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映画『鉄コン筋クリート』感想

■あらすじ『義理と人情とヤクザの街・宝町。そこを根城として自由に飛び回る“ネコ”と呼ばれる2人の少年、クロとシロ。カツアゲやかっぱらいをしながら毎日を生きる2人は一心同体。そんなある日、昔なじみのヤクザ・鈴木、通称“ネズミ”が街に戻ってきた。ずっと変わらなく見えた宝町に、再開発という名目の不穏な動きが見え始める。背後にチラつく謎の男“蛇”の影。やがて、自分たちの街を守ろうと抵抗を始めたクロとシロにも冷酷な“蛇”の魔の手が迫ってくる・・・。 「青い春」「ピンポン」の松本大洋原作コミックを「MIND GAME マインド・ゲーム」のスタジオ4℃がアニメ映画化。昔の面影を残し混沌に満ちた街“宝町”を舞台に、そこに生きる親を知らない2人の悪童少年が、不穏な再開発計画に反逆する姿を描く!』



例によって松本大洋のマンガは未読であるが、原作の雰囲気は良く再現できていたと思う。クセのあるキャラクターを、実に上手くアニメーションさせてるなあと感心した(まあ、「4℃っぽい」って言えばそうなんだけど)。とにかく、グラフィックに関しては「凄い!」の一言で、3DCGを多用した背景美術の素晴らしさは必見と言えよう。

どこか外国のような、それでいて懐かしさを感じさせる街並みを疾走するオープニングから、ファンタジックなイメージの渦が溶けていくクライマックスまで、圧倒的なヴィジュアルの洪水は観る者の期待を全く裏切る瞬間が無い。

また、物語の方も(途中まではやや流れに乗りづらいものの)、漫画的なハチャメチャさやドラマチックな展開なども含め、非常に楽しめた。特に、ドラマが予想外にベタだったのでビックリ仰天。シロとクロの交流はもちろん、ヤクザのネズミと木村のエピソードなど、泣ける場面も結構多い。

しかし、気になった点が2つほどある。一つは「内なる自分自身との対峙」というテーマ自体がやや古い(使い古されている)という事。このテーマは『ゲド戦記』でも取り上げられていたのだが、正直言って「ああ、またこのテの話か」とガッカリした(始まりは多分、『新世紀エヴァンゲリオン』からだと思うが)。演出手法にも目新しいものは無く、延々と続く精神世界の描写はハッキリ言って鬱陶しいだけ。

いわゆる“セカイ系”というヤツなのだが、こういうのはもうそろそろ止めた方がいいんじゃないかなあ(後で原作を読んでみたら、かなり原作通りの展開だった。でも、やっぱりあの世界観を表現し切るには至っていない)。

そして、もう一つは「暴力描写がやや過剰ではないか?」という事。元々の原作がそうなのかもしれないが、本作には意外なほど暴力シーンが多い。もちろん、「暴力シーンはダメ」という意味ではなく、不特定多数の人が観る事を想定された劇場映画の場合、「暴力シーンが含まれている」という事を事前に知らしめる必要があると思う。

R指定”などがつくと興行的にマズい、という製作者側の事情は分かるが、「最終的に観る観ないを判断するのは観客自身」というスタンスを取るべきではないだろうか。

というわけで、上記の2点が気になったものの、それ以外は概ね満足。中でもシロのキャラクターが、デザイン、動き、垣間見せるイマジネーション、そして蒼井優の声”で見事に立っており、その彼を守ろうとしながら「実はシロに内包されているクロの存在」に強い説得力を与えているのだ。

つーか、蒼井優マジで凄スギ!今回、“蒼井優がシロを演じる”という事は事前に知っていたのだが、鑑賞中に彼女の顔が脳裏に浮かんでくる事は一度も無かった。もう、完全に“シロになり切っちゃてる”のである。これで声優初挑戦!?天才ですなホントに。

あと、本木雅弘バツグンに上手いね。“ヘビ”のねちっこい感じが良く出てる。反対に、伊勢谷友介が演じる木村は、どう聞いても伊勢谷友介だった(笑)。嫌われ松子』のヤクザと全く変わってねーじゃん!というわけで、ヴィジュアルの素晴らしさのみが先行している感のある本作ですが、最新テクノロジーを駆使しつつもキャラクターにしっかりと血が通った良質なアニメでしたよ。



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