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映画『アベンジャーズ』ネタバレ感想&ツッコミ満載レビュー


■あらすじ『国際平和維持組織シールドで研究中だった四次元キューブが地球の支配を目論む邪悪な神ロキに奪われ、地球は史上最大の危機に直面してしまった。長官のニック・フューリーは周囲の反対を押し切り、スーパー・パワーを持つヒーローを集めて最強チーム“アベンジャーズ”を結成することを決断、シールドのエージェントとなった魔性のスパイ、ナターシャ・ロマノフらとともにヒーローたちの招集に乗り出す。こうしてトニー・スターク(アイアンマン)、スティーブ・ロジャーズ(キャプテン・アメリカ)、ブルース・バナー(ハルク)、そしてロキの兄ソーがシールド本部に勢ぞろいし、フューリーから“アベンジャーズ計画”への協力を求められるのだったが…。アイアンマンやハルク、キャプテン・アメリカはじめマーベル・コミックが誇るスーパー・ヒーローたちによって結成されたドリーム・チーム“アベンジャーズ”を実写映画化する夢の企画がついに実現し、全米で空前の大ヒットを記録したSFアクション超大作!』



「日本よ、これが映画だ!」という上から目線のキャッチコピーが物議を醸した『アベンジャーズ』であるが、日本での評判も上々のようで既に興行収入は20億円を突破し、現在も絶賛上映中だ。あまりにもヒットし過ぎたため、本国では早くも続編の”公開日”が決定したらしい。「続編の制作が決定」というならまだ分かるが、この時期に”公開日”が決まってしまうというのは只事ではない(ちなみに、全米公開は2015年5月1日だそうだ)。

アベンジャーズ2』は1作目と同じジョス・ウェドンが監督・脚本を手がけるらしいが、快挙はそれだけにとどまらない。なんと、ロバート・ダウニー・Jr.が主演するシリーズ第3弾『アイアンマン3』は2013年5月3日、『マイティー・ソー/ダーク・ワールド(原題)』は13年11月8日、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー(原題)』は14年4月4日に全米公開されることがそれぞれ決定しているとのこと。

おまけに、『ブラック・ウィドウ』や『ホークアイ』のスピンオフ映画の企画も進行中というのだから恐れ入る。アメコミ映画の勢いは当分収まりそうもない。本当にすげえなあ・・・って『ハルク』はどうなったんだよ!?


※以下、ネタバレしてます。


というわけで、絶賛の声が鳴り止まない『アベンジャーズ』。全世界で歴代興行収益第3位を記録したのも凄いが、日本でヒットするのは珍しい。なぜなら、全米でメガヒットを記録した『ダークナイト』や『ダークナイトライジング』でさえ、アメコミ文化が無い日本ではあまりヒットしなかったからだ。

これは、「一人一人が主人公として活躍している大物ヒーローを一堂に会したお祭りムービー」というコンセプトが、お祭り好きな日本人の琴線に触れたからなのか?

まあ、石ノ森章太郎先生のキャラで例えるならば、『仮面ライダー』と『キカイダー』と『イナズマン』と『変身忍者嵐』と『快傑ズバット』と『美少女仮面ポワトリン』が一緒の世界で戦うようなものであり(ちょっと違うか)、ゴージャス極まりない絵面は一見の価値があるということなのだろう。

そんな『アベンジャーズ』を遅ればせながら観てきたんだけど、一言で言うなら「莫大な製作費を投じたアクション・コメディ」という感じだった。事前に各ヒーローの映画を観た印象としては、『アイアンマン』と『マイティ・ソー』が「お笑い要素強し」、『キャプテン・アメリカ』が「真面目なヒーロー」、『ハルク』が「暗いヤツ」という具合に、主人公の性格に応じてそれぞれの作品の雰囲気は異なっている。

