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映画『タイタニック』のタイタニック号はどうやって作られたのか?

映画『タイタニック』

映画『タイタニック


どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

さて本日、金曜ロードショーにてジェームズ・キャメロン監督のタイタニックが放送されます(先週は前編で今週は後編)。

いまさら説明は不要だと思いますが、本作は「タイタニック号の沈没」という史実を元にした壮大なラブストーリーで、1997年に公開されるやいなや全世界で22億ドルの興行収入を叩き出し、過去の成績を大幅に更新して歴代1位の新記録を樹立しました(現在は歴代3位)。

当時はレオナルド・ディカプリオの人気が凄まじく、日本でも262億円のメガヒットを記録し(4年後に『千と千尋の神隠し』に抜かれたものの)、これまた歴代1位に輝いたのです。そんな本作の大きな見どころと言えば、やはり最新の映像技術を駆使して忠実に再現したタイタニック号のヴィジュアルでしょう。

全長269.1メートル、全幅28.2メートル、高さ53メートルという巨大な豪華客船を現代によみがえらせるために、一体どんな方法が使われたのか?というわけで本日は、映画の中のタイタニック号が出来上がるまでのエピソードをご紹介しますよ。

映画『タイタニック』

映画『タイタニック

20世紀フォックスが『タイタニック』の製作に正式なゴーサインを出したのは1996年の5月ですが、その時点では映画の公開日は翌年の7月に予定されていました。

つまり、1年ちょっとでこの超大作映画を完成させなければならないのです。その時の心境を後にジェームズ・キャメロンは「せめてあと2カ月早くゴーサインが欲しかった」と語っていますが、とにかく大急ぎで準備を開始。

まず、「どうすれば最も効率良くスケジュール内に撮影できるか?」を検討するために、全長7.6メートルのミニチュアを作り、キャメロン自ら小型のビデオカメラを持って色んな角度から撮影しまくりました。

有名な話ですが、ジェームズ・キャメロン監督はいつも撮影の前にはこうやって全てのショットのイメージを完璧に固め、シナリオに従って”ビデオマティック”を作り、最も効率のいい撮影方法を選んでいるのです(今でいうプリヴィズ方式)。しかし、そんなキャメロン監督でも、さすがに『タイタニック』の時は頭を悩ませたらしい。

1993年に『ジュラシック・パーク』が公開されて以来、猛烈な勢いで映画にCGが使われ出したのですが、キャメロンは「タイタニック号を完璧な形で再現するには、まだCG技術が不足している」と考えていました(「CGを使わない」という意味ではない)。

そうなると、「船体の一部分だけを本物そっくりに作って役者の演技を撮影し、ワイドショットではミニチュアを使う」という昔ながらの方法になるわけですが、「船の細部までキッチリ描こうとした場合、どうしても限界がある」と気に入らない様子。

ならば、本物の大きな船の上にセットを組んだらどうだろう?キャメロン監督は、大西洋と太平洋の間の運河輸送に使われている全長250メートルの巨大なコンテナ船を、タイタニック号に見立てる案を思い付きました。

コンテナ船の平らな表面にタイタニック号のセットを作り、側面にはニセの船体の覆いを吊り下げ、さらに突き出しデッキを設けて照明やカメラ機材のスペースを確保する。こうすれば、実際に海を航行しながら撮影することが可能です。

ただ、たしかにリアルな画は撮れそうですが、残念ながらこの方法では最後にタイタニック号が沈んでいくシーンを撮れません。そこでキャメロン監督は考えました。「いっそのこと本物のタイタニック号を作ってしまおうか…」と。

この時、キャメロンは「実物大のタイタニック号を丸ごと作り、それを海に浮かべて撮影し、最後に大西洋に沈めてしまえばクライマックスの沈没シーンまで全部映像に収めることが出来る」と本気で考えていたそうです。

そのため、専門家に建造費を計算させたところ、2500万ドルという数字がはじき出されました。約28億円という大金ですが、『タイタニック』の最終的な製作費は2億ドル(約220億円)なので、決して実現不可能な金額ではありません。しかし「完成まで2年半かかる」と言われたキャメロンは「公開日に間に合わない…」としぶしぶ諦めたらしい(時間があれば作ってたのかw)。

