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ここがおかしい!『ダークナイト ライジング』映画感想/解説(ネタバレ)


■あらすじ『人々の尊敬を集めた地方検事ハービー・デントの罪を一身に被り、ゴッサム・シティから姿を消したダークナイト(=バットマン)。それから8年、ゴードン市警本部長は真実を心におさめ、街の平和のために尽力していた。そんな中、鋼のような肉体をまとった巨漢のテロリスト“ベイン”の登場で一変してしまう。街は次々と破壊され、無法地帯と化していく。人々の心が恐怖と絶望に支配され、ついにブルース・ウェインは自らの封印を解き、再びケープとマスクを身にまとうのだったが…。バットマンブルース・ウェイン役のクリスチャン・ベイルはじめ、マイケル・ケインゲイリー・オールドマンモーガン・フリーマンのレギュラー陣が再登場。さらに、最強の敵ベイン役のトム・ハーディのほか、アン・ハサウェイマリオン・コティヤールジョセフ・ゴードン=レヴィットらが新たに出演。アメリカン・コミックを原作としながらも、正義と悪を巡る根源的なテーマにも迫るリアルかつ重厚な世界観で世界中に衝撃を与えたアクション映画の金字塔「ダークナイト」の続編にしてクリストファー・ノーラン監督版“バットマン”三部作の掉尾を飾るシリーズ完結編!』


※注意事項
筆者は『ダークナイト』シリーズのファンですが、この記事に関しては割と否定的な目線で書いています。ダークナイト ライジング』を好きな人が読んだ場合、不快な気分になる可能性がありますので、そういうのが嫌な人は以下の文章を読まず、そっとブラウザを閉じてください<(_ _)>


史上空前の大ヒットをぶちかました『ダークナイト』の続編であり、トリロジーの最後を飾る『ダークナイト ライジング』。クリストファー・ノーラン監督は前作で”ジョーカー”という強烈なキャラクターを登場させ、世界中の観客に衝撃を与えました。

そして、ジョーカーとデントとバットマンを廻る複雑な物語は、観る者の善悪に対する価値観を揺さぶり、正義やヒーローの正当性を問いかけるという、アメコミ映画の概念そのものを根底から覆す重厚な人間ドラマへと昇華したのです。

そんな大傑作の続編となれば、皆が期待するのは当然と言えるでしょう。しかし、結果は意外と賛否両論。「面白い!」と絶賛する人もいれば、「映画秘宝」が毎年開催している”その年最もトホホでサイテーだった映画”を選ぶ「2012年度HIHOはくさいアワード」では堂々のワースト1位を獲得するなど、色々と物議を醸しました。結構評価が別れる作品なんですよね〜。

元々、原作のアメコミ自体が荒唐無稽な物語であり、リアルとは程遠い存在でした。なので、ティム・バートンが作ったマイケル・キートン版『バットマン』の時は、「ヒーローとはそもそも荒唐無稽なものである」と開き直り、闇に映える「ゴッサムシティの幻想性」を深化させ、作品全体を悪夢的なダーク・ファンタジーとして描き切ったのです。

それに対してクリストファー・ノーランは、「ヒーローの現実性」に焦点を当てました。ファンタジー的な側面を強調したティム・バートンとは対照的に、「もし現実にヒーローがいたらどうなるか?」という真逆の方向からアプローチをかけ、『バットマン ビギンズ』では文字通りブルース・ウェインの生い立ちを詳細に描いて見せたのです。

主人公はあくまでも普通の人間であり、肉体と精神の改造プロセスを経てヒーローになる。スーツや武器などのガジェットも主人公が自ら加工する様子を克明に見せることで、揺ぎ無いリアリティを獲得したのですよ。

そして、続編の『ダークナイト』ではそのリアリティを更に強化。誇張した照明やわざとらしいスモークなどは排除され、画面は現代犯罪映画と何ら変わらないシャープなルックで統一されました。

また、ヒーロー映画ではお約束の”マヌケな警察”もなりを潜め、確固たる存在を主張しています。それらに加えて宿敵ジョーカーの圧倒的な存在感!この時点で、『バットマン』はある意味”リアル・ヒーロー映画の頂点”を極めていたと言っても過言ではないでしょう。

だがしかし!『ダークナイト ライジング』では進化しすぎたリアル路線が逆に自らの首を絞める結果となってしまいました。つまり、今まで「まあヒーロー映画だから仕方ないか」と見逃されていた部分が、「あれ?何かおかしくね?」と目立つようになっちゃったんです。いくら『仮面ライダー』をリアルに描いても限界があるように、『バットマン』もその”壁”にぶち当たってしまったんですね。

僕の個人的な感想としては、まず「時間の長さ」がネックかなと。エピソードを詰め込めるだけ詰め込んだ結果、削る部分がなくなったという事情はともかく、アメコミ映画で2時間40分は冗長すぎます。主人公が”奈落の穴”に落ちてからの展開は特にダルくて、もう少しテンポ良く描けないものかと辟易しました。