しかし、今回の『アベンジャーズ』ではアイアンマンとソーがドラマの牽引役となっているため、作品全体のカラーが”コメディ”の方向へ大きく引っ張られているのだ。

ストーリー構造としては、「ソーの弟のロキが四次元キューブを奪う」 → 「時空の扉を開いて悪の軍団を呼び寄せる」 → 「アベンジャーズが頑張って敵をやっつける」という流れになっており、どう考えても「兄弟喧嘩に巻き込まれて迷惑を被った運の悪いヒーロー」という間抜けな図式であることは否めない。

そして、アイアンマンはキャプテン・アメリカやハルクやソーなど他のヒーローにちょっかいを出し続け、常に周りの空気を乱しまくるものの、クライマックスでは誰よりも目覚ましい活躍ぶりを見せる(もちろん、その間に色んな小ネタギャグを散りばめながら)。つまり、6人のヒーローを均等に描きつつも、中心でドラマを引っ張っているのは「愉快なオヤジ担当」のアイアンマンなのだ(ポスターの扱いもデカい)。

また、敵役のロキの天然ボケぶりも凄まじく、「ホークアイが放った矢を自信満々で受け止めたとたん目の前で爆発」とか、『マイティ・ソー』の時よりも更にボケが進行しているように見えるんだけど気のせいか?

そして、ボケの真骨頂はクライマックスに訪れる。怒り狂ったハルクに足首を掴まれ、床にビッタンビッタン打ちつけられてギブアップという、『トムとジェリー』みたいな展開には度肝を抜かれた。「まさかこれで終わりじゃないよな?」と思ったら本当にこれで終わりで二度びっくり。ロキ、超弱えええw

というわけで、2008年の『アイアンマン』から4年にも及ぶ壮大な計画を見事に成功させた『アベンジャーズ』。『ハルク』や『マイティ・ソー』などのヒーロー映画を次々と立ち上げ、それらをリンクして最終的に一つに集結させるという、「どれかがコケたら即アウト」「絶対に無理」などと誰もが失敗を確信するほど無謀すぎるプロジェクトだったにもかかわらず、ここまで大ヒットしたのは「凄い」を通り越してもはや「奇跡」と言うしかない。

内容の方はまあ、「お祭りムービー」としての責務を果たして6人のヒーローの活躍をバランス良く描き、派手なシーンも満載でエンターテイメントとしての満足度は極めて高いと言えるだろう。その反面、『ダークナイト』のような深みは一切無く、あくまでも勧善懲悪なヒーロー活劇としてのスタイルを貫いている。

なので、「捻りのあるストーリー」や「深い人間ドラマ」を求める人には向かないと思う。たぶん、キャラクターに思い入れがある人ほど楽しめるんだろうけど、僕はそこまで思い入れがないので「ほどほどに面白い」という感じだった。以下、その他に気になった場面をざっくりと列挙してみる。


●巨大空母ヘリキャリアがとんだ見かけ倒しだった
4つの大型ローターによって自由に空中を飛行できる「移動要塞兼巨大空母ヘリキャリア」。初めて海から浮上する場面を見た時、「なんてカッコいいんだ!」と感激したものの、あまりの役立たずぶりに拍子抜け。ホークアイが放った一本の矢を食らっただけで墜落寸前の大ダメージを受けたり、内部の警備が信じられないほど手薄だったり、S.H.I.E.L.D.の拠点にしては防衛レベルが低すぎる。

しかも、アベンジャーズたちがニューヨークで苦戦を強いられている時にも全く援護をしようとしない。あれだけ巨大なマシンなら、メガ粒子砲的な超兵器で敵を一掃してくれるのでは?と期待したんだけど見事なまでの見かけ倒しにガッカリ。

いや、空母だから「運搬がメイン」ってのは分かるんだけど、せっかくカッコよさげに登場した割には活躍場面が少なすぎるんじゃない?どうせなら、もっと活躍させればよかったのに。


●意外と地味なニック・フューリー
『アイアンマン』、『アイアンマン2』、『マイティ・ソー』、『キャプテン・アメリカ』にちょっとづつ登場し、思わせぶりなセリフを残していたニック・フューリー(『ハルク』では名前だけ登場)。そして、いよいよ本番の『アベンジャーズ』が公開され、どれほど凄い活躍を見せてくれるのかと思いきや、意外と大した事してないな…。

