ひたすら映画を観まくるブログ

映画やアニメについて書いています

『ファンタスティック・フォー』(2015年)ネタバレ感想/解説


■あらすじ『発明オタクの少年リード・リチャーズ(マイルズ・テラー)は、小学校5年生の時に同級生のベン・グリム(ジェイミー・ベル)と物質転送装置を発明する。しかし周囲に全く相手にされず、日の目を見ることはなかった。それから7年後、その装置がバクスター財団のストーム博士(レグ・E・キャシー)の目にとまり、リードは財団の学生研究員にスカウトされる。そこには、博士の養女スー(ケイト・マーラ)、息子のジョニー(マイケル・B・ジョーダン)、研究者のビクターがいた。やがて本格的な転送装置が完成すると、リード、ジョニー、ビクター、そしてベンが転送実験に参加し、異次元空間“プラネット・ゼロ”に転送される。しかしそこでトラブルが起こり、ビクターが行方不明となってしまった。なんとかリードたち3人だけが地球に帰還したものの、装置を操作していたスーも含め、彼ら4人は異次元のパワーによって超能力を身につけてしまう。果たして4人の運命は…!?マーベルコミックスの4人組人気ヒーロー・キャラクターを、フレッシュな若手キャストでリブートしたSFアクション超大作!』



えー、日本では10月9日に公開されたリブート版ファンタスティック・フォーですが、公開初週土日2日間の全国映画動員ランキングで初登場6位という、この規模の大作映画としてはイマイチなスタートだったようです。ちなみに、僕は公開2週目に観たんですけど、観客は僕を含めて9人でした(^_^;)

そもそもこの映画、8月に全米で公開される前から色々不穏な噂が流れてたんですよねえ。本作は、2005年の『ファンタスティック・フォー [超能力ユニット]』をリブートするために企画され、SF映画『クロニクル』で一躍有名になったジョシュ・トランクを監督に起用し、20世紀フォックスが巨額の費用を投じて製作した超大作映画です。

ところが、奇妙なことに撮影が開始されても情報が一切公表されず、いつまで経っても現場の写真すら出て来ません。プロデューサーのマシュー・ボーンは「とてもいい映画になりそうだ。『クロニクル』のファンならきっと気に入ると思うよ」とインタビューで答えるものの、その翌日には「出来がメチャクチャでスタジオが再撮影を命じたらしい」とニュースで報じられるなど、嫌な噂が飛び交ったのです。

20世紀フォックス側はネガティブなイメージの拡散を恐れ、脚本家のサイモン・キンバーグを通じて「2〜3日の追加撮影をするだけだ。作品の出来は何も問題ない」と反論コメントを発表しましたが、ファンの不安は高まる一方。

そしてついにジョシュ・トランク監督自身が沈黙を破り、「これまで情報を出さなかったのは意図的なんだよ」と語りました。「撮影は72日で予算内だし、追加撮影も数日だけだった」と悪い噂を否定し、さらに特報や予告編が公開されると、スーパーヒーロー映画として斬新な映像の数々がファンの期待を煽ったのです。

しかし、それでも悪い噂は止まりませんでした。「ジョシュ・トランクは精神的に不安定な状態が続いており、『ファンタスティック・フォー』の撮影現場でも孤立し、住んでいた家をメチャクチャに壊すなどの奇行が問題視され、ついに監督をクビになった」と報じられてしまったのです。

しかも、映画の出来があまりにも酷すぎて、ほぼ全面的に撮り直すことになり、降板したジョシュ・トランク監督の代わりにプロデューサーのマシュー・ボーンが自ら再撮影をしている、とのニュースまで流れる有様。ジョシュ・トランクはこれらの噂を全て否定していますが、もはや『ファンタスティック・フォー』の現場で何らかのトラブルが起きていることは隠しようがありません。

そしてなんと、ヤケクソになったジョシュ・トランク「1年前にはこの映画のファンタスティックなバージョンがあったんだ。それなら大好評だっただろう。君たちがそのバージョンを観ることは決してないだろうけどね。それが現実なんだよ」ツイッターで呟いたため、あっという間に拡散されて大炎上!

