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北村龍平監督が選ぶオススメ映画ベスト12


まず、「北村龍平って誰やねん」という話ですが、現在絶賛公開中の実写版ルパン三世小栗旬主演)を撮った映画監督です。2001年に、自主制作でありながら圧倒的なインパクトを放つ『VERSUS(ヴァーサス)』というアクション映画を発表して一躍注目された北村監督は、上戸彩主演の『あずみ』や、ゴジラシリーズの最終作ゴジラ FINAL WARSなどの大作映画を手掛けた後、更なる超大作映画を撮るためにハリウッドへ渡りました。

そんな北村龍平監督作品の特徴は何か?と言えば、しつこいぐらいのアクションシーン、やたら動き回るカメラワーク、意味不明な決めポーズ、必然性を疑うスローモーション、鳴りっぱなしのBGMなど、とにかく「演出センスが壊滅的にダサい」と多くの映画ファンから酷評されまくっている点でしょう。

この問題については、最新作『ルパン三世』においても全く改善されている様子はなく、前田有一氏の『超映画批評』では「100点満点中わずか3点」という驚異的な低評価を下され、ネット上で話題となりました(ちなみに、これより点数が低い映画は『デビルマン』のみ)。

今回気になったのは、そんな北村監督の”映画のルーツ”です。いったい北村監督はどのような映画の影響を受けて、こんな映画を撮るようになってしまったのか?色々調べてみると、以前クリーク・アンド・リバー社の『DIRECTOR’S MAGAZINE』という雑誌に北村監督がコラムを連載しており、その中で自分のオススメ映画について記事を書いていたことが判明。というわけで本日は、そこに掲載されていた文章を抜粋してみましたよ。

※なお、以下の映画解説はあくまでも北村監督自身の主観によって書かれたものであり、事実と異なる場合があるかもしれません。「○○○は●●●だ!」と力強く言い切っている部分に関しても、単に”北村監督がそう思っているだけ”の可能性が高いのでご注意ください。↓

●『アリゲーター』(ルイス・ティーグ監督)


動物パニック物としてはトップクラスの面白さというだけでなく、この映画には今の邦画が見習わなければならない要素がぎっしり詰まっている。それは”展開の早さとサービス精神”だ。ノンストップ系映画の先駆けと言ってもいい。ワニ現れる→パニックになる→警察動く→ハンター現れる→ハンター喰われる→もっとパニックになる…という具合に、無駄な部分がまるで無い。まさにマストな1本だ!


●『コマンドー』(マーク・L・レスター監督)


ターミネーター』と並んでシュワちゃんの株を上げた無理矢理なアクション映画。この映画も「普通だったらそんなことしないだろ」という反則技をかなり使っている。たとえば、敵に襲撃を受けたシュワが娘を人質にとられて「言うことを聞け!」と強要されるシーン。普通なら、一旦は銃を降ろし、隙を見て反撃することだろう。だがシュワは一言「ノー!」と叫ぶと、要求を突き付けた男を一撃で射殺!このシーンだけでも拍手喝采ものだ。


その後もシュワはまた捕まるのだが、言うことなんか聞きやしない。途中で巻き込まれて仲間になる女に「事情を説明して!」と言われても「ノー!」。何の説明もしやしない。「ノー!ノー!ノー!」と、とにかく暴れまくり、破壊しまくり、殺しまくる。あっという間の90分なのだ。これを観た後に『レッドブル』など観ようものなら、そのまどろっこしさにイライラしてくること請け合いだ。



●『ハイランダー/悪魔の戦士』(ラッセル・マルケイ監督)


これはもう、俺の中では殿堂入りしているので、わざわざ語るまでもない。「観てない奴は今すぐ観ろ!」と一言だけで済まさせてもらう。


●『ニューヨーク1997』(ジョン・カーペンター監督)


そう、スネーク・プリスケンである。スネークは実は弱い。アクション映画の主人公としては捕まり過ぎ、殴られ過ぎなのだが、そんな状況の中でも何か言われたら、「そのセリフは聞き飽きたぜ」とか、「スネークって呼べよ」とか、次々とキメゼリフをかますのである。これが男だ!主人公なのだ!その辺をもう少し「現代のアクションヒーロー」たちは見習って欲しいものである。


●『ハートブルー』(キャサリン・ビグロー監督)


「男の生き様」を追求した”男前系の映画”というものがある。観ていて「こいつ男前やな〜!」と唸るようなのがそれだ。パトリック・スウェイジキアヌ・リーブスの禁断の友情を描いた『ハートブルー』は、まさに最高の男前系映画である。エクスストリームスポーツと犯罪、その組織に潜入する囮捜査官、そして組織のボスとの間に芽生える友情。観てない人は『ワイルド・スピード』みたいなものと思ってくれればいい。ほとんど同じだ。



●『暴走機関車』(アンドレイ・コンチャロフスキー監督)


「人間はケダモノ以下」と公言してはばからない脱獄囚マニーと、彼を追跡する刑務所所長との意地の張り合いを描いた傑作アクションである。クライマックスで暴走する機関車の窓から身を乗り出し、ヘリに乗った所長を挑発するマニー。所長はなんと降ろした縄梯子にぶら下がり、降下すると機関車に飛び移る!言っておくが、シュワとかセガールではなく、ただのオッサンがだ。これが男前というものなのだ!


