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ジョン・ウー監督作品『男たちの挽歌2』ネタバレ感想

男たちの挽歌2
男たちの挽歌2

■あらすじ『刑務所に服役中のホー(ティ・ロン)に、キットからニセ札製造組織摘発のための協力依頼が届く。かつてのボス・ルン(ディーン・セキ)の元に潜入したホーだが、組織の追っ手を避けるため、ルンを連れてニューヨークへと脱出。そこで、中華料理店を営むマークの双子の弟・ケン(チョウ・ユンファ)と出会う。男たちの誇りを懸けた壮絶なる死闘が、再び始まった!』


男たちの挽歌Ⅱ』は、前作の予想を遥かに上回る大ヒットによって翌年に急遽製作された続編である。当初、ジョン・ウーの構想では、若き日のホーとマークが戦時下のベトナムで戦う物語となる予定だったが、ツイ・ハークは製作会社シネマシティの共同設立者で、プライベートで問題を抱えていた俳優ディーン・セキを出演させるように要求してきた。

だが、チョウ・ユンファ演じるマークは前作のラストで死んでしまっている。「一体どうするんだ?」と散々話し合いが続けられたが、結局、チョウ・ユンファを再登場させる為に「マークの双子の弟ケン」という無理のありすぎるキャラクターが作られ、世界中のファンをズッコケさせた。しかし、本作は前作以上の火薬量と、ティ・ロンお得意の日本刀によるチャンバラ、そしてどん底に突き落とされた男たちが、撃たれても撃たれても前へと進み続ける凄まじい意思の力をパワフルに描写し、今でもジョン・ウーの最高傑作として挙げる者も多い快作となったのである。

とにかく、この映画で描かれる銃撃戦は「凄まじい」の一言ではすませられないほど派手で豪快だ。戦争映画を除けば、ここまで大量に銃弾が飛び交い、ここまで人が死にまくる映画は皆無だろう。まさにカタルシスここに極まれり!」と言うしかないド迫力に満ち溢れている。特に、後半に突入してからの展開は、流麗、軽快、悲壮にしてスタイリッシュという、観る者全てを画面に釘付けにすること間違い無しのかっこ良さ!

クライマックスにおける常軌を逸した大銃撃戦に至っては、もはや”伝説と化している”と言っても過言ではない。このシーンは、あまりにもガン・アクションが激し過ぎるために、冷静に観ればかなり可笑しい描写が満載だ。大量の銃弾が飛び交う中で、バタバタと倒れていくのはなぜか敵の配下ばかり。銃撃の勢いとは逆の方向へ吹っ飛んでいるヤツもいる。そして、ケン、ホー、ルンの3人も次々と銃弾を浴びまくるのだが全然死なないのだ。防弾チョッキも着てないのに、アンタらゾンビか!?特にルンは最も多く被弾して、全身血まみれでボロボロになりながらも最後までしっかり生きているのが不思議すぎる(笑)。

だがこれは、そこで行われているのは実際の銃撃戦ではなく、男たちのプライドをかけた”戦いの象徴”だからなのではないだろうか。乱れ撃ちによる銃弾の嵐も大爆発も、全ては彼らの“感情の炸裂”であり、心の中の怒りを表現するための”聖なる儀式”なのでは…。

だからこそ、復讐によってプライドを取り戻した男たちは何十発撃たれようとも決して死ぬことはない。それはリアルとの接点よりも、視覚的な盛り上がりや映像美の至上を最優先とされるからだ。映画はまず、視覚を刺激するメディアであるという原点。この作品でジョン・ウーの美学はついに完成する。銃撃はカーニバルとなったのだ!

それが「超至近距離で向かい合って互いを撃ち合う」ジョン・ウー・カットである。チョウ・ユンファと殺し屋との、ほんの2メートルほどの距離を置いての凄まじい連射合戦は、世界中のアクション映画ファンのド肝を抜いた!障害物は何も無い。互いに被弾して、なおも撃ち合う凄絶なるバイオレンス!クエンティン・タランティーノ脚本のトゥルー・ロマンスでは、パトリシア・アークエットがこの場面をビデオで見て驚愕するシーンが出てくるが、そりゃあ驚くよ!(脚本に”『男たちの挽歌Ⅱ』を使用する事”と指定していたのだろうか?)。

まさに、「男の戦いとはかくあるべし」という見本のような名場面!男たちが笑って死ねる人生を受け入れた瞬間、その滅びの美学は、力強く優雅でスタイリッシュ、そして甘く切なく観る者の胸を焦がすのだ。後のアクション映画で、”黒のロングコートでベレッタを持ったグラサン男が銃を突き付け合う”という類似の対決シーンが続出したのも納得と言えよう。

この映画では、1ヶ月にも及ぶニューヨーク・ロケを行い迫力あるシーンを撮影したが、ジョン・ウーの要求が高すぎてアメリカのスタントマンがなかなかこなせなかったらしい。ユンファも、階段を滑り落ちるシーンで腰を痛めて大変だったそうだ。さらに香港での撮影は約2ヶ月もかかり、公開までの時間がほとんど無かったために大急ぎで映画を完成させなければならなかった。

おまけに当初の完成フィルムは2時間40分という長尺になり、約1時間カットしたらしい。ジョン・ウー曰く、「たったの一晩で短くしなければならなくなり、前半をツイ・ハーク、後半を私が担当して大慌てで再編集したんだ。でも、出来上がった作品を観て愕然としたよ。話も繋がってないし、どう考えても納得できないシーンがいくつもあった。ニューヨークでケンが白人に嫌がらせをされるシーンとかね。あれは、どう見ても長過ぎるよ(苦笑)」。

確かに、この映画はストーリーのまとまりが悪く、整合性にも欠ける。物語的な完成度はシリーズの中でも一番劣るかもしれない。だが、そんな事は問題じゃない!映画を観ることによって登場人物と同じ感覚を味わうという映画本来の、そして最高の楽しみ方を観客に再認識させてくれることが最も重要なのだ。

クエンティン・タランティーノジョン・ウー作品の中では、この映画が一番好きだ」と証言している。映画の素晴らしさとは、「物語の整合性がとれているかどうかとは関係無い。そこに熱いハートがあるかどうかだ!」という事を『男たちの挽歌Ⅱ』は教えてくれたのである。

ジョン・ウーハード・ターゲットを撮るために渡米したのは1993年。当時はクエンティン・タランティーノが傾倒する(というかパクりまくっていた)香港ノワールの巨匠、という紹介のされ方だった。

その後、サム・ペキンパーもびっくりのケレン味たっぷりのスローモーションや、横っ飛びで乱射される二挺拳銃や、敵味方が超至近距離で互いに銃口を突き付け合うメキシカン・スタンドオフなど、いわゆるジョン・ウー・テイスト”は瞬く間に世界中のアクション映画を席巻した。当然「パクり映画」も山ほど出てきた。

だが、スローモーション一つとっても、バレエに例えられるほどの様式美と悲愴感と風格に満ち溢れるジョン・ウーのスローモーションを超えるものが、果たしてあっただろうか?たとえ形は真似できても、”過剰なカタルシスとバイオレンスの美学”が全てを支配するジョン・ウー・ワールドの”魂”までは、誰も真似することはできないのだ。これぞ男の心を揺さぶる、問答無用の超傑作!本作を観ずしてガンアクション映画は語れない!


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