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これは危ない!あり得ないほど危険な撮影が行われた映画10選

先日、「映画史上最も危険な撮影が行われた13の映画」という記事がちょっと話題になっていたので読んでみた(『レヴェナント』や『マッドマックス怒りのデスロード』など、比較的新しい映画が多め)。
karapaia.livedoor.biz
これを読んで「なるほど、凄いシーンの裏側ではスタントマンやスタッフが大変な苦労をしてるんだなあ」ということが分かって感心したものの、同時に「何か足りない…」と思ってしまった(「映画史上最も危険な撮影」という割には案外そうでもない作品が混ざってたり)。

つーか「危険な撮影」と言えば、やっぱり定番の”アレ”が入ってないとねえ。というわけで本日は、この記事で取り上げられていない作品をいくつかピックアップしてみましたよ。


●『プロジェクトA
「危険な撮影」と聞いて多くの映画ファンが思い浮かべる人物と言えば、間違いなくジャッキー・チェンだろう。『ポリス・ストーリー』では約30メートルのポールにつかまって地面まで落下し、脊椎損傷・骨盤脱臼・全身打撲の重傷。『サンダーアーム』では頭蓋骨骨折で生死の境をさまよい、『アクシデンタル・スパイ』では尾てい骨損傷で下半身不随になりかける等、まさに危険な撮影のオンパレードである。

そんな中でも最も人々の印象に残っているシーンを挙げるなら、やはり『プロジェクトA』の”時計台落下スタント”が最強ではないだろうか。高さ25メートル(諸説あり)の時計台から落っこちて、首の骨に大変なダメージを負ってしまったジャッキーは、頸椎を損傷して身動きも出来ないほどの重傷だったにもかかわらず、なんと自ら撮り直しを要求。「気でも狂ったのか!?」と共演者のサモ・ハン・キンポーを仰天させたそうだ。

このシーンがハロルド・ロイドの『要心無用』のオマージュであることは良く知られている。しかし、『要心無用』がビルの屋上にセットを組んで高く見せていたのに対し、ジャッキーは実際に25メートルの高さから落下している点が大きな違いだ。『プロジェクトA』以降もジャッキーは撮影中に何度も死にかけ、今では「生きているのが不思議な俳優ナンバーワン」と化している。まさに命懸けの撮影と言うしかない。

プロジェクトA(吹替版)

プライム会員は追加料金なしで視聴可

●『マッドマックス2
昨年公開された『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は、派手なカーアクションと斬新なスタントで多くの映画ファンの度肝を抜いた。しかしジョージ・ミラー監督によると、危険そうに見えても、実はスタジオで撮影した俳優の姿を車の運転席にCG合成するなど、安全面には十分に配慮していたらしい。

だが、1979年の1作目の『マッドマックス』では安全に配慮するような予算は無く、「スタントマンが死亡した」という噂が流れるぐらいデンジャラスな撮影を強行していたのである(実際には誰も死んでないが)。さらに続編の『マッドマックス2』ではもっと危険度がアップし、カメラマンを車両の前面部分に縛り付けて猛スピードで走行する等、クレイジーな撮影が続出(あまりの恐さに、「もう一度やってくれ」と言われたカメラマンは全力で拒否したとのこと)。

中でも「バギーに突っ込んだライダーが宙を舞うシーン」が特に悲惨で、本来なら綺麗に放物線を描いてジャンプするはずだったのに、スタントマンの足がバギーに引っ掛かってクルクル回転しながらブッ飛んで行ってしまい、股関節骨折の大惨事が勃発したのである。恐ろしい!

ジョージ・ミラー監督は「大丈夫!まだ一人も死んでないよ!」と豪語しているようだが、そういう問題じゃないだろ(笑)。なお、このシーンで重傷を負ったスタントマンのガイ・ノリスは、病院に搬送されて治療を受けた後、なんとその日の夜の撮影打ち上げパーティに松葉杖をつきながら参加していたという。不死身か!?

●『ビー・バップ・ハイスクール』シリーズ
「出演者のほとんどが本物のヤンキー」というとんでもない映画『ビー・バップ・ハイスクール』で主役を演じた清水宏次朗は、喧嘩のシーンで相手が本気で殴ってくるため(彼らに”寸止め”という概念はない)、常に撮影現場では危険な目にあいまくり、なんと3回も脳震盪を起こしたらしい。

そして「走っている電車の窓から下を流れている川に飛び込む」とか、「車椅子に縛り付けられたまま崖から落とされる」とか、信じられないような過酷なアクションを強いられ、どんどんストレスが蓄積(川へ落ちたのはスタントマンだが、水深が腰の高さぐらいしかなかったため「ヘタしたら死ぬ」とまで言われるほど危険な撮影だった)。

このシリーズを手掛けた那須博之監督は、もともと日活ロマンポルノでデビューし、数本のポルノ映画を撮っていたが、以前から「アクション映画を撮りたい!」と切望していたらしい。このため、『ビー・バップ・ハイスクール』の監督を依頼された時は嬉しさのあまり、次々と派手なアクションシーンを追加していったそうだ。

