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宮崎駿が逆ギレ!スタッフは大慌て!『崖の上のポニョ』制作裏話


本日、金曜ロードSHOWで『崖の上のポニョ』が放送されます。『千と千尋の神隠し』以来7年ぶりに制作された本作は、2008年に全国の劇場で公開され、155億円の大ヒットを記録しました。

というわけで今日は、その制作状況を克明に描き出したドキュメンタリー『ポニョはこうして生まれた 宮崎駿の思考過程』を見てみましたよ。これは映画の企画立ち上げから絵コンテ作成、そして過酷な作画作業に至るまで、余すことなく文字通り「映画作りの全て」を収めた超弩級のメイキング映像なのです。

このドキュメンタリー、とにかく長い!僕は今まで色々な映画のメイキングを見てきましたが、こんなに長いのは生まれて初めてです。DVD5枚組で総収録時間はなんと12時間30分!映画4本分にも匹敵する非常識なほどのボリュームに思わずビビってしまいました(^_^;)

この映像は以前、NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」という番組で『宮崎駿のすべて ポニョ密着300日』と題して放映されたもののフルバージョンだそうです。放送時には1時間半に編集されていましたが、元になった素材はこれだけの分量があったんですねえ。

本作を見て改めて思ったのは、「宮崎駿という人は本当に凄いなあ」ということ。当時67歳の宮崎さんが、こんなベテランになってもまだ自ら先頭に立って原画を描いている姿には驚嘆せざるを得ません。アニメーターっていったい何歳まで現役でいられるんだろうか?

先輩の大塚康生さんなどは既に一線を退き、後進アニメーターの指導にあたっているそうです。愛弟子の庵野秀明さんも現在では演出に専念し、自分で原画を描くことはほとんどありません。ましてや宮崎駿は”映画監督”なんですよ?監督なのに自分で一枚一枚原画をチェックし、膨大なカットを修正しまくっているというもの凄さ!世界広しといえどもこんな監督は宮崎駿だけでしょう。

どうやら宮崎さんは全ての原画に目を通さなければ気が済まない性分らしく、メイキングの大半は作画チェックと原画修正で占められています。その理由は宮崎さんが生粋のアニメーターだから。画面には、他のアニメーターが描いた絵を見て「う〜ん、なんか違うんだよなあ〜」とブツブツ文句を言いながら絵を修正する宮崎さんの姿が何度も映し出されていました。

突然「だあああ〜!」と両手で髪の毛を掻きむしり、イライラと煙草を吸いまくるその姿からは、「もっとこうして欲しいのに…」という、キャラクターの微妙なニュアンスを他人に上手く説明できないもどかしさが感じられ、ついには「悩んでいる間に描いた方が早い!」と言い放ち、さっさと自分で描いてしまうのです。

また、「体の微妙な動きで緊張感を表現しなければならないのにできてない!」とか、「なんでこんな簡単な動きが描けないんだ!」などと若手アニメーターを叱り飛ばす様子もスタジオジブリでは日常茶飯事だそうで(笑)。ジブリのスタッフは、他と比べても優秀な人材が揃っていることで有名なんですけど、それでも宮崎駿の目から見れば”自分の思い描くレベルには達していない”のでしょう(現場のアニメーターは大変だなあ)。

しかし、こんなに毎日原画チェックばかりやっていて監督の仕事の方は大丈夫なのだろうか?と思っていたら、やっぱり全然大丈夫じゃなかったです(笑)。ある日制作デスクから呼び出され、「いったいいつになったら絵コンテは出来上がるんですか!?」と詰め寄られてしまう宮崎さん。

なんと、当初は”遅くても8月中には仕上がる予定”だった絵コンテが、10月になってもまだ完成していなかったのです。「このままじゃあ、公開日に間に合いませんよッ!」と叱られた宮崎監督は「今月中にはなんとかするから、もう少しだけ待ってくれ!」と借金の返済を迫られている人みたいに懇願しまくり(笑)。

ところが、これでようやく絵コンテの作業に取り掛かるのかと思いきや、スタジオに戻ると再び原画チェックを始めるんですよ。それを見たNHKの撮影スタッフが思わず「あの〜宮崎さん、絵コンテを描かなくていいんですか?」と尋ねた途端、「うるさいッ!わかってるよ!」と突然逆ギレ(笑)。

