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映画『ジュラシック・パーク』をもっと楽しく観るための裏話


本日、金曜プレミアムでスティーブン・スピルバーグ監督の『ジュラシック・パーク』が放送されます。「HDリマスター・ノーカット版」は地上波初らしいのでファンは要チェック!というわけで本日は、「『ジュラシック・パーク』をもっと楽しく観るための裏話」をご紹介しますよ。


●監督候補は4人いた
マイケル・クライトンが『ジュラシック・パーク』の原稿を書き上げると、あまりにも面白すぎる内容に、まだ本が出版される前(ゲラ刷りの段階)から映画化の申し込みが殺到した。20世紀フォックスジョー・ダンテワーナー・ブラザーズティム・バートン、トライスターがリチャード・ドナー、そしてユニバーサルがスティーブン・スピルバーグの名を挙げて交渉したらしい。

マイケル・クライトンはこの4人の監督全員と話をして、誰が一番『ジュラシック・パーク』の監督として相応しいかを検討。その結果、映画化に最も意欲的な姿勢を見せたスピルバーグと契約を結んだという。ちなみに、クライトンスピルバーグは以前からの友人で、スピルバーグが監督することはほぼ内定していたという噂も…(出来レース?)。


●せっかく脚本を書いたのに…
監督が決まると、スピルバーグは脚本の執筆もクライトンに依頼した。クライトンは原作小説を書くのに7年もかかり疲れ切っていたため、「悪いが他の人に頼んでくれ」と断るものの、スピルバーグに無理矢理説得され、8カ月かけてようやく初稿を完成。これを読んだスピルバーグは「素晴らしい!」と絶賛しつつ、後に2人の脚本家によって大幅に書き直されてしまった(酷い話だw)。


●グラント博士のキャスティング
当初、古生物学者のグラント役には、リチャード・ドレイファスカート・ラッセルウィリアム・ハートなどの名前が挙がっていたらしい。スピルバーグは自ら彼らと交渉したが、ギャラの折り合いがつかず断念(ウィリアム・ハートは脚本すら読まずに断った)。

結局、『オーメン3』でダミアンを演じたサム・ニールに決まったものの、『ピアノ・レッスン』の撮影が延びていたため、それが終わるのを待って『ジュラシック・パーク』の撮影を開始したそうだ(ちなみに、ローラ・ダーンが演じたエリー役には、当初ジュリエット・ビノシュが候補に挙がっていた)。


●歩くティラノサウルスは可能か?
スピルバーグは当初から、恐竜が動くシーンの大部分をフルスケールのメカニカルモデルで撮りたいと考えていて、実際に自立歩行可能なティラノサウルスの巨大ロボットを作れるかどうか、真剣に検討していたらしい。

しかし、NASAやMIT(マサチューセッツ工科大学)などでロボット開発に取り組んでいる研究者たちと何度もミーティングを繰り返した結果、歩くT-レックスは実現不可能ということが判明。スピルバーグ曰く、「残念だけど、諦めるしかなかったよ」とのこと。


●巨大な恐竜を動かす
こうして「歩く実物大ティラノサウルス」の製作を諦めたスピルバーグだったが、「フルスケールの恐竜ロボットを使って撮影する」という方針は変えたくなかった。そこで名乗りを上げたのが、以前からスピルバーグとの仕事を望んでいたスタン・ウィンストン

彼はジェームズ・キャメロンとコンビを組んだ『ターミネーター』『エイリアン2』『ターミネーター2』などで頭角を現したSFXアーチストで、怪物やロボットを作らせたら恐るべき実力を発揮していた。おまけに”大の恐竜好き”とあって、『ジュラシック・パーク』の映画化が決まる前からアプローチをかけていたらしい。

正式に契約を結んだあと、スタン・ウィンンストンは早速ティラノサウルスの製作に取り掛かる。当初の案では、頭部・尻尾・足など、撮影に必要な部分のみを実物大で作る予定だったが、「どうせなら上半身を丸ごとフルスケールで作りたい」とスタンが提案したことで前代未聞のプロジェクトが始まった。

高さ20フィート、鼻先から尻尾まで含めれば全長40フィートにも達する巨大なT-レックスを、複雑なアクションも演じられる精巧なロボットとして作らなければならない。そこで、最新式の油圧システムを使った特製のダイノ・シミュレーターが開発された。

