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『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』はこうして生まれた


本日、土曜プレミアで踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』が放送されます。この映画は、前作『レインボーブリッジを封鎖せよ!』から7年ぶりに製作された続編として全国で大ヒットを記録しました。しかし、邦画史上最高の収益を叩き出した『レインボーブリッジ』の続きを作ることはかなりの難題だったらしく、監督や脚本家たちは数年間「どうすればいいんだ!?」と悩み続けていたそうです。

続編の製作を妨げていた最大の要因は、やはり和久平八郎役のいかりや長介さんが亡くなったことが影響していたようです。映画公開時のインタビューで、亀山千広(製作担当)・君塚良一(脚本)・本広克行(監督)の3人は以下のように語っていました。



亀山(プロデューサー):「いかりやさんが亡くなったことで、もう一度新しい『踊る』を作ることはないって、自分の中で一度、線を引いたのは事実です。やはりショックは大きかったし、和久さんがいない中での湾岸署のイメージがどうしても湧かなかった。例えばこれが、たったワンシーンだけでも、仮に車椅子に乗ってでも、いかりやさんがスタジオに来て”よう!”ってやってくれるんであれば、意味があると思うんですよ。だけど、そうじゃないから。和久さんは生きているという設定にしたとしても、役者さんたちがまずつらいだろう、とね」

君塚(脚本家):「これは僕らだけの思いかもしれないけど、いかりやさんは亡くなられても、僕の中で和久さんは亡くなっていなかった。ずっと生きていて欲しかったんです」

本広(監督):「CGでいかりやさんを動かして、声だけリミックスさせよう、なんていう話も出ましたけどね。でも、どう考えても無理なんです。CMみたいに尺の短いものだったら、そんなやり方も可能かもしれませんけど、心情のお芝居ですからね。正直、ぼくもいかりやさんが亡くなられたことで『踊る』は終わったなと思ってました」

亀山:「きっかけは、2007年ぐらいだったかな?フジテレビの総務を通じて、お台場に新しい警察署ができるんだけど、”湾岸署”という名前にしたいのですが何か不都合はありますか?という警視庁からの問い合わせがあったんです。そのこと自体はすごく嬉しかったけど、何を血迷ったのか”ちょっと待って下さい”って言っちゃったんですよ。実在する湾岸署ができてしまうと、僕らが”湾岸署”という名前を使えなくなるんじゃないのか、と。そしたら警視庁さんが、そちらは”湾岸署”ですよね。我々は”東京湾岸署”とするつもりなので大丈夫ですよ、と。そういうやり取りをしてたら、なんか、めちゃめちゃ背中を押されたような気がしたんですよ。そこからでしたね、『3』の話が動き始めたのは」

君塚:「でも、いざ実際にやろうとなると、和久さんをどうするかが、やっぱりネックになるんです。刑事課に和久さんがいないのが寂しくて、みんな耐えられないだろう、と。それで僕らは和久さんが数年前に亡くなったという設定で決着をつけることにしました。それはすごく悲しいけれども、そうしないと前に進むことができなかったから」

本広:「でも、肝心の脚本がなかなか上がって来なかったんですよ。ひたすら待ってたんですが、撮影準備を始めなければいけない時期になってもまだ来ない。君塚さんが苦しんでらっしゃるのも知ってたんだけど、さすがに間に合わないんじゃないかと思って焦りました」

君塚:「本広監督が面白がってあちこちで喋ってるんだよね。俺が全然書けないとか、悩み過ぎて自殺しそうになったとか。まあ、否定はしないけどさ(笑)。2カ月ぐらいかな。とにかくずっと書けない状態が続いてた。書けないから酒ばかり飲んで、しまいにはある晩、酔っぱらって”本広監督呼ぼうぜ”って(笑)。そしたら監督が本当に来ちゃって、”そうだ、俺この人のために脚本書かなきゃいけないんだ”ってそこでハッと気付いた(笑)」

本広:「結局、脚本が仕上がったのがクランクインの3週間前でした。僕らはもう、勝手にロケハンを進めてて、本当にギリギリでしたね」

君塚:「脚本は上がったけど、そこからがまた大変で。監督はああしたいこうしたいと、色々注文を出してくる。僕も本広監督も自分がやりたいことがあるし、信念も持っているし。あんまり人の意見も聞かないタイプだから(笑)、それはもう大喧嘩ですよね。罵倒と怒鳴り合い(笑)」

本広:「本当に怖かったですよ。打ち合わせ中、何度君塚さんに怒鳴られたか(笑)。でも、ギリギリまで作品を高めたかったので、僕も引くわけにはいかなかった。”そんなこと言ってもですねえ!”ってしつこく食い下がって。亀山さんですら怒鳴ることがありましたからね」

君塚:「僕の中でドラマが動き出したのは、和久さんが亡くなったという設定を決めてからです。つまり、青島は数年前に和久さんの死を経験している。自分が信頼を寄せ、全てを教えてくれた尊敬する先輩であり、相棒であった人の死。それによって、青島は現実の”生”に対してすごく強い人間になっただろうなと思ったんです」

亀山:「追悼の映画にしようとは思っていなかったんだけれど、結果的にいかりやさんへのオマージュになっちゃった部分はありますね。ここを越えていかないと次がない、みたいな。和久さんがいないことの大きさと同時に、その意思を継いでいる感じがすごくありました」

君塚:「今までの『踊る』は群像劇だったけど、今回は完全な”青島の話”なんですよね。それは、僕が一番書きたかったのが青島だったからです。和久さんの死を経験して、現実的な”生”を実感する青島が、何を考え、何を信じて、何に怒りを感じ、何にこだわって生きていくのか。それを現場で本広監督と織田君がどうやって作り上げていくかに、すべてお任せしました」


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