その後も宮崎監督の怒りは収まらず、NHKの担当者はドキュメンタリーの取材のため、一日中宮崎監督に張り付いていたのですが、「気が散るからもう帰ってくれ!」とスタジオから追い出されてしまいました。どうやら宮崎さんは、自分でも絵コンテが遅れていることを気にしていたようで、最後のシーンがどうしても描けずに悩んでいたらしい。

その後も連日のように原画チェックをやり続け、合間に少しずつ絵コンテを描く日が延々と続くものの、描いては直し描いては直しで遅々として進まず、10月が過ぎて11月に突入しても全く完成する気配がありません。酷い時には、一日かけて描いた絵コンテを「気に入らない!」と丸ごと捨ててしまうことも…。結局、年内に絵コンテ作業は終わらず、翌年の1月にようやく完成することになりました。

しかし、「できたぞ!」と絵コンテを渡された制作デスクは喜ぶと同時に顔面蒼白!なぜなら、当初の打ち合わせでは「ほとんど動きはない」と聞いていたのに、想定外のアクションシーンが多数追加されていたからです。スケジュールが遅れて時間が無いのに!

動きが多くなれば、当然それだけアニメーターの作業量が増えるわけですよ。果たして作画が間に合うのか?という不安で一杯の担当者は「この期に及んで、よくこんな情け容赦のない絵コンテを描いてくるよなあ…」とカメラの前で愚痴りまくっていました(^_^;)

さて、改めて見るとこのメイキング映像は本当に長いです。もののけ姫はこうして生まれた』も長かったのですが(6時間40分!)、本作は更に倍の時間を費やしているのですから尋常じゃありません。なんでこんなに長くなったんだろう?と思ったら、ジブリのプロデューサー:鈴木敏夫さんの判断でした。「多くの人に宮崎駿の全てを知ってもらいたかった。そのために必要な時間だ。これでも足りないぐらいだよ(笑)」と嬉しそうに語る鈴木さん。

つまり、本作はサブタイトルに「宮崎駿の思考過程」と題されている通り、宮崎監督の人物像や仕事ぶりなど、主に「宮崎駿がどのような人間か」に焦点が当てられているのです。

なので、単純に『ポニョ』のメイキングが見たい人にはちょっと合わない内容かもしれません。でも、一人のアニメ監督をこれだけの分量でドキュメンタリー化した映像は過去に例が無く、宮崎駿ファンにとっては貴重な資料と言えるでしょう。

ちなみに、本作の発売を誰よりも楽しみにしていたのは鈴木さん自身だったのですが、ある日大変な事件が勃発!なんとリリース直前に発売日が5カ月も延期になってしまったのです。その原因は”BGM”でした。宮崎監督は作業中、常にBGMを流しながら仕事をしています。しかも気分によって曲を変えているため、日本の曲や外国の曲など色んな音楽がバックに流れているのですよ。

通常なら「著作権をどうするか?」ということをまず考えるでしょう。しかし「ドキュメンタリー映像の場合、取材の過程で現場に流れている背景音や環境音に関しては著作権が発生しない」という法律があるらしく、そのことを知っていた鈴木さんは安心し切って、編集段階で何の処理もしなかったのです。逆に「余計なBGMを足さなくて済むから楽でいい」などと余裕をかましていたらしい。

ところが、今回は宮崎さんがバックに流している音楽の音量が大き過ぎたため、著作権に引っ掛かってしまったという(例えば、絵コンテ作業中にはワーグナーの「ワルキューレの騎行」をガンガン鳴らしていた)。土壇場でこの事実が発覚した鈴木Pは大慌て!どうにかして問題をクリアーできないかとあちこち奔走するものの、あまりにも楽曲が多すぎて対処し切れません。

しかも日本だけでなく海外にも著作権の申請をしなければならず、どう考えても短期間で全ての処理を完了させるのは不可能と判断。結局、発売日の延期を余儀なくされました。そして鈴木さんは「発売日が延びてしまったのは私の責任です。申し訳ありませんッ!」と謝罪するハメになってしまったのです、トホホ。

後日、某ラジオ番組に出演した鈴木さんは「かれこれ40年近く仕事をやってきて、こんなに初歩的な間違いをするなんて、自分でも本当に情けないんですけど…。僕は普段、仕事に私情は挟まないんですよ。常に客観的に状況を判断してミスを出さないようにしてるんです。でもあの時はねえ…、宮崎さんのメイキングを作れる嬉しさで舞い上がってたんでしょうねえ……」と物凄く低いテンションで語っていました。どうやらこの人は、『ポニョ』本編よりもメイキングの方に力を入れていたらしい(笑)。すごいプロデューサーだなあ(^_^;)



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