ダイノ・シミュレーターは、ユニバーサル・スタジオやディズニー・ランドなどのアトラクションに広く使われているライド・マシンで、T-レックスの動作制御にはうってつけ。「ウォルド」というコントローラーを4人のオペレーターが操作し、その動きをコンピュータが記憶、油圧システムに伝えてティラノサウルスを動かす、という仕組みになっている。

こうして、企画・設計から2年がかりで完成した実物大T-レックスだったが、撮影現場では苦労の連続だったらしい。予定では、T-レックスに直接雨が当たらないはずだったのに、実際は何時間も土砂降りの雨にさらされていたからだ。

水で濡れて接着剤が効かなくなり、皮膚が骨組みからはがれ始めたため、スタン・ウィンストンが慌てて布で補強したり、皮膚を直接骨組みへ縫いつけたり大忙し。さらにフォームラバー製の皮膚が水を吸収して何百ポンドもの重さになり、精密に調整された加速度計が大きく影響を受け、何度も撮影中断を余儀なくされたという。

だが、驚くべきことに、T-レックスのトラブルはこれぐらいしかなかった。この規模のアニマトロニクスとしては、珍しいほどの優れたパフォーマンスを発揮したのである(事実、スピルバーグが見込んでいたスケジュールを4日も短縮した)。「なんて速く撮影が進むんだろうって、信じられないくらいだった。『ジョーズ』の時に比べたら夢のようだよ(笑)」とスピルバーグも喜んでいたそうだ。


ストップモーション・アニメからCGへ
「恐竜は実物大モデルと人形アニメを使って表現する」。それが当初のスピルバーグの考えだった。このため、『スター・ウォーズ』旧三部作や『ロボコップ』などで優れた人形アニメを生み出したフィル・ティペットが、「キッチンで暴れ回るラプトル」や「車を攻撃するティラノサウルス」などを製作。これらの精巧なストップモーション・アニメを作るために4カ月が費やされた。

しかし「ガリミムスが群れで走って来るシーン」の製作は人形アニメでは難しい。そこで、『ターミネーター2』で見事なCG映像を開発したデニス・ミューレンが、当時としては画期的な技術でガリミムスを製作。しかし、この時点でもまだ、CGを他のシーンに応用することは考えられていなかった。「リアルなCGを作るには、あと数年はかかるだろう」というのが大方の予想だったからだ。

ところが、フルCGのティラノサウルスを見て状況が一変する。実在感溢れる筋肉や皮膚の動きは、まるで生きているかのようなリアリティを醸し出していたのだ。衝撃的な映像を目の当たりにしたスピルバーグは、『ジュラシック・パーク』の製作方法を大幅に方向転換。「実物大モデルで対応できないシーンは、全てコンピューター・グラフィックスで製作しよう!」と決断したのである。

●失意のどん底に沈んだフィル・ティペット
この決定を聞いて、誰よりもショックを受けたのがフィル・ティペットだった。ストップモーション・アニメーターの第一人者として様々な映画に関わってきた実績を否定されたのだから無理もない。スピルバーグフィル・ティペットの作った人形アニメを全てキャンセルした時、「いったい何のために私は必要なのだろう…」と激しく落ち込んでいたらしい。

だが、CG担当者のデニス・ミューレンは別の考えを抱いていた。「私たちにはフィルが必要だった。CGでリアルな恐竜を作ることはできても、その動きがリアルでなければ意味が無い。彼が長年にわたって培ってきた恐竜の生態についての知識が、我々には絶対に必要だったんだよ」とのこと。当時、CGが本格的に導入される以前の現場では、CGアニメーターの数が圧倒的に不足していたのである。

こうして、アニメーション・スーパーバイザーとして映画製作に関わることになったフィル・ティペットは、CGアニメーターの参考用フィルムとして『恐竜バイブル』というデモ映像を作成。スタッフはこれを参考にしてCG恐竜の動きを研究したという。さらに、経験不足のスタッフためにトレーニング講座を開くなど、作品の成功を願って惜しみなく協力した。

また、「キッチンで暴れ回るラプトル」の動きはフィル・ティペットのアイデアが数多く採用され、このシーンの演出やカメラアングルなどはほとんど彼が考えたと言われている。スピルバーグも彼の意見を忠実に取り入れ、綿密な打ち合わせを繰り返していたらしい。

