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トニー・スコット監督作品『クリムゾン・タイド』感想

クリムゾン・タイド

■あらすじ『ロシア国内において、突如クーデターが勃発。革命軍は核ミサイル基地を占拠し、アメリカおよび日本への発射を宣告した。この緊急事態に際し、アメリカの核ミサイル搭載型原子力潜水艦アラバマ」は、有効射程での核攻撃が出来るように出港。そしてついにミサイル発射の指示が来てしまう。しかしその途中で敵潜水艦の攻撃を受け、外部との交信が途絶えてしまった。攻撃すべきか、しないべきか。閉鎖された潜水艦に、世界の命運を握った決断が委ねられた!』



アカデミー俳優:デンゼル・ワシントンジーン・ハックマンの、存在感溢れる共演が見所の本格潜水艦映画。製作はジェリー・ブラッカイマーですが、トニー・スコット監督の演出と全編潜水艦の中だけで展開する密室劇の為に、いつものブラッカイマー節はあまり見られません。この映画で訴えている事を一言に要約するならば、「命令は最後まできちんと確認しましょう」という事です。要するに、狭い潜水艦の中で「核ミサイルを発射するのか、しないのか」という判断をめぐって延々と言い争っている状況だけで、映画を一本作ってしまったワケです。
面白いことは面白いですけど、何かちょっと不思議な映画ですね。なぜなら、この物語の中には悪人が一人も出てこないからです。潜水艦の乗組員は全員、国を守る為、家族を守る為、信念を持って仕事をしています。デンゼル・ワシントンジーン・ハックマンも、激しく対立はしますが、「軍部の命令を厳守する」という一点において二人の見解は完全に一致しているのです。キャラクター的には、ハックマンの方がちょっと悪役っぽく描かれていますが、彼の言動は決して間違っているわけではありません。
また、潜水艦内部でちょっとした“クーデター騒ぎ”が発生しますが、普通のアクション映画だったら、自分の欲望を満たす為だけの悪人や裏切り者が登場するハズです。しかし、この映画に出てくる登場人物は皆、「自分は正しい!」と信じている人ばかりなのです。

正直、このような構成でドラマを作ったという事に驚きました。エンターテイメントの定石を守りつつも、単純な“正義と悪の対立構造”にしなかったところがポイントと言えるでしょう。観る前は『レッド・オクトーバーを追え!』みたいな活劇モノを想像していましたが、全然違いましたね。むしろかなり地味な映画と言えますが、緊張感が持続する為に、最後まで飽きる事がありません。アクションやサスペンスというよりも、「危機管理映画」とでも呼ぶべき上質なフィクションに仕上がっていると思います。
また、潜水艦同士の迫力満点の戦闘シーンも見所の一つでしょう。”深海へどんどん沈んでいって、水圧にビビる”という定番のシーンもしっかり出てきます(笑)