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『レディ・プレイヤー1』ネタバレ映画感想/評価


スティーブン・スピルバーグ監督の最新作『レディ・プレイヤー1』は非常に楽しい映画だ。

冒頭のカーレースのシーンでは、『バットマン』のバットモービル、『マッドマックス』のインターセプター、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のデロリアン、『モンスタートラック』のビッグフット1号、『特攻野郎Aチーム』のGMCバン、『マッハGoGoGo』のマッハ号、『AKIRA』の金田バイクなど、様々な映画に登場した魅力的なマシンがズラリと並ぶ。

また、カーレース中にプレイヤーを妨害するキャラクターとして『ジュラシックパーク』のT-レックスや、『キングコング』のコングなどが登場して大暴れ(ちなみにスピルバーグは当初、デロリアンを登場させることに否定的だったが、原作者から要望され出すことにしたらしい)。

さらに、中盤からクライマックスにかけては『ストリート・ファイター』のリュウ、『トゥーム・レイダー』のララ・クラフト、『ロボコップ』のED-209、『エルム街の悪夢』のフレディ、『13日の金曜日』のジェイソン、『チャイルド・プレイ』のチャッキー、『エイリアン』のチェストバスター、『バットマン』のハーレイクイン、ジョーカー、キャットウーマン、『アイアン・ジャイアント』など、とても全部は書き切れないほど色んなキャラクターが総出演!

その他、映画ファン的には『サタデー・ナイト・フィーバー』、『ブレックファスト・クラブ』、『フェリスはある朝突然に』、『初体験/リッジモンドハイ』、『メリーに首ったけ』、『市民ケーン』、『バカルーバンザイの8次元ギャラクシー』など、「元ネタを知っていればニヤリとできる」シーンや会話が満載だ。

とにかく本作は、次から次へと怒涛の勢いで映画・アニメ・ゲームに関するネタがぶち込まれ、まさに「全オタクが泣いた」と評しても過言ではない驚天動地のヴィジュアルが炸裂しまくり!そんな『レディ・プレイヤー1』を語る際に外せない要素が、「仮想現実世界」と「80年代ノスタルジーである。

まず、仮想現実空間(バーチャル・リアリティー)を舞台にした映画は、『トロン』(1982年)、『マトリックス』(1999年)、『アバター』(2009年)など過去から現在に至るまで数多く作られていて、そういう意味では割とよくある題材だろう。

「特殊な装置を使って夢の世界へ入る」という設定なら『トータルリコール』や『インセプション』などがあるし、実写だけでなくアニメーションでも『攻殻機動隊』や『楽園追放』、『アクセル・ワールド』、『ソードアート・オンライン』など、同系の作品は枚挙に暇がない。

アニメといえば、映画終盤「みんなの元気をオラに分けてくれ!」的なシチュエーションで、オアシスにログインしているプレイヤーが「ワーッ!」と集結するシーンは、細田守の『サマーウォーズ』を思い出した。

そして『レディ・プレイヤー1』のように「ゲームの世界へ入ってミッションをクリアーしながら謎を解く」という設定なら、押井守の『アヴァロン』やデヴィッド・クローネンバーグの『イグジステンズ』もそうだし、最近では『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』も「VRゲームを題材にしたアドベンチャー」と言えるだろう。

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では「本作の元ネタは何か?」と言えば、意外なことに『レディ・プレイヤー1』の原作者アーネスト・クラインと、『ソードアート・オンライン』の原作者の川原礫は2人とも、「『アヴァロン』にインスピレーションを受けて作品を書いた」と証言しているのだ。

『アヴァロン』とは、2001年にアニメーション監督の押井守が撮ったSFアクション映画で、全編ポーランド・ロケを敢行し、主人公もエキストラも全員がポーランド人という異色の日本映画である。

ストーリーは「大勢の人々がオンラインVRゲーム”アヴァロン”に興じている近未来。主人公のアッシュも毎日ゲームの仮想現実世界を楽しんでいたが、ある日ゲームの中に隠された”秘密”に気付き…」というもの。

『アヴァロン』と『レディ・プレイヤー1』は映画の印象としては全く異なってるんだけど、「プレイヤーが謎を解き、ミッションをクリアーすることで次のステージへの手掛かりを得られる」などの設定はかなり似ている。

