ひたすら映画を観まくるブログ

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小説家になってしまった映画マニア福井晴敏

本日、NHKの「トップランナー」を見た。ゲストはローレライ』『戦国自衛隊1549、そして間も無く公開される亡国のイージスと立て続けに原作が劇場公開される人気作家:福井晴敏である。

今年は自分の原作が3本同時に映画化される福井だが、本人は「こんな事になるとは全然想定していなかった。玉突き事故みたいなもんです」と困惑している様子。だが「映画はタイミングですから」と言っているように、幸運なめぐり合わせだったと言えるだろう。

子供の頃から小説を読んでいたのかと思いきや、意外な事に本は嫌いでほとんど読んでいなかったらしい。逆に映画が大好きで、映画ばっかり観ていたそうだ。そのうち、「こんな映画が観たい!」と思うような“妄想映画”のストーリーを、授業中にノートに書き始めたのである。

やがて警備会社に就職するが、びっくりするぐらいやる事が無い。あまりにもヒマなので、学生時代にやっていた“オリジナル映画”のストーリー作りを再開。とにかく書いて書いて書きまくり、気付いたら原稿用紙5000枚になっていた。これが小説家への第一歩となったのである。

そんな福井が小説を書く時の最優先課題は、「日本でスペクタクル・アクション映画を作る為にはどうすればいいのか」という事だった。『ダイ・ハード』を最初に観た時、「これだったら、頑張れば日本でも出来るじゃん!」と思ったが、あれをそのままコンバートしようとすると絶対に出来ないという事が、色々調べた結果判明。そう簡単に自衛隊は出動出来ないのだ。「だったら逆に、出動出来ない話のスペクタクルにしよう」という発想で作られた小説が『亡国のイージス』だったのである。

やがて福井は自身の小説の映画化を夢見るようになるが、ある日劇場でガメラ3』を観て「こりゃ凄い!自分の小説が映画化される時は、是非この人に頼もう!」と当時担当者と話していた。

その後、本当に樋口監督本人が訪ねてきたので、福井にしてみれば「飛んで火にいる夏の虫でした」。しかし、福井のイメージする樋口監督は、10年ぐらい前の『ガメラ』のパンフレットに載っていた写真しかなかったので、初めて本人を見た時、別人かと思ったらしい。福井曰く、「パンフレットの写真よりも、80%ぐらい増量してましたから誰だか分かりませんでした」。

だが、初めて会った時から二人はあっという間に意気投合。とにかく、好きな映画の趣味が全く同じで、今まで観た邦画のベスト3が完全に一致したというから凄い(ちなみに、その3本とは『日本沈没』と『新幹線大爆破』と『太陽を盗んだ男』)。

その時、福井自身は『亡国のイージス』を映画化して欲しかったそうだが、あまりにも規模が大き過ぎるという事と、当時は自衛隊の協力が得られるかどうかも分からない、という理由で断念。代わりに樋口の方から「潜水艦モノ」と「女の子」で話を考えてくれ、というムチャなオーダーが飛び出した。

潜水艦なら、ワンセットの密室劇で済むからお金も掛からない。そして、現在の映画観客層は女性が増えているから、女性のキャラクターは絶対に入れて欲しいという事なのだ。要するに、完全に映画製作側の都合で出されたオーダーである。

良く考えてみたら「『亡国のイージス』は映画化しにくいから、他のストーリーを作ってくれ」と言っているんだからずいぶん失礼な話だ。でもこんなワガママな注文を引き受けて、しっかり『ローレライ』を書き上げたのだからえらいよなあ。

話題はこの後、福井が小説のオマケにフィギュアを付けようとして担当者に迷惑をかけまくった話とか、毎度お馴染みの(笑)富野由悠季監督に関する話とか、面白エピソードが炸裂。いや〜、なかなか楽しい番組でした。『亡国のイージス』、早く観たいぞ!