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ジャッキー・チェン主演『香港国際警察』ネタバレ感想

香港国際警察

★ストーリー『香港警察のチャン警部(ジャッキー・チェン)は、銀行をゲーム感覚で襲った犯罪集団のアジトに乗り込んだものの、周到な罠にはまり部下を次々と惨殺されてしまう。一人生き残ったチャンは、自責の念から仕事を休職。事件から一年たった今も毎夜泥酔し、薄汚い路地裏を徘徊していた。そんな時チャンの前に「新たな相棒に任命された」という若い巡査シウホン(ニコラス・ツェー)が現れる。彼のおかげで少しずつ立ち直ったチャンは犯罪集団との戦いに再び立ち上がるのだが、実はシウホンにはある秘密があったのだ。チャンは事件を解決し、再び輝きを取り戻せるのか!香港警察の存亡を賭けた壮絶な戦いが今、始まろうとしていた!』



久しぶりのジャッキーの新作映画である。しかもこれまで散々不自由を強いられたハリウッド作品ではなく、古巣の香港へ帰って思う存分自分のアクションにこだわった自信作だという。アジア全域で公開されるや記録的な興行成績を達成し、香港・中国合作映画史上歴代No,1に輝いたそうだ。

期待は高まるが、しかしそれ以上に不安も高まる。『メダリオン』の時にも書いたが、ジャッキーも今や50歳を越える老体である。『プロジェクトA』や『ポリス・ストーリー』の頃のような、電光石火の神業的カンフー・アクションはもはや望むべくも無いだろう。

しかし自他共に認めるジャッキー・バカの自分としては、彼の活躍をスクリーンで確認しないわけにはいくまい。意を決して劇場へ足を運んだ、その結果は・・・。う〜ん、ちょっと微妙だなあ。

今回はどうやら“アクション”よりも“ストーリー”の方に力を入れているようだ。これまでのジャッキー映画とはガラっと作風を変えて、かなりシリアスなドラマに挑戦している。ジャッキー自身も演技に重点を置いた役作りをしているらしく、泣くシーンもかなり多い(演技派俳優への路線変更を意識しているのだろうか?)。

ドラマが始まっていきなりジャッキーは泥酔状態。足元はフラフラでタクシーに乗車拒否され、路上でゲロを吐く。挙句の果てにはチンピラにボコボコにされて、財布まで奪われてしまうという酷い有様だ(酔拳を使え、酔拳を!)。

しかしストーリー自体は「多くの仲間を失い人生に絶望している一人の男が、どん底から立ち上がり再び悪に立ち向かって行く姿」を描いた堂々たる人間ドラマに仕上がっており、非常に見応えがある。

また、ジャッキー映画には珍しいラブ・シーンも登場する。といってもベッド・シーンがあるわけではなく、見詰め合う二人のバックに甘〜い音楽が流れるなど、恋愛映画としての演出効果が大幅に増えているのだ。まるで韓国映画を見ているような大げさな演出であるが、個人的に言わせてもらえばジャッキー映画にはこんなあざとい演出など必要無い。

『ポリス・ストーリー』でもマギー・チャンと恋人同士だったが、あれぐらいのさりげない描写でも二人の恋愛感情は十分伝わってきていたではないか。本作ではチャーリー・ヤンと恋人同士なのだが、二人の会話シーン(の演出)が長過ぎて全体のテンポが悪くなっている。特に後半彼女が敵に爆弾を仕掛けられてからのシーンは、いくらなんでもやり過ぎだ。

「爆弾処理班が来るまで動くんじゃない!」とか「パチンコ玉には磁石を使え!」*1とか心の中で色々突っ込みを入れながら見ていたが、「愛してる」のセリフでついに限界に達してしまった。

いや、本来感動的な場面なんだろうけど、彼女の言動があまりにも芝居じみていて失笑するしかないのだ。『ポリス・ストーリー2』にも同じようなシチュエーションが出てくるが、そちらの方がよっぽど感動的だったと思う。

短いシーンの中で、マギー・チャンのジャッキーに対する愛情や、彼女を助けられないジャッキーの悔しさなどが実に良く観客に伝わってくる名場面だった。しかし残念ながら本作では大げさな演出が空回りし過ぎて、ちっとも感情移入出来ない。ジャッキー映画に過剰な恋愛要素は不要だと痛感した。

では、肝心のアクションの方はどうなのか?最も気になっていた部分だがストーリーに力を入れていると言っても、決してアクションに手を抜いているわけではない。ジャッキーの“本気”がビシバシと伝わってくる見事なアクションを見る事が出来て、ホっと一安心だ。

心配していたカンフーも、(さすがに往年のキレの良さは無いものの)若手を相手に大健闘している。所々でワイヤーを使っているのが惜しまれるが、近年の“ゆるゆるハリウッド・アクション”にうんざりしていたファンにとっては溜飲が下がる思いだろう。まさに“ジャッキー復活!”といった感じである。

毎度お馴染み「バス・アクション」も大幅にパワーアップ!ドライバー不在となった暴走二階建てバスが、なぜか“吸い寄せられるように”様々な障害物にぶつかっていく。車が、公衆電話が、ビルの看板が次々と破壊されていく衝撃シーン!迫り来るそれらの障害物を、間一髪で見事にクリアしていくジャッキー!

これだよ、これ!俺が見たかったジャッキーの姿は!真後ろで凄まじい大爆発が起こっている建物の中を、全力疾走するジャッキー!高層ビルの側面を、ロープ一本で滑り降りるジャッキー!そしてお約束の“高い所から落下するジャッキー”までしっかり見る事が出来る!

まさに手に汗握る“命知らずスタント”のつるべ打ちだ!特に今回はジャッキーだけでなく、多くの若手スターたちまでもが命懸けのアクションに挑戦しているのがまた凄い。

中でもコンベンション・センターの側面を、ロープで滑り降りるニコラス・ツェーのスタントは圧巻だ。ただでさえ足がすくむような高所から、頭を下にして垂直に滑り落ちていくのである。ぎゃあああ!合成じゃなかったのか!?しかも地面にはエアマットも無く、安全対策はゼロ!まさに恐るべきアクション・バカだ!つーか自殺行為ですからやめて下さい!

また今回ジャッキーと一対一のガチンコバトルを展開するのは、ユエン・ウーピンの愛弟子:アンディ・オンだ。蹴りといいパンチといい、物凄いパワーとスピードで観る者を圧倒する!しかしそのテンションについていってるジャッキーはもっと凄い!ホントに50歳か!?

だが全体的にカンフー・アクションが少な目なのと、ジャッキーお得意の“小物を使ったアクション”がほぼ皆無なのが少々残念だ。またシリアスなストーリー展開の為に、いつもの“お笑い”要素が影を潜めている点も寂しいなあ。

やっぱジャッキーの笑顔って、それだけで重要なポイントじゃない?壮絶なアクションの中でも、ジャッキーの笑顔があるだけでホっと一息つける、あの感じが好きなんだけどなあ。とはいえ、ジャッキーが戻ってきた事を実感できる映画には違いないので、ファンには必見の作品と言えよう!

*1:映画を見た人は分かると思う。