続編の『高校与太郎哀歌』でも、そんなアクション好きが高じてますます危険度がエスカレート。ついに監督が「トラックに乗った主人公が高さ30メートルの岸壁からダイブし、岸辺を航行中のタンカーの上に着地しする、というアクションを撮ろう!」などとメチャクチャなことを言い出し、スタッフや出演者を戦慄させた。しかし日本中のカースタントマンから拒否されたため、やむを得ず断念(出演者たちが安堵の涙を流す一方で、監督だけは残念がっていたらしい)。

さらにパート3の『高校与太郎行進曲』では、もう一人の主役の仲村トオルを(スタントマンも使わず)巨大な可動式クレーンに吊り下げて振り回すという前代未聞のアクションを強行。しかも、仲村トオルの真下では大量の火薬がドッカンドッカン火柱を上げて爆発しまくっているのだから、完全に正気の沙汰ではない(爆破シーンがあることを知らされていなかった仲村トオルは、この撮影の後、人間不信に陥ったという)。

そしてシリーズ最終作『高校与太郎完結編』で、積りに積もった彼らのストレスや恨みがついに限界を超えた。ラストシーンを撮った直後、清水宏次朗が「お前も俺たちの苦しみを味わえ!」と言わんばかりに那須博之監督を海へ突き落としたのである。後に清水は当時を振り返り、「映画の撮影現場というより戦場でしたね。ほんと、死ななくて良かった~みたいなw」とコメントしている。今なら間違いなく大問題だろうけど、この当時でも十分ヤバい撮影だったんじゃないかなあ。

なお、ヒロインの泉今日子役を演じた中山美穂は、共演者たちのルックスがあまりにも怖すぎて、この映画に出ることを本当に嫌がっていたという。小沢仁志に暴行されるシーンでは本気で泣き出してしまい、次回作の『高校与太郎哀歌』を撮った後、「もう二度と出たくない!」と会社側に訴えて降板してしまったのだ(どんだけ恐ろしい現場なんだよ…)。

●『蜘蛛巣城
黒澤明監督の『蜘蛛巣城』は、主人公の三船敏郎が無数の矢を浴びるクライマックスが特に有名で、当初は「糸を付けた矢を何本も壁に刺しておいて、それを次々と抜いていく映像を逆再生したのでは?」と言われていたが、弓道部の部員が実際に三船敏郎めがけて矢を射ていたことが判明。あまりにも危険な撮影に、さすがの三船も思わず「俺を殺す気か!」と叫んだという。

●『トワイライトゾーン/超次元の体験』
テレビシリーズ『コンバット!』のサンダース軍曹役で人気スターになったヴィック・モローが、久々に重要な役を演じた作品。ところが、クライマックスシーンを撮影中、コントロールを失ったヘリコプターがヴィック・モロー目がけて落下。共演していた2人の子供と共にローターに巻き込まれて死亡するという不幸な事故が起きてしまった(その後、監督のジョン・ランディスは遺族から訴えられるものの、裁判で無罪になっている)。

●『東方見聞録』
元々は総製作費8億円の超大作映画として企画された作品なのだが、映画会社の社長が借金返済のために4億円を使ってしまったため、実質は4億円。しかも、そのうちの3億円で巨大なオープンセットを建設し、残りは1億円になってしまった。このため、スケールの大きな作品内容に反し、現場は貧乏の極みだったらしい。

そして厳しい節約を強いられる中、重さ8キロの鎧を着たエキストラが滝つぼに落ちるシーンを撮影していたところ、そのまま水に沈んでしまい、意識不明の重体となって病院へ運ばれたが翌日死亡。遺族から訴えられた井筒和幸監督は、貯金を全て吐き出し、あちこちから借金しまくって賠償金を支払ったという。

さらに劇場公開は中止され、製作会社は倒産、井筒監督は借金返済のために監督業から離れてCMやカラオケビデオの制作、バラエティ番組への出演などを余儀なくされた。なお、映画はこのままお蔵入りになるかと思われたが、1993年にビデオ発売されている。

●『クロウ 飛翔伝説』
伝説的アクションスター:ブルース・リー。その息子のブランドン・リーが主演したこの映画は、撮影中に主役が死亡するという衝撃的な事故が起きたことで有名だ。「主人公が銃で撃たれるシーン」を撮影していた時、本来は空砲が込められていたはずなのに、なぜか実弾が発射され、ブランドン・リーは死んでしまう。

父親のブルース・リーも謎の死を遂げているため、「家族に呪いがかけられたのだ」とか、「事故に見せかけた暗殺だ」とか、様々な噂が飛び交ったようだが、撮影用の銃(ステージガン)を用意した銃火器業者のミスである可能性が高い。

