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リーアム・ニーソンの『96時間』ネタバレ・レビュー


■あらすじ『17歳になったばかりの天真爛漫なアメリカ人少女キムが、初めての海外旅行に訪れたパリで突然拉致された。しかも犯人は裏社会に巣食う東欧系マフィアで、若い女性たちを麻薬漬けにして闇市場に売り飛ばす恐るべき人身売買組織。だが彼女の父親は、特殊技能と特殊なコネを持つCIAの元工作員だった。父ブライアン・ミルズは愛娘のキムを救出するため単身パリに乗り込み、数百人規模とも言われるアルバニア系マフィアに敢然と戦いを挑む。制限時間は96時間!彼は娘の身に危害が及ぶ前に、無事娘を救出することが出来るのか!?』



本日、金曜ロードSHOWでリーアム・ニーソン主演の『96時間』が放映されます。本作のストーリーを要約すると、「誘拐された自分の娘を父親が全力で救出する話」という潔いまでの単純明快さで、余分なサブプロットやどんでん返しなどは全くありません。しかし、シンプルを極めたこの内容が功を奏し、上映時間の短さと相まって、驚くべきテンポの良さを実現しました。銃撃戦やカーチェイスも必要十分なポイントをしっかり押さえているし、アクション映画としては結構楽しめるんじゃないでしょうか。ポジション的には、『ジェイソン・ボーン』シリーズよりは完成度が落ちるけど、『沈黙』シリーズよりは格段に面白いって感じです(笑)。

では、本作が他のアクション映画と異なる最大の特徴は何かと言えば、「頭のいいキチガイが主人公」という点なんですよ。普通、アクション映画のヒーローとは、誰もが納得できる行動理由や正義感を持っているものです。しかし、本作の主人公は「愛する娘を助けるためならば、どんな犠牲も厭わない」という”独自の価値観”を振りかざし、拷問や殺人を正当化しちゃってるんですよね。

そりゃ確かに、過去には「自分の娘や家族を殺された復讐」という名目で、主人公が悪い奴を殺しまくる映画もありました。でも、それですら法律的には立派な犯罪だし、ましてや本作の娘はまだ死んでないんですよ。それなのに、捕まえた相手を電気で拷問するわ、元同僚の奥さんを銃で撃つわ、どう考えてもやり過ぎでしょ?しかもブライアンは元CIAの工作員だから、物凄く頭が良くて行動力もあるわけで。正直、こんな危ないヒーロー見たこと無いよ!もうアメリカ政府は娘を一生監禁しておいた方がいいんじゃないの?娘さえ安全ならブライアンは暴れないから(笑)。

そんな危険極まりない主人公を演じたリーアム・ニーソン北アイルランド出身の渋い俳優です。以前は『シンドラーのリスト』でアカデミー主演男優賞にノミネートされるなど、演技派のイメージが強かったんですけど、『96時間』に出演して以来、『特攻野郎Aチーム』とか『タイタンの戦い』とか『バトルシップ』とか、「オイオイどこを目指して進んでるんだよ?」という迷走気味のキャスティングばかりが続いて、個人的には少々不安を感じてました(笑)。ただ、初期の頃はサム・ライミの『ダークマン』に出たりしているので、元々そういう素養があったのかもしれません(ちなみに『ダークマン』は隠れた名作で超オススメ!)。

というわけで、本作は「娘を溺愛するキチガイ親父が法も正義も無視してムチャクチャに暴れまくる物語」という点において、他に類を見ない画期的なアクション映画と言えるでしょう。一歩間違えれば完全にストーカー行為と化す”ウザい父親”の束縛ぶりも必見です(笑)。難を言えば、リュック・ベッソンの脚本が相変わらず雑で説得力が無い事かなと。まあ、ぶっちゃけスティーブン・セガールあたりがやりそうな行動パターンと内容的には大差ありません。

しかも娘の足取りを追う描写が結構いい加減だったり、絶体絶命のピンチを脱出する方法が「そんなのアリか?」というぐらい適当だったりと、論理的な展開がほぼ皆無なのはちょっと厳しい。鉄パイプに拘束された状態から鉄パイプが「バキッ」と折れて助かるくだりに至っては、あまりのご都合主義に劇場で失笑が起きてましたからね。もっと頑丈な場所に繋いどけよ(笑)。

また、「96時間」という制限時間も、敵が「96時間以内に身代金を用意しろ!」などと要求してきたわけではなく、誘拐された側が勝手に設定したタイムリミットなのです。このため映画を観ている間、「ああっ、残りはあと1時間しかない!大丈夫なのかッ!?」という緊張感がほとんど生じず、サスペンス映画としての醍醐味をあまり味わえなかったのが残念。

ただ、最後のボスとのやり取りは良かったですね。人質の首にナイフを突き付けて「こいつの命が惜しかったら・・・!」という、もはや他の映画で100回ぐらい見たようなお約束のシチュエーションに「あ〜、またこのパターンか」と思っていたら、問答無用でズドン!と射殺。実に痛快でした(笑)。そしてなにより、リュック・ベッソンが書いたほとんど中身の無いストーリーを、ここまで面白い映画に仕上げた監督の手腕は賞賛に値すると言えるでしょう。素晴らしい!


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