ひたすら映画を観まくるブログ

映画やアニメについて書いています

北村龍平監督作品『あずみ』ネタバレ感想

あずみ

本日、書店にて『FIRESTORM』という本を発見。帯には極太の文字で「魂は燃えているか!?」と挑発的なコピーが踊り、表紙には何やら鋭い眼光の男が映っている。「どこかで見た顔だな」と思ったら、映画監督の北村龍平だった。

北村監督といえば、出世作『ヴァーサス』で「チャンバラ・ゾンビ・ガンアクション」という闇鍋のような新ジャンルを生み出し、観客のド肝を抜きまくったとてつもない映画監督だ。この本にはそんな北村監督の若き日の姿や、全作品のメイキング裏話など、破天荒なエピソードが満載なのである。

北村監督は17歳の時、いきなり授業中に退学届けを叩き付けて学校を辞めてしまう。そして「絶対に映画監督になってやるぞ!」という強い決意を胸に秘め、日本を脱出。オーストラリアへ渡って映画の勉強を始めるのだが、なんと彼女にフラれたショックで2週間寝込み、すっかり自暴自棄になってしまうのだ。

その後は学校へも行かず、毎日友人たちと「混ぜるな危険!」と書かれた二つの液体を混ぜて爆発させ、それを撮影して「すげえアクションだ!」と喜んでいたそうだ。まさにパーフェクトなバカである。すなわちこの本は爆裂映画監督:北村龍平とゆかいな仲間たちの、熱き戦いの(というか抱腹絶倒の)全記録なのだ。いや〜、面白すぎます!

■あらすじ『あずみは爺の元で最強の戦士になるべく、幼い頃から仲間たちと厳しい修行を続けてきた。そして10年が過ぎ、爺から最初の任務を言い渡される。それは仲のいい者同士が二人一組になって“殺し合う事”だった。あずみは、仄かな想いを寄せていたなちを斬る。それが、あずみの“刺客”として生きる日々の始まりだった・・・!』


発売部数合計800万部以上になる小山ゆうの大ベストセラーコミックを原作に、北村龍平が映像化した痛快時代劇アクション大作だ。あずみ役は、本作が映画初主演となった上戸彩。アクションシーンの95%をノースタントで演じ切り、クライマックスでは前代未聞の200人斬りに挑戦。焼死体をぶった切り、燃え上がる炎と化した刀を振るっての劇画ノリの殺陣や、美女丸との対決シーンでの360度縦回転撮影など、見たことの無い映像への貪欲なまでのアプローチに北村監督らしさが感じられる。

だが、本作を企画中の北村監督と山本プロデューサーとのやりとりは、「毎回掴み合い寸前の大喧嘩」という激しさだったそうだ。撮影直前まで脚本もキャストも決まらず、しかもその時北村監督にはハリウッドからオファーが来ていたのだ。

いつまでたっても進まぬ製作、ハリウッド・オファーの期限は迫る。ついにブチ切れた監督が「もう俺は降りる!」と啖呵を切った時、プロデューサーが言い放った一言が凄い。「ハリウッド映画なんかいつでも撮れるが、『あずみ』は今しか撮れないんだぞ!」ってそんなわけねえだろ!

しかし北村監督はこの言葉を信じ、本当にハリウッドのオファーを蹴ってしまったのである。もはや、常人の理解を超えた思考回路だと言うしかない。サイコーだッ!

こうして紆余曲折の末に完成した『あずみ』は、初のメジャー作品に相応しい、2時間23分の超大作に仕上がったのである。しかし、映画ファンはもちろん原作ファンや上戸彩ファンにまでも軒並み不評だったようで、全体的な評価はかなり低い。辛口批評家の前田有一氏は「40秒だけは良い映画だ」として本作に10点をつけていた(もちろん100点満点で)。

『ヴァーサス』など過去の北村作品を観てきた僕の目からみれば、『あずみ』はかなりエンターテイメントを意識した映画だと思う。しかしそれでも「リアリティが無い」とか「話の辻褄がおかしい」などの意見に関しては、弁護のしようがないほどイケてないのは事実だ。せめて、アクションがもうちょっとかっこ良ければなあ。上戸彩は頑張ってるし、素晴らしいシーンもあるんだけど、ダメなシーンがそれを上回っている感じだ。

最大の問題は、やはり上映時間が長すぎるという事だろう。北村監督は「これ以上、1秒も切れない!」と言い放ったらしいが、本当にそうか?美女丸を倒した後の展開は、はっきり言って必要無いだろ!?1秒どころか、あと20分ぐらいはカットできそうな気がするぞ。そうすれば全体的にスピーディな展開になって、もう少し面白い映画になっていたかもしれない。つくづく惜しい作品だと思う。

ちなみに、あずみと美女丸が闘うシーンでは「カメラを縦に回転させる」という前人未到の撮影方法を導入している。当時劇場でこのシーンを観た僕は、あまりの回転の激しさに気分が悪くなってしまった。決して、でかいスクリーンで観てはいけない。確実に酔う!