映画『タイタニック』

映画『タイタニック

次に監督は「実物大のタイタニック号を半分だけ作る方法」を思い付きました。船の右舷側だけを実際の大きさで作り、それを海の近くに設置して陸地から撮影すれば、大海原をバックにタイタニック号の全景が撮れるし、船の上での撮影もやり易い。

このアイデアを聞いたプロデューサーは「そんなデカいセットを組めるスタジオなんかあるわけないだろ!」とビックリ仰天。しかしジェームズ・キャメロンは少しも怯まず、「無いなら作ればいいじゃないか!」と言い放ち、さらにプロデューサーを驚愕させました。

なんとキャメロンは実物大のタイタニック号だけでなく、それを収容するスタジオも一緒に作ることを提案したのですよ。まあ、『アビス』を撮る時も破棄された原子力発電所を買い取って「水中撮影できる環境」をわざわざ作っていたので、こういう発想も監督にとっては当たり前なのかもしれません。

しかし会社側にしてみれば、一つの映画を作るために新たにスタジオを建設するなど前代未聞です。案の定、「いくら何でも無茶だろ…」という雰囲気が漂っていました。

ところが社内で詳しく検討した結果、「国境に近いメキシコの海岸にスタジオとセットを建設すればアメリカよりも低コストで済むし、一つの場所にまとめることで船とステージを簡単に往復できる」「その上、気象条件やスケジュールの変更による中断も最小限に抑えられ、撮影が終わっても会社の資産として残せる等、長期的に見れば安上がりだ」という結論に達したのです(マジかよw)。

映画『タイタニック』

映画『タイタニック

こうして、20世紀フォックスはメキシコのロサリトに40エーカー(東京ドーム3.5個分)の土地を購入し、実物大タイタニック号を作るための新スタジオの建設に着手しました(総工費は2000万ドル)。しかし、この時点ですでに1996年の5月末になっており、来年7月の公開予定日まで1年ちょっとしかありません。

常識的に考えて、「今からスタジオを作ってて間に合うの!?」と思わざるを得ませんが(まあ結局は間に合わなかったんですけどw)、当時のキャメロンは「何が何でも間に合わせる!」と考えていたらしく、なんと着工からわずか100日後に完成!もの凄い突貫工事ですねえ(このことから「100日スタジオ」と名付けられた)。

ただし、大急ぎで作らなければならないので、現場には毎日2000人近くの建設業者や重機の運転手たちなど様々な工事関係者が押し寄せ、1日で450~500メートル分のセメントを消費し、巨大なセットを収容する穴を掘るために1万トンものダイナマイトが使われました。

それでも、セットが完全に出来上がるまで待っていたら間に合わないので、「スタジオを作りながら同時進行で撮影する」というメチャクチャ慌ただしい状況に!塗ったペンキがまだ乾かないうちから撮影しようとしていたため、出演者たちは衣装にペンキが付かないかヒヤヒヤしたそうです。

映画『タイタニック』

映画『タイタニック

最終的にタイタニック号のセットは建設期間の短縮&コスト削減のために、本物よりも10%縮小することになりました。ただ、多少小さくなったとは言ってもフットボール場二つ分に匹敵する大きさ(全長238メートル)があり、最後はセット全体を傾斜させて水に沈めるというとてつもない撮影が待ち構えているわけですから、工事担当者の苦労は計り知れません。

ちなみに24エーカーの巨大なタンクの中に作られたタイタニック号のセットは、6400万リットルの海水を流し込むことで海上に浮かんでいるように見せていますが、実際は水深が90センチ程度しかなく、スタッフは水につかりながら撮影していたそうです(スタントマンが飛び込む場所だけ6メートルの深さがあった)。

なお、これだけ立派なセットが出来たら「どんなシーンでも撮れるだろう」と思うかもしれません。しかし実物大のタイタニック号は右舷側しか作られていないため、カメラアングルに制限があったのです(あまりカメラを大きく動かすとバレてしまう)。そこで、全体を撮る時はミニチュアが使われました。