●『ロック・アップ』(ジョン・フリン監督)


男前系映画のバリエーションには、”骨太系”というものもある。骨太な男共を描くギラギラと暑苦しい作品のことだ。囚人スタローンと極悪所長の嫌がらせの応酬を描いた『ロック・アップ』は、そんな骨太系映画の代表格であり、これを撮ったジョン・フリンは骨太監督の第一人者と言えよう。なお、骨太男前系の正当な継承者として今一番ノッているのは『ヒート』のマイケル・マンだ。名前がマンなのだから間違いない!


●『ローリング・サンダー』(ジョン・フリン監督)


ディスポーザーで片腕を粉砕され、家族を殺された戦場帰りの男が仲間と共に復讐する映画。今観てもすごすぎる!


●『エクスタミネーター』(ジェームズ・グリッケンハウス監督)


これまたベトナム帰りの主人公が、黒パーカーにM16、火炎放射器、水銀入りダムダム弾、ミンチ製造マシンというフルメタルな装備で街のクズどもをスプラッターに殺りまくるという凄まじい映画だ。問答無用で観るしかない!


●『ザ・デプス』(ショーン・S・カニンガム監督)


「キャラクターが生きている」という意味では”嫌な脇役大暴れ系映画”というものもある。有名どころでは『エイリアン2』の会社員バークなどだろう。生物兵器に利用するために、エイリアンを地球に持ち帰ろうとしたあのバカだ。


その手の「ロクなことをしないバカ」のダントツ1位は、海底基地を舞台に巨大カブトガニが大暴れする『ザ・デプス』のミゲル・フェラー。こいつはカブトガニの恐怖でパニックになり、深海で爆発を起こすわ、間違って仲間を銛で突き刺すわ、一つしかない潜水艇で自分だけ逃げるわ、「カブトガニよりよっぽどお前の方が怖いやんけ!」とツッコミたくなるぐらいの大暴れで、状況をどんどん悪化させていくのだ。すげえぜミゲル・フェラー


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●『サイン』(M.ナイト・シャマラン監督)


結局のところ、この映画は60年代ぐらいに流行った、いい加減な考証のB級SF映画を新たな視点で作り直しているだけだが、その視点が斬新すぎるのだ。よく考えてみて欲しい。宇宙人の侵略を、ミサイルや最新兵器で撃退する映画は今までにもあった。しかし、神の恩恵と妻の言葉と都合のいい思い込みで宇宙人の侵略を阻止する映画などあっただろうか?いや、ない。そしてそんなことを思い付いたとしても、誰も映画にしようなどとは考えない。シャマランは頭がおかしいとしか思えない!


ハリウッドで作られたエンターテインメント大作でありながら、これほど非ハリウッド的な手法で作られた映画も前例が無いだろう。派手なVFXなし、アクションシーンなし、どんでん返しやオチもなし。むしろ全体的に”見せない演出”に徹している。これはどちらかというと邦画に近い。邦画の場合は限られた予算の中の苦肉の策かもしれないが、シャマランはそれをビッグバジェットのメジャー映画で見事にやってのけているのだ!すげえぜシャマラン!


●『チャーリーズ・エンジェル フルスロットル』(マックG監督)


まさに”フルスロットル”な映画だ。前回より3倍増しのスピード感で、場面のつながりや約束事も極限まで排除。ひたすら、音楽と映像とアクションとエンジェルたちのファッションが一番気持ちいいリズムで編集されているのだ。俺も相当リアリティを無視する方だが、この映画はもう完全にリアリティを無視しまくっている。凄すぎるぜマックG!だいたい”マックG”って名前自体が最高だ!


だが同時に「これは日本ではできないな」ということも確信してしまった。こんな企画・脚本は、今の日本の映画会社では通りっこないのである。そもそも、こういう映画が成立する土壌が日本にはない。もし邦画だったら、「この程度の描き方ではテーマ性が足りない」と言われてしまうだろう。どうやら映画とは、何かしら世の中を啓蒙するものでなければならないらしい。


馬鹿馬鹿しい!映画は観ている間面白くて、観終わったら「あー、面白かった」といい気分で劇場を出て、欲を言えばその人の心の中に何かを残していればそれで十分だ。全ての映画がそうであるべきとは言わないが、そういった単純明快なエンターテインメントが今の日本には少なすぎる。


つまり、日本では『チャーリーズ・エンジェル フルスロットル』のような”金の掛かったバカ映画”というものは作れないのだ。バカ映画は低予算で作ろうとしてしまい、結局全てがチープになり、その結果「バカ映画そのものを作ったのが失敗だった」となってしまう。


だがそれは違う!バカ映画こそ金を掛けなければいけない。でないと笑えないからだ。「こいつらこんなバカバカしいことやってるよ」と言いながら笑い飛ばすための映画であるから、予算が掛かっていればいるほど効果は上がるというわけだ。今の日本映画に足りないものは、まさにそういう部分なのだ!



というわけで、北村龍平監督がオススメする映画を並べてみたわけですが、こうしてラインナップを眺めてみると、何となく傾向が見えてきますよね(笑)。北村監督が考える”面白い映画の定義”って「こういうものなんだ」と。なるほど、だからああいう感じの映画になるんだなあ(^.^)


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