さらに、”アヴァロン”を作った「九姉妹」と呼ばれるゲーム管理者が、ゲームの世界に”ある仕掛け”を施し、それを見つけた者は特別な権利を得る…という設定も、「”オアシス”を作ったジェームズ・ハリデー(マーク・ライランス)が、ゲームの世界にイースターエッグを隠し、それを見つけた者は莫大な資産を得る」という『レディ・プレイヤー1』の内容とほぼ同じだ。

なので、アーネスト・クラインが『アヴァロン』を観て『レディ・プレイヤー1』のストーリーを思い付いたとしても不思議ではないだろう(むしろ「『アヴァロン』みたいなマイナーな映画までチェックしてるのかよ!?」ってことの方が驚きだったw)。

ちなみにスティーヴン・キングの小説『芝刈り機の男』を映画化した『バーチャル・ウォーズ』(1992年)や、デンゼル・ワシントンラッセル・クロウが共演した『バーチュオシティ』(1995年)などの珍作も捨て難い魅力があるので、機会があればご覧ください。

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そしてもう一つのポイント「80年代ノスタルジーに関しても、近年のハリウッド映画には70年代後半から80年代を描いた作品が意外と多いのである。

例えば、スピルバーグとJ.J.エイブラムス監督が組んだ『SUPER8/スーパーエイト』は、1979年のアメリカを舞台に宇宙人と少年たちの交流を描いたジュブナイル要素溢れるSF映画だ(…と書くと『E.T.』みたいだが中身は全然違うw)。

また、『X-MEN:アポカリプス』や『ミッドナイト・スペシャル』も80年代を舞台にした映画だし、Netflixの人気ドラマ『ストレンジャー・シングス/未知の世界』も1983年のアメリカを舞台にしており、全米で社会現象を巻き起こすほどの大ブームとなった。

さらに去年大ヒットしたホラー映画『IT イット “それ”が見えたら、終わり。』に至っては、スティーブン・キングの原作では1950年代だったのに、わざわざ80年代に設定を変更している有様。いったいなぜ、そこまで80年代にこだわるのか?

その理由は監督たちの年齢を見れば明らかだろう。『スーパーエイト』のJ.J.エイブラムスは1966年生まれ、『X-MEN:アポカリプス』のブライアン・シンガーは1965年生まれ、『IT/イット』のアンディ・ムスキエティは1973年生まれ。

つまり、80年代に子供だった世代が現在ハリウッドの最前線に立ち、自分たちが少年時代に影響を受けたカルチャーを思う存分作品に取り入れている、というわけだ。

ここで、「いやいやちょっと待て!スティーヴン・スピルバーグは1946年生まれじゃん!」というツッコミが当然出るだろうが、その通り(笑)。

スピルバーグ自身は1980年代に『レイダース』、『E.T.』、『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』、『最後の聖戦』などのヒット作を連発しており、「影響を受けた」どころか、むしろ「影響を与えた」側なのだ。

では、なぜスピルバーグは80年代要素が満載の『レディ・プレイヤー1』を撮ったのか?と言えば、「原作の大ファンだったから」と言われている。

ただし、原作小説の『ゲームウォーズ』にはスピルバーグのオマージュが大量に散りばめられていたため、当初は「自分が載っている原作を自分で映画化するのは恥ずかしいから嫌!」と断っていたそうだ。

しかし「他の監督に撮られるのはもっと嫌だな〜」「だったら自分で撮った方がいいかも。そうすれば思い切り好きなことも出来るだろうし…」と考えを改め、監督を引き受けることに。

これに驚いたのは原作者である。なんせ『ゲームウォーズ』に大量のスピルバーグ・ネタを盛り込んでしまうほど、アーネスト・クライン自身がスピルバーグ作品の熱狂的なファンだったからだ。

なので、自分の小説がスピルバーグの手によって映画化されると決まった時のクラインは「信じられなかったよ!人生で起きた最高の出来事だね!」と歓びを爆発させたという。

そんな感じで映画化が決まったものの、もともと原作は「映画化不可能」と言われており、アーネスト・クライン自身も「版権の獲得が難しいだろうな…」と考え、脚本を書く際に”権利が獲れなさそうなキャラ”をわざと外していたらしい。

ところが、スピルバーグが監督に決まった途端、「あれも出そう、これも出そう!」と言いながら原作に出ていたキャラを追加し、「大丈夫なのか?」というアーネスト・クラインの不安をよそに次々と版権を獲得していったそうだ。まさにスピルバーグ様々である。