原作では「武器の有無問わず戦闘の専門家で、元ヘビー級のボクサーであり、テコンドーの黒帯と柔術茶帯を持っている」となっていたので、クライマックスでは自らが先頭に立って敵をなぎ倒してくれるはず!と勝手に想像していたものの、そんなシーンは一切出て来ません。

僕としては、ヒーロー達が絶体絶命のピンチに陥っている時、颯爽と現れて「ここは俺にまかせろ!」的な展開があればもっと盛り上がったのになあ、などと思ったり。核ミサイルを積んだ戦闘機をロケット・ランチャーで撃ち落とす場面がほとんど唯一の見せ場っていうのはちょっと寂しい。その直後にもう一機の戦闘機を拳銃で撃ち落とそうとする場面は好きだけど(笑)。


●ぶっちゃけ、アイアンマンとソーとハルクだけでいいんじゃね?
「それを言ったら身も蓋も無いだろ!」という話だが、敢えて言わせてもらいたい。なぜならこれは「ヒーロー大集合映画が面白くなるかならないか」の根幹に関わる問題だからだ。

本作に登場するヒーロー6人のパワーバランスを比較すると、一番強いのはやはりハルクだろう。本来は”神様”のソーが最強であって然るべきだが、「ソーvsハルク」の戦闘場面を見る限りでは明らかにハルクの方がパワーで勝っている。

そして、ソーとアイアンマンを比べた場合、ほぼ互角のように思えるが、「パワードスーツの耐久性」と「エネルギー消費」という問題を抱えているアイアンマンの方がやや分が悪い。あとは、キャプテン・アメリカホークアイ、ブラック・ウィドウという順番になるのではないだろうか。図に表わすとこんな感じ↓

ハルクソーアイアンマン>>>>>>>>>キャップ>>>ホークアイブラック・ウィドウ

ここまでパワーバランスに差があるヒーロー達の活躍を一つの世界で描こうとすれば、色んなところに無理が生じてくるのは当然だろう。たとえば、クライマックの激しい戦闘中、なぜかチタウリの兵士が銀行に侵入し、一般市民を人質にして立てこもっているのだ。大軍団を率いてニューヨーク全土を破壊しまくっている真っ最中に、たかが数十人を人質に取ったぐらいでいったい何になるのか?

これは要するに、キャプテン・アメリカの活躍場面を見せるためだけに作られたシーンなんだよね。空も飛べず、光線も出せず、力もそれほど強くないキャップの場合、こうでもしなければ見せ場が無いのだ。

しかし、その結果としてチタウリの連中が物凄くバカに見えてしまっている。まさに「世界征服を目的としながら幼稚園のバスを襲うショッカー軍団」にも通じるスケールのショボさで、こういうのを見せられると盛り上がっていた気持ちが一気に萎えちゃうんだよねえ。「ああ、結局仮面ライダーと同じレベルなのか」と。

これと同様に、ブラック・ウィドウが普通の拳銃でチタウリ兵をバンバン撃ち殺しているのもマズい。強そうに見えるけど、実はチタウリって人間と同じぐらいの防御力しかないのでは?なら、警官に手伝ってもらえばもっと抵抗できたんじゃない?などと色んな疑問が噴出してくる(ホークアイ武装が強力なのでまだマシ)。

僕が本作で問題だと感じたのはまさにこういう部分で、ヒーロー活劇映画の醍醐味とは「絶対勝てそうもない強い敵をヒーローが打ち倒す場面」であり、相手が強ければ強いほどやっつけた時のカタルシスが大きくなるものだ。しかし、途中で「敵が弱い」と気付いてしまった瞬間、興奮が急激に冷めてしまう(ただでさえ、ロキがサブキャラ並みに弱いのに)。