映画『タイタニック』

映画『タイタニック

例えば、タイタニック号の船首に立ったジャック(レオナルド・ディカプリオ)が「世界は俺のものだ!(I'm the king of the world!)」と叫び、カメラがグーッと引いて船の全体を映す有名なシーンでは、本物の役者とミニチュアのタイタニック号を一つの画面に合成しているのですよ(別々に撮影した映像の動きを完璧に合わせるためにモーション・コントロール・カメラが使用された)。

このミニチュアは全長44フィート(約13メートル)あり、細部に至るまで本物そっくりに作り込まれ、数万本におよぶリベットを全て手作業で取り付けるなど、完成まで5ヶ月以上が費やされたそうです(他にも20分の1スケールや6分の1スケールなど、シーンに合わせて様々なサイズのミニチュアが作られた)。

さらにクライマックスの「真っ二つに裂けるタイタニック号」を撮影するために、実物大の船尾のセットを制作。船尾だけとは言え、長さが90フィート(約27メートル)もありますから撮影も大変です。このセットは沈没していく過程に合わせて角度を自由に変化(6~90度)させることが可能で、最終的には直立状態になった船尾から次々と乗客が落下していくシーンを撮影しました。

映画『タイタニック』

映画『タイタニック

ところが、あまりのデカさ(高さ)にスタントマンも四苦八苦!なんと乗客に扮した30人のスタントマンが同時に落下するシーン(もちろんワイヤーを付けて)を撮影していた時、頬骨を折ったり足首を骨折したり肋骨にヒビが入るなど、負傷者が続出したのです。

これを見たジェームズ・キャメロン監督は「安全面に十分な注意を払っていても、大勢のスタントマンが同時にスタントを行うと、どうしても突発的なアクシデントが起きてしまう。しかし撮影現場でケガ人を出さないというのが私のポリシーで、たとえ起きる確率が低くても絶対に事故を起こしてはならない」と判断。そこで、このシーンではCGのスタントマンを使うことに決めたそうです。

こうして、毎日毎日フル稼働で撮影を続けたキャメロンですが、現場では予期せぬトラブルが起こりまくり、スケジュールはどんどん遅れていきました。タイタニック号を傾斜させる際も、当初の計画では6日で作業完了するはずだったのに、実際は36日もかかってしまうなど、想定外の遅延が次々と発生したのです。

「実物大のタイタニック号を作る」という誰もやったことがない大事業に取り組んでいるわけですからやむを得ないとは言え、結局1997年7月の公開日には間に合わず、12月に延期されてしまいました。しかし、クリスマスシーズンに公開されるや世界中で大ヒットを記録し、98年のアカデミー賞にて作品賞や監督賞など計11部門で受賞するなど高く評価されたのは皆さんご存知の通りです。

映画『タイタニック』

映画『タイタニック

というわけで、映画『タイタニック』の制作エピソードをざっくりご紹介しました。本作に対する世間の印象としては「2億ドルもかけて実物大のタイタニック号を作るなんて、やっぱハリウッドは金の使い方が違うな~!」などと思われているかもしれません

しかし、実際は事前にしっかりと予算やスケジュールを検討し、「実物大を作った方が費用対効果がいい」という結論に達したから、この方法を選んだだけなんですね(まあ結果的にはメチャクチャ予算オーバーしてしまいましたがw)。

今、改めて『タイタニック』を観ると、24年前に作られた映画にもかかわらず迫力や臨場感が少しも色あせていないことに驚かされます。その理由は「画面に映っているものがほとんど本物だから」であり、ジェームズ・キャメロン監督の凄まじいこだわりと執念が観る者に直接伝わってくるからでしょう。そういう意味でも、まさに”時代を超えた不朽の名作”と呼ぶに相応しい映画だと思います。

ちなみに、『タイタニック』の半年前に20世紀フォックスは1億6000万ドルを投じた超大作アクション映画『スピード2』を公開したんですが信じられないほど大コケしてしまい、「もし『タイタニック』までコケたらいよいよ会社がヤバいぞ!」と業界中で噂になっていました。そのため、関係者たちはみんな祈るような気持で『タイタニック』の興行に注目していたそうです(笑)。

●参考文献