しいんですが、とりあえずネタバレしなさそうな見所から書いてみます。

まずは、キャラクター及びキャスティングの素晴らしさについて。大泉洋演じる神野は、人を疑う事を知らない善良な中学校教師。本作の主人公でありコメディリリーフでもある彼は、物語の導入部分から”お笑い”を担当。その言動やリアクションは普通に面白く、観ていて思わず笑ってしまいました。良く考えると、普段バラエティ番組に出ている大泉洋とほぼ同じなんですけど、それはそれで全然OK(笑)。

次に佐々木蔵之助演じる怪しい探偵は、神野と正反対の性格で人を常に疑いの目で見ています。その上、借金だらけで生活もボロボロ。この二人が成り行きでコンビを組むことになるのですが、劇中のやり取りが非常に面白く、ここでもまた爆笑させられました。佐々木蔵之助の”やさぐれた感じ”が実にイイ(笑)。

そして、堺雅人演じる木村は本作最大のキーマンであり、どんでん返しの要ともいえる重要キャラクターです。世間的にはエリートサラリーマンのように思われているにもかかわらず、その素性は謎だらけで、なんと物語冒頭からいきなり行方不明になってしまいます。謎の女と密会している現場を目撃されたり、ヤクザみたいな連中が必死になって捜しているなど、彼の周りは不審な出来事だらけ。いったい木村は何をやったのか?堺雅人の「何を考えているのか良く分からない微妙な笑顔」も最高ですよ。

その他にも、常盤貴子田畑智子など魅力的なキャストが集結しており、キャラクター劇としても十分楽しめるでしょう。

さて、本作はどんでん返し映画である以上、トリックの精度が決め手になるわけですが、その点においてもかなり満足できる仕上がりでした。優れたどんでん返し映画とは、謎解きの手掛かりを伏線という形で観客に全て示した上で、それとは気付かせないように巧みに観客をミスリードし、最後の最後に「あっ!」と驚かせる、そんな作品だと思います。騙された観客も、「あ〜、そうだったのかあ!なんで気付かなかったんだろう!」と悔しがるものの、そのパズルを解くような知的快感こそが、まさにどんでん返し映画の醍醐味なんですよね。

逆に、ダメなどんでん返し映画とは、手掛かりを全て開示していなかったり(フェアじゃない)、途中でトリックがバレてしまうなど、構成レベルの低い映画のことです。また、いくらどんでん返しのネタが優れていても、そこに至るまでのストーリーが面白くなければ何の意味もありません。『シックス・センス』が素晴らしいのは、単にトリックが優れていただけではなく、基本となるドラマの完成度が圧倒的に高かったからであり、最後のどんでん返しが無くてもきちんと映画として成立しているところが凄いのですよ。

つまり、ドラマとトリックの双方が高い次元で融合して初めて「傑作どんでん返し映画」が生まれるわけで、その点でも『アフタースクール』は、伏線の張り方は上手く、トリックのネタも工夫があって非常に面白い。また、物語自体も(キャラの魅力に助けられている部分はあるものの)最後まで楽しく鑑賞することができました。


以下、ネタバレしてます


では、具体的に”どんでん返し”の中身について考察してみたいと思います。まずこの映画には、大きく分けて”二つの騙しのテクニック”が存在します。一つは、劇中の登場人物が別の人物を騙すために仕掛けたトリック。そしてもう一つは、映画の製作者が映画を観ているお客さんを騙すために仕掛けたトリックです。

前者は、神野や木村が警察に協力して囮捜査を実行し、会社の社長を罠にはめて悪事を暴くというもの。まあ、サスペンス映画には割と良くある話で特に目新しさはありません。神野と木村も作戦が相手にバレないように色んな場面で嘘をつきますが、これはストーリー展開上必要な行為なので無問題。

しかし、後者の”映画を観ている観客を騙すためのトリック”は少々事情が異なります。例えば、映画の冒頭シーンでは、どこかのアパートの一室で、お腹が大きい常盤貴子と出勤前の堺雅人が会話をしている場面が映ります。普通に見れば「もうすぐ子供が生まれる新婚夫婦なんだな」と思ってしまいますよね?ところが、実際には二人とも夫婦ではありません。重要参考人である常盤貴子が、警察によって匿われているだけなのですよ。

この場面のポイントは、劇中の登場人物は”観客を騙す意図”など全く無いわけだから、会話の中で夫婦であるかのようなセリフは一切使えないということ。そう思って良く見ると、二人が夫婦だということを明確に示すセリフは一言も発していないことが分かります。彼女の警護をしている警察官も一見”お父さん”のように見え、堺雅人も”お父さんに気を使う夫”のように見えますが、一度も「お父さん」とは言っていません。つまり、観客が勝手に勘違いするように仕向けているんですね。

また、大泉洋が風俗店に入って聞き込みを行い、田畑智子の写真を見せて「ああ、あゆみちゃんね」と店員が認めるシーンでは、「田畑智子=あゆみ」と観客に勘違いさせています。しかし、実際にはケータイに入っていた常盤貴子の写真を見せていたことが後に判明。ここでは、写真を見せるシーンをわざと画面に映さないことで観客をミスリードしているのですよ(本来の目的は佐々木蔵之助を騙すためですが)。

重要なのは、「どの場面でも観客に対して嘘はついていない」ということです。あくまでも、シチュエーションに解釈の幅を持たせることで、観客自身が間違った解釈をするようにさりげなく誘導している。そのさじ加減が実に見事でした。観客は最初、「堺雅人が何か良からぬことを企んでいるんだな」と想像しますが、終盤になると大泉洋堺雅人と組んでいたことが分かり、「二人でヤクザから金を取ろうとしてたのか?」とビックリ。ところが、最終的に警察の捜査に協力していたことが判明して「ああ、そうだったのか!」となるわけです。実に上手いシナリオですねえ。

ただ、設定がちょっと強引かなと。コメディ映画なのでリアリティに欠けるのは仕方がないんですけど、トリックを優先させるあまり、あちこちの設定に無理が生じているのです。落しどころはソツがなく、散りばめられた伏線を一つ一つ丁寧に回収していく律儀さも好感が持てるのですが、観終わった後で「あの人はなぜあんなことをしなければならなかったのだろう?」と疑問が残る場面が数ヶ所ありました。「そうしなければならない理由」をきちんと設定しておけばこのような問題は回避できたはずで、そこがちょっと惜しいかなあ。

しかし、全体的な構成は素晴らしく、前半はコミカルな演出で笑わせ、中盤から後半にかけてはサスペンス的な展開と謎解きでハラハラドキドキさせ、最後はちょっとホロっとさせるという、エンターテイメントの王道みたいな作品です。全てのトリックが判明した後、確認のために必ずもう一度観たくなる、そんな”二度観必至の映画”ですよ(^_^)


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『アフタースクール』の内田けんじ監督が撮ったサスペンス・コメディ

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