なので、最後の対決シーンはアイアンマンとソーとハルクだけで戦えばいいんじゃないのか?と。そして、あまり役に立たない3人組は後方支援に回るべきだ。情報収集や負傷者の救出など、やることはいっぱいあるはずだし、それでも6人の一致団結する姿は描けると思う。そうすれば、「無理矢理活躍シーンを入れたおかげで敵が弱く見える」という問題は回避できるのではないだろうか。


●エンドロールが終わるまでが映画です
これはまあ、映画に対する不平や疑問ではなく、観客側の問題なんだけど。『アイアンマン』から始まった今回の「アベンジャーズ・プロジェクト」は、本編が終わってからアベンジャーズに関する情報をちょっとだけ見せるというパターンをずっと継続してきた。もっとはっきり言えば、マーベルの映画はほぼ全てそういう作りだ。

そして、当然『アベンジャーズ』でも本編終了後に次回作の敵(?)をチラっと見せたり、エンディングの最後に”おまけ映像”を入れたりしている。ところが、相変わらず本編が終わった途端に席を立つ観客が多いのだ。オイオイ、お前ら『アイアンマン』とか『マイティ・ソー』を観てないのか?観てたら「この後にも何かある」ってことが分かるだろ?

仮に観てないとしても、最近の映画は「エンディング後のおまけ映像」がお約束になっている感があるので、僕なんかは毎回「最後まで観ようかどうしようか」と悩むんだけど、他の観客は全く躊躇している様子が無い(そもそも『アイアンマン』や『マイティ・ソー』を観てない人が、この映画を楽しむことができるのだろうか?)。

まあ、どのタイミングで帰ろうが、お金を払ったお客さんの勝手なので他人が口出しすることではない。でも、同じお金を払っているなら「観れる映像は全部観たい!」と個人的には思うんだけどねえ(あとエンドロールの途中でウロウロされると気になるのよ)。

しかも、映画によっては結構重要なシーンをエンド・クレジットの最後に持ってきていたりするので、油断できないんだなこれが(冒頭に貼ってあった伏線をエンディング後に回収するとか)。というわけで、「家に帰るまでが遠足です」じゃないけど「エンドロールが終わるまでが映画です」と校長先生のように言っておこう。


●ヒーローの打ち上げ風景が凄い
ちなみに、『アベンジャーズ』のおまけシーンは撮影完了後にわざわざ新たに撮り直したもので、日本を含めて一部の地域でしか観ることができない貴重な映像らしい。その内容は、「どこかのファーストフード店みたいな場所で、6人のヒーローが席に座り何かを食べている」というもの。

ところが、なぜか彼らのテンションが異様に低い。まるで飲み会の三次会とか四次会ぐらいの雰囲気で、散々飲みまくった挙句に明け方を迎えてしまい、始発を待つはめになったダメサラリーマンという感じだ。全員、一言も会話を交わさず、うつろな目で黙々とテーブルの上の食べ物を食っている様子を固定カメラで延々と映し出す、なんともシュールな映像である。

このシーン、どうやら劇中でトニー・スタークが発した「シャワルマを食べたい」というセリフを受けて、チタウリ軍団をやっつけた直後に全員で店に来た、という状況らしい。

「シャワルマ」とは、中近東の庶民料理で、薄く延ばして焼いたナンのようなパンにグリルしたチキンや羊の肉をスライスし、野菜やマヨネーズのような特製ソースと共に巻いて食べる”中近東のファーストフード”だそうだ(なお、『アベンジャーズ』公開後にシャワルマの売り上げが爆発的に伸び、ロサンゼルスのシャワルマを販売しているレストランではわずか数日で売れ行きが一気に80%もアップしたらしい)。

それにしても、この「ヒーローの打ち上げ風景」は衝撃的だ。いまだかつて、戦いが終わった直後のヒーローの虚脱感をここまでリアルに表現した作品があっただろうか?ある意味、本編以上に面白いおまけ映像と言っても過言ではないだろう。つーか、そんなに疲れてるなら誰か一人ぐらい「明日にしようよ」って言えばいいのに(笑)。


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