しかし、それ以上に問題なのが「脚本に穴が多すぎる」という点でしょう。もう、色んな場面が気になって気になって(^_^;)

というわけで激しく今更感が漂いますが、レンタル開始からずいぶん時間も経ってるし、ネタバレ全開でレビューしてみようかなと(まだ観てない人はご注意ください)。以下、『ダークナイト ライジング』における「常識的に考えると色々おかしい突っ込みどころ」を列挙してみましたよ。


●博士の血液を抜いて死体に輸血
映画冒頭で、「博士は死亡した」と思わせるために偽装するシーンが出て来ますが、他人の死体にチョロっと血を入れたぐらいでごまかせると思っているのでしょうか?歯形やDNA、その他身体的特徴等ですぐにバレるだろうに。そもそも死体に輸血なんて出来るのかなあ?心臓が動かなければ血液は体内を循環できず、すぐに凝固してしまうはずなんだが…。

●ベインのマスク
ベインは顔にでかいマスクを付けていて、ここから痛み止めの薬を投与しているという設定です。これはつまり、最大の弱点を常にさらけ出しているというわけで……って有り得ねえええ!

初登場の時点で「まさか…いやいや、いくらなんでもそんなヤツおらんやろw」と即座に自分の考えを否定したものの、バットマンに顔面を殴られ「うおおお!」ともがき苦しむ姿を目の当たりにした瞬間、”マジだった”と分かり絶句しました。おそらく、「ヒーロー映画史上最も分かりやすい弱点を持った悪人」ではないでしょうか?常にウィークポイントをさらけ出してるなんて正気の沙汰ではありません。もう完全にコントだよ(^^;)

●「デント法」フワッとしすぎ問題
本作は、『ダークナイト』から8年が経過したゴッサムシティが舞台で、「その間平和を維持し続けている」という設定です。しかし、平和の源となった「デント法」については一切の説明が無く、単に「わるいやつをつかまえるほうりつ」という”フワッとした概念”しか示されていません。これでリアリティを獲得するのはさすがに無理があると思うぞ。

バットマン、正体バレすぎ問題
普通、ヒーロー映画でヒーローの正体がバレるっていうのは、結構一大事のはずなんだけど、本作ではかなりの頻度でバットマンの正体がバレています。ベインの場合は”裏の世界”から情報を得ていたとしても、新米警官のブレイクはどうして知ることができたのか?1作目から登場しているゴードンでさえ、ラスト間際になってようやく気付いたのに(つーか、お前はもっと早く気付かなきゃダメだろゴードンw)。

●「クリーン・スレート」はどうなった?
キャット・ウーマンが必死に探している「クリーン・スレート」とは、過去の犯罪履歴を綺麗さっぱり末梢できる特殊なプログラムです。当初は「単なるデマで存在しない」と言われていたものの、「偶然ブルース・ウェインが持っていた」ということが判明してずっこける。おまけに、中盤以降は劇中で全く触れられてないのですよ。う〜ん、なんだかなあ。

●ブレイクの勘が良すぎる件
バットマンの正体を見抜く洞察力と関係があるのかもしれないが、ブレイクはやたらと勘がいい。ゴードンがベインの手下に捕まって下水道へ連れ去られた際も、素早く先回りしてゴードンを助けているし。まあ、すぐにあの場所へ向かったのは「少年の死体が流れてきた」という情報を事前に聞いていたからでしょう。

しかし、ゴードンの場合は自力で脱出したわけだから、他の経路から逃げ出す可能性もあったはずで、必ずあの場所へ現れるという保障は全くないんですよ。しかも、いつゴードンが流れてくるか、正確な時間までは分からないはず。にもかかわらず、いったいなぜ、あのタイミングであの場所へゴードンが流れてくることを予測できたのか?

●トンネルを抜けたら夜だった!
証券取引所を襲撃したベインたちがバイクで逃走するシーンに至っては、もはや「突っ込む」というレベルを通り越して呆れ果てるしかありません。なんせ、外を走っている時は昼間だったのに、トンネルのような場所を通過したら夜になっているのだから!

その直前の場面では「インストールまであと8分」という会話があり、トンネルを出たら「あと90秒」になっていた経緯から考えると、わずか6分30秒で日が暮れたことになるわけです。ゴッサムシティの日照時間ってどんだけ短いんだよ!


・確かに「あと8分」と言っている

・この時、外はまだ明るい

・でもトンネルを抜けると……

・なぜか突然真っ暗に!

・時間はまだ6分ちょっとしか経ってないのに

・どうしてなんだあああ〜!?

●折れた背骨を気合いで治す
ベインがバットマンの背骨を折るエピソードは原作にも出てくるんだけど、原作では治癒能力を持った超能力者が怪我を治していました。ところが、映画では牢屋に入っている怪しげなおっさんがブルース・ウェインの背中を殴って治しているのです。そんな治療で大丈夫なのか?

