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『ハイド・アンド・シーク』ネタバレ映画感想

ハイド・アンド・シーク

■あらすじ『母の自殺以来、心を閉ざしてしまった9歳のエミリー(ダコタ・ファニング)は、心理学者の父デビッド(ロバート・デ・ニーロ)とともにニューヨーク郊外へ引っ越した。しかし、ここでもエミリーは誰にも心を開く事はなく、見えない友達“チャーリー”とだけ遊ぶようになる。戸惑いながらも、エミリーの空想を静観することにしたデビッドだったが、やがて彼らの周りで次々と異常な現象が起こり始めた。果たして“チャーリー”とは誰なのか!?先の読めない不気味なストーリー展開と、戦慄の映像体験!背筋が凍る衝撃のラスト15分、想像を絶する大どんでん返しが観る者全てを恐怖のどん底へ叩き込む!全米を震撼させた超感動サスペンス・スリラー!(宣伝コピーより)』



めちゃくちゃ面白い映画です、オチ以外は。
物語自体は、トラウマを負った少女エミリーと娘を助けようとする父デビッドが、謎の存在である“チャーリー”によって恐るべき真実を目の当たりにするサスペンス・スリラーです。ハイド・アンド・シークとは、日本でいう“かくれんぼ”の事ですが、静かな湖畔の邸宅で不気味な影に追われる恐怖感がよく表現されています。

前半は見えない恐怖が不気味に迫るオカルト・ホラー、そして後半からは一転サスペンス・スリラーへと雰囲気を変え、この父娘に隠された驚愕の秘密が徐々に明らかになっていくという、緊張感溢れる構成が実に見事!とにかく、恐怖演出の盛り上げ方がハンパではありません。
本作の見どころは何といっても、二大実力派俳優の初共演でしょう。父デビッドを演じるのは、二度のアカデミー賞に輝いた大物俳優ロバート・デ・ニーロ。愛する娘を気遣いながらも精神的に追いこまれていく様子は実にリアルで、鬼気迫るものがあります。

そんなデ・ニーロの相手役は、若干10歳の天才子役ダコタ・ファニングです。出演作ごとにその演技力は増大し、今回もとてつもない存在感を醸し出しています。いままでの“かわいい”イメージを一変させ、目の下にクマを作った“怖い”演技で観客を惹きつけて放しません。
このように、ストーリーも俳優の演技もなかなか素晴らしい映画なのですが、その面白さは一番肝心なクライマックスであっさりぶっ壊れてしまいます。クライマックスとはもちろん、“チャーリーの正体”が判明するシーンの事。

実は、この映画のどんでん返しは、最近公開された“某サスペンス・スリラー”とオチが全く同じなのです。したがって「その映画」を観た人なら、簡単に“真犯人”が分ってしまうという、サスペンス映画としては致命的な欠点を持っているのです。また、例え「その映画」を観た事がなくてもサスペンスモノとしては比較的ありがちなトリックなので、結末を予想するのは難しい事ではありません。勘のいい人なら、オープニングを観ただけで簡単に“真犯人”が分ってしまうでしょう。
う〜ん、実にもったいない!クライマックスまでは抜群に面白く、引っ張り方もうまいだけに「さんざん引っ張った挙句にこのオチか!?」とがっかり度も倍増です。それに、宣伝の仕方も反則ギリギリとしか言いようがありません。今時、この程度のオチで「結末は絶対に教えないで下さい!」はないでしょう(普通に観てるだけで気付くっちゅーに)。

しかも「全米騒然!超感動スリラー誕生!」って何ですか?“感動”なんかどこをどう捜しても見当たりません。挙句の果てには「背筋が凍るラスト15分!」などと期待を煽るコピーが踊っていますが、要はクライマックスを過ぎてから、さらに15分物語が続くだけなのです。普通だったら、謎が解明された時点でストーリーは収束に向かうハズですが、この映画はそこからさらに引っ張ろうとしているのですから始末が悪い。もちろん新たなどんでん返しがあるワケでもありません。個人的にはこの15分間が一番退屈でした。まさに、違う意味で「背筋が凍る」ラストです。
などと色々ネガティブな要素を書いてしまいましたが、決して「面白くない映画」ではありません。それは、主演二人の演技力があまりにも凄過ぎて、一瞬たりとも目が離せない緊張感が映画全編に溢れかえっているからです。伏線の張り方がいいかげんだろうが、オチが読めようが、「何だか分らないけどとりあえず怖い!」と強引に思わせるほどの異常なテンション!

まさしく「キャストの魅力だけで成立しているような映画」と言えますが、それはそれで十分凄い事だとも言えるでしょう。特にダコタ・ファニングのとても10歳とは思えぬズバ抜けた表現力には、震撼せずにはいられません。まさに“天才子役”の称号に偽り無し!今後の活躍が楽しみです。ところで彼女、最近ますます安達祐実に似てきたなあ、と思うのは僕だけでしょうか?