後年、フィル・ティペットは当時の様子を次のように振り返っている。「初めは”人形アニメを中止する”という決定に衝撃を受けたけどね。私ほどショックを受けた人間はいなかっただろう。でも、T-レックスのコンピューター・グラフィックスはあまりにも素晴らしかった。”映画の歴史が変わる!”と確信せざるを得ないほどにね。それで、結局戻ることを決意したんだよ」


●ハリケーンでセットが吹き飛んだ!
1992年の8月24日から、ハワイのカウアイ島で『ジュラシック・パーク』のロケ撮影が開始された。しかし、撮影中に最大瞬間風速54メートルにも達する巨大ハリケーンがハワイを直撃!島の全てのセットが破壊されてしまった。このままではスケジュールが大幅に遅れてしまう。

スタッフはすぐに別のロケ地に移動しようとしたものの、空港は閉鎖されて身動きがとれない。するとその時、『レイダース』の冒頭シーンで「蛇を飼っているパイロット」を演じた男が、偶然にも医療運搬の仕事で居合わせていたため、彼の飛行機に便乗することができたのである。なんたる幸運!結局、ハリケーンの影響で遅れたスケジュールはたったの1日だけだった。

トリケラトプスを急いで作れ!
当初、グラントたちが病気のトリケラトプスを見つける場面は、スタジオのセットで撮影するはずだった。ところが、ハワイの広々とした風景に感動したスピルバーグが「ここで撮りたい!」と言い出したため、急遽トリケラトプスが必要になってしまった。驚いたのは、恐竜のモデルを製作中のスタン・ウィンストン

「とっさに考えたのは”間に合うはずがない!”ってことだった。元々のスケジュールではずっと先になる予定だったからね。でも、スタジオのセットではなく、本物のハワイの美しい眺めの中で撮られることは、恐竜にとってもこの上ないことになるだろう、と考えた。それで、”できっこない”から”やらなくちゃならない!”へ気持ちを切り替えたんだ」

こうして、予定より3カ月も早くモデルを作らなければならなくなったスタッフたちは、突貫作業の末にどうにか完成させ、ギリギリでハワイへ運び込んだ。スタン・ウィンストン曰く、「時間が無かったので、トリケラトプスは他の恐竜に比べてデザインを十分に検討できていない。だが、古生物学者が皮膚の模様を発掘したタイミングと重なったおかげで、それをテクスチャーマップに活かすことができた。つまり、このトリケラトプスは最新の古生物学に基づいた模様を採用しているんだよ」

●恐竜の声の作り方
スピルバーグから「恐竜の存在を信じさせてくれるようなリアルな音を考えてくれ」と依頼されたサウンド・デザイナーのギャリー・ライドストロムは、それぞれの恐竜に合うように、実在する様々な動物の声をミックスさせた。

T-レックスの唸り声は、ゾウの赤ん坊が鼻から出す音と、アリゲーターの威嚇音とトラの遠吠えを重ねたものである。ラプトルが攻撃する時に出す声は、水中で録音したイルカの鳴き声と、ガチョウが警告を発する時に出す音が混ぜ合わされたらしい。

また、ブラキオサウルスの優しい鳴き声は、クジラとロバの鳴き声を電子的に変化させてミックスしたものらしい。こうしてギャリー・ライドストロムは数ヶ月の作業の末に、リアルでユニークな音を次々と生み出していったのだ。


●『ジュラシック・パーク』完成!
こうしたスタッフたちの頑張りによって、ついに『ジュラシック・パーク』は完成した。映画を観た関係者たちは(既に内容を知っているにも関わらず)、誰もが皆、その驚異的な映像に驚いていたという。特に反応が大きかったシーンが、湖のほとりでブラキオサウルスとパサロサウルスの群れを目撃する場面だ。

恐竜を見たサム・ニールローラ・ダーンジェフ・ゴールドブラムらが感激している側で、リチャード・アッテンボローが「ようこそ、ジュラシック・パークへ!」と高らかに宣言する名場面。スーパーバイザーとして本作に関わってきたフィル・ティペットでさえ、このシーンを見た時は感動せずにはいられなかったという。

「あのシーンで動くブラキオサウルスを見た時は、思わず目に涙が浮かんだよ。なぜかって、生まれて初めてこの目で恐竜を見ることができたんだからね。巨大で優雅な彫像のようで、このショットはまさしく野獣の美そのものを描き出している。そして、私が5歳の子供だった時からずっと夢見ていたものが、ようやく叶ったんだ…!」




ジュラシック・パーク(字幕版)

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