●実は意外と刑務所が快適だったりして
”奈落”と呼ばれるほど劣悪な刑務所に送り込まれたブルース・ウェインですが、自由に所内をウロウロできるし、テレビも見放題だし、希望すれば”脱獄チャンス”にも参加できるし、「あれ?そんなに居心地悪くないんじゃね?」と気付いてしまった観客多数。話が違うよベインさん!

●ロープを登ればいいじゃない
奈落の底に落とされたブルース・ウェインは、脱出するために垂直の壁をよじ登ろうとして何度も失敗してしまう。しかし、良く見ると落ちても大丈夫なように体にロープを巻いているではありませんか!そしてそのロープは上からぶら下がっていて……ん?ロープを登れば脱出できるんじゃないの?少なくとも、頂上付近までは楽に登れそうな気がするけどなあ。

●どうやって戻ってきた?
完全に封鎖されて出ることも入ることもできないゴッサムシティに、あっさり帰還したブルース・ウェイン。どうやって入ったんだろう?そもそも”地球の果てにある”と言われていた刑務所から、ずいぶん簡単に戻って来れたもんですねえ。ヒッチハイクでもしたのでしょうか?神出鬼没にも程がある(笑)。

●ベインはなぜ5カ月も警官を殺さなかったのか
地下に閉じ込めて5カ月放置ってのも凄い話ですが(水や食料はどうなってた?)、その後、警官たちが脱出して逆襲される展開はマヌケすぎます(そもそも、5カ月もこんな状態だったら絶対アメリカ政府が介入してるだろ)。

●ベインがザコキャラに成り下がる
最強の悪役としてバットマンの前に立ちはだかり、散々暴れ回っていたベインですが、クライマックスで真のラスボス(ミランダ)が正体を明かした途端、いきなり下っ端に成り下がってしまってガックリ。「主人公を苦しめてきた悪人を、最後に主人公がやっつける」という娯楽映画のお約束すら果たすことなく、あっさりキャットウーマンに殺されるベインの存在っていったいなんだったのだろう?

●意外と丈夫なゴードンさん
核爆弾を積んだトラックに乗り込んだゴードンは、なんとか爆破を阻止しようと奮闘します。その間、バットマンキャットウーマンの激しい攻撃に晒され、運転席のミランダやその仲間は全員死亡。しかし、そんな状況の中でもゴードンだけはめちゃくちゃ元気なのです。序盤で銃弾を食らって入院してたのに、その後は病院を襲撃した傭兵をあっさり返り討ちにするなど、ジョン・マクレーンもビックリの不死身ぶりを見せ付ける超人ゴードン!もう、ゴードンとキャットウーマンさえいればゴッサムシティは安泰なんじゃないの?

●大都市の地下にこっそり核融合炉を作っている
原発推進派の人ですらドン引きしそうな驚愕プロジェクトを堂々と実行する恐るべき主人公。ブルース・ウェイン、お前が一番危ないよ!


というわけで、世界観のリアリティを高め過ぎたことで逆に内容の不自然さが露呈する結果となってしまった『ダークナイト ライジング』。『アベンジャーズ』や『スパイダーマン』ではスルーできたような事柄でも、本作では気になって見過ごすことが出来ず、「なんでやねん!」と突っ込まざるを得ませんでした、トホホ(ここまで現実性を突き詰めると、もはや世界観そのものがヒーローの存在を拒絶しちゃうんだろうなあ)。

ただ、作品自体は嫌いじゃないです。世の中が平和になりヒーローも必要なくなったゴッサムシティで、半ば隠居生活を送っていたブルース・ウェインが、またしても現れた凶悪犯に対してボロボロの体を鍛え上げ、再びヒーローとして立ち上がるまでのプロセスが実に素晴らしい。

そして最後は”ヒーローとしての適性を持った若き後継者(ロビン)”に全てを託し、自分は表舞台からの引退を決意します。「ヒーローはどこにでもいる」という言葉を残して…。つまり、これは”ヒーローの世代交代”であり、”正義を継承する物語”なんですね。過去のアメコミ映画で、ここまでヒーローの存在意義を追求し、善悪の定義を問い掛けた作品があったか?と問われたらおそらく皆無でしょう。

さらにクリスチャン・ベイルマイケル・ケインゲイリー・オールドマンアン・ハサウェイトム・ハーディマリオン・コティヤールジョセフ・ゴードン=レヴィットモーガン・フリーマンマシュー・モディーンキリアン・マーフィー、リーアム・ニーソン等、ハリウッドの一流スターがズラリと並ぶ様も圧巻すぎる!クリストファー・ノーラン監督の『バットマン』シリーズはやはり凄い映画でしたよ(色んな意味で)。

ダークナイト ライジング (字幕版)

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ダークナイト (字幕版)

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