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映画『エンド・オブ・ウォッチ』ネタバレ感想/評価


■あらすじ『ロサンジェルスの一角にある重犯罪多発地区サウス・セントラル。その中でも特に危険なニュートン地区で巡回パトロールに当たる白人警官のブライアン・テイラージェイク・ギレンホール)とメキシコ系警官のマイク・ザヴァラ(マイケル・ペーニャ)。固い絆で結ばれた2人は、署内でも屈指の検挙率を誇る名コンビだ。大学の法学部入学を目指すテイラーは入試課題に映像制作を選び、自分たちの日常業務を複数のビデオカメラで常時記録していた。そんなある時、メキシコの巨大麻カルテルの秘密に触れてしまった2人は、警察官としての職務を遂行する中、次第に危険な状況へ追い込まれていく…』



先日の『サボタージュ』に引き続き、デヴィッド・エアー監督のエンド・オブ・ウォッチを鑑賞。本作は、物凄く単純に言ってしまうと「二人の警察官が凶悪な犯罪者に立ち向かう様子を描いたバディ・ムービー」なのだが、大きな特徴が二つある。

まず一つ目は、パトカーの車載カメラや主人公が持っている家庭用ビデオカメラに映った記録映像などでほぼ全ての画面が構成されていること。これにより、(映画自体はフィクションであるものの)まるでドキュメンタリーを観ているようなリアリティが映画全体に溢れているのだ。

そしてもう一つの特徴が、ストーリー性の少なさ。通常、警察モノのバディ・ムービーと言えば、「ある事件を捜査する二人の警官が協力して犯人を追い詰め、最後は悪党をやっつけて無事解決」というのが一般的な流れだろう。

ところが本作は、二人の警官の日常業務を延々と映しているだけで、特にストーリーのようなものは存在しない。もちろん日々凶悪事件に立ち会っているわけだから、それだけでも十分面白いんだけど、時々彼らの奥さんや恋人まで映ったりするので、ほぼプライベートビデオみたいな感覚になっている(普通の警察ドラマを想定していると「なんだコレ?」ってなるかもしれない)。

本作をカテゴリー分けするなら、いわゆる”POV方式”で作られた疑似ドキュメンタリー(ファウンド・フッテージ型式)に該当するのだろう。”POV”とは「主観映像」のことで、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』が大ヒットして以降、『パラノーマル・アクティビティ』や『REC』など、こういう方式のホラー映画が一気に増えた。

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一軒のアパートで繰り広げられる恐怖体験を描いたPOVホラー。

さらに、『クローバーフィールド』や『クロニクル』など、ホラー以外のジャンル(SFやアクション等)でもPOV方式が取り入れられ、この手法は瞬く間に業界を席巻したのである(主に低予算映画で多用された)。つまり『エンド・オブ・ウォッチ』は、ホラーでもSFでもなく”警察官モノのPOV”というわけだ。

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ニューヨークに突如現れた巨大怪獣を延々と映し出す疑似ドキュメンタリー。

「警察官モノ映画をPOVで撮ったらどうなるか」という試み自体は面白いと思う。まあ、テレビの『密着!警察24時』みたいな雰囲気が無きにしも非ずなんだけど(笑)、こういう手法で警察官モノ映画の可能性を広げるのは悪くないと感じた。

ただ、POV映画として見た場合、所々に無理があるんだよね。主人公は、大学の入試課題のために勤務時間中ずっとカメラを回し続けているのだが、そんなことが許可されるのか?など。まあ日本の警察ではまず無理だろうが、向こうの警察では可能なのかもしれない。

しかし、主人公側の映像はそれでいいとしても、敵側の映像はどうなる?と思ったら、なんと敵もビデオカメラを回しているという設定になっているのだ!いやいや、さすがにそれは無理があるだろ(笑)。激しい銃撃戦の真っ只中でもしっかりカメラを回し続ける不自然さは、「動画好きだから」という説明だけではちょっと納得できないものがあるぞ。

しかも、彼らが撮影した映像だけじゃなくて、「明らかに登場人物以外の誰かが撮った映像」が時々紛れ込んでいるのだから「それはいったい誰が撮ったんだ?」と言わざるを得ない(笑)。こういうPOV映画で第三者の視点を入れる場合、パトカーの車載カメラとか、ビルの防犯カメラとか、色々方法はあるだろうに。

たしかに、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や『クローバーフィールド』の頃は「1台のビデオカメラで撮った映像」という制約があったため、撮影可能なアングルやカットに限界があったのだが、『クロニクル』では、”主人公が超能力者”という設定を生かしてカメラを空中に浮かせ、「主人公を俯瞰で撮る」という今までのPOV映画には無かった視点を生み出しているのだ。

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突然、超能力を身に付けた少年たちの行動を、ビデオカメラが生々しく記録していく。

そういう映画を見ると、「おお!POVにもまだまだ新しい映像表現が可能なんじゃないか!」とワクワクさせられるんだけど、『エンド・オブ・ウォッチ』はそういった”視点のルール”みたいなものが曖昧で、必要な映像(例えば主人公のアップとか)が欲しい場合は、平気で”誰のものでもない視点”を使っているのだ。特に後半の銃撃シーンなんて、完全に現場のカメラマンが撮ってるよねえ(笑)。

まあ、「気になるか?」と言われればそんなに気にならないんだけど、冒頭で「これからビデオカメラで撮影します」と宣言してるからには、せめて「全編を記録映像で構成する」という統一感が欲しかったなと。無理にビデオカメラを使わなくても、今はスマホで簡単に動画が撮れるんだから。

例えば、”たまたま現場に居合わせた一般市民が偶然撮った映像”という設定にして、第三者視点を部分的に使ってもいいわけだし、工夫次第でどうにかなったと思うんだよなあ。そこが少々残念ではあった。

とは言え、映画自体は全編にリアリティが溢れまくり、非常に面白く仕上がっている。パトカーの中で同僚の警官と下品なバカ話で盛り上がった次の場面では、麻薬密売グループと生きるか死ぬかの攻防戦を繰り広げるという、LA市警察の壮絶な実態を臨場感たっぷりに再現し、それを必要以上に美化することなく淡々と描いているところがストイックで良かった。



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