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『U-571』映画感想

U-571

■あらすじ『1942年4月、第二次世界大戦下のヨーロッパ戦線。ナチスドイツが誇る高性能潜水艦Uボートは“エニグマ”と呼ばれる暗号解読機を使い、アメリカ合衆国海軍に多大なる打撃を与え続けてきた。米海軍は戦況打破のためエニグマを奪取すべく、北大西洋上で故障して停泊中のUボートU-571」への潜入作戦を敢行。タイラー大尉(マシュー・マコナヘイ)は歴戦の強者であるクロフ軍曹(ハーヴェイ・カイテル)、エメット大尉(ジョン・ボン・ジョヴィ)ら乗組員と共に、上司ダルグレン大佐(ビル・パクストン)に従い、巡洋潜水艦S-33で友軍を装いU-571に接近。嵐の中、同行者の海兵隊少佐クーナン(デイヴィッド・キース)の指揮の元、首尾よくU-571に潜入しエニグマを奪った一同だったが、ここで事態は急変。なんとS-33が別の独軍潜水艦に撃沈されてしまったのだ!間一髪U-571に閉じ込められた事で九死に一生を得たタイラーたちだったが、これで敵からも味方からも攻撃される運命になってしまった。タイラーはクロフ・エメットら生き残ったものの助けを受け、苦闘しながらも指揮を執り敵地脱出を図る。彼らの正体を察知した独軍巡洋艦から凄まじい爆雷攻撃を受けるU-571。果たして生き延びる事が出来るのか!?』



全米公開時に2週連続1位を記録、オープニング成績も歴代3位とこれまた凄い。監督はデビュー作『ブレーキ・ダウン』にて、抜群のストーリー展開で観客の度肝を抜いたジョナサン・モストウだ。後に『ターミネーター3』の監督に大抜擢されるわけだが、本作の面白さを考えれば納得の人選と言えよう。

この映画が最も優れている点は、史実*1を基にした戦争映画でありつつも、あくまでも“娯楽アクション大作”としての面白さを追求し、徹底的なエンターテイメント志向によって全編が貫かれているという事である。

本物のスケール感を持って迫るダイナミズム。メカの構造を巧みに捉えながら、人間の感情の機微とを融合させ、さらにはサラリーマン的現代社会の縮図まで盛り込んだ脚本の素晴らしさ。そして何と言っても特筆すべきは、迫力満点の効果音である。爆雷や魚雷など海中から聞こえてくる音という音が、閉塞空間たる潜水艦内の緊迫感を高めるのに大いに貢献しているのだ。

僕は公開時に劇場で鑑賞したのだが、あまりにも見事な音響効果に感激した事を覚えている。今回久しぶりに自宅のサラウンド・システムで鑑賞してみて、(劇場には遠く及ばないものの)あらためて音の素晴らしさに圧倒された。魚雷が爆裂するたびにサブ・ウーハーから叩き出される重低音のド迫力!緊迫した閉塞空間に静かに鳴り響く探信音の不気味さ!まさに“音を楽しむエンターテイメント大作”と呼ぶに相応しい作品である。

ちなみに樋口監督は本作を元ネタにして『ローレライ』の企画を思いついたそうだ。劇場公開前に『U-571』の予告編を見て興奮のあまり、勝手に脳内映画『俺的U-571を妄想していたらしい(笑)。その後公開された映画を観て、樋口自身は大変満足したものの、一緒に観に行った仕事仲間の神谷誠*2アメリカ海軍が突入する時の銃のストックの形状が、木製のはずなのに短いメタルストックになってたけど、当時そんなのあったのか?」と聞かれて愕然としたらしい。どこを見とるんだ!?

*1:尚、実在したU-571は1944年1月28日にアイルランド島の南東約300キロの海域で、カナダ空軍461飛行中隊の爆撃によって撃沈されている。

*2:樋口組の助監督としてガメラ・シリーズに参加。他にゴジラ・シリーズなど多数の特撮映画を手掛けているクリエイター。