しかし、そんなスピルバーグの力をもってしても全ての版権を獲得することは出来なかった。中でもクラインが大好きなウルトラマンは、何とか映画に登場させたかったようだが、円谷プロの許可が下りずに断念。

さらに、原作のパーシヴァルは冒険の途中で東映版『スパイダーマン』の巨大ロボット「レオパルドン」を入手し大活躍するが、クラインの日本サブカル文化リスペクトが爆発した見事なオマージュだったにも関わらず映画では未登場。

また、『マジンガーZ』のミネルバXや、『勇者ライディーン』、『百獣王ゴライオン』、『超時空要塞マクロス』、『新世紀エヴァンゲリオン』など、原作で活躍していたのに権利関係でボツになったメカやキャラも少なくない。

まあ、円谷プロは海外の企業と裁判をやっていたので、権利関係が難しいことは想像できる。しかし、東映はマーベルからスパイダーマンの版権を借りていたくせに、レオパルドンの使用を許可しないとはどういう了見なのか?

エヴァンゲリオンガイナックスに至っては、前身の「DAICON FILM」の時代に散々他社のキャラを無断使用しておきながら、いざ自社のキャラが使われる立場になったら断るって何なんだ!?許可しろよ!と言いたい。

しかしながら、エヴァが使えない代わりに原作の中では小さい扱いだった『機動戦士ガンダム』のRX-78-2が大活躍することになったので結果オーライなのかも(笑)。劇場では「俺はガンダムで行く!」のセリフに興奮を隠し切れないファンが続出したようだ。

しかもガンダムと戦う相手がメカゴジラ!日本の映画では絶対に実現不可能なこの奇跡の組み合わせが、まさかスピルバーグの映画で観られるとは!いや〜、すごいなあ!このシーンでもファンは感涙したに違いない。

にしても、スピルバーグってガンダムを観たことがあるんだろうか?「ゴジラの大ファン」ということは有名なのでメカゴジラが活躍するのは分かるんだけど、ガンダムに特別な思い入れは無いんじゃないかなあ。

その一方、「これは絶対スピルバーグ大好きだろ!」って場面が、第2の試練の『シャイニング』。ここだけ気合いの入れ方が尋常じゃなくて(笑)、なんと映画『シャイニング』の世界を完全再現しているのだ。スゲー!

このシーンを観て「もしかすると、スピルバーグが本当にやりたかったことは『シャイニング』の再現なのでは?」と感じた。原作者アーネスト・クラインは1972年生まれで80年代のポップカルチャーにドップリ影響を受けているが、スピルバーグは違う。

その時期はバリバリ働いて他のクリエイターに影響を与えまくっていたのだから、クラインほどの思い入れや”80年代ノスタルジー”みたいなものはないだろう。

それに対して『シャイニング』はスピルバーグ自身も影響を受けているし、敬愛するスタンリー・キューブリックの作品だし、きっと思い入れたっぷりだったに違いない。

というわけで、全体的には非常に楽しい映画なんだけど、やはり原作者とスピルバーグの”年代の差”みたいなものが所々に出てしまっているような気がして、そこがちょっと微妙な感じ。

敵のノーラン・ソレント(ベン・メンデルソーン)をわざとバカっぽく描写していたり、ヒロインのサマンサ(オリヴィア・クック)が危機を脱するくだりや、主人公のウェイド(タイ・シェリダン)が刺客と戦う場面に緊張感がない等、映画の作り自体もかなりユル目に作られてるし。

また、ラストの「本当の幸福を見いだせる場所は現実の世界だけ」「部屋に引き籠ってゲームばかりしてないでリアルな世界も楽しもうぜ!」というメッセージは「やや説教臭い」という印象だった(笑)。

まあ確かに正論なんだが、スピルバーグにそれを言われてもなあ…(おまけに綺麗な彼女を膝に乗っけてドヤ顔する主人公でエンドw)。「そりゃあんたはリアルで充実してるからいいだろうけど俺らは違うんだよ!」ってなるやん(^_^;)


レディ・プレイヤー1(ソング・アルバム)
サントラ ブライアン・グウェン feat.メリッサ・ソルトヴェット
ユニバーサル ミュージック (2018-05-09)

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