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チョン・ジヒョン主演韓国映画『猟奇的な彼女』ネタバレ感想

猟奇的な彼女

■あらすじ『大学生のキョヌはある夜地下鉄のホームで美女と遭遇。しかし彼女はベロベロに酔っ払っており、なんといきなりゲロをぶちまけたのだ。まわりの乗客から恋人と勘違いされた彼は、しかたなく彼女をホテルまで運び込んだ。しかしこの日から2人の奇妙な物語が始まったのである。目まぐるしく展開するドラマに圧倒されながらも、ラストに待ち受ける驚愕のどんでん返しまで息もつかせぬスピードで突っ走る!これぞ新世代のラブ・コメディ!』



簡単に言ってしまえば、「わがままで乱暴な女の子と、ひょんな事から彼女と付き合うようになったM男君との恋愛」を描いたラブ・コメディである。この映画の特筆すべき点は何と言っても、彼女の強烈なキャラクターであろう。

公衆の面前でゲロを吐き、気に食わないことがあったらグーでぶん殴り、少しでも口ごたえしようものなら「ぶっ殺すわよ!」と怒鳴りつける。とてもヒロインとは思えぬ絶大なるインパクトだ。しかし、曲がった事が大キライで、正義感溢れるまっすぐな性格の彼女に、次第に心魅かれていく彼の心境が丁寧に描写されていて感情移入しやすい。

物語が前半戦、後半戦、延長戦と3つのパートに分かれているのも面白い構成だ。前半がコメディ、後半がラブストーリー、そして最後に全ての伏線がつながって物語が完結するという、それぞれの話の流れを実にバランス良く配置している点に感心した。特に後半では、「恋愛映画」のセオリーとでも言うべきお約束エピソードの数々が怒涛の勢いで炸裂する。

彼が彼女のお見合い相手に「彼女との付き合い方」を教えるシーン、その後彼女が駅まで彼を追いかけて必死で捜すシーン、大声で泣きながら、彼女が彼に謝り本心を打ち明けるシーン、タイムカプセルの手紙を読むシーンなど、ありとあらゆるパターンの「泣けるエピソード」が目白押しになっているのだ。

まあ、延長戦ではややエピソードを詰め込みすぎている、という感じも否めない。特にクライマックス付近ではドラマが二転三転四転五転ぐらいの凄まじい展開を見せるので、面食らう事は確実だろう。

なんせ普通の映画だったら「もうこの辺で終わるはず」と思えるようなシーンが何度出てきても、さらにしつこく引っ張るのだから。見ている方は「いったいこの物語はどこに着地するつもりなんだ?」と先の展開が全く予測できず、違う意味でハラハラさせられる。

また、場面転換した際の時間経過が一瞬分からず、いきなりおじさんやおばさんのアップが出てきたのを見て「もう、何十年も経ったの!?」とひっくり返りそうになるシーンもいくつかあった(完全にワザとやってるw)。

結末のオチに至っては「都合良すぎる!」という観客のツッコみをあらかじめ予想して、自己フォローのセリフまで入れているという用意周到ぶりなのだからもう脱帽するしかない。

でも「偶然とは、努力した人だけに運命が与えてくれる橋である」ってこれ、いいセリフだよねえ。制服姿で身分証を出したままストップモーションになるラストショットもめちゃめちゃかっこいい!

監督のクァク・ジェヨンはこの後『ラブストーリー』というそのまんまなタイトルの恋愛映画を撮るのだが、『猟奇的な彼女』の方が断然面白いと思う。何が凄いかって、この映画では「ベタである事を自覚している」のだ。むしろ「ベタで何が悪い!」という開き直りさえ感じるほどの勢いが実に心地よい。

「ヘタな鉄砲も数打ちゃ当たる」方式のなりふりかまわぬ”ベタなシチュエーションの波状攻撃”の前には、「あざとい」という感情など通り越して「すがすがしさ」さえ感じるほどである。

恋愛映画におけるありとあらゆるパターンを思いつく限りぶちこんで、強引に一本作ってしまったというぐらい節操の無い映画だが、ここまで徹底的に見せ付けられては感心せざるを得ないだろう。まさに思い切り笑えて思い切り泣ける、そんな理想的なラブ・コメディーの一つであると断言できる。傑作!

主演:チョン・ジヒョンチャ・テヒョンクァク・ジェヨン
監督:クァク・ジェヨン

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