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トム・クルーズ主演『トップガン』映画制作秘話

■あらすじ『カリフォルニア州ミラマー海軍航空隊基地。1分間で3万フィート飛翔し、スピードは音速以上、7トンもの兵器を搭載できるF14トムキャットのパイロット、マーヴェリック(トム・クルーズ)と、レーダー索敵員のグース(アンソニー・エドワーズ)が“トップガン"と呼ばれる超エリートパイロットたちの仲間入りを果たした。彼らの教官は、“ヴァイパー"ことマドカフ中佐(トム・スケリット)とジェスター(マイケル・アイアンサイド)だ。トップガンの中にはベスト・オブ・ベストの自信をのぞかせているアイスマン(ヴァル・キルマー)もいた。その夜士官クラブで、マーヴェリックはチャーリー(ケリー・マクギリス)という名のブロンド美人に一目惚れするが、その彼女こそ彼らの教官だったのだ。サンディエゴの海軍航空隊基地を舞台に、世界最高のパイロットを養成するエリート学校と、別名“トップガン"と呼ばれる訓練生たちの姿を描く、大ヒットスカイアクション青春物語!』



世界的に有名なハッタリプロデューサー:ジェリー・ブラッカイマーがドン・シンプソンとタッグを組んで、フラッシュダンス』『ビバリーヒルズ・コップ』と立て続けにヒットを飛ばした後、3作目に作った映画が『トップガン』である。

1983年、シンプソンはブラッカイマーから“TOPGUN”と題されたある雑誌を見せられた。シンプソンは記事を読まず、そこに映っていた“F14トムキャットと、レイバンのサングラスをかけたパイロット”の写真だけを見て、「かっこいい!」と感激。すぐさま雑誌社に電話を掛けて映画化権を買ったらしい。

ところが、脚本作業が予想以上に難航し、結局11人もの脚本家が入れ替わり立ち代わりリライトする事になる。しかし最大の問題は、11人のライターの中に誰一人としてジェット戦闘機や軍隊に詳しい者がいなかったという衝撃の事実だった。

その為、『トップガン』の描写はほとんどがデタラメで、軍事用語や規則、航空力学の表現に至るまで間違いだらけだったのである。テクニカル・アドバイザーとしてトップガンの元教官ピーター・ペティグリューが招かれたが、シナリオを読んであまりのいいかげんさに呆れ果てたという。

例えば映画では、登場人物は「トップガンの盾」をめぐって競い合うのだが、そもそもそんな”盾”など実在しない。ペティグリューはシンプソンたちに「現実と違いすぎる」と何度も忠告したが、シンプソンは「現実なんてどうでもいいんだよ。映画が面白くなれば何でもアリだ!」と言い放ったらしい。

しまいには、ペティグリューの指摘は撮影の邪魔になると考え、彼のいない間にこっそりと撮影を進めるようになってしまった。そのおかげで、加速時にスロットルを閉じたり、着陸時にスロットルを開けたりといった珍シーンが続出するハメになったのである。

中でもペティグリューを一番悩ませたのは、ケリー・マクギリス演じるチャーリーのキャラクターだった。“授業中にマクギリスが脚を組み換えると生徒の視線がスカートの中を追う”というシーンをトップガンの格納庫で撮影していると、偶然本物の教官たちが通りかかったのだ。

たちまち「こんな教官いるわけないだろ!責任者を呼べ!」と大騒ぎに!ペティグリューは必死に弁解したが、もはや撮影側は彼の助言を受け入れること無く暴走しまくり、次々と破天荒なシーンが生み出されてしまったのである。さらにCMディレクター出身のトニー・スコット監督が、地面ギリギリの高度で飛ぶシーンを撮りたいと言い出したのでペティグリューは仰天!マッハでそんな低空飛行は不可能だからだ。

その他にも、敵機には北朝鮮のマーキングが見えるが、インド洋まで航続できる戦闘機は存在しない。敵機はエグゾセ対艦ミサイルを搭載していると説明されるが、エグゾセはフランス製なので共産圏には輸出されていない。マーヴェリックは敵機の頭上わずか数センチを逆さまに飛んで敵パイロットを驚かせるが、マッハで飛行中にそんなことをしたら空中分解するはずだ、など数え上げればきりが無いほどの考証ミスが存在している。

ちなみに日本の航空自衛隊パイロットがこの映画を観た時、ミサイル照準中のヘッドアップ・ディスプレイが20ミリバルカン砲用だったので混乱したそうだ。機体番号に関するミスも非常に多く、航空母艦の甲板で待機しているマーベリックの戦闘機の機体番号は515号となっているのに、発進する時は104号、ミグ戦闘機を撃墜して帰還した時は114号と、コロコロ変わるのだ。いつの間に乗り換えた?

だが、86年5月に公開されるやいなや、アメリカだけで1億7000万ドルを稼ぎ出し、シンプソンの生涯最大のヒットとなった。さらに、日本でもその年最大の興収を記録し、『ぴあ』の読者投票で堂々の第一位に輝いたのである。映画の面白さは、現実を正確に描写しているかどうかとは関係ないという事を、『トップガン』は証明して見せたのだ。

トニー・スコットは美しいショットと、目まぐるしい編集と、激しいビートの音楽で観客のアドレナリンを噴出させ、リアリティを考える暇を与えなかったのである。シンプソンはこの映画を「空中で踊るロックンロールだ!」と言っていたそうだが、まさにその通り。

ジェット戦闘機の凄まじいスピード感とロック・ミュージックが渾然一体となって、観る者にシビれるような生理的快感を与えているのだ。云わば、史上最速のミュージカル!さりげなくキャストが豪華な所もグッド。ヴァル・キルマーメグ・ライアンティム・ロビンスなど、ブレイクする前の若手ハリウッドスターが集結している。

ちなみに、『トップガン』と言えば多くの有名アーティストが提供した魅力的な楽曲が特徴でサントラもバカ売れ、もちろん僕も買いました(笑)。ケニー・ロギンスが歌う主題歌「デンジャー・ゾーン」と、チープ・トリックが歌うエンディング曲「マイティ・ウィング」がカッコよくてほとんど毎日聞いてたなあ。特に「マイティ・ウィング」は、いまだにカラオケで歌えるほど大好きな曲だ。

その他にもビルボード誌チャート1位に輝いた「テイク・マイ・ブレス・アウェイ(愛は吐息のように)」(ベルリン)や、「ヘブン・イン・ユア・アイズ」(ラヴァーボーイ)や「ホット・サマー・ナイト」(マイアミサウンドマシーン)など、ここまで名曲が集まった映画も珍しい。まさに最高の映像と最高の音楽の絶妙なるコンビネーション。それが『トップガン』だ!


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