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『プライベート・ライアン』の音響効果について

本日、某大型家電量販店からハガキが届いた。内容は「カードのポイントがたまっていますが、有効期限は今月末までです」というものだ。特別買いたい物など無かったが、どうせ無くなるポイントなら使ってしまえ、という訳でDVDをドバっと購入。

まずは『プライベート・ライアン:アドバンスト・コレクターズ・エディション』。スタンダード・エディションはとっくの昔に購入済みだったけど、このDVDはマニア仕様の特別版である。「迫力のdts5.1サラウンド!80分を超える初公開映像特典!豪華特殊パッケージ!」などの魅力的なキーワードがずらずらと並ぶ。う〜む、やはり買わざるを得ない!しかしもう何度も書いている事だが、こういうものを出すんなら最初から出してくれ!


■あらすじ『第二次世界大戦さなかの1944年6月、ノルマンディー上陸作戦が行われた。多大な犠牲を出しながらもなんとかオマハビーチの激戦を勝利した連合軍。そんな中、歴戦の勇者ミラー大尉(トム・ハンクス)率いる小隊に「ライアン(マット・デイモン)という、ひとりの二等兵を救出せよ」という命令が下る。過酷な任務に選ばれたのは8人の精鋭たち。たった一人を救う為に、彼らは前線奥深く侵入し任務を果たそうとするのだが…。巨匠スティーブン・スピルバーグが贈る、勇気と感動のスペクタクル巨編!』



この映画は1999年アカデミー賞で最優秀監督賞を含む5部門を獲得した作品で、第二次世界大戦を描いた映画の中では“最高傑作”との呼び名も高い。飛び交う銃弾、血で染まる海、死体の山、見る者全てを戦場に引きずり込むようなかつてない臨場感に圧倒される一大戦争巨編である。

映画史上空前絶後と絶賛され、いまだに映画ファンの間で語り草になっている冒頭24分にもおよぶ大戦闘シーンをはじめ、戦争映画のイメージを覆す驚異のドキュメント・タッチの演出で戦場の悲惨な実態を見事に再現した。

その徹底したリアリズムはまさにマニア泣かせで、トンプソンM1A1やM1ガーランドライフルやUSM1カービン銃といった銃器火器はもちろんの事、兵士の着ている服や装備品に至るまで、あらゆる分野の専門家が見ても納得の作り込みであるとされている。

それもそのはず、冒頭のノルマンディ上陸作戦のシーンでは、大勢の軍事マニアやコレクターの人達が各自秘蔵の衣装や装備を持ち寄って撮影に協力したのだ。さすがこだわりが違う!だが徹底してリアリズムにこだわりつつも、その中に古今東西のアクション映画の要素もしっかりと盛り込み、娯楽作品としても超一流の完成度を誇っているのが凄い。まさにスピルバーグしか生み出せない、衝撃と感動の傑作戦争映画なのである!

まず本作で最も特筆すべき部分は何と言っても“音”だろう。過去の作品でも音響効果には気を配ってきたスピルバーグだが本作ではさらに磨きをかけ、徹底的にこだわりまくっているのだ。前後左右に激しく飛び交う銃弾は本当に体内を貫通するかのような錯覚に陥る。

そして地雷と砲弾の爆発、兵士の息遣いまでその効果音の生々しさは、まるで戦場のど真ん中に放り出されたような恐怖感を覚えるほどに凄まじい。アカデミー賞でも音響効果賞を受賞しているが、全米公開時にはそのあまりにもリアルな映像と音響に当時の恐怖を思い出して座席で震え出す年配の観客(戦争体験者)が続出したそうだ(フラッシュバックか?)。

僕の部屋には映画を楽しむために5.1チャンネルのサラウンド・システムがセッティングしてある。もちろんTVのスピーカーで観る事もあるし、それでも問題ないとは思うが、『プライベート・ライアン』のように、“音”にとことんこだわった映画を観る場合には、やはりそれなりのシステムで観て欲しい。とにかく、得られる臨場感が全然違うのだ。

僕も最初は音にそれほどこだわりは無く、TVのスピーカーで十分だと思っていた。しかしサラウンド・システムを導入して以来なんと状況が一変!「なんじゃこの音はあああ!!!!!」2つのスピーカーだけでは決して味わう事は出来ない圧倒的な臨場感!前後左右から迫ってくる効果音!!まさに全身を“音で包み込まれる”ような新感覚!!!ススススゲー!!!!!!!スゲーよマジで!