と同時に、ジョシュ・トランクに対する批判も続出し、「主演のマイルズ・テラーと監督が現場で衝突して大喧嘩になった」とか、スー・ストーム役のケイト・マーラとは常に仲が悪かった」とか、「自分の殻に閉じこもり、スタッフの誰とも打ち解けようとしなかった」など、連日のように暴露話が報道されたそうです。

それだけでなく、20世紀フォックス側の対応も問題視され、「クランクインの直前になって脚本の変更を要求した」とか、「いきなり製作費を削減した」とか、「クライマックスのアクションシーンを大幅にカットした」など、映画を観に行く気力を萎えさせるような噂ばかりが流れ続けたのです。

その結果、全米における『ファンタスティック・フォー』の成績は大惨敗。批評家からはブーイングを浴び、観客からも酷評され、ロッテントマトの満足度は8%、IMDbもわずか3.9点と叩かれまくり、「近年稀に見る失敗作」という不名誉な烙印を押されてしまいました。

こういう最低な前フリを受けて日本で公開されることになった『ファンタスティック・フォー』。もうね、観る前から期待値がほぼゼロじゃないですか(苦笑)。ヒロインのスー・ストームの日本語吹き替えを堀北真希さんが務めることになったものの、大して話題にもならず。

一応、「あの堀北真希が声優初挑戦!」みたいに煽っていましたが、宣伝側のやる気もあまり感じられませんでした。むしろ、日本の配給会社的には「この負け戦をどうやって処理しよう…」ということしか頭に無かったのかもしれませんね。

ただ、実際に観た感想を正直に言うと、そんなに悪くはなかったです。もちろん「スゲー面白い!」ってことは全然無いんだけど、まあアメコミ・ヒーロー映画としては手堅く作ってあるなあ、という印象でした。特に前半部分は、少年時代から青年時代の「普通の人間」の場面を丁寧に描いていたのが好感触。ただ、じっくり描きすぎて、「いつになったらヒーローが大活躍するんだろう?」と若干やきもきしましたよ(笑)。

しかも、ようやくヒーローが4人揃って、何だか強そうな悪人(ドクター・ドゥーム)も出てきて、「おお、やっと凄いアクションシーンが始まるのか!?」と思いきや、何が何だか良く分からないうちに事態が解決して映画終了。え?これで終わり?いや、本当にそんな感じなんですよ。この映画って、上映時間が100分しかないんですけど、そのうちの1時間以上を”研究シーン”に使ってて、何も起こらない場面が異様に長いんです。

まあ、確かにクリストファー・ノーラン監督がバットマン ビギンズを撮った時も「バットマンが活躍するまでに時間がかかりすぎる」と批判されていましたが、途中で修業シーンを入れたり、クライマックスでしっかりアクションを描いていたので、ヒーロー映画としては許容範囲でした。

ところが、『ファンタスティック・フォー』には「ヒーロー映画としての見どころ」がほとんどありません。後半になってようやく超能力を得たと思ったら、ゴム人間のリードは施設を逃げ出し、岩男のベンは「元の姿に戻りたい」と悩み、グダグダやっているうちにDr.ドゥームが現れて…という時点で残り時間はあとわずか。

ここから急にストーリーをまとめ出し、「ハイ!時間が来たからこれにて終了!」と言わんばかりに幕を引く強引な展開にビックリ仰天。物語を終わらせることを俗に「風呂敷を畳む」と言いますが、本作の場合は「1時間半かけて広げた風呂敷を、わずか10分で畳んだ」みたいな印象で、話のまとめ方が雑すぎる!観終わってしばらく茫然としてしまいました(苦笑)。

要するに、ペース配分がメチャクチャなんですよ。前半のドラマをあれだけじっくり描くなら、後半ももう少し分量を増やさないとバランスが取れないでしょう。「会社側がジョシュ・トランク監督から編集権を取り上げ、本来なら2時間以上になる予定だった本編映像を、無理矢理100分にカットした」という噂も、あながちウソではないのかもしれないなあ。

あと、『ファンタスティック・フォー』の世界観で『クロニクル』みたいな映画を作るのは、ちょっと無理があるんじゃないですかね?だって、どんなにリアルに描いても、手足がビヨ〜ンと伸びる男や全身岩だらけの男が暴れまくる物語なわけですよ。それをシリアスに見せられてもねえ…

2005年版の『ファンタスティック・フォー』みたいに、「体を透明にできる能力を持った女が、服も下着も路上に脱ぎ棄てて街中を疾走する」というバカバカしくてコメディっぽいノリの方が、こういうキャラクターには合っているような気がしました(^.^)


●人気記事一覧
これはひどい!苦情が殺到した日本語吹替え版映画ワースト10
まさに修羅場!『かぐや姫の物語』の壮絶な舞台裏をスタッフが激白!
日本映画のレベルが低くなったのはテレビ局のせい?
町山智浩が語る「宮崎アニメの衝撃の真実」
「映像化不可能」と言われている小説は本当に不可能なのか?


このブログについて(初めての方はこちらをどうぞ)
トップページへ