なお、この事故によって映画の完成が危ぶまれたものの、すでに撮影済のカットから使えそうな場面を切り取って別のシーンへ貼り付けたり、未撮影の部分を代役とCGで補完するなど、苦労の末にどうにか完成までこぎ着けたという。

●『八甲田山
明治35年に起きた実際の遭難事件を題材とした極限の人間ドラマだが、撮影現場も日本映画史に残るほどの過酷なロケだったそうだ。真冬の八甲田山は想像を絶する寒さで、耐え切れなくなった俳優が次々と脱走。「裸の兵士が凍死するシーン」を撮るために俳優を裸にしたら本当に死にかけたとか、主演の高倉健も足が軽度の凍傷になったとか、とにかく凄まじい現場だったらしい。

●『群狼大戦』

ジャッキー・チェンの映画にも当てはまるが、1980年代の香港映画界はまさに”無法地帯”であった。スタントマンたちはより派手なアクションを極めるため、自らが体を張ったトライ&エラーを繰り返し、「6メートルの高さからダンボールの上に落ちても大丈夫だった」「じゃあ次は7メートルだ」などと、日々危険なスタントに挑み続けていたのである(人体実験かよw)。

当然、撮影現場では事故が多発しており、「2階の窓から下のクッションに落ちる予定が、勢いがつきすぎてクッションを飛び越えてしまい、地面に激突して病院送り」(『ファースト・ミッション』)とか、「8メートルの断崖から下の岩場に落下し全身を強打、そのまま激流に流されて病院送り」(『捜査官X』)など、危険なエピソードは枚挙にいとまがない。

そんな危ない香港映画の中でもズバ抜けて危険な作品が『群狼大戦』である。ムーン・リーとシベール・フーという2大アクション女優が自らスタントに挑んだこの映画、悲劇はラストに起こった。2人が2階の窓から飛び降りた瞬間、後ろで大爆発!恐らく爆破のタイミングが早すぎたのだろう、2人は炎に包まれてしまった。

この事故でムーン・リーとシベール・フーは大火傷を負い、当然ながら撮影は中止に。ところが、映画会社は無理やり映画を完成させ、なんと事故の映像をそのまま本編に使うという暴挙に出たのである。

しかもエンディングに「ムーン・リーとシベール・フーは映画芸術の真実性を高めるため、自ら危険なシーンに挑戦し、重傷を負った。彼女たちの勇気とプロ精神に心から敬意を表したい」などとテロップまで表示する鬼畜ぶり。あまりにも非常識な対応に当然ながら批判が殺到(ヒドい映画だよなあ…)。

●『エクソシスト
少々意味は異なるかもしれないが、「危険な撮影現場」という繋がりで本作も入れておきたい。この映画は「悪魔にとり憑かれた少女をめぐる物語」で、公開当時は「悪魔と祓魔師(エクソシスト)の壮絶な死闘」が話題になった。しかし、撮影現場には別の悪魔がいたのである。それが監督のウィリアム・フリードキンだ。

徹底的にリアリティを追及しようとしたフリードキン監督は、セットの中に16台の業務用大型冷却装置を設置させ、室温を常時0度に保つように指示し、登場人物の息が悪魔のパワーによって白くなる様子を撮影した。しかし、薄い寝間着一枚でベットに横たわる少女(リンダ・ブレア)は寒さで意識を失いそうになり、メリン神父を演じたマックス・フォン・シドーは顔が凍りついて口が開かなくなるほどだった。

また、母親役のエレン・バースティンが少女に殴り倒されるシーンでは、バースティンの体にワイヤーを取り付け、「俺が合図したら思い切り引っ張れ」とスタッフに命じている。このため、何も知らない彼女は猛烈な勢いで転倒して背骨を強打。しばらく病院に通うはめになったらしい。

さらにフリードキン監督の奇行は撮影が進むにつれてどんどんエスカレートし、現場に拳銃やショットガンを持ち込むようになった。そして実弾が入ったそれらの銃を、撮影中に突然ぶっ放したのである!カラス神父役のジェイソン・ミラーは驚いて抗議したが全く聞き入れてもらえず、以降、役者がNGを出すたびに銃声が鳴り響いたという(現場は異様な緊張感に包まれ、その雰囲気がそのままフィルムに収められた)。

また、本作にはリアリティを増すために本物の司祭が撮影に参加している。しかしフリードキン監督は、ド素人の司祭にも容赦なくNGを連発し、完璧な演技を求めた。そして15回目のNGを出した司祭の顔面をいきなり殴り付け、そのまま撮影を続行。恐怖に震える彼の表情を見ながら、満足そうにカメラを回していたらしい。怖ッ!

この他、映画『エクソシスト』は出演者やスタッフが次々と謎の死を遂げたり、セットが火事で焼失したり、関係者の誰もが一度は身の危険を感じたほど、「非常に危険な撮影現場」だったのである。ただ、どう考えてもウィリアム・フリードキン監督が一番危ないんだよなあ(笑)。


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