しかもこの『コレクターズ・エディション』は、ドルビー・デジタルよりもさらに高音質なdts仕様なのだからもうたまりません!敵の撃った銃弾が耳のそばをかすめて後方へ着弾する音がはっきりと認識できるのだ!

音響の立体感はまさに素晴らしいとしか言いようが無く、口径の違いによる弾着と効果の違い、水中弾の様子(弾道学では水は硬体なので、殺傷力を保持できるのは水進距離2〜3メートル前後)などを克明に描写している。

こ、怖い!怖すぎるッ!!!おまけに砲弾の爆音が炸裂するたびに、サブ・ウーハーの重低音がズシンズシンと凄まじい音響で部屋中に響き渡る!ボリュームを下げてもなお、窓ガラスがビリビリと振動するほどのとてつもないド迫力に、とうとう家族からクレームが出たほどだ。安い機種でもいいから、システムを購入する価値は十分にあると思う。映画の印象が激変するゾ!

また、ドキュメント・タッチの映像を効果的に使用している点も大きな特徴だ。スピルバーグが参考にしたのは著名な戦場カメラマン:ロバート・キャパが、オマハ上陸の第一波攻撃に同行した時に撮影した8枚の写真である。

手持ちカメラを駆使して兵士の視点で迫ったり、映像の彩度を落とすことで当時のニュースリールの感覚を表現するなど、徹底したドキュメント・タッチの演出が効果をあげた。

オマハビーチの戦闘シーンでは、走る兵士の視点で戦場の状況をダイナミックに見せるとともに、素早いカット割りやストップモーションを絶妙のタイミングで挿入。変幻自在の神業的編集テクニックで緊張感を持続させ、見る者を恐怖のどん底へと叩き込んだのだ。

だがその臨場感がありすぎる戦闘シーンが仇となり、吐き気をもよおしたり気分が悪くなったりした女性が続出した模様。なんせ臓物がはみ出し、手足がちぎれ吹き飛ぶ熾烈極まりない地獄絵図が延々と続くのだから当然と言えよう。

この想像を絶する凄まじい映像を撮り上げたのは、スピルバーグが全面の信頼を寄せ、長年コンビを組み続けているヤヌス・カミンスキー撮影監督である。ロバート・キャパの戦争写真や、ノルマンディー上陸作戦のニュース映像にインスパイアされたカミンスキーは「観客を戦場の真っ只中に置きたい!」と考えた。

その為に『シンドラーのリスト』ではおよそ50%だった手持ちカメラによる映像が、本作ではついに90%を超えてしまった。カメラは戦場を駆け抜ける“眼”となり、兵士と共に走り、弾をよけ、転び、起き上がり、再び走り出す。

また、より緊迫感を高める為に実験的なテクニックも過激に駆使した。シャッター開角度に変化をつけて兵士の動きをヴィヴィッドに見せ、ニュースフィルム映像的な雰囲気を醸し出す為に撮影後に特殊な現像処理まで施したのである。開角度180度で1秒間に24フレームを撮影することが、動作のイリュージョンを生み出した。

90度では動きがスタッカートのようになり、ストロボ的な効果も発揮。45度では映像のスピードが増したが、ディテールは信じられないほどきびきびとしたものになったのだ。映像、ドラマ、音響効果、あらゆる要素が極めて高いレベルで融合している、これぞまさに究極の一本!

プライベート・ライアン [Blu-ray]
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン (2013-08-23)

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