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神様のベレー帽〜手塚治虫のブラック・ジャック創作秘話〜


本日、フジテレビ系列で『神様のベレー帽〜手塚治虫ブラック・ジャック創作秘話〜』というドラマが放映されます。「マンガの神様」と崇められた天才:手塚治虫の代表作『ブラック・ジャック』にスポットを当て、作品が作られた背景を振り返りつつ、当時の手塚治虫がいかにムチャなことをしでかしていたのか、その”実像”を赤裸々に描くストーリーだそうで、主役の手塚を演じるのはなんとSMAP草なぎ剛全く手塚治虫らしさが感じられない謎のキャスティングなんですけど(笑)。しかも、テレビで見る草なぎ君って、メチャクチャ絵がヘタな印象だし、そんな人が手塚治虫を演じていいのか?悪意がみなぎる配役だなあ(笑)。

それから、AKB48大島優子秋田書店に入社したものの、会社の対応に不満を抱いている女性社員」という、非常にタイムリーな役(笑)で登場しています(景品の担当ではなく、編集者ですがw)。他にも、佐藤浩市小日向文世中村靖日、松尾論、岡田義徳など、有名俳優が多数出演していて結構リッチなドラマですね。あと、ピースの又吉が赤塚不二夫を演じるという、これまた謎のキャスティングが炸裂(笑)。どういうチョイスなんだろう?

ちなみに、吉本浩二が描いている原作漫画『ブラック・ジャック創作秘話〜手塚治虫の仕事場から〜』では、過去に手塚治虫のアシスタントを務めていた人やマネージャー、雑誌の担当編集者などが登場し、「昔は手塚に色々酷い目に合わされた」という悲惨なエピソードを披露しています。担当編集者は”手塚番”と呼ばれ、当時売れっ子漫画家だった手塚治虫の原稿をもらうために何週間も仕事場に泊まり込み、やっと原稿をもらえると思ったら、「気に入らないから描き直す」と言って更に何時間も待たされるなど、日々苦労が絶えなかったらしい。

このように連日連夜ハードワークを極めていた手塚先生(とスタッフたち)ですが、中でも特に熾烈だったのが「アニメ制作」だそうです。『24時間テレビ』の中で放映される2時間スペシャルアニメ『バンダーブック』を手塚プロで作ることになった時、スタッフは全員「大丈夫なのか…?」と不安に駆られました。当時は既にマンガの仕事が手一杯で、とてもアニメを作る余裕など無かったからです。そして不安は的中。8月27日に放送するアニメなのに、なんと5月になっても全く作業が進んでいなかったのですよ!

これがどれぐらい大変な状況かと言うと、『バンダーブック』は94分のテレビアニメですが、94分ってもうほとんど劇場アニメと同等の規模なんですよね。劇場アニメの製作期間は通常1年から1年半ぐらい。最近のジブリは2年以上掛けて映画を作っていますが、どんなに短くても最低半年は必要と言われています。以前、『カリオストロの城』がわずか4カ月で制作された時、あまりの早さに業界中が騒然となり、作画監督を務めた大塚康生でさえ、「劇場アニメにおける製作期間の短さではおそらく日本最短記録だろう」と驚いたほどなのですから。

それが、『バンダーブック』の場合は5月になってようやく現場が動き始め、実質的に作画作業が開始された時は納品まで2カ月を切っていたというのですから、もうムチャクチャとしか言いようがありません。チーフディレクター坂口尚は、いつまでたっても作画が上がって来ない最悪な状況に「やってられるかー!」とブチ切れ、その後ようやく進展し始めたと思ったら手塚先生が「キャラの歩き方がおかしい」と描き直しを命じるなど、惨憺たる有様でした。この期に及んでリテイクを出すとは、こだわり過ぎにも程がある!


しかし、そんな絶望的なスケジュールの中でも、満身創痍で頑張り続けるスタッフ達。最後の3日間は全員完徹で、当時手塚のアシスタントをしていた石坂啓は「朝スタジオに出社すると、ビルの廊下に倒れて寝ている人が大勢いた」と証言しているほどです。ヒドい話だ(苦笑)。どう考えても「これじゃ絶対に間に合わないだろ…」と思うんですけど、ギリギリで間に合わせてしまうところが手塚治虫の天才たる所以なんでしょうねえ。ちなみに、この時はどうにかピンチを乗り切ったんですが、翌年の『海底超特急マリンエクスプレス』では更に状況が悪化し、以降『24時間テレビ』が放映される度にその凄まじい記録は更新され続けたとか。手塚先生…(T_T)

尚、最新刊の『ブラック・ジャック創作秘話〜手塚治虫の仕事場から〜4』では、映画監督の大林宣彦さんが登場しています。「熱烈な手塚ファン」を自称する大林監督は、1977年にカーク・ダグラスを主役にしたCMを撮るためにハリウッドへ行く予定でした。ところが、知り合いのプロデューサーから「もうすぐ手塚治虫の漫画を映画化する」と聞かされ大興奮。すかさず「それ、誰が監督するの?」と食い付くものの、「いや、アンタに頼もうと思ってたけど、ハリウッドへ行くんだろ?だから他の人に撮らせるよ」と断られてしまいます。それを聞いて大林監督は……

「そりゃダメだよ!」
手塚治虫を映画化できるのは俺だけだぞ!」
そしてなんと、カーク・ダグラスのスケジュールを無理矢理1ヵ月遅らせ、『ブラック・ジャック』の映画化を引き受けてしまったのですよ。ハリウッド・スターより手塚治虫を優先するとは…(^_^;)

こうして『ブラック・ジャック』初の実写映画『瞳の中の訪問者』が完成しました。片平なぎさ、志保美悦子、千葉真一長門裕之峰岸徹など有名俳優も多数出演し、大林宣彦監督作品第2弾として話題になったんですが、最大の問題はブラック・ジャックを演じたのが宍戸錠という点でしょう。その衝撃的なビジュアルを見たお客さんはビックリ仰天!どうしてこうなった!?

おそらく、大林監督は原作を忠実に再現しようと試みたようですが、その結果、白と黒のツートンカラーの髪の毛に、顔の半分が青い皮膚という異様な風貌の主人公が完成してしまいました。そして、バケモノと化したブラック・ジャックを見て、手塚先生大激怒!

「こんな人間いるはずない!」

息子の手塚眞も、「ブラック・ジャックの場合、俳優さんの顔に傷をつけ、髪を白くし、黒いマントを着せるわけですね。父はその映画を観て”あんな人間いるか!”って怒るわけです。自分の原作の映画にマンガっぽい場面が入っている事を凄く嫌っていました」とインタビューで語っているほどですから、相当不満だったんでしょうねえ。それを示す証拠として『ブラック・ジャック』第193話の一コマに……

「先生の宍戸錠!」

昔これを読んだ時は、何で宍戸錠なのか意味が分からなかったんだけど、そういうことだったのか(^_^;)


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